※本記事は、ナカバヤシ株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナカバヤシってどんな会社?
ナカバヤシは、図書製本を祖業とし、各種アルバムや手帳、BPOサービスなどを幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1923年に図書修理などを手掛ける中林製本所として開業し、1951年に会社設立しました。1968年には「フエルアルバム」の製造を開始し、紙製品分野へ進出しています。1977年に株式上場を果たしました。近年はグループ会社の商号変更を行い、生産拠点の一元管理による原価低減と収益力強化を推し進めています。
現在の従業員数は、連結で2004名、単体で692名です。筆頭株主はフエル共益会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には保険関連サービスなどで取引関係を持つ生命保険会社が名を連ねており、安定的な事業運営を支える株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| フエル共益会 | 8.80% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.01% |
| 第一生命保険 | 7.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長執行役員営業統括本部長の中林一良氏が代表を務めており、全取締役11名のうち4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中林 一良 | 代表取締役社長執行役員営業統括本部長 | 1997年同社入社。製販カンパニー長、企画部長などを歴任。常務、専務等を経て2025年6月より現職。寺西化学工業の代表取締役なども務めた。 |
| 湯本 秀昭 | 取締役会長 | 1984年同社入社。製販営業部長などを経て2012年取締役に就任。常務などを歴任し、2018年に代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。 |
| 前田 洋二 | 取締役常務執行役員関係会社統括本部長 | 1980年同社入社。商品管理部長等を経て2014年取締役に就任。常務取締役などを歴任し、2025年6月より関係会社統括本部長を務める。 |
| 淡路 克浩 | 取締役常務執行役員営業統括本部副本部長 | 1986年同社入社。フエル販売代表取締役社長などを経て2019年取締役に就任。上席執行役員などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 青山 伸一 | 取締役上席執行役員営業統括本部副本部長 | 1986年同社入社。堺工場工場長などを経て、2022年取締役に就任。BPSカンパニー長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 長井 俊介 | 取締役上席執行役員管理統括本部長 | 1989年同社入社。情報システム室長などを経て、2019年執行役員に就任。上席執行役員等を経て、2024年6月より現職。 |
| 栗林 文生 | 取締役(常勤監査等委員) | 1996年同社入社。内部監査室マネージャー、内部監査室長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、小泉公彦(元埼玉りそな銀行執行役員)、中山理香(Dcent代表取締役)、八文字正裕(八文字コンサルティング代表取締役)、大澤武史(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビジネスプロセスソリューション事業」「コンシューマーコミュニケーション事業」「エネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ビジネスプロセスソリューション事業
図書製本、法人向け手帳、データプリントサービス、BPOサービス、図書館業務の総合受託などを提供しています。官公庁や金融機関、一般法人など幅広い分野の顧客を対象としています。
主に企業や自治体からのサービス受託料や製品の販売代金を収益源としています。同社をはじめ、人材派遣や図書館業務を受託するウーマンスタッフ、アウトソーシング事業を行う日本通信紙などのグループ企業が連携して運営しています。
■(2) コンシューマーコミュニケーション事業
アルバムやファイル、ノートなどの日用紙製品から、シュレッダ等の事務機器、オフィス家具、さらには防犯・防災用品まで、生活やビジネスを支える多岐にわたる製品を製造・販売しています。
消費者や企業への製品販売代金が主な収益源です。見込み生産を基本とし、同社のほか、ナカバヤシファクトリーでの製造や、フエル販売、カグクロなどの子会社を通じた販売ネットワークを活用して運営を行っています。
■(3) エネルギー事業
持続可能な社会の実現に向け、再生可能エネルギーを活用した木質バイオマス発電および太陽光発電の事業を展開しています。サーキュラーエコノミーの推進にも貢献する取り組みです。
発電した電力を供給することによる売電収入を主な収益源としています。木質バイオマス発電については松江バイオマス発電が運営を担い、太陽光発電については同社が主体となって運営しています。
■(4) その他事業
農業の6次産業化を目指し、野菜プラント事業やにんにくファーム事業などのスマート農業を展開しています。製本と農業の二刀流による安定した雇用の創出を図っています。
農産物の販売代金などを主な収益源としています。ICT技術を活用した営農などを通じて、同社が主体となって運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は610億円から630億円台で安定して推移しています。経常利益率は一時低下したものの、近年は価格改定や生産性向上、事業構造改革が奏功し、最新期では5.2%の水準まで改善しています。収益力強化への取り組みが利益の伸びに大きく貢献しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 631.2億円 | 615.8億円 | 610.4億円 | 627.7億円 | 616.0億円 |
| 経常利益 | 23.4億円 | 9.4億円 | 10.0億円 | 22.1億円 | 32.2億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 1.5% | 1.6% | 3.5% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.0億円 | -15.1億円 | 22.1億円 | 11.3億円 | 18.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年比で微減となったものの、売上総利益は増加しており、売上総利益率も改善しています。原価低減や価格見直しの効果が現れており、営業利益は前年から大幅な増益を達成しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 627.7億円 | 616.0億円 |
| 売上総利益 | 156.4億円 | 162.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.9% | 26.4% |
| 営業利益 | 17.9億円 | 28.8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.8% | 4.7% |
販売費及び一般管理費(133.8億円)のうち、給料手当及び賞与が50.0億円(構成比37%)、運賃及び荷造費が22.7億円(同17%)を占めています。一方、売上原価は453.5億円となっています。
■(3) セグメント収益
ビジネスプロセスソリューション事業は受注競争の影響等で減収となりましたが、採算性重視の選別により増益を確保しました。コンシューマーコミュニケーション事業は価格見直しやオフィス家具の好調が牽引し、増収増益を達成してグループ全体の利益拡大に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ビジネスプロセスソリューション事業 | 311.3億円 | 296.2億円 | 8.7億円 | 11.4億円 | 3.8% |
| コンシューマーコミュニケーション事業 | 301.6億円 | 305.9億円 | 11.8億円 | 18.1億円 | 5.9% |
| エネルギー事業 | 13.8億円 | 12.8億円 | -0.2億円 | 0.1億円 | 0.6% |
| その他 | 1.0億円 | 1.0億円 | -0.2億円 | 0.1億円 | 11.5% |
| 調整額 | - | - | -2.3億円 | -0.9億円 | - |
| 連結(合計) | 627.7億円 | 616.0億円 | 17.9億円 | 28.8億円 | 4.7% |
営業活動による資金の流入と、資産売却等による投資活動からの資金回収を合わせて、借入金の返済を進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27.9億円 | 32.4億円 |
| 投資CF | -4.0億円 | 2.6億円 |
| 財務CF | -19.7億円 | -38.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.9%であり、いずれも市場平均をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はパーパスとして「It's for SMILE ~価値ある商品とサービスで社会を明るく笑顔に~」を掲げています。また、「生命関連産業のリーディングカンパニー」となることをミッション・ビジョンに据え、健康・医療、環境、生活・福祉、農業、文化の5つの分野において既存事業の強化や新規事業の創出を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「思いを守る、明日へつなぐ」というバリュー(価値観)を大切にしています。祖業である特殊製本を礎として、文字や写真の文化、そして人々の思いを未来へとつなぐビジネスを推進していくという行動様式や文化が事業運営の根底にあります。
■(3) 経営計画・目標
2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「Go on 5ing」において、「収益力の強化」「成長力の推進」「株主価値の向上」を基本方針として掲げ、以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:660億円
* 営業利益:33億円
* 営業利益率:5.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の収益性改善と積極的なM&Aやアライアンスを通じて売上規模の拡大を図ります。また、労働集約型ビジネスの深化とバックオフィス業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に遂行し、競争力の高い付加価値を創出する方針です。加えて、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、環境配慮型社会への貢献も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、環境の変化に対応し、自らの強みや専門性を磨き続ける人材や、オーナー意識を持って新しい価値提供に挑戦できる人材を求めています。DX推進や新規事業創出を担う人材の育成を重要課題とし、専門性向上のためのリスキリング支援や柔軟な勤務制度の整備、エンゲージメント向上のための対話機会の拡充に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.7歳 | 14.8年 | 5,537,405円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 80.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用管理職比率(37.6%)、20代異動経験率(21.2%)、平均時間外労働時間(月間平均7時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) デジタル化・ペーパーレス化による市場縮小
デジタル化やペーパーレス化の進行により、図書製本や法人向け手帳などの市場が縮小しており、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は公共図書館の指定管理業務の受託や、プラスチック代替となる環境配慮型の紙製品開発に注力して対策を講じています。
■(2) 少子化の進行による需要減少
国内における少子化の継続は、ノートなどのステーショナリー関連製品やチャイルドシートなどの需要減少につながり、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。多様化する消費者ニーズを捉えた新商品開発などでリスク軽減を図っています。
■(3) 情報セキュリティ事故の発生
BPOサービスやネット通販事業において多くの顧客情報を取り扱っているため、サイバー攻撃等による情報漏洩が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償負担により業績に影響を及ぼす可能性があります。プライバシーマークの取得など、厳重な情報管理体制を敷いています。



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