野崎印刷紙業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

野崎印刷紙業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

野崎印刷紙業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、商業印刷、包装資材や紙器、バーコードプリンター等の情報機器およびサプライ品の製造販売を主力とする総合情報企業です。直近の業績は、価格競争や物流向け特需の反動、原材料・人件費の高騰等により、前年比で減収減益の厳しい局面となっています。


※本記事は、野崎印刷紙業株式会社の有価証券報告書(第86期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 野崎印刷紙業ってどんな会社?


野崎印刷紙業は、印刷媒体を中心とする総合情報企業として、包装資材や情報機器等の製造販売を展開しています。

(1) 会社概要


1868年に呉服値札業として創業し、1940年に野崎紙業を設立しました。1961年に大阪証券取引所市場第二部および京都証券取引所に株式上場を果たし、1962年に現在の野崎印刷紙業へと商号を変更しました。以来、包装資材や情報機器分野へ事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で422名、単体で377名です。筆頭株主は同社の取引業者で組織する持株会の陽光会で、第2位は同社代表取締役社長の野﨑隆男氏、第3位は野﨑氏が代表を務める翠洸興産となっています。

氏名 持株比率
陽光会 11.57%
野﨑隆男 10.55%
翠洸興産 4.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は野﨑隆男氏が務めており、社外取締役比率は25.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
野﨑隆男 代表取締役社長 1988年3月入社。1991年取締役、2003年専務取締役を経て、2007年6月に代表取締役社長に就任。旭ラベル、フェニックス電子等の代表取締役社長を兼任し、現在に至る。
夏苅崇 専務取締役 1984年10月入社。東京支店長等を経て2009年取締役就任。管理部長等を歴任し、2015年常務取締役を経て、2020年6月より専務取締役に就任し現在に至る。
簗瀬昌二 常務取締役 1977年4月入社。開発営業部長等を歴任し、2015年取締役就任。近畿・中部統括担当部長等を経て、2020年6月より常務取締役に就任し、現在に至る。
小林正明 取引役営業部長兼近畿・中部統括担当 1983年4月入社。執行役員営業部長を経て2011年取締役就任。東京支店長や常務執行役員を務めたのち、2025年6月より取締役に就任し、現在に至る。
中井呈 取締役生産部長 2003年4月入社。旭ラベル取締役等を経て、2023年執行役員品質管理部長。2024年に早和製本代表取締役社長および同社取締役に就任し、現在に至る。
内藤孝憲 取締役管理部長 1997年5月入社。東京支店販売一課副長、大阪営業所長等を経て、2024年4月に管理部経理課長。同年6月より取締役管理部長に就任し、現在に至る。


社外取締役は、鈴木一水(大学教授・公認会計士)、渡邊賢一(公認会計士・税理士)、木村規久男(元パナソニック電工執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「商業印刷」、「包装資材及び紙器、紙工品」、「情報機器及びサプライ品」および「その他」事業を展開しています。

商業印刷


カレンダー、カタログ、パンフレット、ダイレクトメール、ポスター、高級美術印刷等の一般商業印刷物を製造し、展示会向けや官公庁関連向け等幅広い顧客に提供しています。

製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は主に野崎印刷紙業が行っており、子会社の野崎カレンダーに対しても製品の一部を販売しています。

包装資材及び紙器、紙工品


包装紙、紙袋類、紙器類、ビジネスフォーム類等の製造販売を行っています。化粧品や食品業界、工業製品向け、百貨店等の流通・小売業界向けに商品を提供しています。

製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は主に野崎印刷紙業が行っているほか、子会社の早和製本に対して小ロットの製造や作業工程の一部を下請けさせています。

情報機器及びサプライ品


バーコードプリンター、フルカラーカードプリンターおよびタグ類、ラベル類、シール類等を製造販売しています。食品業界や物流業界、輸送機器関連企業向けに提供しています。

製品販売や保守サービスによる収益を収入源としています。野崎印刷紙業が主に運営し、子会社の旭ラベルが製造の一部を担うほか、ツバサ製作所への下請けやフェニックス電子への販売も行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、物流関係向けのチケットパックやキャリーバッグ、感染症対策の衛生関連商品などの化成品を取次品として販売しています。

これら商品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は主に野崎印刷紙業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は堅調に推移し成長を続けてきましたが、当期は価格競争や原材料高の影響により減収となりました。利益面でも、過去数年は改善傾向にありましたが、当期は製造原価の上昇などにより経常利益、当期利益ともに減益に転じています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 131億円 134億円 142億円 146億円 140億円
経常利益 1.4億円 3.7億円 6.7億円 7.5億円 5.7億円
利益率(%) 1.1% 2.8% 4.7% 5.2% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.4億円 2.1億円 5.3億円 5.0億円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も前年を下回っています。原材料価格の高止まりや人件費の増加、工場設備の修繕工事などによる製造原価の上昇が利益率の低下に影響を及ぼしています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 146億円 140億円
売上総利益 29億円 27億円
売上総利益率(%) 19.9% 19.6%
営業利益 6.9億円 5.2億円
営業利益率(%) 4.7% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が11億円(構成比48%)、発送費・配達費が4億円(同16%)を占めています。また、単体の製造原価において、材料費が40億円(構成比52%)、経費が20億円(同26%)、労務費が17億円(同22%)となっています。

(3) セグメント収益


主力の「包装資材及び紙器、紙工品」は、価格競争や前年の特需の反動により減収となりました。「その他」も感染症対策商品の需要減等で落ち込んでいます。「商業印刷」と「情報機器及びサプライ品」はほぼ前年並みの売上を維持しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
商業印刷 11億円 11億円
包装資材及び紙器、紙工品 84億円 79億円
情報機器及びサプライ品 44億円 44億円
その他 6億円 5億円
連結(合計) 146億円 140億円


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6.5億円 4.6億円
投資CF -10.6億円 -10.4億円
財務CF 2.1億円 5.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「印刷媒体を中心とする総合情報企業として、お客様の要望にお応えし満足していただける製品を提供し、企業体質の強化と収益の向上を目指し、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの信頼にお応えできるよう尽力いたします」と掲げています。

(2) 企業文化


「+αで応えることで小さな感動を提供する」の実践を通じてお客様の満足度向上を図ると共に、地球環境の保全、誰もが安心して活動できる健全な社会づくりに貢献し、企業価値の向上と持続的な成長を目指す文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「nozaki2024/2026“SHINKA”」を策定し、「現状からの脱却」に主眼を置き、グループ全体で企業価値の向上を目指しています。持続的な企業価値向上に向けて、自己資本利益率(ROE)を同社のKPIに設定し、従業員への理解・浸透を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


「進化」「深化」「伸化」の3つのSHINKAで企業価値向上を目指します。重点商品であるDX事業による付加価値創出や広域営業体制の構築、特殊加工や可変印字を付加した高付加価値商品の提供、生産現場のスマート化によるローコストオペレーションを推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人への投資を経営戦略の最重要事項の一つとして位置づけ、従業員の健康増進および人材マネジメントの2つの柱を掲げています。各自の役割や成果に応じた公正な評価と処遇の実現を目指す評価制度を採用し、多様な人材の確保と定着を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.5歳 21.2年 5,239,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.2%
男女賃金差異(正規労働者) 81.7%
男女賃金差異(非正規労働者) 60.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、19~39歳の従業員の直近3年間の定着率(45%)、従業員の有給休暇取得率(56%)、従業員エンゲージメント(60%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 価格競争の激化


同社グループは多くの企業と競合関係にあり、受注価格の低下が進んでいます。付加価値の高い製品の提供や生産効率の向上などコスト削減により利益の確保に努めていますが、更なる競争の激化が生じた場合、収益の低下を招き同社の経営成績等に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料価格の高騰


同社グループの製品の主たる原材料である原紙の価格が、紙パルプの市況や原油価格等の高騰を受けて上昇するリスクがあります。業界内の販売価格競争が激しいため、コスト上昇分を販売価格に十分転嫁できない場合、収益性が低下し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報機器等の在庫陳腐化


同社グループが製造販売する情報機器は技術革新による陳腐化が激しく、生産体制の都合上一定ロットの生産が必要となります。そのため、市場動向の予測を誤り過剰な在庫を抱えた場合、評価損が発生し、同社の財務状況や経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。