サンメッセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンメッセ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する印刷会社です。商業印刷や出版印刷、パッケージ印刷等の「印刷事業」と、各種イベントの企画運営を行う「イベント事業」を展開しています。直近の業績は、売上高が減少、経常利益も減益となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は増益となりました。


※本記事は、サンメッセ株式会社 の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンメッセってどんな会社?


岐阜県大垣市に本社を置き、企画から製本までの一貫体制を持つ総合印刷会社です。イベント事業も展開しています。

(1) 会社概要


1935年に田中印刷所として創業し、1990年に現在のサンメッセに商号変更しました。2004年にジャスダック証券取引所に株式を上場しています。2012年にはタイに現地法人を設立し海外展開を開始しました。2024年にはサステナビリティ関連のコンサルティングを行う株式会社Sincを設立し、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は664名(単体640名)です。筆頭株主は同社の取引銀行である株式会社大垣共立銀行(常任代理人 株式会社日本カストディ銀行)です。第2位は田中義一氏、第3位は代表取締役会長の田中良幸氏であり、創業家や経営陣が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
株式会社大垣共立銀行(常任代理人 株式会社日本カストディ銀行) 4.98%
田中義一 3.26%
田中良幸 3.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は田中尚一郎氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田中良幸 代表取締役会長 1962年日本ヒューム管入社。1964年同社入社。1998年代表取締役社長を経て、2006年6月より現職。
田中尚一郎 代表取締役社長社長執行役員 1989年同社入社。営業本部長等を経て、2018年代表取締役社長社長執行役員営業本部長、2022年4月より現職。
伊東覚 取締役専務執行役員IPS本部長兼IPS製造部長製造本部管掌 1984年同社入社。製造本部長、IPS・パッケージ本部長等を歴任し、2024年6月より現職。
田中信康 取締役専務執行役員経営企画室長SX担当 1989年日興證券入社。2011年同社入社。ソリューション統括部長等を経て、2024年6月より現職。
由良直之 取締役常務執行役員管理本部長兼総務部長 1984年同社入社。東京統括部長、営業本部長等を歴任し、2024年6月より現職。
衣斐輝臣 取締役執行役員品質保証室長 1984年同社入社。管理本部長、製造副本部長等を歴任し、2017年1月より現職。
平野高光 取締役執行役員営業本部長 1987年同社入社。営業開発部長、中部統括部長等を歴任し、2024年6月より現職。
水谷和則 取締役(監査等委員)(常勤) 1979年同社入社。製造本部長等を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、石岡秀夫(石岡秀夫税理士事務所代表)、澁谷英司(澁谷英司公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷事業」および「イベント事業」を展開しています。

(1) 印刷事業


商業印刷(カタログ、ポスター等)、出版印刷(書籍等)、包装・パッケージ印刷、デジタルコンテンツ制作、データプリントサービス(IPS)、BPO業務など、企画から製造まで幅広いサービスを提供しています。一般企業や官公庁、教育機関などが主な顧客です。

収益は、各種印刷物の製造・販売、デジタルコンテンツの制作費、データ処理業務の受託料などから得ています。運営は主にサンメッセ、株式会社Sinc、Sun Messe (Thailand) Co.,Ltd.が行っています。

(2) イベント事業


各種イベントの企画、運営を行っています。地域の活性化や文化振興、企業のプロモーション活動などに関連するイベントを手掛けています。

収益は、イベントの企画・設営・運営業務に対する対価として顧客から受け取ります。運営は日本イベント企画株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は160億円台から170億円台で推移しており、直近では微減傾向にあります。利益面では、原材料価格やエネルギーコストの高騰などの影響を受けつつも、一定の利益水準を維持しています。直近の当期純利益は、税金費用の減少等により増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 149億円 166億円 171億円 166億円 164億円
経常利益 3.9億円 6.1億円 4.0億円 4.1億円 3.5億円
利益率(%) 2.6% 3.7% 2.3% 2.5% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.0億円 2.6億円 3.3億円 2.6億円 3.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しました。売上原価率は改善しましたが、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は減少しました。営業外収益の増加等もあり、経常利益の減少幅は営業利益に比べて緩やかになっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 166億円 164億円
売上総利益 35億円 35億円
売上総利益率(%) 20.8% 21.4%
営業利益 2.6億円 1.4億円
営業利益率(%) 1.5% 0.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14億円(構成比42%)、運賃及び荷造費が7億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


印刷事業は、包装・パッケージやIPS関連が増加したものの、商業印刷やBPO関連が減少し、全体では微減収となりました。イベント事業は大型継続受注の有無等の影響で減収となりました。利益面では両セグメントともに減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
印刷事業 160億円 160億円 2.1億円 1.2億円 0.8%
イベント事業 6.1億円 4.8億円 0.4億円 0.1億円 2.2%
調整額 -0.1億円 -0.2億円 0.1億円 0.0億円 -
連結(合計) 166億円 164億円 2.6億円 1.4億円 0.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金を借入金の返済や投資に充てており、財務基盤を維持しながら事業活動を行っている健全型です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10億円 10億円
投資CF -2億円 -9億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「革新」「法令順守」「環境」を経営の柱とし、常に顧客を第一に考え、人・物・情報を集積・発信し、印刷を核に持続的に発展し、社会に貢献することを経営理念として掲げています。また、「積極経営」「イノベーション経営」「コンプライアンス経営」「環境経営」「人間尊重企業」の5つの基本方針を定めています。

(2) 企業文化


創業100周年に向けた「サンメッセフィロソフィー」を策定し、浸透を図っています。自由闊達の社風を尊重し、社員の主体性、創造性、チャレンジ精神を大切にする「人間尊重企業」を掲げており、会社と個人がフェアで対等なパートナー関係となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


創業90周年のスローガン「Challenge for Change 2025~変革への挑戦~」のフェーズ2として「One Sun Messe」を掲げ、事業成長と企業価値向上を目指しています。2026年3月期の連結業績予想として以下の数値を公表しています。

* 売上高:171.9億円
* 営業利益率:1.0%
* ROE:1.8%

(4) 成長戦略と重点施策


「印刷を、超える。」を基本戦略テーマとし、本業の印刷事業を超える事業変革を推進しています。具体的には、情報セキュリティ(IPS)、パッケージ、情報コミュニケーション、BPOなどの付加価値の高い事業へのシフトを進めています。また、資本コストを意識した経営を行い、ROIC(投下資本利益率)の導入検討や資産効率の向上に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本経営の視点から、人材活用を戦略と位置づけ、人事戦略の再構築を進めています。次世代リーダーの育成や専門職の導入、柔軟な働き方の整備を通じて、会社と社員が共に価値を生み出すパートナー関係を目指しています。また、「Sun Messe Passion & Execution 次世代リーダー育成プラン」などの施策を実行しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 21.8年 5,351,821円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 46.7%
男女賃金差異(全労働者) 54.1%
男女賃金差異(正規) 68.2%
男女賃金差異(非正規) 114.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の産休・育休取得率(100%)、復帰率(100%)、ES(Employee Satisfaction調査)における総合満足度(33.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境及び需要動向リスク


主力である印刷事業は、開発・生産・流通・販売・調達などの活動を通じて展開されており、経済環境や需要動向の影響を受けます。特にペーパーレス化の進行などの市場環境の変化に対応して新領域での売上拡大やコスト削減が進まない場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料調達リスク


事業活動に必要な印刷用紙やインキなどの原材料を外部メーカーから調達しています。これらの原材料について、外部メーカーからの供給量が大幅に不足したり、納期の遅延が発生したりした場合、同社グループの事業活動に支障をきたし、業績等に悪影響を与える可能性があります。

(3) 情報システムおよびセキュリティリスク


事業における情報システムの重要性が高まる中、災害やサイバー攻撃などによりシステム障害が発生した場合、業務停止や機密情報の漏洩などのインシデントが生じる恐れがあります。プライバシーマークやISO27001を取得し対策を講じていますが、万一の問題発生時は社会的信用の低下や業績への影響が懸念されます。

(4) 自然災害・感染症等のリスク


大規模な地震や風水害などの自然災害、感染症の拡大などが発生した場合、生産拠点の損害や操業の中断・縮小を余儀なくされる可能性があります。耐震補強やBCP策定などを進めていますが、実際に災害等が発生した際には、多額の復旧費用や収益機会の喪失により、業績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。