中越パルプ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中越パルプ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。紙パルプ製品の製造販売や発電事業を展開。直近決算では、スポット案件の受注や輸出拡販、衛生用紙販売により増収を確保したが、原燃料価格や物流費の上昇、固定費増加の影響で営業減益、経常減益となった。


※本記事は、株式会社中越パルプ工業 の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中越パルプ工業ってどんな会社?


紙・パルプの製造販売を主力とし、発電やセルロースナノファイバー等の新素材開発も手掛ける製紙メーカーです。

(1) 会社概要


1947年に高岡製紙として設立され、1949年に現社名へ変更しました。1956年に東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。近年では事業構造の転換を進めており、2015年に木材チップ等の製造販売を行う中越パルプ木材を設立、2018年には新素材開発を行う中越エコプロダクツを設立するなど、多角化に取り組んでいます。

同グループは連結従業員1,282名、単体770名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は同業大手で資本業務提携関係にある王子ホールディングス(21.94%)で、第2位は取引先商社の日本紙パルプ商事(5.66%)、第3位も同じく取引先の新生紙パルプ商事(4.50%)となっており、業界関係者が大株主の上位を占めています。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 21.94%
日本紙パルプ商事 5.66%
新生紙パルプ商事 4.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長兼社長執行役員は福本亮治氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
福本 亮治 代表取締役社長兼社長執行役員経営管理本部長、資源対策本部・内部監査室管掌 1986年本州製紙入社。王子製紙グループを経て2020年中越パルプ工業入社。経営管理本部長などを歴任し2024年6月より現職。
植松 久 代表取締役会長開発本部・東京事務所管掌 1980年中越パルプ工業入社。経営管理本部長、営業本部長などを経て2020年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
松本 光史 取締役兼常務執行役員生産本部長 1985年王子製紙入社。同社執行役員、取締役春日井工場長、王子不動産社長などを経て、2022年中越パルプ工業入社。2023年6月より現職。
磯部 勉 取締役兼常務執行役員営業本部長 1988年中越パルプ工業入社。川内工場抄紙部長、高岡工場次長などを経て、2022年常務執行役員営業本部長。2024年6月より現職。
楠原 勝市 取締役(常任監査等委員) 1978年中越パルプ工業入社。資源対策本部長、経営管理本部長などを経て、2018年中越パッケージ社長。2022年6月より現職。


社外取締役は、東勝次(公認会計士)、山口敏彦(弁護士)、櫻井佳世子(TMF Group株式会社勤務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「紙・パルプ製造事業」「発電事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 紙・パルプ製造事業


新聞用紙、印刷用紙、包装用紙、特殊紙、板紙および加工品、パルプなどを製造・販売しています。また、マプカ関連製品の取り扱いも行っています。国内市場における需要減少に対応しつつ、輸出の拡販や家庭紙分野への展開を進めています。

主な収益源は製品の販売代金です。運営は主に同社が行い、三善製紙、O&Cアイボリーボード、中越エコプロダクツなどのグループ会社も製造を担っています。

(2) 発電事業


バイオマスボイラー等の発電設備を活用した発電および電力の販売を行っています。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)を利用した売電事業を展開しています。

収益源は電力会社等への売電収入です。運営は同社が行っています。

(3) その他


セルロースナノファイバー(CNF)関連製品の製造販売を行うナノフォレスト事業や、紙加工品、造林・緑化、木材チップ販売、運送、機械設備設計施工、保険代理業など多岐にわたります。

収益源は製品販売、工事請負、運送料、手数料などです。運営は同社のほか、中越パッケージ、中越緑化、中越物産、中越ロジスティクス、中越テクノなどのグループ各社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近では1,100億円台に達していますが、利益面では変動が見られます。経常利益は一時的に高い水準を示しましたが直近では減益となり、当期純利益も減少しました。全体として増収傾向にあるものの、コスト増などにより利益率が低下している状況です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 819億円 901億円 1,057億円 1,078億円 1,110億円
経常利益 -3億円 31億円 34億円 68億円 51億円
利益率(%) -0.4% 3.4% 3.2% 6.3% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -12億円 9億円 26億円 37億円 11億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価および販売費・一般管理費の増加により、営業利益および営業利益率は低下しました。増収効果よりもコストアップの影響が大きく、収益性が低下する結果となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,078億円 1,110億円
売上総利益 176億円 171億円
売上総利益率(%) 16.3% 15.4%
営業利益 62億円 48億円
営業利益率(%) 5.7% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が71億円(構成比58.0%)、販売手数料が16億円(同13.4%)を占めています。物流費の上昇が利益を圧迫する主な要因となっています。

(3) セグメント収益


「紙・パルプ製造事業」は増収となりましたが、原燃料価格高騰等の影響で大幅な減益となりました。「発電事業」は売電単価下落等により減収でしたが、コスト削減により増益を確保しました。「その他」は増収増益と堅調でした。主力事業の利益率低下が全体の業績に影響しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
紙・パルプ製造事業 968億円 1,014億円 55億円 37億円 3.6%
発電事業 70億円 56億円 4億円 5億円 9.7%
その他 40億円 40億円 3億円 5億円 13.7%
調整額 -億円 -億円 -1億円 1億円 -%
連結(合計) 1,078億円 1,110億円 62億円 48億円 4.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金の範囲内で投資活動と財務活動(借入返済や配当)を行っており、財務体質を維持・改善しつつ事業運営を行う**健全型**のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 136億円 104億円
投資CF -79億円 -60億円
財務CF -31億円 -60億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「愛され信頼される企業に」を第一に掲げ、コンプライアンスに徹し、真摯で誠実な企業活動を旨としています。品質第一主義と技術革新で顧客満足を追求するとともに、地域社会との共存共栄を図り、環境と社会に貢献し、向上心あふれる働きがいのある会社づくりに励むことで、企業価値を高めることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ひたむきに人を大切にしたものづくり」に努め、国際競争を勝ち抜く強い企業創りを目指しています。品質第一主義と弛まざる技術革新を重視し、企業の社会的責任の視点に立って環境と社会に貢献する姿勢を持っています。また、向上心あふれる働きがいのある会社づくりを通じて、永続的な発展を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2025」の最終年度となる2025年度までに、収益目標として以下の数値を掲げており、これらを継続的にクリアできる事業基盤の確立に取り組んでいます。

* 営業利益:40億円
* ROE:5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「ビジョン2030」の実現に向けて、既存事業の構造転換と森林資源を活用した環境投資・ビジネス推進を柱としています。具体的には、家庭紙事業の安定操業と効率改善、セルロース・ナノファイバー(CNF)事業の環境配慮型用途への販売拡大、および省エネ対策や植林事業推進によるカーボンニュートラルの実現に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人・もの・心」を大切にする人材育成を行い、森林資源の有効利用を通じた循環型社会の構築を目指しています。多様な人材確保のため、定年を60歳から65歳へ延長する制度を導入し、中途採用も積極的に行っています。また、職位毎の研修や自己啓発支援、資格取得報奨金などを通じて、リスクを吸収できる創造力豊かな人材への投資を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.4歳 24.5年 6,355,002円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.4%
男女賃金差異(正規雇用) 70.1%
男女賃金差異(非正規) 52.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者・中途採用者の割合(16.5%)、育児休業取得率(86.7%)、コンプライアンスミーティング参加率(99.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内需要及び市況の変動リスク


同社グループの売上高の約8割を占める紙・パルプ製造事業は内需型産業であり、国内景気や需要動向の影響を強く受けます。国内紙需要の減少傾向や市況価格の変動が、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、家庭紙分野への参入やパルプ増産等の構造転換を進めています。

(2) 原材料購入価格の変動リスク


製造に必要な木材チップ、重油、古紙、薬品などの諸原燃材料を外部から購入しており、それぞれの国際市況や国内市況の変動リスクにさらされています。これらの価格変動がコスト増となり、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 地球環境に対するリスク


気候変動対策としての化石燃料使用規制の強化やそれに伴うコスト増加、および製紙の重要原料である木材の持続可能ではない調達に対する規制強化などが想定されます。これらの環境規制への対応コストや操業への影響が、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。