※本記事は、セキ株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セキってどんな会社?
愛媛県松山市に本社を置き、印刷事業を中核として出版、広告、美術館運営などを多角的に展開する企業です。
■(1) 会社概要
1949年3月に株式会社関印刷所として設立され、1975年には出版・広告代理事業を行う株式会社エス・ピー・シーを設立しました。1997年にセキ美術館を開館し、2000年に株式を店頭登録しています。その後、2022年の東証市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。
連結従業員数は463名(単体293名)です。筆頭株主は創業家出身で会長の関啓三氏、第2位は同氏が代表を務める資産管理会社の有限会社宏栄興産、第3位は公益財団法人関奉仕財団となっており、創業者一族および関連団体が安定的に株式を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 関 啓三 | 20.60% |
| 有限会社宏栄興産 | 11.53% |
| 公益財団法人関奉仕財団 | 6.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は関宏孝氏が務めています。社外取締役比率は約11%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 関 宏孝 | 取締役社長代表取締役 | 2008年入社。事業開発室長、常務取締役松山本社事業本部長、専務取締役などを経て、2017年4月より現職。 |
| 関 啓三 | 取締役会長代表取締役 | 1975年入社。製造部長、代表取締役社長などを経て、2017年4月より現職。 |
| 関 宏晃 | 専務取締役製造本部長経営管理本部長 | 2014年入社。松山本社事業本部副本部長、常務取締役製造本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 松友 孝之 | 取締役松山本社事業本部長 | 1995年入社。経営管理部長、執行役員経営管理本部長などを経て、2021年4月より現職。 |
| 岡田 克志 | 取締役 | 1984年株式会社エス・ピー・シー入社。同社代表取締役社長(現任)を務め、2017年6月より現職。 |
社外取締役は、宮部高至(弁護士(宮部法律事務所))です。
2. 事業内容
同社グループは、「印刷関連事業」「洋紙・板紙販売関連事業」「出版・広告代理関連事業」「美術館関連事業」「カタログ販売関連事業」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 印刷関連事業
出版印刷物、商業印刷物、紙器加工品の製造販売を行うほか、新聞印刷の受託を行っています。また、製造工程におけるデザインや広告制作、発送梱包作業なども手掛けています。
収益は、顧客からの印刷物製造・加工費や新聞印刷受託料などから得ています。運営は同社のほか、コープ印刷、メディアプレス瀬戸内、メディア発送、ユニマツク・アド、渡部紙工が担っています。
■(2) 洋紙・板紙販売関連事業
洋紙や板紙の仕入・在庫販売を行っています。
収益は、顧客への用紙販売代金から得ています。運営は同社が行っています。
■(3) 出版・広告代理関連事業
書籍や雑誌の企画・編集・出版を行うほか、出版物に関連したイベント開催や広告掲載などの広告代理業を営んでいます。
収益は、出版物の販売代金や広告料収入、イベント事業収入などから得ています。運営は株式会社エス・ピー・シーが行っています。
■(4) 美術館関連事業
企業イメージの向上と地域活性化を目的として美術館を設置し、運営しています。
収益は、美術館の入館料やミュージアムグッズの販売などから得ています。美術館の運営管理は関興産株式会社が行っています。
■(5) カタログ販売関連事業
事業所向けのオフィス関連用品のカタログ商品販売や、通信販売にかかるカタログ制作を行っています。
収益は、オフィス用品の販売代金やカタログ制作費から得ています。運営は同社および有限会社こづつみ倶楽部が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は110億円台から120億円台前半で推移しており、緩やかな増加傾向にあります。経常利益は3億円台から5億円台の間で変動していますが、利益率は3%台後半から5%程度を維持し、安定した黒字経営を続けています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 112億円 | 119億円 | 120億円 | 123億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 4億円 | 6億円 | 5億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 2.9% | 3.8% | 5.0% | 4.0% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 4億円 | 4億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、販管費の増加により営業利益率は低下しました。売上原価率は横ばいで推移しており、コスト管理は一定程度機能していますが、販管費の負担増が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 120億円 | 123億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 29億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 23.4% |
| 営業利益 | 3億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 1.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比38%)、配送費が2億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
印刷関連事業はBPO事業やデジタル分野の強化により増収となりましたが、利益は減少しました。カタログ販売関連事業は好調に推移し増収増益基調です。一方、洋紙・板紙販売関連事業や美術館関連事業は営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 印刷関連事業 | 87億円 | 90億円 | 2億円 | 1億円 | 1.5% |
| 洋紙・板紙販売関連事業 | 4億円 | 4億円 | -0.1億円 | -0.1億円 | -4.0% |
| 出版・広告代理関連事業 | 13億円 | 13億円 | 0.5億円 | 0.6億円 | 4.2% |
| 美術館関連事業 | 0.0億円 | 0.0億円 | -0.2億円 | -0.2億円 | -624.7% |
| カタログ販売関連事業 | 15億円 | 16億円 | 0.7億円 | 0.7億円 | 4.0% |
| 連結(合計) | 120億円 | 123億円 | 3億円 | 2億円 | 1.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
セキのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは増加しており、事業活動を通じて資金を生み出す力が向上しています。投資活動によるキャッシュ・フローは使用超過となっており、将来の成長に向けた投資が行われていることがうかがえます。財務活動によるキャッシュ・フローは使用超過となっており、借入金の返済や配当金の支払いなどが行われています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 8億円 |
| 投資CF | -6億円 | -8億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、市場構造の変革に機動的かつ柔軟に対応し、経営の合理化・効率化を推進することで、収益性の高い企業体質を構築し、持続的な成長を確保することを目指しています。
■(2) 企業文化
「ISO14001」に基づく取り組みや「FSC認証紙」の取り扱い、グリーンプリンティング工場の認定取得など、環境配慮型経営を重視する文化があります。また、「Japan Color認証制度」による認証取得など、品質の安定と向上に努める姿勢も特徴です。
■(3) 経営計画・目標
中・長期計画「Next200」を策定しており、中期目標として2025年度に以下の数値を掲げています。また、長期目標として2035年度には売上高200億円、営業利益10億円を目指しています。
* 売上高:150億円
* 営業利益:7.5億円
* 売上高営業利益率:5%
* EBITDA:12億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「Next200」において、既存事業の収益力強化、成長分野への資源投入、環境配慮型経営の推進などを重点課題としています。特に、CO2排出量を削減できる「水性フレキソ印刷事業」への投資を強化するほか、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業の推進やデジタルマーケティング分野の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性の確保を含む人材育成や社内環境整備に関して、従業員の採用・登用に際して性別や年齢等を問わず広く人材を受け入れ、個性を尊重する方針です。ダイバーシティ経営を推進し、多様な視点や価値観を持つ人材が活躍できる職場環境の整備を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 16.8年 | 4,576,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.5% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 70.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の育児休暇取得率(100.0%)、有給休暇取得率(68.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 紙媒体の需要減少と競争激化
情報媒体のデジタルシフトにより紙関連媒体の需要が減少し、同業者間の受注競争が激化しています。これにより受注単価が下落傾向にあり、印刷関連事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動
原油価格の高騰などにより、印刷用紙やインキ等の原材料価格が上昇した場合、コスト増となり業績に影響を与える可能性があります。また、製紙メーカーの生産調整による供給面の不安もリスク要因です。
■(3) 情報セキュリティと個人情報保護
顧客のデータベースを含む個人情報を取り扱っているため、情報流出が発生した場合には、損害賠償請求や社会的信用の低下を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 製品の品質管理
徹底した品質管理を行っていますが、万が一、人的要因等により製品に欠陥が生じた場合、損害の求償や信用の低下により、印刷関連事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。



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