※本記事は、大石産業の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大石産業ってどんな会社?
パルプモウルドや紙袋などの包装関連資材を製造・販売するメーカーです。
■(1) 会社概要
1925年に福岡県で大石商店として創業し、藁工品や麻袋の販売を開始しました。1947年に大石商店として設立され、1952年に現社名へ変更しています。1980年に福岡証券取引所へ上場し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。中国やマレーシア等への海外展開も推進しています。
現在の従業員数は連結594名、単体372名体制です。筆頭株主は事業会社の王子ホールディングスで、第2位は従業員の資産形成を支援するOSK社員持株会、第3位は取引銀行である西日本シティ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 王子ホールディングス | 9.61% |
| OSK社員持株会 | 7.23% |
| 西日本シティ銀行 | 4.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は山口博章氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山口博章 | 代表取締役社長 | 1982年同社入社。パルプモウルド事業部長、フィルム事業部長等を経て、2023年4月より代表取締役社長。 |
| 豊田真佐喜 | 取締役フィルム事業部長 | 1985年同社入社。フィルム事業部営業部長、関西支店長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 大谷洋文 | 取締役管理部長 | 1987年同社入社。管理部企画グループ部長、経営企画室長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 宮竹幸喜 | 取締役生産技術部長 | 1988年同社入社。フィルム事業部製造部長、技術開発部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 輪竹英章 | 取締役経営企画室長 | 1987年同社入社。紙袋事業部国内営業部長、柳沢製袋代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 宮地郁夫 | 取締役常勤監査等委員 | 1985年西日本銀行(現西日本シティ銀行)入行。監査部長等を経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、竹尾祐幸(西日本シティ銀行代表取締役副頭取)、福地昌能(福地公認会計士事務所設立)、池田早織(德永・松﨑・斉藤法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「緩衝機能材事業」「包装機能材事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 緩衝機能材事業
主に工業、食品、農業分野の顧客向けに、パルプモウルドや段ボール製品など緩衝機能を持つ包装資材の製造および販売を行っています。青果物用トレーや業務用鶏卵トレー、工業用トレーなどを幅広く提供しています。
製品の販売代金を収益源としています。同事業の運営は主に親会社である大石産業が行っており、国内各工場で製造した製品を顧客へ納入しています。
■(2) 包装機能材事業
主に食品、農業、工業分野の顧客向けに、フィルム製品や紙袋製品など包装機能を持つ資材の製造および販売を行っています。食品容器用フィルムや電子材料・自動車向けの特殊フィルム、重包装袋などを扱っています。
製品の販売代金を主な収益源としています。運営は大石産業のほか、子会社の柳沢製袋、マレーシア子会社のCORE PAX(M)SDN.BHD.およびENCORE LAMI SDN.BHD.などが担っています。
■(3) その他
包装関連資材以外の多角的な事業展開として、情報処理機器の販売、ソフトウェアの開発・販売、デザイン関連事業、および不動産の賃貸事業などを行っています。
商品の販売代金やソフトウェア開発費用、不動産の賃貸料を収益源としています。運営は主に子会社のアクシスが行っていましたが、2026年4月に大石産業が吸収合併しています。また、マレーシアでの日本産農産物等の輸入販売事業も手掛けています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が概ね右肩上がりで推移しており、200億円前後から235億円規模へと成長しています。一方で経常利益は15億円から10億円へと減少傾向にあり、利益率は低下しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 198億円 | 218億円 | 220億円 | 235億円 | 235億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 14億円 | 13億円 | 11億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 7.7% | 6.4% | 6.1% | 4.8% | 4.2% |
| 当期純利益 | 10億円 | 7億円 | 9億円 | 8億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増となりましたが、売上総利益も増加し、売上総利益率は改善しています。しかし、設備投資拡充に伴う減価償却費の増加や人件費の増加等により、営業利益および営業利益率は前年から低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 235億円 | 235億円 |
| 売上総利益 | 43億円 | 44億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.4% | 18.9% |
| 営業利益 | 9億円 | 7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、発送運賃が12億円(構成比33%)、給料及び手当が8億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
緩衝機能材事業は、パルプモウルド部門や段ボール部門での販売数量増や価格改定が寄与し、増収増益となりました。一方、包装機能材事業は、海外重包装袋部門やフィルム部門での減収および設備拡充に伴う減価償却費の増加により減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 緩衝機能材事業 | 111億円 | 116億円 | 9億円 | 12億円 | 10.1% |
| 包装機能材事業 | 120億円 | 114億円 | 9億円 | 6億円 | 5.5% |
| その他 | 4億円 | 4億円 | 0.2億円 | -0.3億円 | -7.4% |
| 連結(合計) | 235億円 | 235億円 | 9億円 | 7億円 | 3.1% |
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 23億円 |
| 投資CF | -18億円 | -30億円 |
| 財務CF | -4億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「未来を包む - Inclusion for Future -」をパーパス(存在意義)として掲げています。社会の未来を「包む」ことで人々や地球環境を包摂し、社会に有用な存在であり続けることを目指しています。また、「循環型社会に最適解を提供する」をビジョンに据え、持続可能な社会の実現に貢献しています。
■(2) 企業文化
同社は、社員一人ひとりが持つべき価値観であるバリューとして「誠実」「挑戦」「協創」の3つを掲げています。誠実な行動と透明なコミュニケーションで信頼を築き、困難に立ち向かって未来を切り拓きながら、多様なパートナーと協力して成果を分かち合う企業文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
中東情勢などの不透明感が継続する中、2028年3月期を最終年度とする第8次中期経営計画『New Challenge 2027』を着実に推進しています。客観的な目標指標として、中期経営計画において以下の維持・向上を図っています。
・売上高
・経常利益
・経常利益率
・ROE(自己資本利益率)
・自己資本比率
■(4) 成長戦略と重点施策
サステナビリティ基本方針を経営基盤とし、安定収益事業と高成長事業の最適バランスを実現する事業ポートフォリオの構築を目指しています。パルプモウルド製品では環境配慮型製品への需要増を捉え、独自技術による高付加価値製品の市場展開を進めます。フィルム製品では成長市場への本格参入を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
循環型社会に最適解を提供するために、多様な人材が集い、社員一人ひとりの能力を最大限に発揮できる環境と風土づくりを推進しています。ダイバーシティの推進や優秀な人材確保と育成、各階層の教育の充実に加え、評価制度の見直しなど人事制度のさらなる充実を図り、働きがいのある職場環境を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.6歳 | 14.9年 | 5,868,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 12.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 77.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断要再検査受診率(100.0%)、ストレスチェック実施率(100.0%)、年次有給休暇取得率(55.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品需要、景気動向
同社グループの製品は幅広い業種と取引がありますが、景気後退による製品需要の減少や競争激化による市況悪化が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新製品開発や機能改良を通じて顧客満足を追求し、他社との差別化を図っています。
■(2) 原燃料価格の変動リスク
クラフト原紙や樹脂・フィルム、および燃料であるLPGやLNGなどの価格変動が業績に影響を与える可能性があります。また、パルプモウルド製品の原料となる古紙価格も国際市況の影響を受けます。調達先の分散や契約の長期化により、安定した調達に努めています。
■(3) 海外展開に伴うリスク
顧客のグローバル化に対応するためマレーシアに生産・販売拠点を有しており、為替相場の変動や進出国の経済動向、政情不安、法規制の変更が業績に影響する可能性があります。顧問弁護士等からの情報収集や現地子会社との連携を強化し、適切に対応しています。



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