サイネックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 サイネックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイネックスは東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場する企業です。官民協働の行政情報誌「わが街事典」等の情報メディア事業や、DXサポート、ロジスティクス事業を展開しています。直近の業績は売上高171億円、当期利益0.5億円と前年比で増収減益の傾向にあります。


※本記事は、サイネックスの有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サイネックスってどんな会社?


同社グループは、行政情報誌の発行や地域DX支援、ポスティング等の事業を展開し、地方創生に取り組む企業です。

(1) 会社概要


同社は昭和28年に創業し、昭和41年に商工通信として設立されました。平成3年にサイネックスへと商号を変更し、平成15年に大阪証券取引所ヘラクレス市場へ株式を上場しています。平成19年には官民協働事業による行政情報誌「わが街事典」の発行を開始し、令和7年に名古屋証券取引所メイン市場へ上場しました。

現在の同社グループは連結で778名、単体で675名の従業員を擁しています。筆頭株主は代表取締役社長が代表を務める富士教育創研で、第2位は創業家であり代表取締役社長の村田吉優氏、第3位にはサイネックス従業員持株会が名を連ねており、経営陣や従業員が中心となって事業を推進する体制となっています。

氏名 持株比率
富士教育創研 19.26%
村田吉優 8.67%
サイネックス従業員持株会 8.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は村田吉優氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
村田吉優 代表取締役社長 昭和53年同社入社。平成9年代表取締役社長就任。グループ各社の代表を歴任し、令和6年サイネックス・ネットワーク代表取締役会長兼社長に就任するなどグループ全体を牽引。
稲澤和宜 取締役常務執行役員営業統括本部長兼東日本営業本部長 昭和62年同社入社。関東支社長や東日本営業本部長などを歴任し、令和4年常務執行役員および取締役に就任。令和8年より現職。
久保博信 取締役常務執行役員営業統括本部ICT事業推進本部長 平成13年同社入社。企画開発本部やICT事業部長等を経て、令和3年執行役員および営業統括本部ICT事業推進本部長に就任。令和6年取締役に就任し令和8年より現職。
雲林院英幸 取締役執行役員営業統括本部長代理 昭和61年同社入社。関西営業部長や西日本営業本部長を歴任し、平成30年取締役に就任。営業統括本部長を経て令和8年より現職。
吹ノ戸忠 取締役執行役員企画開発本部新領域開発室長兼新領域開発室担当 平成15年同社入社。地方創生協働事業部長や企画開発本部長等を経て、令和4年常務執行役員、新領域開発室長および取締役に就任。令和8年より現職。


社外取締役は、廣田俊夫(元野村ホールディングス常務執行役)、片岡和行(元池田泉州銀行代表取締役会長)、中川美佐(弁護士)、稲継裕昭(早稲田大学政治経済学術院教授)、梅村時博(元三重大学社会連携研究センター特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報メディア事業」、「DXサポート事業」、「ロジスティクス事業」、「ヘルスケア事業」、「投資事業」を展開しています。

(1) 情報メディア事業


パブリック・プライベート・パートナーシップの理念に基づき、行政情報誌「わが街事典」や50音別電話帳「テレパル50」、デジタルサイネージ「わが街NAVI」、シティプロモーション特設サイト「わが街ポータル」を提供しています。主に地方自治体や地域事業者が広報支援の顧客となります。

収益源は、「テレパル50」等への広告出稿事業者からの広告収入や、「わが街Mapping」等の民間企業向けサービスの販売収入です。事業の運営は主にサイネックスが担当し、自治体との協働発行による地域密着型のビジネスモデルを展開しています。

(2) DXサポート事業


自治体向けにAIチャットボットサービスを提供するほか、「わが街とくさんネット」や「食彩ネット」等のeコマースサイト運営、ふるさと納税制度の活用支援事業、さらに地域情報ポータルサイトの運営やリスティング広告販売を行っています。

収益は、自治体からのサービス導入費やeコマースでの販売手数料、ウェブ媒体への広告販売収入などから得ています。運営は同社のほか、システム開発を行うベック、デジタルコンテンツ制作を行うナイン、SES事業を手掛けるリーディなどの子会社が担っています。

(3) ロジスティクス事業


利便性の高い配送サービスを安価で提供しています。情報誌の配布や外部受託によるチラシ等のポスティングを行うほか、DMソリューション事業として顧客からのダイレクトメール発送代行等をトータルでサポートするサービスを提供しています。

収益源は、顧客から受託するチラシやダイレクトメール等の配送・発送代行費用です。事業の運営は、情報誌の配布やポスティングをサイネックス・ネットワークが担い、DMソリューション事業をエルネットが担当しています。

(4) ヘルスケア事業


歯科医療に関する総合的なサポートを提供しています。具体的には、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士などの専門家に向けて、歯科医療機械器具や歯科材料の卸売、さらに歯科医の新規開業支援等の各種サービスを展開しています。

主な収益源は、歯科医療機関等に対する機械器具および材料の販売収入や、開業支援等のサービス提供による各種手数料収入です。この事業の運営は、連結子会社であるマルヤマ歯科商店が担当しています。

(5) 投資事業


安定的な収益機会の確保と地域社会への貢献を目的とした事業を展開しています。主に自社保有の不動産を活用した事業用物件の賃貸や、金融商品の運用を行い、地域の中小事業者の事業承継支援に関する研究にも取り組んでいます。

収益の柱は、所有する不動産からの賃料収入と、金融商品の運用によって得られる収益です。旧本社ビルの一棟貸しへの切り替えや改修工事等を通じて収益性の向上を図っており、この事業の運営は主にサイネックスが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調なトップラインの成長が伺えます。一方、経常利益や当期利益は直近2期間で減少傾向となっており、特に直近では利益率が大きく低下しています。積極的な事業展開による販管費等の増加が利益面を圧迫している状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 142億円 143億円 154億円 165億円 171億円
経常利益 4.9億円 5.5億円 6.0億円 4.9億円 2.2億円
利益率(%) 3.5% 3.8% 3.9% 3.0% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.7億円 2.9億円 3.8億円 3.0億円 0.5億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上総利益は減少し、利益率も低下しています。これに伴い、営業利益も大幅な減益となり、収益性の確保が当面の課題となっていることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 165億円 171億円
売上総利益 63億円 58億円
売上総利益率(%) 38.0% 34.2%
営業利益 4.8億円 1.7億円
営業利益率(%) 2.9% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が24億円(構成比42%)、賞与引当金繰入額が1.1億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


ロジスティクス事業が大きく売上を伸ばし、全体の増収を牽引しました。またDXサポート事業やヘルスケア事業、投資事業も堅調に推移しています。一方で、主力であった情報メディア事業は縮小傾向にあり、セグメント間の売上構成に変化が見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
情報メディア事業 72億円 67億円
DXサポート事業 20億円 21億円
ロジスティクス事業 62億円 71億円
ヘルスケア事業 10億円 11億円
投資事業 0.9億円 1.2億円
連結(合計) 165億円 171億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3.3億円 2.4億円
投資CF -5.9億円 -3.4億円
財務CF -3.8億円 -3.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


それぞれの地域への貢献を経営理念として謳っており、利益とは地域社会のコミュニケーションを促進することで築き上げられた信頼関係の成果であり、公共的な使命を果たした結果であると考えています。地域密着型のメディアやソリューションで地方創生に貢献し、企業価値を向上させることが最大の貢献であると信じています。

(2) 企業文化


官民協働の発想が浸透していなかった頃から地方自治体に事業を提案してきた歴史があり、行政と民間企業という異なる文化を持つ異分子同士が結合することでイノベーションを起こすという発想を持っています。未知への挑戦を続け、社会貢献とビジネスを両立させる「社会貢献型企業」を目指す文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、地方の経済活性化や財政健全化を実現し、日本の再生に寄与するという中長期的な目標を掲げています。具体的な施策として、人的資本への投資やAI研修の導入による生産性向上、原価低減や経費削減を通じた利益確保体制の構築を進めており、これらにより連結売上高および連結経常利益の継続的な増加を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


地域社会のコミュニケーションを促進するメディアと、DXを推進するソリューションを合わせた「地方創生プラットフォーム構想」を推進しています。AIやビッグデータに対応するため、自治体や事業者のDXを支援するサービスを拡充するほか、事業シナジーが期待される企業とのアライアンスやM&Aを検討・実施し、事業領域の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「官民協働でイノベーションを創出し持続可能な地域社会を実現する」というパーパスのもと、多様な視点や価値観を尊重した人材育成を推進しています。教育や研修を通じて個々人の能力や意欲を向上させ、自律性の高い人材を育成するとともに、デジタル技術の革新に対応するため、DX教育やDX人材の積極的な登用も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.3歳 12.8年 4,386,192円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 63.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 56.6%

※同社は公表義務の対象ではないため、女性管理職比率に関して有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性の割合(44.1%)、次年度新卒採用予定者の女性の割合(65.7%)、障害者雇用率(2.35%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報管理と契約解除のリスク


同社は主力事業である電話帳発行において、NTT西日本等とデータベース利用契約を結んでいます。情報漏洩防止策を講じていますが、万一問題が発生し契約が解除された場合、電話帳の発行が不可能となり、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) ICTを活用した新規事業の収益化


AIやIoTなどのデジタル・トランスフォーメーションに対応すべく、シティプロモーション特設サイトやデジタルサイネージなどICTを活用した新規事業を推進しています。しかし、これらの事業が高い収益性を生み出すまでに時間を要し、利益率が低下する可能性があります。

(3) 原材料価格の高騰


情報メディア事業における出版物は、印刷用紙やインク等を原材料として使用しています。地政学リスクの影響等により原材料価格が上昇しており、コスト削減で吸収していますが、今後さらに市況が高騰した場合には、収益を圧迫するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。