ハビックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハビックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハビックスは東証スタンダード市場に上場し、パルプ不織布や衛生用紙などの中間素材の製造・販売を主力とする素材メーカーです。ユニ・チャームプロダクツ等の大手衛生用品メーカーや外食産業を主要顧客としています。直近の業績は、原材料価格の高騰や安価な代替素材への切り替え等の影響を受け、減収減益で推移しています。


※本記事は、ハビックス株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハビックスってどんな会社?


ハビックスは、不織布および紙の製造・加工・販売を展開する衛生材料・生活必需品の素材メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1950年に味噌・たまり醸造業として設立され、1952年に製紙会社へ改称しトイレ紙等の製造を開始しました。1986年に化合繊不織布、1994年にパルプ不織布の製造を開始し、衛生用紙やクッキングペーパー等へと事業領域を拡大してきました。2005年にジャスダック上場を果たし、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

従業員数は単体で205名です。筆頭株主は創業関係者とみられる酒井正吾氏で、第2位は代表取締役社長の福村大介氏、第3位は金融機関である十六銀行となっています。

氏名 持株比率
酒 井 正 吾 8.19%
福 村 大 介 5.65%
十六銀行 4.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長の吉村和彦氏、代表取締役社長の福村大介氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
吉 村 和 彦 代表取締役会長 1973年トヨタ自動車入社。中国トヨタ技術センター天津副社長、シンテックホズミ代表取締役社長等を経て2018年同社入社。代表取締役社長を経て2024年より現職。
福 村 大 介 代表取締役社長 2004年同社入社。ジェイソフト代表取締役社長、経営企画室室長、常務取締役、専務取締役、取締役副社長等を歴任し、2024年より現職。
伊 神 清 隆 常務取締役 1982年十六銀行入行。同社執行役員監査部長等を経て2017年同社入社。総務部部長、取締役を経て2020年より現職。
広 瀬 隆 一 取締役 監査等委員 1980年十六銀行入行。同社正木支店長等を経て2014年同社入社。総務部部長、監査役を経て2019年より現職。


社外取締役は、一川明弘(税理士法人NEXT代表社員税理士所長)、葛西良亮(葛西法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不織布関連事業」および「紙関連事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) 不織布関連事業


パルプ不織布(クッキングペーパーやドリップ吸収シート等の中間素材)および化合繊不織布(紙おむつやペットシーツの表面材など)の生産と販売を行っています。近年は医療・介護向けの自社衛生用品ブランド「Kireine(キレイネ)」の拡販にも注力しています。

収益は、日用品メーカーや外食産業等の顧客に対する不織布製品の販売代金から得ています。事業の運営はハビックスが主体となって行っています。

(2) 紙関連事業


フレッシュパルプを主原材料とした衛生用紙(紙おむつ・ペットシーツの吸収体の包合紙、おしぼり、テーブルナプキン等)の製造および中間素材としての販売を行っています。使用済み紙パンツから再生されたパルプを配合した環境対応素材の開発も進めています。

収益は、大手衛生用品メーカー等に対する衛生用紙の製品販売によって得ています。主要顧客であるユニ・チャームプロダクツ等へ製品を供給しており、本事業の運営もハビックスが単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は130億円規模まで成長したのち、足元では121億円に減少しています。経常利益は2024年3月期に大幅な黒字転換を果たしましたが、近年は原材料価格の高騰等の影響により利益率が低下傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 109億円 121億円 132億円 134億円 121億円
経常利益 0.1億円 -0.3億円 9億円 8億円 5億円
利益率(%) 0.1% -0.2% 6.7% 5.9% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -25億円 0.5億円 7億円 7億円 5億円

(2) 損益計算書


売上総利益率は約19%台を維持しているものの、売上高の減少に伴い営業利益も減少しており、本業の収益力に課題が見られます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 134億円 121億円
売上総利益 26億円 23億円
売上総利益率(%) 19.3% 19.2%
営業利益 7億円 4億円
営業利益率(%) 5.4% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が7億円(構成比36%)、給料及び手当が4億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


不織布関連事業は、医療・介護向け自社ブランドの拡販を進めたものの、価格改定や代替素材への切り替え影響により伸び悩みました。紙関連事業も同様に、衛生材料市場での単価向上に取り組んだものの、安価な代替素材への移行等の影響を受けて厳しい環境が続いています。

区分 売上(2026年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
不織布関連事業 68億円 11億円 15.7%
紙関連事業 53億円 5億円 9.6%
連結(合計) 121億円 4億円 3.5%


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で生み出した資金と借入を組み合わせて積極的な設備投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.5億円 25億円
投資CF -5億円 -22億円
財務CF -7億円 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念「創和」のもと、新たな製品の創出による社会への貢献と、人間尊重の精神にもとづく社会との調和によって幸福な世界を実現することを理念としています。また、常に目指す姿として「衛生・安心・快適」を提供する「ビューティフルライフ創造企業」を掲げ、ステークホルダーとの和を調和させることで企業価値の向上に努めています。

(2) 企業文化


コーポレートメッセージとして「“キレイ”をつくろう」を制定しています。また、社員全員が使命感とプライドを共有し、自律的に行動することでお互いを高め合うプロ集団を目指す文化を重視しています。インナーブランディングを通じた社風の改革や組織の活性化、工場見学会を通じた社員家族との関係構築にも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2023年度から2030年度の8年間を対象とする「長期経営ビジョン2030」ならびに「第1次中期経営計画」を策定しています。外部環境の影響を受けにくいビジネスモデルへの転換や収益性の改善により、営業利益の一層の拡大を目指しています。環境面では、以下の数値目標を掲げています。

・2030年:温室効果ガスを46.0%削減(対2013年度比)
・2050年:温室効果ガスを80.0%削減(カーボンニュートラル実現)

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長のため、従来の素材メーカーから「衛生用品メーカー」への進化を目指し、より高付加価値の事業分野を築くための重点施策を推進しています。

・医療・介護向け自社ブランド「Kireine(キレイネ)」の拡大
・ユニ・チャームプロダクツとの共同事業によるペットケア商品のOEM事業立ち上げ
・他社との多角的かつ戦略的なアライアンス関係の構築
・自動化、省人化による生産機械設備の積極的な導入

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織・人材の活性化」を重点施策に掲げ、優れた人材の採用と定着、人材の育成、従業員満足度(ES)の向上に取り組んでいます。良品廉価なものづくりに加え、共同開発や共同事業等を通じて顧客に欠かせないパートナーとなるべく、総合的カスタマーサービスを意識した組織再編や人材育成を強化し、ダイバーシティ&インクルージョンも推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.4歳 11.2年 5,935,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性労働者の育児休業取得率 60.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には女性管理職比率および男女の賃金の差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料・燃料価格および為替の変動


製品の主原材料であるパルプや、燃料である重油・ガスの価格は、国際的な需給バランス等の影響を受けます。また、海外依存度が高いため為替相場の変動リスクにも晒されています。これらの価格が高騰した場合や為替に大きな変動があった場合、製造コストが上昇し、同社の業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 安価な海外製品等との競争激化


同社は国内外において厳しい競合環境に置かれています。物価高や人手不足を背景に、顧客企業が消耗品を安価な中国製製品等へ切り替える動きが加速しています。競合他社の廉価販売や代替素材の台頭により、同社製品の優位性が維持できず価格改定や拡販が困難になった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の主要販売先への依存


同社の売上高の約23%は、主要販売先であるユニ・チャームプロダクツへの販売が占めています。同社とはペットケア商品のOEM生産等の新たな連携も進めていますが、販売先の方針変更等により取引が縮小または中止された場合、同社の業績に重要な影響を与える可能性があります。販売先の開拓や新規分野への参入によりリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。