特種東海製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

特種東海製紙 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の製紙メーカー。産業素材、特殊素材、生活商品、環境関連の4事業を展開。2025年3月期は、主力製品やリサイクル事業が堅調に推移し、売上高は948億円と増収。営業利益・経常利益ともに前期を上回る増益を達成しましたが、減損損失計上等により純利益は減益となりました。(147文字)


#記事タイトル:特種東海製紙転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、特種東海製紙株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 特種東海製紙ってどんな会社?


紙パルプの製造・販売を主軸に、特殊紙や産業用紙、生活用品、さらには環境リサイクル事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


2007年4月、特種製紙と東海パルプの共同持株会社として特種東海ホールディングスが設立され、上場しました。2010年4月に持株会社が両社を吸収合併し、現在の商号へ変更しました。2016年には島田工場を新東海製紙へ承継しました。近年は環境関連事業を強化しており、2020年にウイスキー製造を開始、2024年には貴藤ホールディングスを子会社化しています。

連結従業員数は1,863名、単体では424名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は中央建物、第3位は紙・板紙の専門商社である新生紙パルプ商事です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口)・(注1) 9.42%
中央建物 3.87%
新生紙パルプ商事 2.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長社長執行役員成長施策推進センター長は松田裕司氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
松田 裕司 代表取締役社長社長執行役員成長施策推進センター長 1985年特種製紙入社。営業開発本部長、特殊素材事業グループ長などを経て、2016年4月より現職。2023年4月より成長施策推進センター長を兼務。
渡邊 克宏 取締役副社長副社長執行役員コーポレートセンター長 1983年キヤノン入社、1999年東海パルプ入社。総合開発センター長、生活商品カンパニーCEOなどを歴任し、2024年7月より現職。
佐野 倫明 取締役常務執行役員基盤事業推進センター長兼生活商品事業本部長 1989年大昭和製紙入社。産業素材カンパニーCEO、コーポレートセンター長などを経て、2024年7月より現職。
大沼 裕之 取締役上席執行役員特殊素材事業本部長 1987年特種製紙入社。特殊素材事業グループ営業本部長、特殊素材カンパニーCEOなどを歴任し、2024年7月より現職。
福井 里司 取締役上席執行役員環境関連事業本部長 1990年特種製紙入社。経理財務部長、資源再活用本部長、レックス社長などを経て、2024年7月より現職。


社外取締役は、磯貝明(東京大学特別教授)、石川雄三(元KDDI副社長)、宮下律江(元JALインフォテック執行役員)、長坂隆(公認会計士)、檜垣直人(弁護士)、大和加代子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」「環境関連事業」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 産業素材事業


段ボール原紙やクラフト紙などの産業用包装資材向け製品の製造・販売、および電力の販売を行っています。主な顧客は、段ボールメーカーや包装材加工業者などです。

紙製品の販売収益および売電収入が主な収益源です。運営は、同社が紙販売と売電を行うほか、新東海製紙が製造・販売を、特種東海マテリアルズが原料供給を担っています。なお、紙製品の販売の大半は持分法適用会社の日本東海インダストリアルペーパーサプライを通じて行われています。

(2) 特殊素材事業


ファンシーペーパー等の特殊印刷用紙や、特定の機能を持たせた特殊機能紙など、多品種・小ロット・高付加価値製品の製造・販売を行っています。出版、商業印刷、パッケージなどの用途で利用されています。

製品の販売収益が主な収益源です。運営は主に同社(特種東海製紙本体)が行っており、TTトレーディングが販売を、静岡ロジスティクスが保管・輸送を、モルディアがモウルド製品の製造・販売を担当しています。

(3) 生活商品事業


業務用ペーパータオル、食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙、およびラミネート紙やコート紙などの加工品の製造・販売を行っています。

製品の販売収益が主な収益源です。運営は、トライフおよび関連会社が製造・加工・販売を行い、特種東海エコロジーが製造・販売を行っています。

(4) 環境関連事業


サーマルリサイクル燃料(RPF)の製造・販売、産業廃棄物の収集運搬・処分・リサイクル、土木・造園工事、社有林管理およびウイスキー製造などを行っています。

廃棄物処理委託料、リサイクル燃料の販売収益、工事代金、ウイスキー販売収益等が収益源です。運営は、レックス、特種東海フォレスト、駿河サービス工業、トーエイ、貴藤、十山などが各分野を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は764億円から948億円へと着実に増加傾向にあります。利益面では、2023年3月期に一度落ち込みましたが、その後回復し、経常利益は60億円台で推移しています。当期純利益は変動が見られ、直近では減益となりましたが、売上規模の拡大が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 764億円 807億円 841億円 865億円 948億円
経常利益 60億円 57億円 41億円 62億円 62億円
利益率(%) 7.8% 7.1% 4.8% 7.2% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 56億円 53億円 41億円 46億円 36億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高は約83億円増加し、売上総利益も約23億円増加しました。これに伴い、売上総利益率および営業利益率ともに改善が見られます。増収効果により本業の収益性が高まっていることが数字に表れています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 865億円 948億円
売上総利益 104億円 127億円
売上総利益率(%) 12.0% 13.4%
営業利益 23億円 39億円
営業利益率(%) 2.7% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が17億円(構成比20%)、製品運送諸掛が9億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収を達成しました。特に環境関連事業はM&A効果等により大幅な増収増益となりました。特殊素材事業も増収および大幅な増益を記録しました。一方、産業素材事業と生活商品事業は増収ながらも減益となり、事業ごとの利益状況にはばらつきが見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
産業素材事業 399億円 421億円 13億円 11億円 2.6%
特殊素材事業 196億円 208億円 5億円 16億円 7.9%
生活商品事業 180億円 185億円 6億円 5億円 2.9%
環境関連事業 90億円 135億円 1億円 5億円 3.9%
調整額 - - -2億円 1億円 -
連結(合計) 865億円 948億円 23億円 39億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

特種東海製紙は、自然環境活用分野や資源再活用分野の堅調な推移により、売上高・営業利益ともに大幅な増収増益を達成しました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の増減が主な要因となり、前連結会計年度に比べて減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社株式の取得による支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入と返済、配当金の支払いにより、前連結会計年度に比べて使用額が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 114億円 88億円
投資CF -61億円 -94億円
財務CF -26億円 -15億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」を経営理念として掲げています。また、「技術と信頼で顧客と共に未来をひらく オンリーワンビジネス企業」を目指すべき企業像とし、ステークホルダーからの信頼獲得と持続可能な社会への貢献を通じて企業価値の向上を追求しています。

(2) 企業文化


「人を最も重要な財産」と位置づけ、従業員一人ひとりと信頼で結ばれる環境整備を重視しています。安全を最優先とし、「明るく生き生き働ける会社」「安全で安心して働ける会社」を目指す方針を掲げています。また、コンプライアンスやリスク管理を経営の重要課題と捉え、法令遵守を念頭に置いた経営管理に努める風土があります。

(3) 経営計画・目標


2034年度の長期目標と、2025年度を最終年度とする第6次中期経営計画を推進しています。長期目標では「経常利益130億円、ROE 9.0%以上」を掲げています。第6次中計では、以下の数値を目標としています。

* 営業利益:50億円
* 経常利益:80億円
* ROE:7.0%

(4) 成長戦略と重点施策


製紙事業と環境関連事業の両輪での成長を目指しています。環境関連事業では、サーマルリサイクルやマテリアルリサイクルの拡大、M&Aによる事業領域の拡張を進めています。製紙事業では、既存の紙需要にとらわれない新需要の開拓や、成長領域への製品投入によるポートフォリオの入替を推進しています。また、人的資本の価値向上やガバナンス強化、社有林の有効活用など経営基盤の強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を最も重要な財産」と位置づけ、能動的で専門性が高く、海外にも通用する多様な人財の育成を目指しています。キャリア採用の拡大や専門性を認定するエキスパート職の設置、継続的な賃上げによる優秀な人材の確保を進めています。また、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進し、多様な価値観を持つ人材が活躍できる環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 19.1年 6,745,332円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 77.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 50.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職及び管理職候補者層における女性比率(9.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先の信用リスク


取引先の経営状況が市場の変動や業界再編成等により悪化した場合には、同社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。各事業本部が連携し管理体制の強化を図っていますが、予期せぬ財務上の問題が発生するリスクは完全に排除できません。

(2) 災害や感染症及び事故による影響


同社グループの工場及び施設の多くは静岡県に立地しており、大規模な地震等の災害発生時には操業中断のリスクがあります。また、重大な感染症の流行により従業員の出勤停止や工場の操業停止が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 需要及び市況の変動


デジタル化の進展による紙需要の減少や、物流活動の停滞による包装材需要の減少など、事業セグメントごとに需要変動リスクがあります。特に特殊素材事業においては、出版部数の減少等が情報伝達媒体としての紙需要に影響を与えています。

(4) 原燃料価格の変動


製紙事業では多量の原燃料を使用するため、古紙やパルプ等の価格変動や、輸入に伴う為替変動(円安)が業績に影響を与える可能性があります。特に段古紙や上質古紙の価格は海外情勢や需給バランスの影響を受けやすく、調達コストの上昇要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。