竹田iPホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

竹田iPホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証メイン上場の印刷会社です。商業印刷を中心とする印刷事業に加え、半導体関連マスク事業、印刷機材販売等の物販事業を展開しています。直近の業績は、売上高329億円(前期比7.4%増)、経常利益11億円(前期比15.2%増)と増収増益で推移しています。


※本記事は、竹田iPホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第85期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 竹田iPホールディングスってどんな会社?


商業印刷を中心とした印刷事業に加え、半導体関連マスクの製造や印刷機材販売を行う物販事業を展開する企業グループです。

(1) 会社概要


1924年に創業し、1996年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場しました。2018年には東京証券取引所市場第二部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場、名証メイン市場へ移行しています。2023年4月には商号を竹田iPホールディングスに変更し、持株会社体制へ移行しました。

連結従業員数は1,016名、単体では480名体制です。筆頭株主は竹田印刷従業員持株会で、第2位は大手都市銀行の三菱UFJ銀行、第3位は個人の各務芳樹氏となっています。

氏名 持株比率
竹田印刷従業員持株会 6.44%
三菱UFJ銀行 4.25%
各務芳樹 4.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長CEOは山本眞一氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
山本眞一 代表取締役会長CEO 1973年同社入社。中部事業部長、経営統括本部長、関東事業部長などを歴任し、2009年社長就任。2019年会長を経て、2021年6月より現職。
木全幸治 代表取締役社長COO成長戦略本部長 1978年同社入社。中部事業部営業本部長、事業開発本部長、関西事業部長、関東事業部長などを歴任。2020年社長就任、2023年4月より現職。
讃岐秀昭 専務取締役CSO経営戦略担当 1977年光文堂入社。同社社長を経て、2022年同社取締役就任。2023年4月より現職。
細野浩之 常務取締役CFO経営管理担当経営統括本部長 1983年東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2012年同社入社。関東管理部長、経営統括本部長などを経て、2023年4月より現職。
古田敦規 取締役(監査等委員) 1992年同社入社。生産技術部長、環境品質保証部長、プリプレス部長、品質技術部長、内部監査室長を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、堀龍之(丸の内綜合法律事務所代表弁護士)、山本光子(パーソルテンプスタッフ相談役)、永田昭夫(公認会計士永田昭夫事務所代表)、高橋伸夫(日本ガイシ顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷」「物販」の2つの報告セグメントを展開しています。

印刷

商業印刷(カタログ、チラシ他)を中心とする印刷物の制作・印刷や、顧客の販売促進支援事業等を行っています。また、半導体関連マスク事業として、ICパッケージや各種基板用等のスクリーンマスク、フォトマスク、メタルマスクの設計・製造も手掛けています。

収益は、顧客からの印刷物受注や各種ソリューション提供、半導体関連マスクの販売により得ています。運営は、同社および日栄印刷紙工、光風企画、東海プリントメディア等の国内グループ会社に加え、中国、タイ、ベトナムの海外拠点が連携して行っています。

物販

印刷機械、その周辺機器および印刷資材の仕入・販売を行っています。また、事務用品類等の企画・販売も手掛けています。

収益は、印刷関連企業等への機械・資材等の商品販売により得ています。運営は、主に光文堂およびウィルジャパンが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2019年3月期から2023年3月期までの推移を見ると、売上高は300億円台前半で推移しています。2021年3月期には経常利益が減少しましたが、その後回復傾向にあり、直近の2023年3月期には売上高329億円、経常利益11億円を計上しています。当期純利益も黒字基調で推移しており、利益率は改善傾向にあります。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 362億円 357億円 311億円 306億円 329億円
経常利益 7億円 6億円 5億円 9億円 11億円
利益率(%) 1.9% 1.6% 1.5% 3.0% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -6億円 -0.3億円 -15億円 7億円 8億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は306億円から329億円へ増加し、売上総利益も64億円から66億円へ増加しています。売上総利益率は20%台前半を維持しており、営業利益は8億円から9億円へと伸長しました。営業利益率は2.7%から2.9%へ改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 306億円 329億円
売上総利益 64億円 66億円
売上総利益率(%) 20.9% 20.1%
営業利益 8億円 9億円
営業利益率(%) 2.7% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当等が26億円(構成比46%)、その他経費が11億円(同19%)を占めています。売上原価については、材料費や外注費などが含まれ、売上高に対する原価率は約80%で推移しています。

(3) セグメント収益


印刷セグメントはワンストップソリューションの強化や半導体関連マスク事業の堅調さにより増収となりましたが、利益面では若干の減少となりました。物販セグメントは設備投資需要の回復や展示会効果等により増収となり、利益は大幅に増加しました。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
印刷 210億円 219億円 7億円 6億円 2.8%
物販 96億円 110億円 1億円 3億円 2.7%
連結(合計) 306億円 329億円 8億円 9億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

竹田iPホールディングスは、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、事業活動が順調に進んでいることを示しています。投資活動では、固定資産の取得等により支出が増加しましたが、補助金の受取等で一部相殺されました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 16億円 22億円
投資CF 7億円 -8億円
財務CF -16億円 -9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「Hard+Soft+Heart」を経営理念としています。これは、製品を生み出すハードウェアと、サービスやソリューションなどのソフトウェアに加え、全ての活動に心を込めて顧客に感動や喜びを届けるハートを何より大切にするという考え方です。顧客の課題解決を通じて社会に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「経営の基本方針」である社是(熱意・和合・奉仕)や基本理念に加え、「責任ある行動をしよう」「お客様に感謝しよう」「仲良く朗らかに元気よく働こう」といった行動規範を定めています。これらを実践し、持続可能な社会の実現とグループの持続的成長を目指すサステナビリティ経営を推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョンとして「顧客の圧倒的支持を得るワンストップソリューションを提供し、ロイヤルカスタマー比率を高め続ける」を掲げています。顧客価値を高め、それに見合った収益に結びつけることで利益率を改善し、ソリューションビジネスの比率を高めることにより、グループ全体の営業利益率を高めることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「ワンストップソリューションの提供により、顧客の課題解決を実現するビジネスパートナー」への転換を目指し、コア事業の競争力強化、新事業開発、経営基盤強化の3つの改革を進めています。印刷事業ではソリューション提案の強化によるビジネスモデル転換を急ぎ、半導体関連マスク事業では海外事業の軌道化とグループ連携による強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成を重要課題と位置づけ、社員が健康で高いモチベーションを持って困難な課題に取り組める状況を作ることを目指しています。全社員総活躍のため、女性活躍推進、実労働時間の短縮、スマートワーク、ワーク・ライフ・インテグレーションなどの働き方改革を推進し、多様な社員が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 42.3歳 16.7年 5,206,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全) 70.8%
男女賃金差異(正規) 78.2%
男女賃金差異(非正規) 70.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(69.7 %)、労働者の月ごとの平均残業時間(19.6 時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 印刷関連市場(紙媒体)の縮小


デジタル化の進展やメディアの多様化により、国内の印刷関連市場(紙媒体)は長期的に縮小傾向にあります。市場縮小が想定を超えて急激に進んだ場合、操業度の低下により固定費負担が高まり、業績に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 原材料等の価格高騰


印刷用紙、インク、エネルギー価格などの変動が業績に影響を与える可能性があります。特に印刷用紙は原材料に占める割合が大きく、価格高騰時に販売価格への転嫁やコスト削減で吸収しきれない場合、業績が悪化する恐れがあります。

(3) 半導体関連マスク事業の変動


米中貿易摩擦や世界的な半導体市況の変動が、半導体関連マスク事業の業績に影響を与える可能性があります。同事業は印刷事業の業績悪化を補完する役割を担っていますが、市場環境の悪化により減速を余儀なくされるリスクがあります。

(4) 情報セキュリティ


顧客の機密情報や個人情報を取り扱っているため、情報の流出や不正使用、サイバー攻撃によるシステム機能不全などが発生した場合、多額の対策費用や損害賠償が発生し、社会的信用を失う可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。