サンメッセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンメッセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンメッセは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、商業印刷やパッケージ印刷などを手がける印刷事業と、各種イベントの企画運営を行うイベント事業を主に展開しています。デジタルシフトやペーパーレス化が進む市場環境の中、直近の業績ではIPS関連の特需やイベント事業の大型受注等により増収増益を達成しています。


※本記事は、サンメッセ株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンメッセってどんな会社?


同社は商業印刷などを手がける印刷事業とイベント企画などを担う事業を展開する総合コミュニケーション企業です。

(1) 会社概要


同社は1935年に田中印刷所として創業し、1990年に現在のサンメッセへ商号変更しました。2004年にジャスダックに上場し、2012年にはタイに子会社を設立、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。2024年にはサステナビリティ関連のコンサルティング業務等を担う子会社Sincを設立しています。

従業員数は連結で643名、単体で614名です。筆頭株主は事業会社の大垣共立銀行(常任代理人 日本カストディ銀行)で、第2位はサンメッセ従業員持株会、第3位は創業家の田中義一氏となっています。

氏名 持株比率
大垣共立銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) 4.97%
サンメッセ従業員持株会 3.72%
田中義一 3.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は田中信康氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中尚一郎 代表取締役会長会長執行役員 1989年同社入社。営業本部長などを経て2018年に代表取締役社長就任。2025年より現職。タイ子会社社長兼務。
田中信康 代表取締役社長社長執行役員 1989年日興證券入社。2011年同社入社。経営企画室長やSX担当などを経て2025年より現職。Sinc社長兼務。
伊東覚 取締役専務執行役員IPS本部管掌 1984年同社入社。製造本部長やIPS・パッケージ本部長などを歴任し、2026年より現職。
由良直之 取締役常務執行役員管理本部長兼総務部長 1984年同社入社。東京営業部長や営業本部長などを経て、2024年より現職。
衣斐輝臣 取締役執行役員品質保証室長 1984年同社入社。大阪営業部長、管理本部長、製造副本部長などを歴任し、2017年より現職。
平野高光 取締役執行役員営業本部長 1987年同社入社。営業開発部長や営業副本部長などを経て、2024年より現職。
植田浩暢 取締役執行役員製造本部長 1993年同社入社。購買部長や製造副本部長(DX推進担当)を経て、2025年より現職。
竹林啓路 取締役(監査等委員)(常勤) 1982年同社入社。製造本部長や品質保証室長、総務部長などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、石岡秀夫(石岡秀夫税理士事務所代表)、澁谷英司(澁谷英司公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷事業」および「イベント事業」を展開しています。

印刷事業


会社案内やカタログ等の商業印刷、取扱説明書等の出版印刷、包装・パッケージ印刷、統合報告書等のコーポレート・コミュニケーション関連、WEBサイト制作等の情報コミュニケーション関連、データプリント業務のIPS関連、BPO関連などを提供しています。幅広いステークホルダーに対する情報伝達手段を支援しています。

顧客からの企画、デザイン、印刷、製本などの受託を通じて対価を得る収益モデルです。事業の運営は主にサンメッセのほか、子会社であるSinc、タイの子会社であるSun Messe(Thailand)Co.,Ltd.が行っています。

イベント事業


各種イベントの企画、運営を行っています。地域の活性化や環境保全、次世代育成に向けた産官学連携やNPOなどとのパートナーシップを通じたイベントなども手がけ、地域における独自のポジション構築に努めています。

顧客からのイベント企画・運営の受託により収益を得ています。事業の運営は子会社である日本イベント企画が主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が164億円から171億円のレンジで安定的に推移しています。経常利益は一時的な落ち込みがあったものの直近期で5億円台まで回復し、利益率も3%台へと改善しています。当期純利益についても着実に利益を積み上げています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 166億円 171億円 166億円 164億円 171億円
経常利益 6億円 4億円 4億円 4億円 5億円
利益率(%) 3.7% 2.3% 2.5% 2.1% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 3億円 3億円 3億円 5億円

(2) 損益計算書


当期は売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益がともに拡大しています。特に営業利益率は前期の0.8%から1.9%へと改善しており、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 164億円 171億円
売上総利益 35億円 38億円
売上総利益率(%) 21.4% 22.2%
営業利益 1億円 3億円
営業利益率(%) 0.8% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が15億円(構成比43%)、運賃及び荷造費が6億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の印刷事業は、収益性の高いIPS関連の大型特需があったことや内製化推進によるコストダウン等により、増収および大幅な増益となりました。イベント事業も大型受注の影響により、売上・利益ともに大きく伸長し、利益率は10.2%と高い水準を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
印刷事業 160億円 165億円 1億円 3億円 1.6%
イベント事業 5億円 6億円 0億円 1億円 10.2%
調整額 -0億円 -0億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 164億円 171億円 1億円 3億円 1.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 10億円 9億円
投資CF -9億円 -0億円
財務CF -2億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「対話(コミュニケーション)と技術力で、“感動をデザイン”する。」をコーポレート・パーパスとして掲げています。常にお客さまを第一に考え、印刷を核に持続的に発展し、社会に貢献することを経営理念としており、従来の枠を超えた「総合コミュニケーション企業」への変革を目指しています。

(2) 企業文化


「技術革新」「法令順守」「環境保護」を経営の三本柱として重視しています。最先端の情報に敏感に新しい技術革新に挑戦し続ける姿勢や、公正な企業活動を行うこと、そして社会の一翼を担う企業として環境活動を実施し環境保全に努める文化が形成されています。

(3) 経営計画・目標


2035年の創業100周年に向けた新経営ビジョン「Change -SX2035- 印刷を、超える。」を策定し、持続的成長を目指しています。生産性の向上と経費削減を推進することにより営業利益率を高め、自己資本当期純利益率(ROE)を向上させることを目標としています。

* 売上高:172億円(2027年3月期計画)
* 営業利益率:1.1%(2027年3月期計画)
* ROE(自己資本当期純利益率):1.7%(2027年3月期計画)

(4) 成長戦略と重点施策


第一次中期経営計画(FY2026-FY2028)では「構造改革」と「会社変革に向けた事業推進」を基本方針としています。製造工程の徹底した数値化・可視化による利益創出、大都市圏でのシェア拡大や高付加価値サービスへのシフト、IPSやパッケージといった成長市場へのリソース投下を通じた事業ポートフォリオの確立に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を「資本」と捉え、個々の成長を将来的な事業成果へとつなげる「人的資本経営」を推進しています。多様な人材が能力を最大限発揮するための教育機会の提供や人事評価制度の改定、ウェルビーイング向上に資する取り組みを通じて、従業員エンゲージメントの向上とイノベーション創出を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.8歳 22.2年 5,574,164円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.6%
男女賃金差異(正規) 71.7%
男女賃金差異(非正規) 93.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の産休・育休取得率(100%)、復帰率(100%)、業務上災害件数(19件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境及び需要動向の変化

同社の主力事業である印刷事業は、事業活動を行ううえで経済環境や需要動向の変化により影響を受けます。ペーパーレス化の進行などの市場環境変化の中で、新たな事業領域における売上拡大や原価削減施策が不十分であった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法律・規制・著作権に関する対応

事業活動において、投資、環境保護、個人情報保護などの関連する法律や規制の適用を受けています。インキ溶剤に関する表示制度や化学物質規制などが制定されており、将来においても新たな法律や規制により事業活動の制約やコスト上昇が生じる可能性があります。

(3) 事業活動中断のリスク

開発・生産・流通などの事業活動をベースとして展開しており、大規模な自然災害や社会的・政治的混乱などのリスクにさらされています。地震災害等が発生した場合には、操業の中断・縮小、施設等の損害、多額の復旧費用などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 気候変動への対応

気候変動に伴い、台風の大型化や河川氾濫による事業活動中断のリスク、降雨パターンの変化に伴う原材料調達に関するリスクがあります。また、国内外において気候変動対策のための制度・規制の導入が進んだ場合、事業活動の制約やコスト上昇などが生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。