中越パルプ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中越パルプ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中越パルプ工業は東京証券取引所プライム市場に上場し、紙・パルプ製品の製造販売および発電事業を展開する企業です。直近の業績では、国内での印刷用紙や包装用紙の拡販、家庭紙のフル稼働に取り組んだものの、海外市況におけるパルプ輸出価格の下落や原燃料価格の上昇等が響き、前年同期比で減収減益となっています。


※本記事は、中越パルプ工業株式会社の有価証券報告書(第110期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中越パルプ工業ってどんな会社?


紙・パルプ製品の製造販売や発電事業を主軸に展開する製紙メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1947年に高岡製紙として設立され、1949年に現在の中越パルプ工業へ社名を変更し高岡工場を開業しました。1954年に川内工場を開業し、1956年には東京証券取引所に上場しています。1989年に三善製紙へ経営参画し、2016年には王子グループの関連会社などと共同で中間持株会社を設立しました。

現在の従業員数は連結で1,273名、単体で778名です。筆頭株主は同業大手の王子ホールディングスで、第2位は紙・板紙などの卸売を行う日本紙パルプ商事、第3位も同業商社の新生紙パルプ商事となっています。業界内の主要企業と強力な資本・取引関係を構築し、事業基盤の安定化を図っています。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 21.91%
日本紙パルプ商事 5.65%
新生紙パルプ商事 4.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長兼社長執行役員を福本亮治氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
福本亮治 代表取締役社長兼社長執行役員 本州製紙に入社後、王子製紙や王子板紙の管理部門を経て王子マテリア執行役員に就任。同社執行役員経営管理本部長等を経て2024年より現職。
植松久 取締役会長 同社入社後、高岡工場長や経営管理本部長、営業本部長などを歴任。代表取締役社長兼社長執行役員を経て2025年より現職。
磯部勉 取締役兼常務執行役員 同社入社後、川内工場抄紙部長や高岡工場長を務め、常務執行役員営業本部長を経て2024年より現職。
下川靖博 取締役兼常務執行役員 同社入社後、川内工場事務部長や川内工場長、生産技術部長、高岡工場長などを歴任し、2025年より現職。
楠原勝市 取締役(常任監査等委員) 同社入社後、資源対策本部長や経営管理本部長を務める。中越パッケージ代表取締役社長を経て2022年より現職。


社外取締役は、東勝次(公認会計士東勝次事務所設立)、山口敏彦(山口法律事務所設立)、櫻井佳世子(TMF Group入社)です。

2. 事業内容


同社グループは、「紙・パルプ製造事業」「発電事業」および「その他」事業を展開しています。

紙・パルプ製造事業


同事業では、新聞用紙、印刷用紙、包装用紙、特殊紙、板紙および加工品、パルプの製造・販売を主力として展開しています。幅広い紙製品を顧客である各種メーカーや印刷会社、紙卸売商社などに提供し、多様なニーズに応えています。

収益源は、顧客に製品を引き渡した際に受け取る販売代金です。国内取引および輸出取引による収益が含まれます。運営は主に中越パルプ工業が担っており、子会社の三善製紙やO&Cアイボリーボードなども各製品の製造・販売に関わっています。

発電事業


同事業では、自社工場内に設置した発電設備を活用して電力を供給しています。工場における安定的な操業を支えるとともに、再生可能エネルギーやバイオマス等を活用した事業活動の一環として電力の安定供給に取り組んでいます。

収益源は、発電した電力を電力会社等へ供給することで得られる売電収入です。運営は中越パルプ工業が主体となって行っており、川内工場や高岡工場に併設された発電設備を通じて事業を展開しています。

その他


上記2つの報告セグメントに含まれない事業群であり、セルロース・ナノファイバー関連製品の製造・販売をはじめ、紙袋や段ボール等の紙加工品製造、造林・緑化事業、木材チップの製造・仕入、製品の物流・断裁包装、保険代理業などを幅広く展開しています。

各サービスの提供に伴う販売代金や業務請負等の対価が収益源となっています。運営は中越パルプ工業のほか、中越パッケージ、中越ロジスティクス、中越緑化、中越テクノなど多数の関連会社がそれぞれの専門分野を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり1,100億円台に達していますが、利益面は変動が大きく、直近では減益基調にあります。原材料価格や物流費等のコスト上昇が影響していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 901億円 1,057億円 1,078億円 1,110億円 1,104億円
経常利益 31億円 34億円 68億円 51億円 34億円
利益率(%) 3.4% 3.2% 6.3% 4.6% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 26億円 37億円 11億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益を見ると、売上高はわずかに減少した一方で、売上総利益および営業利益は大きく落ち込んでいます。利益率も低下しており、収益性の確保が課題となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,110億円 1,104億円
売上総利益 171億円 150億円
売上総利益率(%) 15.4% 13.5%
営業利益 48億円 27億円
営業利益率(%) 4.4% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、運搬費が71億円(構成比約58%)、販売手数料が17億円(同約14%)を占めており、物流関連の費用負担が大きいことが分かります。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上動向を見ると、主力である紙・パルプ製造事業の売上高が微減となっている一方、発電事業やその他事業の売上高は堅調に推移しています。全体としては紙需要の減少等の影響が表れています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
紙・パルプ製造事業 1,014億円 1,005億円
発電事業 56億円 57億円
その他 40億円 42億円
連結(合計) 1,110億円 1,104億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金を用いて借入金の返済を進めつつ、設備投資等にも手元資金を充当できていることから、資金繰りは堅調に推移しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 104億円 47億円
投資CF -60億円 -40億円
財務CF -60億円 -48億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「愛され信頼される企業に」を第一に掲げています。真摯で誠実な企業活動を旨とし、品質第一主義と弛まざる技術革新で顧客満足を希求するとともに、地域社会との共存共栄を図ることを存在意義としています。また、環境と社会に貢献し、向上心あふれる働きがいのある会社づくりに励み、持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ひたむきに人を大切にしたものづくり」に努めるという価値観を重視しています。コンプライアンスを徹底し、企業の社会的責任の視点に立って誠実に活動する文化があります。また、組織全体の効率性と持続的成長を実現するため、DX推進や多様な人材が活躍できる職場環境の整備など、人的資本経営を重視する行動様式を採っています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2030」(2026年度〜2030年度)を策定し、外部環境の変化に対応しながら事業基盤の強化と成長に向けた目標を掲げています。収益や環境面の達成指標として以下の具体的な数値を設定しています。

* 2030年度までに営業利益80億円
* 2030年度までにROE8%
* 製造工程における化石燃料由来のCO2排出量を2030年度までに2013年度比55%削減

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「紙パルプ事業基盤強化」「新規事業」「GX推進」を3本の柱として成長戦略を展開しています。紙需要の減少に対し、脱プラスチック需要を見込むパッケージング用紙などの販促や、セルロースナノファイバーの早期事業化に注力します。また、省エネルギーの推進や脱化石燃料化を加速させるとともに、JVやM&Aを通じた新規事業の検討により企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業価値を高める源泉と位置づけ、「人・もの・心」を大切にする人材育成を行っています。リスクを吸収できる創造力豊かな人材を育てるため、職位・職能別の研修や自己啓発支援等の教育投資を実施しています。また、多様な人材の確保と定着を目指し、性別や年齢に関係なく能力を発揮できる職場環境の整備や有給・リフレッシュ休暇制度の見直しなどを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.9歳 24.7年 6,489,988円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 56.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断および2次検診受診率(100.0%)、コンプライアンスミーティング参加率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内需要および市況の変動リスク


同社グループの売上高の大半を占める紙・パルプ製造事業は内需型産業であり、国内景気の影響を大きく受けます。デジタル化や人口減少による紙の国内需要の減少傾向や、製品の市況価格の変動が、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料購入価格の変動リスク


同社グループは、紙・パルプの製造に必要な木材チップ、重油、古紙、薬品などの諸原燃材料を外部から購入しています。そのため、それぞれの国際市況や国内市況の変動による調達コストの上昇が、利益を圧迫し業績に影響を与える可能性があります。

(3) 地球環境に関するリスク


気候変動対策を目的とした化石燃料使用の規制強化やそれに伴うコストの増加、さらには重要な原材料である木材の持続可能ではない調達に対する規制強化が進むことで、同社の生産活動やコスト構造に負担が生じ、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 災害および感染症に関するリスク


天変地異などの自然災害やテロ等の人的災害により、生産設備が多大な被害を受けるリスクがあります。また、未知の感染症が流行した場合には、需要の減少や生産活動の一時停止を余儀なくされる可能性があり、事業継続や経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。