ナカバヤシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナカバヤシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場上場。図書製本やアルバム製造を祖業とし、現在はBPOサービスや文具・オフィス家具、バイオマス発電等のエネルギー事業を展開します。直近決算では価格改定やBPOの堅調な推移により、売上高は628億円へ増収、営業利益は18億円へ大幅な増益を達成しました。(153文字)


※本記事は、ナカバヤシ株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナカバヤシってどんな会社?


「フエルアルバム」で知られる製本技術を核に、BPO事業や環境エネルギー事業へ展開する多角化企業です。

(1) 会社概要


1923年に中林製本所として開業し、1951年に中林製本社を設立。1968年にフエルアルバムの製造を開始し知名度を高めました。1977年に大証二部へ上場し、2013年には松江バイオマス発電を設立してエネルギー事業へ参入しました。2023年に東証スタンダード市場を選択しています。

連結従業員数は2,113名、単体では949名です。筆頭株主は信託銀行で、第2位はフエル共益会、第3位は生命保険会社であり、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.75%
フエル共益会 8.14%
第一生命保険株式会社 7.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長執行役員は湯本秀昭氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
湯本 秀昭 代表取締役社長執行役員 1984年入社。製販カンパニー長、営業統括本部長などを歴任。2018年より代表取締役社長、2020年より現職。
中林 一良 取締役副社長執行役員営業統括本部長 1997年入社。製販カンパニー長、専務取締役などを経て、2024年より現職。寺西化学工業取締役会長を兼任。
前田 洋二 取締役常務執行役員 1980年入社。島根ナカバヤシ代表取締役、常務取締役などを経て2020年より現職。CCカンパニー長等を担当。
淡路 克浩 取締役上席執行役員営業統括本部副本部長 1986年入社。フエル販売代表取締役社長、東京本社長などを経て2024年より現職。CCカンパニー長を兼務。
青山 伸一 取締役上席執行役員営業統括本部副本部長 1986年入社。堺工場工場長、購買部担当、BPSカンパニー長などを経て2024年より現職。
長井 俊介 取締役上席執行役員管理統括本部長 1989年入社。情報システム室長、大阪本社長、常務執行役員などを経て2024年より現職。
栗林 文生 取締役(常勤監査等委員) 1996年入社。印刷・製本カンパニー特販営業部マネージャー、内部監査室長を経て2023年より現職。


社外取締役は、小泉公彦(元AGS常務執行役員)、中山理香(Dcent代表取締役)、中務尚子(弁護士・和田興産社外取締役)、八文字正裕(税理士・八文字コンサルティング代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビジネスプロセスソリューション事業」、「コンシューマーコミュニケーション事業」、「エネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。

ビジネスプロセスソリューション事業


図書館製本や手帳製造などの伝統的な製本技術を活かした製品に加え、データプリントサービス(DPS)やBPO(業務プロセスアウトソーシング)サービスを提供しています。図書館運営の受託や、人材派遣サービスも行い、企業や官公庁等の業務効率化を支援しています。

収益は、製品の販売代金や業務受託によるサービス料等が主な源泉です。運営は、同社のほか、人材派遣を行うウーマンスタッフ、アウトソーシング事業の日本通信紙、卒業アルバム製造の松本コロタイプ光芸社、シール印刷の八光社などが担っています。

コンシューマーコミュニケーション事業


「フエルアルバム」等のアルバム、ノート、ファイルなどの紙製品や、シュレッダ等の事務機器、オフィス家具、収納用品などを製造・販売しています。また、文具やガジェット周辺用品、チャイルドシート、ぬいぐるみなども取り扱っており、一般消費者やオフィス向けに製品を提供しています。

収益は、製品の販売代金が主な源泉です。運営は同社が主体となり、一部販売をフエル販売、オフィス家具等の製造販売をカグクロ、ぬいぐるみ製造販売をサンレモンが行っています。また、島根ナカバヤシ等の製造子会社も関わっています。

エネルギー事業


再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に基づき、木質バイオマス発電および太陽光発電事業を行っています。地球環境保全と循環型社会の実現に向けた取り組みの一環として位置づけられています。

収益は、発電した電力の販売代金です。運営は、木質バイオマス発電を行う連結子会社の松江バイオマス発電と、太陽光発電を行う同社が担当しています。

その他


新たな農業ビジネスモデルの構築を目指し、野菜プラント事業やにんにくファーム事業等を展開しています。製本業と農業の連携による地域雇用の創出なども目指しています。

収益は、農産物の販売代金等です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は610億円から640億円の範囲で推移しています。2023年3月期は経常利益が減少し当期純損失を計上しましたが、その後回復傾向にあります。2025年3月期は価格改定やBPO事業の伸長により、経常利益は前期比倍増し、当期純利益も大きく増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 636億円 631億円 616億円 610億円 628億円
経常利益 30億円 23億円 9億円 10億円 22億円
利益率 4.8% 3.7% 1.5% 1.6% 3.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 10億円 -15億円 9億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。価格転嫁の進展や高付加価値化が寄与したと考えられます。販売費及び一般管理費は抑制されており、結果として営業利益率が大きく向上しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 610億円 628億円
売上総利益 147億円 156億円
売上総利益率 24.1% 24.9%
営業利益 5億円 18億円
営業利益率 0.8% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が53億円(構成比38%)、運賃及び荷造費が24億円(同17%)を占めています。売上原価においては、原材料費や外注加工費などが主な構成要素となります。

(3) セグメント収益


コンシューマーコミュニケーション事業が増収増益となり、全体の業績を牽引しました。ビジネスプロセスソリューション事業は売上高が横ばいながらも大幅な増益を達成しており、利益率の改善が進んでいます。エネルギー事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ビジネスプロセスソリューション事業 312億円 311億円 6億円 9億円 2.8%
コンシューマーコミュニケーション事業 283億円 302億円 2億円 12億円 3.9%
エネルギー事業 15億円 14億円 0.3億円 -0.2億円 -1.2%
その他 0.7億円 1億円 -0.4億円 -0.2億円 -15.7%
調整額 - - -3億円 -2億円 -
連結(合計) 610億円 628億円 5億円 18億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、財務基盤の確立と企業価値向上に資する投資、株主還元をバランス良く行う方針です。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の増加が主な要因となり、大幅な収入増となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入・払戻しや有形固定資産の取得が主な支出要因となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入があったものの、長期借入金の返済が主な支出要因となり、支出超過となりました。

これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 13億円 28億円
投資CF -11億円 -4億円
財務CF -14億円 -20億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はパーパスとして「It’s for SMILE ~価値ある商品とサービスで社会を明るく笑顔に~」を掲げています。また、ミッション・ビジョンとして「生命関連産業のリーディングカンパニー」を目指し、健康・医療、環境、生活・福祉、農業、文化の5つの分野で事業を強化・創出することを方針としています。

(2) 企業文化


創業以来のバリューとして「思いを守る、明日へつなぐ」を掲げています。祖業である特殊製本技術を礎に、文字や写真文化、人々の思いを未来へつなぐビジネスを推進する姿勢を重視しています。また、相互扶助や循環、持続可能性といったコンセプトを大切にし、社会課題の解決に貢献する企業風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


新・中期経営計画「Go on 5ing」(2025年3月期~2027年3月期)において、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値の向上」を基本方針としています。最終年度である2027年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:660億円
* 営業利益:33億円(営業利益率5%)

(4) 成長戦略と重点施策


生命関連産業の5分野における事業強化と新規参入を進めます。具体的には、DX推進によるBPOの生産性向上や新領域創出、環境配慮型製品(脱プラ・廃プラ対応)の拡大、図書館運営ノウハウを活かした地域再生への貢献などに取り組みます。また、コンシューマー分野では海外販路の開拓やコト消費・トキ消費に対応した新商品開発を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が活躍できる環境整備として、戦略的な中途採用や女性活躍推進、LGBTQへの対応などを進めています。また、キャリア形成支援として、人事制度改革による実力主義の導入や、若手の早期抜擢、カンパニー間異動などを行い、自律的かつ挑戦的な人材の育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 16.4年 5,136,405円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.1%
男女賃金差異(正規雇用) 70.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用管理職比率(37.4%)、20代異動経験率(22.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ペーパーレス化進行によるリスク


デジタル化やペーパーレス化の進展により、図書製本や法人向け手帳などの市場が縮小傾向にあります。これに対応するため、図書館業務の受託や、プラスチック代替としての紙製品需要の取り込みなどに取り組んでいますが、市場縮小が業績に影響を与える可能性があります。

(2) 少子化に関するリスク


国内の少子化進行により、ノートなどのステーショナリー関連製品やチャイルドシートなどの需要減少が懸念されます。これが同社グループの連結業績にさらなる影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


BPO事業やネット通販事業において顧客の個人情報を取り扱っています。サイバー攻撃等による情報漏洩事故が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。