※本記事は、光村印刷の有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 光村印刷ってどんな会社?
光村印刷は、出版・商業印刷を主力に、産業資材や不動産賃貸事業も展開する印刷会社です。
■(1) 会社概要
同社は1901年に創業者が関西写真製版印刷合資会社を設立したことに始まります。1936年に光村原色版印刷所を設立し、1961年に東京証券取引所に株式を上場しました。1991年に現在の光村印刷へと商号を変更しています。2018年には新村印刷を子会社化し、2025年には那須工場で産業資材製造事業を開始しました。また、2026年に新聞印刷の生産機能を連結子会社へ移管し、生産体制の見直しを進めています。
同社グループは連結で614名、単体で285名の従業員を擁しています。筆頭株主は原材料等の仕入先である三菱製紙で、第2位は製品の販売先および仕入先であるDIC、第3位は主要な販売先のグループ会社である読売新聞グループ本社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱製紙 | 16.70% |
| DIC | 14.91% |
| 読売新聞グループ本社 | 7.33% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長 社長執行役員は嶋山芳夫氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 嶋山芳夫 | 代表取締役社長社長執行役員 | 同社管理本部経理部長、同社取締役専務執行役員などを経て2021年より現職。 |
| 御地合英伸 | 取締役常務執行役員情報ソリューション事業部事業部長 | 同社印刷・情報営業統括本部第三営業本部長などを経て2026年より現職。 |
| 北川日出男 | 取締役上席執行役員特命担当 | 同社印刷・情報営業本部長、城南光村代表取締役社長などを経て2026年より現職。 |
| 藤川和典 | 取締役上席執行役員経理本部長兼総務本部管掌 | 同社経理部長、同社経理本部長などを経て2025年より現職。 |
| 村川武彦 | 取締役上席執行役員情報ソリューション事業部生産本部長 | 同社印刷・情報生産本部川越工場長などを経て2026年より現職。 |
社外取締役は、柴崎憲二(元ヤマト運輸代表取締役)、榎本雅彦(元富士フイルムグラフィックソリューションズ常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「印刷」「産業資材・電子部品製造」および「不動産賃貸等」事業を展開しています。
■印刷事業
出版印刷物、宣伝用印刷物、包装・パッケージ、新聞などを提供しており、出版社や新聞社、一般企業などを主要な顧客としています。
製品の販売により顧客から対価を受け取ります。製造・販売は同社が行うほか、光村プロセス、メディア光村、新村印刷、光村高速オフセットなどの子会社を通じて事業を展開しています。
■産業資材・電子部品製造事業
スクリーン印刷製品やエッチング精密製品を製造しており、電子部品メーカーなどを主要な顧客としています。
製品の販売により顧客から対価を受け取ります。この事業は主に同社が製造および販売を行っています。
■不動産賃貸等事業
東京都におけるオフィスビルや倉庫跡の土地等の賃貸、および那須工場での敷地を利用した太陽光発電事業を提供しています。
賃貸料や売電収入として顧客から対価を受け取ります。この事業の運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は緩やかな減少傾向にあります。利益面では経常赤字となる年度も見られますが、固定資産売却などにより最終利益を確保している年度もあり、事業の再構築に向けた取り組みが進められています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 154億円 | 148億円 | 147億円 | 148億円 | 141億円 |
| 経常利益 | 4億円 | -0.3億円 | 1億円 | -0.5億円 | 0.2億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | -0.2% | 0.4% | -0.3% | 0.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7億円 | 7億円 | -3億円 | 1億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、価格適正化や内製化の推進により売上総利益率は改善しました。営業赤字は縮小傾向にあり、収益基盤の強化による利益創出が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 148億円 | 141億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 18.6% |
| 営業利益 | -2億円 | -0.7億円 |
| 営業利益率(%) | -1.1% | -0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が10億円(構成比38%)、その他が8億円(同28%)、荷造運搬費が6億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の印刷事業は商業印刷物等の減少により減収となり、営業赤字が継続しました。一方、不動産賃貸等事業は旧北品川棟の底地賃貸の開始等により大幅な増収増益となり、業績を下支えしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 印刷 | 141億円 | 133億円 | -3億円 | -4億円 | -2.8% |
| 産業資材・電子部品製造 | 3億円 | 4億円 | -1億円 | -0.6億円 | -15.6% |
| 不動産賃貸等 | 4億円 | 5億円 | 3億円 | 4億円 | 74.6% |
| 連結(合計) | 148億円 | 141億円 | -2億円 | -0.7億円 | -0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
事業検討型のキャッシュ・フローです。本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | -3億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | 6億円 |
| 財務CF | -3億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ともにつくり、ともに伝える。」を企業理念として掲げています。“美の再現”を原点にした印刷技術を核に、育んできた歴史と経験を活かしながら、社会の発展と文化の向上に寄与し、かけがえのない存在であり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
「変革・挑戦・顧客第一」を行動規範として定めています。事業環境の変化に対応し、本業における収益力の抜本的な強化と継続的な黒字基盤の定着に向けた「事業の再構築」と「収益力の向上」を重視して経営に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
早期に営業利益の黒字化を実現することを最重要課題と位置づけています。V字回復のシナリオを描き、既存事業での収益基盤の再構築と成長領域での事業拡大を推し進め、持続的な成長軌道を確立し、中長期的な企業価値の向上を目指します。
■(4) 成長戦略と重点施策
印刷事業においては、単なる売上規模の追求ではなく付加価値の創出へと軸足を移し、価格適正化交渉や不採算取引の見直し、拠点集約による設備稼働の最適化を推進します。また、包装資材・パッケージ分野を成長領域と位置づけ、積極的に経営資源を投入します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資源の一つと位置付け、経営戦略の実現を牽引する人材の確保・育成、多様な人材の活躍推進、働きがいのある職場環境の整備を基本方針としています。新入社員研修や階層別教育等の継続的な能力開発を推進し、組織力の向上を図ります。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.2歳 | 25.2年 | 4,902,324円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.7% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 100.5% |
※男性育児休業取得率は、当事業年度における該当者がいないため「-」としています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格及び調達環境の変動
中東情勢の緊迫化や世界的なサプライチェーンの混乱により、用紙やインキなどの原材料の供給不足や納期の長期化、購入価格の著しい上昇が発生した場合、生産計画や納品スケジュール、および業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 市場の変化
デジタル化の加速による紙媒体の需要減少が続いており、ペーパーレス化のさらなる進展などにより印刷需要が大きく変化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、産業資材製品では特定業界への依存による需要変動リスクがあります。
■(3) 受注単価の下落
同社グループは多くの企業と競合関係にあり、高付加価値製品の拡販や生産性向上によるコスト削減に努めていますが、価格競争の激化によってさらなる受注単価の下落が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 特定取引先への依存
読売新聞東京本社やヤマト運輸向けの売上が全体の約4割を占めています。これら得意先との強固な信頼関係が強みですが、今後の特定取引先の経営成績や取引方針の変更によっては、業績に影響が及ぶリスクがあります。



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