光村印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

光村印刷 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。商業印刷や新聞印刷を主力とする印刷事業に加え、電子部品製造や不動産賃貸も展開しています。直近決算は、自治体向けや厚紙封筒の増加で増収も、産業資材事業の先行投資等により経常赤字に転落しました。一方、投資有価証券売却益等の特別利益計上で最終利益は増益を確保しました。


※本記事は、株式会社光村印刷 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 光村印刷ってどんな会社?


創業120年超の老舗印刷会社です。商業印刷や新聞印刷を核に、電子部品製造や不動産事業も展開しています。

(1) 会社概要


1901年に創業し、1936年に株式会社光村原色版印刷所として設立されました。1961年に東証市場第2部に上場し、1969年には新聞印刷を開始しています。2002年に東証市場第1部へ指定替え(2022年にスタンダード市場へ移行)となり、2025年1月には那須工場にて半導体加工テープなどの産業資材製造事業を開始しました。

同グループの従業員数は連結638名、単体414名です。筆頭株主は製紙大手の三菱製紙で、第2位はインキ大手のDIC、第3位は主要取引先でもある読売新聞グループ本社となっており、事業上の関係が深い企業が大株主の上位を占めています。

氏名 持株比率
三菱製紙 16.70%
DIC 14.91%
読売新聞グループ本社 7.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長社長執行役員は嶋山芳夫氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
阿部 茂雄 取締役会長 1972年4月富士銀行(現みずほ銀行)入行。2002年4月光村印刷入社。社長などを歴任し、2023年6月より現職。
嶋山 芳夫 代表取締役社長社長執行役員 1981年4月光村印刷入社。経理部長、取締役専務執行役員、取締役副社長執行役員などを経て、2021年6月より現職。
谷川 隆治 取締役専務執行役員 1981年4月細川活版所(現光村印刷)入社。川越工場長、取締役常務執行役員などを経て、2023年6月より現職。印刷・情報生産本部長。
御地合 英伸 取締役上席執行役員 1990年4月光村印刷入社。印刷・情報営業本部での要職を経て、2024年2月より現職。印刷・情報営業本部長兼営業戦略部長。
北川 日出男 取締役上席執行役員 1985年4月光村印刷入社。印刷・情報営業本部長などを経て、2023年6月より現職。新聞印刷事業部長。


社外取締役は、柴崎憲二(元ヤマト運輸代表取締役)、榎本雅彦(元富士フイルムグラフィックソリューションズ常務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷」「産業資材・電子部品製造」「不動産賃貸等」事業を展開しています。

(1) 印刷事業


出版印刷物、宣伝用・業務用印刷物、パッケージ、新聞、映像制作物などを製造・販売しています。主要顧客には読売新聞東京本社やヤマト運輸などが含まれます。

収益は顧客からの印刷物等の受注・販売代金です。運営は主に光村印刷が行うほか、株式会社光村プロセス、株式会社メディア光村、新村印刷株式会社、光村高速オフセット株式会社が製造・販売を担い、光村商事倉庫株式会社が保管・梱包輸送を行っています。

(2) 産業資材・電子部品製造事業


スクリーン印刷製品やエッチング精密製品などの製造・販売を行っています。新規事業として半導体加工テープなどの産業資材製造にも注力しています。

収益は製品の販売代金です。運営は光村印刷が製造・販売を行っています。

(3) 不動産賃貸等事業


東京都において保有するオフィスビルや倉庫跡の土地などの賃貸を行っています。また、那須工場の敷地の一部を利用した太陽光発電事業も行っています。

収益は不動産賃貸料および売電収入です。運営は光村印刷が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は140億円台後半から150億円台で推移していますが、利益面では変動が見られます。直近の2025年3月期は、経常損益が赤字に転落しました。一方で、当期純利益については特別利益の計上などにより黒字を維持しており、年度によって最終損益がプラスマイナスを行き来する傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 159億円 154億円 148億円 147億円 148億円
経常利益 -2.3億円 4.2億円 -0.3億円 0.6億円 -0.5億円
利益率(%) -1.4% 2.7% -0.2% 0.4% -0.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 11.7億円 -7.3億円 6.8億円 0.6億円 0.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は横ばい圏で推移していますが、営業損益は赤字幅が拡大しました。売上原価率は依然として高い水準にあり、販売費及び一般管理費の負担も重く、本業の収益性改善が課題となっています。営業外収益はあるものの、営業損失をカバーするには至っていません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 147億円 148億円
売上総利益 27億円 26億円
売上総利益率(%) 18.1% 17.6%
営業利益 -0.6億円 -1.6億円
営業利益率(%) -0.4% -1.1%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が10億円(構成比37%)、荷造運搬費が6億円(同24%)を占めています。売上原価においては、具体的な内訳金額は記載されていませんが、原材料費や労務費等が主な構成要素と考えられます。

(3) セグメント収益


印刷事業は微増収でしたが、営業損失が継続しています。産業資材・電子部品製造事業は減収となり、営業損失を計上しました。不動産賃貸等事業は減収減益となりましたが、安定した利益を生み出しており、他セグメントの損失を補完する役割を果たしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
印刷 140億円 141億円
産業資材・電子部品製造 3.2億円 3.0億円
不動産賃貸等 3.9億円 3.8億円
連結(合計) 147億円 148億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、短期運転資金の主な源泉として活用されています。設備投資や長期運転資金は、銀行からの借入やリース取引で調達しています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資等が行われていると考えられます。財務活動では、借入金の返済や調達を通じて資金を管理しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.7億円 9.0億円
投資CF -5.4億円 -0.7億円
財務CF -6.0億円 -3.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ともにつくり、ともに伝える。」を企業理念として掲げています。印刷・情報技術を軸として、期待を超えるサービスやソリューションの提供を通じて、社会の発展と文化の向上に寄与する企業であり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「変革、挑戦、顧客第一」を行動規範としています。この方針のもと、事業の再構築と収益力の向上に取り組み、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る姿勢を重視しています。また、組織の活性化のためにグループ会社との連携や人材交流、教育を推進しています。

(3) 経営計画・目標


「事業の再構築」と「収益力の向上」を掲げ、基幹事業である印刷事業の立て直しと新規事業の産業資材製造事業の軌道化に取り組んでいます。具体的な数値目標としてのKPI等は記載されていませんが、各セグメントにおける収益改善と持続的な成長を中長期的な目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


印刷事業では、新製品・新サービスの拡充や生産拠点の集約による効率化、新聞新工場の建設準備を進めています。産業資材事業では、業務提携先の強みを活かした受注拡大や、半導体加工テープなどの新市場開拓により事業基盤を強化します。不動産事業では、保有資産の有効活用や太陽光発電の安定運営に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループの持続的な成長には組織の活性化が不可欠であると考え、グループ会社との連携を含めた人材交流や教育を推進しています。また、社員が多くの仕事に携わって能力を発揮できるよう定期的なジョブローテーションを行い、組織を柔軟に横断できるフラットな組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.3歳 25.7年 4,973,655円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規雇用) 75.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 94.8%


※男性労働者の育児休業取得率については、当事業年度における該当者がいないため、「-」となっています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動


原材料の調達について、複数のメーカーや代理店からの購買や調達先の拡大により安定確保と価格維持に努めています。しかし、原油価格の高騰や円安の進行などにより購入価格が著しく上昇した場合、全てを顧客価格に転嫁することは困難であり、業績等に影響を与える可能性があります。

(2) 市場の変化


主力である印刷事業において、ペーパーレス化などの進展により印刷需要が大きく変化した場合には、業績等に影響を与える可能性があります。また、産業資材・電子部品製造事業においても、市場の急激な変化による需要変動や単価下落などが発生した場合、業績等に影響を与える可能性があります。

(3) 受注単価の下落


多くの競合企業が存在するため、受注単価の下落リスクがあります。付加価値の高い製品や生産性向上によるコスト削減で利益確保に努めていますが、競争激化により急激な単価下落があった場合、業績等に影響を与える可能性があります。

(4) 特定取引先への依存


読売新聞東京本社やヤマト運輸向けの売上がグループ売上高の約4割を構成しています。これら得意先との強固な信頼関係は強みですが、今後の特定取引先の経営成績や取引方針によっては、同社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。