※本記事は、特種東海製紙株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 特種東海製紙ってどんな会社?
特種東海製紙は、各種紙製品の製造・販売を主力とし、リサイクルなどの環境関連事業にも注力する企業です。
■(1) 会社概要
2007年4月、特種製紙と東海パルプが共同持株会社として特種東海ホールディングスを設立し上場しました。2010年4月に両社を吸収合併し、同年7月に現在の特種東海製紙に商号変更しました。2016年に新東海製紙を設立し、2020年以降は駿河サービス工業やトーエイホールディングス等を子会社化しています。
従業員数は連結1,873名、単体429名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は中央建物、第3位は紙パルプ専門商社の新生紙パルプ商事となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.55% |
| 中央建物 | 3.84% |
| 新生紙パルプ商事 | 2.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は木村隆志氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松田裕司 | 代表取締役会長 | 1985年特種製紙入社。特種紙商事社長、同社執行役員営業開発本部長等を経て、2016年代表取締役社長に就任。2025年より現職。 |
| 木村隆志 | 代表取締役社長社長執行役員 | 2002年特種製紙入社。同社経営企画本部長、執行役員資源再活用本部長等を経て、2025年より現職。 |
| 佐野倫明 | 取締役副社長副社長執行役員事業推進センター長 | 1989年大昭和製紙入社、2004年特種製紙入社。新東海製紙社長や同社産業素材カンパニーCEO等を経て、2026年より現職。 |
| 福井里司 | 取締役上席執行役員環境関連事業本部長自然環境活用本部長 | 1990年特種製紙入社。レックス社長、貴藤ホールディングス社長等を経て、2026年より現職。 |
| 渡邊克宏 | 取締役 | 1983年キヤノン入社。トライフ社長や同社生活商品事業本部長、取締役副社長等を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、石川雄三(元JCOM社長)、宮下律江(元JALインフォテック執行役員)、長坂隆(長坂隆公認会計士事務所代表)、檜垣直人(檜垣総合法律事務所代表)、大和加代子(大和・松本法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「産業素材事業」「特殊素材事業」「生活商品事業」「環境関連事業」を展開しています。
■産業素材事業
段ボールなど包装材に用いられる段ボール原紙やクラフト紙の製造を行っています。また、赤松水力発電所において電力の販売も行っています。国内の物価高による買い控え等の影響はあるものの、堅調な通販需要等により底堅い市場です。
持分法適用会社である日本東海インダストリアルペーパーサプライ向けの売上が大半を占めており、売上や持分法利益として収益を得ています。製造は主に新東海製紙が行い、紙原料の供給を特種東海マテリアルズが、輸送や保管を新東海ロジスティクスが担っています。
■特殊素材事業
出版向けやハイエンドパッケージ向けの特殊印刷用紙、製品ごとに異なるユーザーや用途が存在する特殊機能紙など、小ロット多品種・高付加価値を特徴とする製品の製造・販売を行っています。脱プラスチックの流れによりパッケージ用途の需要が底堅く推移しています。
製品の販売による収益を主な収入源としています。特種東海製紙が製造と販売を主体的に行い、モルディアがモウルドの製造・販売を、静岡ロジスティクスが製品の保管や輸送を担当しています。
■生活商品事業
業務用ペーパータオルや食材紙、トイレットペーパーといった衛生用紙、ラミネート紙やコート紙などの紙加工品の製造・販売を行っています。衛生用紙は生活必需品であることから堅調な需要が見込まれています。
製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営は主にトライフおよび特種東海エコロジーが行っており、紙の製造や加工、販売を分担して展開しています。
■環境関連事業
南アルプス社有林の有効活用を目的とした自然環境活用事業としてウイスキー製造を行うほか、廃プラスチックを主原料とする固形燃料(RPF)の製造販売、廃家電の再資源化、廃プラスチックの再生原料化などのリサイクル事業を展開しています。
製品の販売や廃棄物処理等の役務提供による収益を主な収入源としています。レックスが燃料製造を、特種東海フォレストが土木・造園工事を、駿河サービス工業やトーエイ、貴藤が廃棄物の収集運搬やリサイクルを、十山が社有林管理とウイスキー製造を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は800億円台から950億円台へと緩やかな増加傾向にあります。経常利益は原材料高等の影響を受けつつも40億円から60億円のレンジで推移し、直近は57億円を確保しています。当期純利益も安定して黒字を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 807億円 | 841億円 | 865億円 | 948億円 | 954億円 |
| 経常利益 | 57億円 | 41億円 | 62億円 | 62億円 | 57億円 |
| 利益率(%) | 7.1% | 4.8% | 7.2% | 6.6% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 47億円 | 31億円 | 22億円 | 37億円 | 31億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は948億円から954億円へ微増となり、売上総利益は127億円から137億円へと約10億円増加しました。売上総利益率も改善し、結果として営業利益は39億円から43億円へと堅調な増益を達成しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 948億円 | 954億円 |
| 売上総利益 | 127億円 | 137億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.4% | 14.3% |
| 営業利益 | 39億円 | 43億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が20億円(構成比21%)、製品運送諸掛が8億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
産業素材事業は日本東海インダストリアルペーパーサプライ向けの売上が低調だったものの、電力販売が寄与して微減収となりました。特殊素材事業は国内需要減少等により減収です。一方、生活商品事業や環境関連事業は価格改定や新規連結効果により増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 産業素材事業 | 421億円 | 419億円 |
| 特殊素材事業 | 208億円 | 198億円 |
| 生活商品事業 | 185億円 | 188億円 |
| 環境関連事業 | 135億円 | 150億円 |
| 連結(合計) | 948億円 | 954億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローはともにマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の健全型を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 88億円 | 99億円 |
| 投資CF | -94億円 | -79億円 |
| 財務CF | -15億円 | -55億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「ユニークで存在感のある企業集団として、社会と環境に貢献する」を掲げています。また、「技術と信頼で顧客と共に未来をひらく オンリーワンビジネス企業」を目指すべき企業像と定めています。株主をはじめとする様々なステークホルダーからの信頼を得て、持続可能な社会実現に貢献することを経営方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、持続可能な社会実現へ貢献し企業価値を向上させていくため、「自然との共生」「社会・文化発展への貢献」「ステークホルダーとの信頼関係」の3軸で構成されるサステナビリティ基本方針を制定しています。また、従業員一人ひとりが前向きに行動し、心理的安全性と高いエンゲージメントのもと、自ら挑戦できる組織づくりを進めています。
■(3) 経営計画・目標
長期目標「ビジョン2035」を策定し、再資源化ビジネスを中心に成長投資を積極的に行っています。また、2026年4月から2029年3月までの第7次中期経営計画を推進しており、資本効率を意識した経営を実践するためROEやROIC管理の導入を進めています。
* 2034年度での経常利益130億円
* 2034年度でのROE9.0%以上
* 第7次中期経営計画(2029年3月期)での経常利益80億円
* 第7次中期経営計画(2029年3月期)でのROE7.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
株主資本コストを上回る収益水準に向けた基礎固めの期間として、既存事業の安定化と新規領域への参入を図っています。成長エンジンである環境関連事業では、廃棄物燃料やリサイクルなど既存ビジネスの基盤を強化しつつ、M&Aやアライアンスを含む新規事業へ参入します。製紙事業では製品構成のアップデートや生産効率化を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「能動性」「専門性」「国際性」「多様性」の4つの人材像を掲げ、人材育成および人材活用の基本方針としています。従業員一人ひとりと信頼で結ばれ、全従業員が高いモチベーションを維持しながら活躍できる環境整備と、会社の持続的な成長を支える組織風土の醸成を目指し、ダイバーシティ推進や健康経営などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 19.1年 | 7,155,768円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.2% |
| 男性育児休業取得率 | 35.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、化石エネルギー起源CO2排出量削減(37.5%)、管理職候補者層における女性比率(11.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先の信用リスク
取引先の経営状況が市場の変動や業界再編成などによって財務上の問題に直面した場合、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。各事業本部が連携し、与信管理規程に基づくモニタリング等を通じて一層の管理体制強化を図っています。
■(2) 災害や感染症及び事故による影響
工場や施設の多くが静岡県に集中しており、大規模な地震などの自然災害が発生した場合、操業が中断されるリスクがあります。また、突発的な設備事故や感染症による操業停止の可能性もあり、定期的な予防保全や訓練などで影響の最小化に努めていますが、完全に防止できる保証はありません。
■(3) 需要及び市況の変動
各事業セグメントごとに異なる市況リスクがあります。産業素材事業では物流停滞等による需要減少、特殊素材事業ではデジタル化による紙需要の縮小、生活商品事業では供給過多による価格競争、環境関連事業では廃棄物集荷における競争激化などが、業績にマイナスの影響を与える可能性があります。



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