※本記事は、野崎印刷紙業株式会社 の有価証券報告書(第85期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 野崎印刷紙業ってどんな会社?
野崎印刷紙業は、商業印刷物から包装資材、ラベル・タグ等のサプライ品、情報機器まで幅広く手掛ける総合情報企業です。
■(1) 会社概要
1868年の創業以来、京都を拠点に発展してきました。1940年に野崎紙業を設立し、1961年に大証二部および京証へ上場を果たしました。1962年に現在の社名へ変更し、1975年には東証二部へ上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
同社グループは連結従業員420名、単体375名の体制です。筆頭株主は同社の取引業者で組織する持株会である陽光会で、第2位は社長の野崎隆男氏です。第3位の翠洸興産は、野崎隆男氏が代表取締役社長を務める企業です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 陽光会 | 11.16% |
| 野崎 隆男 | 9.89% |
| 翠洸興産 | 4.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は野崎隆男氏が務めています。社外取締役比率は約27%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野 﨑 隆 男 | 代表取締役社長 | 1988年野崎印刷紙業入社。常務、専務を経て2007年より現職。旭ラベル等の子会社社長も兼任。 |
| 夏 苅 崇 | 専務取締役 | 1984年入社。東京支店長、管理部長兼品質管理部長、常務を経て2020年より現職。 |
| 簗 瀬 昌 二 | 常務取締役営業担当 | 1977年入社。開発営業部長、取締役を経て2020年より現職。 |
| 中 井 呈 | 取締役生産部長 | 2003年入社。品質管理部長、早和製本社長を経て2024年より現職。 |
| 内 藤 孝 憲 | 取締役管理部長 | 1997年入社。大阪営業所長、管理部経理課長を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、鈴木一水(神戸大学大学院経営学研究科教授)、渡邊賢一(公認会計士渡邊会計事務所代表)、木村規久男(元パナソニック電工執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「商業印刷」「包装資材及び紙器、紙工品」「情報機器及びサプライ品」「その他」の4つの事業部門を展開しています。
■(1) 商業印刷部門
カレンダー、カタログ、パンフレット、ダイレクトメール、ポスター、高級美術印刷などの製造・販売を行っています。顧客は一般企業や官公庁など多岐にわたります。
収益は、顧客からの印刷物受注に対する代金が主となります。運営は主に野崎印刷紙業が行っており、一部製品は子会社の野崎カレンダーへ販売しています。
■(2) 包装資材及び紙器、紙工品部門
包装紙、紙袋類、紙器類、ビジネスフォーム(伝票類)などの製造・販売を行っています。百貨店や流通業界、物流業界などが主な顧客です。
収益は、包装資材や紙製品の販売代金から得ています。運営は野崎印刷紙業が行うほか、子会社の早和製本が小ロット製造や工程の一部を担っています。
■(3) 情報機器及びサプライ品部門
バーコードプリンター、フルカラーカードプリンターなどの情報機器本体や、タグ、ラベル、シール類などのサプライ品の製造・販売を行っています。
収益は、機器本体および消耗品(サプライ品)の販売代金、機器の保守サービス料などから構成されます。運営は野崎印刷紙業に加え、子会社の旭ラベルが製造の一部を、ツバサ製作所が機器の下請けを、フェニックス電子が販売の一部を担っています。
■(4) その他の部門
キャリーバッグ、チケットパックなどの製造・販売を行っています。物流関連や各種サービス業などが顧客となります。
収益は、当該製品の販売代金です。運営は主に野崎印刷紙業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は131億円から146億円へと緩やかな拡大傾向にあります。利益面では、2022年3月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後は回復し、特に2024年3月期以降は経常利益が6億円を超える水準で推移しています。直近の2025年3月期は増収増益(経常利益ベース)を達成し、利益率も5%台を維持するなど安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 131.1億円 | 130.8億円 | 134.4億円 | 141.6億円 | 145.7億円 |
| 経常利益 | 1.2億円 | 1.4億円 | 3.7億円 | 6.7億円 | 7.5億円 |
| 利益率(%) | 0.9% | 1.1% | 2.8% | 4.7% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.5億円 | -0.4億円 | 2.1億円 | 5.3億円 | 5.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の142億円から146億円へ増加しました。売上総利益も27億円から29億円へ増加し、売上総利益率は19.3%から19.9%へ改善しています。これに伴い、営業利益も6.2億円から6.9億円へと伸長しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 141.6億円 | 145.7億円 |
| 売上総利益 | 27.4億円 | 29.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.3% | 19.9% |
| 営業利益 | 6.2億円 | 6.9億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 4.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が10億円(構成比約46%)、発送費・配達費が4億円(同約18%)を占めています。物流費や人件費の上昇傾向が続いています。
■(3) セグメント収益
商業印刷部門は官公庁向けが増加したものの、カタログ等の部数抑制や展示会需要の減少により減収となりました。一方、包装資材等は紙器が堅調で増収、情報機器等はラベル需要の回復やプリンターのリプレイス需要により増収となりました。全体としては主力部門の伸長が増収に寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 商業印刷 | 11.5億円 | 11.3億円 |
| 包装資材及び紙器、紙工品 | 80.7億円 | 84.0億円 |
| 情報機器及びサプライ品 | 43.1億円 | 44.2億円 |
| その他 | 6.3億円 | 6.2億円 |
| 連結(合計) | 141.6億円 | 145.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持していますが、投資CFは有形固定資産の取得等によりマイナスとなり、積極的な投資姿勢が見られます。財務CFは長期借入による収入等によりプラスとなりました。これらは、営業で稼いだ資金に加え、借入調達も行いながら設備投資を進めている「積極型」のキャッシュ・フロー状態といえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11.0億円 | 6.5億円 |
| 投資CF | -6.8億円 | -10.6億円 |
| 財務CF | -0.3億円 | 2.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「+αで応えることで小さな感動を提供する」を経営理念に掲げています。印刷媒体を中心とする総合情報企業として、顧客の要望に応える製品を提供し、企業体質の強化と収益向上を目指すとともに、全てのステークホルダーの信頼に応えることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、150年余りの歴史の中で自然環境や地域社会との共存を重視してきました。中期経営計画のビジョンとして「進化(新たな価値創造)」「深化(組織・事業の成長)」「伸化(市場開拓)」という3つの「SHINKA」を掲げており、アイデアと技術革新、知識の研鑽、変化への対応を通じて企業価値向上を目指す文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2026年度までの3か年中期経営計画「nozaki2024/2026“SHINKA”」を策定しています。「現状からの脱却」を主眼に置き、持続的な企業価値向上に向けて、自己資本利益率(ROE)をKPI(重要業績評価指標)に設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「印刷×DX」の取り組みによる高付加価値化や、設備投資による主力商品の販売強化を進めています。具体的には、可変印字や加飾技術の向上、オリジナル2次元コードを含むDX事業の推進、生産現場のスマート化による効率改善などに取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人への投資は新たな価値創出の源泉」と考え、従業員の健康増進と人材マネジメントを通じて労働生産性とエンゲージメントの向上を図っています。多様性の確保を重要視しており、異なる経験や価値観を持つ人材を幅広く受け入れる方針です。特に女性比率が低いことから、意欲ある女性の積極採用を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.0歳 | 21.0年 | 5,083,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 63.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、19~39歳の従業員の直近3年間の定着率(54%)、従業員の有給休暇取得率(55%)、従業員エンゲージメント(60%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 価格競争の激化
同社グループは多くの競合企業との競争下にあり、受注価格の低下が進んでいます。付加価値の高い製品開発やコスト削減に努めていますが、競争がさらに激化した場合には経営成績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動
製品の主原料である原紙価格が、市況や原油価格の高騰により上昇した場合、業界内の激しい価格競争により販売価格への転嫁が困難となる可能性があります。これにより収益性が低下し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 機器在庫の陳腐化リスク
製造・販売している情報機器は技術革新が速く陳腐化しやすい特性があります。また、生産体制上一定ロットの生産が必要なため、市場動向の予測を誤ると在庫評価損が発生し、業績に影響を与える可能性があります。



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