※本記事は、株式会社平賀の有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 平賀ってどんな会社?
販売促進プロモーションから総合印刷まで、小売業の販促活動を一貫して支援する企業です。
■(1) 会社概要
1956年に紙袋や包装紙の製造販売を目的として平賀商店を設立し、1965年に現在の商号に変更しました。1958年の折込広告分野への進出を経て、2000年に株式を上場しました。その後、2006年のイマージュ子会社化(後に吸収合併)などを通じて、総合印刷や販売促進支援の事業基盤を拡大してきました。
単体従業員数は305名です。筆頭株主はその他の関係会社であるスノーボールキャピタルで、第2位は外国法人のINTERACTIVE BROKERS LLC、第3位は相互に株式を持ち合う事業会社のナガワとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スノーボールキャピタル | 38.79% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 5.59% |
| ナガワ | 4.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は中前圭司氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中前圭司 | 代表取締役社長営業部門管掌 | ダイエー取締役等を経て、2017年に同社へ入社。管理本部長などを歴任し、2020年より現職。 |
| 上出真太朗 | 取締役後方部門管掌 | ダイエー財務本部副本部長等を経て、2019年に同社へ入社。取締役管理本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 小林永典 | 取締役・常勤監査等委員 | 光雄社印刷所を経て1996年に同社入社。経営企画室部長や生産本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、本田佳人(スノーボールキャピタル代表取締役)、服部謙太朗(桜坂法律事務所所属の弁護士)、志々目祐二(元丸紅テレコム社長)、井堂明子(CREA代表取締役・公認会計士)です。
2. 事業内容
同社は「販売促進関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■販売促進関連事業
小売流通業を主要顧客として、販売促進プロモーション、販促管理システムの企画・管理、WEBやSNSを用いたデジタルマーケティング、総合印刷を展開しています。長年培ったクリエイティブや印刷機能にデジタル技術を融合させ、マーケティング戦略の設計から制作、効果検証までを一貫して伴走支援しています。
収益源は、大型量販店やスーパーなどの小売業から受け取る、折込広告をはじめとする印刷物の製造代金や、デジタル施策を含む販促支援サービスの対価です。自社工場での一貫した製造体制と独自システムを活用し、同社が単体で事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が80億円台から100億円前後へと拡大傾向にあります。大手小売企業との取引本格化などが寄与して売上規模は成長していますが、利益面では原材料価格や物流費の高止まり、人材投資などのコスト増加により減益傾向が続いており、利益率も低下しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 85億円 | 90億円 | 100億円 | 98億円 | 100億円 |
| 経常利益 | 6.0億円 | 5.2億円 | 5.7億円 | 4.4億円 | 2.9億円 |
| 利益率(%) | 7.0% | 5.8% | 5.7% | 4.5% | 2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.9億円 | 4.0億円 | 5.7億円 | 3.1億円 | 1.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、営業利益は減少しています。売上総利益は微増を維持していますが、成長を見据えた先行投資や新サービス立ち上げに伴う業務委託の増加、賃上げなどの人事施策により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益率の低下を招いています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 98億円 | 100億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.7% | 19.6% |
| 営業利益 | 3.7億円 | 2.2億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.1億円(構成比35%)、荷造運搬費が2.4億円(同14%)、支払手数料が2.1億円(同12%)を占めています。売上原価の主な内訳は、外注加工費が33億円(構成比41%)、材料費が23億円(同29%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は販売促進関連事業の単一セグメントですが、既存顧客への追加提案やデジタル商材の拡大が売上を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 販売促進関連事業 | 98億円 | 100億円 |
| 連結(合計) | 98億円 | 100億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.5億円 | 3.5億円 |
| 投資CF | -5.3億円 | -2.9億円 |
| 財務CF | -2.1億円 | 0.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「小売流通の今日を見つめ、明日をデザインする。」をミッションに掲げています。小売流通業を主要顧客として、販促領域における戦略設計から企画、制作、実行、効果検証まで一貫した伴走型支援を提供し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりが力を発揮できる職場環境を整備し、会社と社員が互いに貢献しあう「エンゲージメントの高い集団」を目指す文化を重視しています。多様性と包括性に基づく人材戦略を推進し、多様な業務に挑戦できる環境づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「SPX2027」を策定していましたが、事業環境の不確実性の高まりや収益構造転換の途上であることを踏まえ、機動的な経営判断を優先するために数値目標の公表は取り下げています。現在は、単年度ごとの重点戦略および業績目標を着実に達成していく方針を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
販促の高度化・効率化による変革「SPX」を中核としたサービスの提供を推進しています。営業戦略を強化して顧客に合わせたソリューションを提案するほか、AIなど先進技術を活用した新規事業の創出とアライアンス拡張を図ります。さらに、設備投資や業務フローの見直しによる生産性向上に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
成長の源泉は人材であるとの認識のもと、OJTや社内外の研修を通じたスキル向上とキャリア開発を支援しています。働き方改革やダイバーシティの推進に取り組み、多様な業務に挑戦できる環境を整備するほか、評価制度の高度化や健康管理施策の充実を通じて、付加価値を創出する組織基盤を強化しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.4歳 | 14.8年 | 5,505,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 78.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 特定の製品への依存リスク
同社は企画から印刷までの一貫工程を有していますが、主たる事業である折込広告の製造販売に依存しています。小売業界の広告宣伝費が削減された場合、売上高が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定取引先への依存リスク
特定の販売先(広告主)とともに成長してきた結果、売上に占める特定顧客の割合が高まっています。これらの顧客の取引方針の変更や受注減少が、同社の業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(3) 印刷業界における競合リスク
既存顧客のデータ蓄積により納期短縮の優位性を持っていますが、折込広告市場への参入障壁は低く、企業間競争による販売価格の低迷が続いています。競争がさらに激化し受注価格が低下した場合、収益に影響が及ぶ懸念があります。
(4) 用紙価格の変動リスク
主要原材料である用紙は、複数の代理店を通じて安定供給と価格維持に努めています。しかし、原油価格の高騰や世界的な需給バランスの崩れにより用紙価格が高騰し、調達が困難になった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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