※本記事は、株式会社平賀 の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 平賀ってどんな会社?
小売流通業界向けに、折込チラシを中心とした印刷物や販促プロモーション、デジタル支援を提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1956年1月に紙袋等の製造販売を行う平賀商店として設立されました。1958年に印刷工場を開設して折込広告分野へ進出し、事業の柱を築きました。2000年10月に日本証券業協会へ店頭登録(現スタンダード市場上場)を果たし、社会的信用を高めています。2013年には子会社のイマージュを吸収合併し、経営資源の統合を図りました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
同社の従業員数は297名(単体)です。筆頭株主は投資会社の株式会社スノーボールキャピタルで、発行済株式の38.79%を保有しています。第2位はユニットハウス事業等を展開する株式会社ナガワ(4.07%)、第3位は証券会社のインタラクティブ・ブローカーズ(3.87%)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| スノーボールキャピタル | 38.79% |
| ナガワ | 4.07% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 3.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は中前圭司氏、社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中 前 圭 司 | 代表取締役社長 | ダイエー取締役、俺の株式会社専務等を経て2017年入社。2020年より現職。 |
| 上 出 真 太 朗 | 取締役 | ダイエー財務本部副本部長、イオンフードサプライ部長等を経て2019年入社。2020年より現職。 |
| 小 林 永 典 | 取締役・常勤監査等委員 | 1996年入社。経営企画室部長、常勤監査役、取締役生産本部長などを歴任し2024年より現職。 |
社外取締役は、本田佳人(エルアール代表取締役社長)、服部謙太朗(弁護士)、志々目祐二(元丸紅テレコム代表取締役社長)、井堂明子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「販売促進関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 販売促進関連事業
同社は、スーパーマーケットや家電量販店などの小売流通業界を主要顧客とし、集客のための折込チラシや店内POPなどの「総合印刷」、キャンペーン等の「販売促進プロモーション」、WEBやSNSを活用した「デジタルマーケティング」を提供しています。企画・デザインから印刷、配送までを一貫して行える体制を強みとしています。
収益は、顧客である小売業者等から受け取る印刷物の製造代金、プロモーション企画費、デジタル施策の運用支援料などで構成されています。運営は主に平賀本体が行っており、長年培ったノウハウと顧客基盤を活かし、紙媒体とデジタルを融合させたソリューション提案を進めています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は90億円台後半で推移していますが、当期は減収となりました。利益面では、原材料価格の高騰や人的資本への投資、新規事業開発コストの増加などにより、利益率が低下傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 68億円 | 85億円 | 90億円 | 100億円 | 98億円 |
| 経常利益 | 0.9億円 | 6.0億円 | 5.2億円 | 5.7億円 | 4.4億円 |
| 利益率(%) | 1.3% | 7.0% | 5.8% | 5.7% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.5億円 | 3.9億円 | 4.0億円 | 5.7億円 | 3.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を見ると、売上高は微減となり、利益も減少しました。売上原価率は横ばい圏ですが、販管費の負担が相対的に重くなっています。特に人件費やシステム投資に関連する費用が増加しており、将来の成長に向けた先行投資が利益を圧迫している構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 98億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.9% | 19.7% |
| 営業利益 | 4.9億円 | 3.7億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 3.7% |
コスト構成を見ると、売上原価のうち外注加工費が33億円(構成比41%)、材料費が22億円(同28%)を占めています。販売費及び一般管理費では、給料及び手当が6億円(構成比37%)、荷造運搬費が2億円(同15%)となっており、物流費や人件費が主なコスト要因です。
■(3) セグメント収益
同社は販売促進関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの利益情報は開示されていません。全体の売上高は前期比1.6%減の98億円となりました。既存顧客の一部でデジタル移行による発注減があったものの、新規顧客の獲得により一定の売上規模を維持しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 販売促進関連事業 | 100億円 | 98億円 |
| 連結(合計) | 100億円 | 98億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
平賀は、従業員エンゲージメント向上と組織力強化に向けた積極的な採用活動を行っています。営業活動による収入は、税引前利益の計上や売上債権の減少等により得られましたが、棚卸資産の増加や法人税等の支払い等により、前事業年度より減少しました。投資活動では、有形・無形固定資産の取得による支出が主な要因となり、使用額は増加しました。財務活動では、配当金の支払い、短期・長期借入金の返済等により、使用額が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.0億円 | 5.5億円 |
| 投資CF | -3.4億円 | -5.3億円 |
| 財務CF | -1.3億円 | -2.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はミッションとして「小売流通の今日を見つめ、明日をデザインする。」を掲げています。また、将来ありたい姿として「Retail Tech Innovation 販促のあらゆる不満や不便、不足を解消し、小売の課題解決が日本一得意な会社へ」というビジョンを設定し、小売業界の課題解決に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、顧客のニーズに合わせてカスタマイズされたソリューションを提案し、クライアントとの持続的な関係を築くことを重視しています。また、社員一人ひとりが力を発揮できる職場環境を整備し、会社と社員が貢献しあう「エンゲージメントの高い集団」を目指す姿勢を持っています。全社一丸となり施策を遂行し、目標達成に邁進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「SPX2027」(2025年3月期〜2027年3月期)において、2027年3月期の経営目標数値を掲げています。
* 営業利益:6億円以上
* ROE:10%以上
* 配当性向:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は経営環境の変化に対応するため、6つの優先課題を設定しています。具体的には、営業戦略の強化とクライアントエンゲージメントの向上、競争力と生産性の向上、新規事業の創出などを掲げています。特にデジタル技術を活用した店舗分析やプロモーション提案、自動化・省力化による生産性向上に注力し、高付加価値サービスの提供とコスト効率の追求を同時に進める方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を成長の源泉と位置づけ、優秀な人材の確保と育成に注力しています。OJTや研修を通じて個々のスキル向上を図るとともに、通年での中途採用活動を実施しています。また、働き方改革やダイバーシティの推進、新規事業へのチャレンジ環境の整備などを通じ、人材の中長期的な成長を見越した人事戦略を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.5歳 | 15.2年 | 5,438,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 13.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 0.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 73.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 79.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 78.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(56.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定製品・取引先への依存
同社は折込広告(チラシ)の製造販売を主たる事業としており、販売先は小売業界が中心です。そのため、小売業界の広告宣伝費削減や、売上構成比の高い特定の主要取引先の方針変更があった場合、同社の経営成績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 印刷業界における競合激化
折込広告市場は参入障壁が低く、企業間競争による価格低迷が続いています。同社はデータ蓄積等で差別化を図っていますが、競争がさらに激化して受注価格が低下した場合、収益性が悪化する恐れがあります。
■(3) 用紙価格の変動と供給リスク
主要原材料である用紙は、市況品であり価格変動の影響を受けます。原油価格高騰や需給バランスの崩れにより用紙価格が高騰したり、調達が困難になったりした場合、コスト増により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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