セキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セキは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、主力の印刷関連事業のほか洋紙販売や出版、カタログ販売などを展開しています。直近の業績は、主力事業の受注減などにより減収となり、成長分野への投資や人件費の増加で営業赤字に転じました。強固な財務基盤を活かし、次世代の成長に向けた事業構造の転換を進めています。


※本記事は、セキ株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セキってどんな会社?


印刷事業を中核に、洋紙販売や出版、通信販売支援など多様な情報メディア事業を四国を中心に展開しています。

(1) 会社概要


1949年に松山市で関印刷所として設立され、和洋紙類の販売と印刷物の製造を開始しました。1975年に企画・デザイン部門を独立させてエス・ピー・シーを設立し、出版・広告代理事業に進出しました。1996年にはカタログ通信販売事業を開始し、2004年にジャスダックに株式を上場。近年は、2025年にピュアフラットを子会社化してECコンサルティング事業へ参入するなど、領域を拡大しています。

現在、同社グループの従業員数は連結で484名、単体で308名体制です。大株主については、筆頭株主は創業者一族で現会長の関啓三氏で、第2位は関連会社の宏栄興産、第3位は公益財団法人の関奉仕財団となっています。

氏名 持株比率
関啓三 20.53%
有限会社宏栄興産 11.77%
公益財団法人関奉仕財団 6.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は関宏孝氏です。社外取締役比率は11.1%です。

氏名 役職 主な経歴
関宏孝 取締役社長代表取締役 2008年同社入社。事業開発本部長などを経て、2014年専務取締役松山本社事業本部長に就任。2017年より現職。
関啓三 取締役会長代表取締役 1975年同社入社。洋紙紙器事業部長、代表取締役副社長などを経て、1988年代表取締役社長に就任。2017年より現職。
関宏晃 専務取締役製造本部長経営管理本部長 2014年同社入社。松山本社事業本部副本部長、製造本部長などを経て、2020年常務取締役に就任。2024年より現職。
松友孝之 取締役松山本社事業本部長 1995年同社入社。経営管理チームリーダー、経営管理部長などを経て、2008年執行役員経営管理本部長に就任。2021年より現職。
岡田克志 取締役 1984年エス・ピー・シー入社。同社常務、専務などを経て、2010年同社代表取締役社長に就任。2017年より現職。


社外取締役は、宮部高至氏(元東京地方検察庁検事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷関連事業」「洋紙・板紙販売関連事業」「出版・広告代理関連事業」「美術館関連事業」「カタログ販売関連事業」「ECコンサルティング関連事業」を展開しています。

印刷関連事業

出版印刷物、商業印刷物、紙器加工品の企画・製造・販売を行うほか、新聞印刷の受託や印刷した新聞の発送梱包作業、広告制作などを手掛けています。首都圏や関西圏を中心に、観光・販促用のチラシやDM、パッケージ印刷などを提供しています。

顧客からの印刷受注や製造加工料を主な収益源としています。事業の運営は同社のほか、デザイン等の前工程を担うエス・ピー・シー、紙器加工を行う渡部紙工、新聞印刷を受託するメディアプレス瀬戸内などの子会社が分担して行っています。

洋紙・板紙販売関連事業

製紙メーカーが指定する二次代理店として、洋紙および板紙の仕入・在庫販売を行っています。印刷会社や出版会社などの法人顧客向けに、印刷用紙や包装用の板紙などを安定的に供給しています。

顧客への洋紙や板紙の販売代金を主な収益源としています。本事業の運営は主に同社が担っており、原油価格や原材料費の変動リスクに対応しながら、適切な価格転嫁と在庫管理を通じて収益の確保に努めています。

出版・広告代理関連事業

書籍や雑誌などの出版物の企画・編集・販売と、それに関連する広告代理業を行っています。自社媒体を活用した広告枠の販売や、店舗型の住宅購入サービスなどの付加価値の高いサービスを提供しています。

出版物の販売代金および雑誌等への広告掲載料、イベント開催に伴う手数料を主な収益源としています。運営は、企画・編集・販売と広告代理業をエス・ピー・シーが担当し、出版物の製造工程を同社が行っています。

美術館関連事業

企業イメージの向上と地域活性化を目的として、愛媛県松山市の道後温泉地区に「セキ美術館」を設置し、運営を行っています。国内旅行客やインバウンド旅行者に向けて、美術品の展示や特別企画展を提供しています。

来館者からの入館料を主な収益源としています。事業の運営管理は関興産が受託して行っており、直接的な収益性は低いものの、企業イメージの浸透による印刷需要の創造など、間接的な広告宣伝機能として位置付けられています。

カタログ販売関連事業

事業所向けにオフィス関連用品のカタログ商品販売を行っているほか、「ゆうパック」を利用した通信販売にかかるカタログ制作を手掛けています。幅広い法人顧客に対して、オフィスで必要となる消耗品や備品を供給しています。

顧客に対するオフィス用品の販売代金や、通信販売用カタログの制作受託料を主な収益源としています。運営は同社がオフィス用品のカタログ販売を行い、こづつみ倶楽部が通信販売のカタログ制作を行っています。

ECコンサルティング関連事業

ECマーケティング事業の中核として、ECモールでの売上向上支援を中心としたコンサルティングサービスを提供しています。デジタル分野におけるクライアントの課題解決につながる付加価値の高い提案を行っています。

顧客企業からのECコンサルティング手数料を主な収益源としています。2025年8月にM&Aで同社グループに加わったピュアフラットが運営を担っており、成長が期待されるデジタルマーケティング領域を牽引しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は概ね110億円台から120億円台で安定して推移してきましたが、当期は微減となりました。経常利益は原材料高や人件費増加などのコスト上昇圧力を受けて減少傾向が続いており、当期は大幅な減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 112億円 119億円 120億円 123億円 121億円
経常利益 4.2億円 5.9億円 4.8億円 4.5億円 1.9億円
利益率(%) 3.8% 5.0% 4.0% 3.7% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.9億円 3.9億円 3.3億円 2.5億円 2.8億円

(2) 損益計算書


直近2年間の損益構造では、売上高の減少とともに売上総利益も縮小しています。また、M&Aに伴う一時的な費用の発生や成長分野への積極的な投資負担が重くのしかかり、営業利益は赤字に転落しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 123億円 121億円
売上総利益 29億円 27億円
売上総利益率(%) 23.4% 22.5%
営業利益 2.2億円 -0.7億円
営業利益率(%) 1.8% -0.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.7億円、配送費が1.5億円、賞与引当金繰入額が0.9億円を占めています。

(3) セグメント収益


主力の印刷関連事業やカタログ販売関連事業は、BPO需要の減少や主要顧客のシステム障害の影響を受けて減収となりました。一方で、洋紙・板紙販売関連事業は堅調に推移しており、新規参入したECコンサルティング関連事業が新たな売上として寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
印刷関連事業 90億円 89億円
洋紙・板紙販売関連事業 3.5億円 3.6億円
出版・広告代理関連事業 13億円 13億円
美術館関連事業 - -
カタログ販売関連事業 16億円 14億円
ECコンサルティング関連事業 - 1.1億円
連結(合計) 123億円 121億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8.0億円 5.2億円
投資CF -7.9億円 -9.0億円
財務CF -1.7億円 -1.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「次代の歓びをつくる。」をパーパスとし、「課題を希望に変える。」というミッションを掲げています。情報メディアを基盤とした事業活動を通じて、顧客の抱える課題を解決し、新たな価値を創造することで、地域社会とともに持続的な成長と発展を続けることを目指しています。

(2) 企業文化


大切にする価値観として7つのバリューを策定し、これを全役職員に共通する行動指針としています。社員一人ひとりが自らの仕事においてこのバリューを体現することで、多様な個性が尊重され、互いの強みを活かしながら新しい挑戦に向かう組織風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


中・長期計画「Next200」を策定し、持続的な成長を目指しています。2030年度および2035年度に向けた数値目標を明確に設定し、グループ全体で収益力の強化と企業価値の向上に取り組んでいます。

* 売上高150億円(2030年度目標)
* 営業利益7.5億円(2030年度目標)
* 売上高200億円(2035年度目標)
* 営業利益10億円(2035年度目標)

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の収益力強化とともに、水性フレキソ印刷などの環境配慮型事業への投資を加速させます。また、デジタルマーケティングやECコンサルティング分野への進出を通じ、紙媒体からデジタルへの構造転換を図りながら、新たな付加価値の創出と持続可能な循環型社会の実現を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と位置付け、人的資本への投資を拡大しています。紙媒体からデジタルへの事業転換を見据え、ECやBPOなど成長分野を担う人材育成を最重要課題とし、生成AI活用やDX関連のリスキリングを推進。タレントマネジメントシステムの導入により適材適所の配置を図ります。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.0歳 15.7年 46,480,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.7%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.9%
男女賃金差異(正規雇用) 75.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 40.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(68.3%)、男性の育児特別休暇取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報媒体のデジタルシフトと競争激化

情報媒体のデジタル化により紙関連媒体の需要が減少し、同業者間の受注競争が激化しています。受注単価の下落傾向が続く中、原油価格や原材料費が高騰した場合、印刷関連事業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 洋紙流通業界の競合激化と価格上昇

洋紙流通業界におけるメーカーと代理店の従来の商慣習が崩れつつあり、競合が激化するリスクがあります。また、製紙メーカーの減産や原油高による印刷用紙の仕入価格上昇が、洋紙・板紙販売関連事業の収益を圧迫する懸念があります。

(3) 個人情報の漏洩とセキュリティリスク

プライバシーマークの認定を受け、適切な保護体制を敷いて顧客データベースを取り扱っています。しかし、サイバー攻撃や人的要因等により個人情報が流出した場合、損害賠償の発生や社会的信用の低下を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。