※本記事は、竹田iPホールディングス株式会社の有価証券報告書(第88期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 竹田iPホールディングスってどんな会社?
商業印刷やパッケージ製造などの情報コミュニケーション事業から、半導体関連マスク事業まで幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1924年1月に武田商店印刷部として創業しました。1950年に竹田精版印刷と合併して竹田印刷に商号変更し、1996年には名古屋証券取引所市場第二部へ上場しました。2023年に竹田iPホールディングスに商号を変更して持株会社体制へ移行し、2024年にはタイでパッケージ製造の新会社を設立して海外展開を強化しています。
同社の従業員数は連結で929名、単体で44名です。筆頭株主は従業員持株会であり、第2位は個人株主、第3位は主要取引金融機関である三菱UFJ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 竹田iPホールディングス従業員持株会 | 6.21% |
| 各務三恵子 | 4.47% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役会長CEOは木全幸治氏、代表取締役社長COOは細野浩之氏です。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木全幸治 | 代表取締役会長CEO | 1978年同社入社。中部事業部営業本部長、専務取締役などを経て、2010年代表取締役副社長に就任。その後、代表取締役社長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 細野浩之 | 代表取締役社長COO | 1983年東海銀行入行。2012年同社執行役員に就任。取締役経営統括本部長などを歴任し、2025年4月に代表取締役社長COO兼CFOに就任。2026年4月より現職。 |
| 古田敦規 | 取締役(監査等委員) | 1992年同社入社。中部事業部の製造本部各部長や内部監査室長を歴任。2023年6月に竹田印刷監査役に就任するとともに、同社取締役(監査等委員)に就任し現職。 |
社外取締役は、山本光子(元パーソルテンプスタッフ相談役)、青木恭美(丸の内綜合法律事務所弁護士)、高橋伸夫(元日本ガイシ顧問)、田中誠治(田中会計事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報コミュニケーション」「ソリューションセールス」「半導体関連マスク」「不動産賃貸」の事業を展開しています。
■(1) 情報コミュニケーション
カタログやチラシを中心とした各種印刷、紙器パッケージの製造、システム関連やプロモーション支援などを提供し、顧客の広告宣伝活動や課題解決を総合的に支援しています。
印刷物の提供や企画・制作に対する対価が主な収益源です。運営は主に竹田印刷が担うほか、日栄印刷紙工が紙器類・ラベルの製造を、東海プリントメディアが新聞印刷を行っています。
■(2) ソリューションセールス
全国の拠点を活用し、印刷会社などの顧客に対して、印刷機械やその周辺機器、印刷資材の仕入れ・販売を行っています。生産性向上や省人化ニーズに対応する提案型営業を展開しています。
顧客に対する機器や資材の販売代金から収益を得ています。運営は主に光文堂が中核となり、ウィルジャパンが事務用品類の企画・販売などを担当しています。
■(3) 半導体関連マスク
電子部品用のスクリーンマスクやフォトマスク、半導体パッケージ用バンプマスク、電子部品実装用メタルマスクなどの設計・製造・販売を行い、国内外の顧客に提供しています。
半導体関連マスク製品の販売代金が収益源です。運営は国内では竹田東京プロセスサービスとプロセス・ラボ・ミクロンが行い、中国、タイ、ベトナムの海外子会社と連携しています。
■(4) 不動産賃貸
同社グループが保有する土地や建物の有効活用を目的として、グループ内の連結子会社および外部の顧客に対して不動産賃貸事業を行っています。
不動産の賃貸を通じた安定的な賃貸収入が主な収益源となっています。運営は主に同社および光風企画が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は300億円台で推移し、直近2期間は連続して増収となっています。経常利益も直近2期間は15億円前後と比較的高い水準を維持しており、利益率も4%台で安定的に推移しています。当期利益は4億円から7億円の間で推移し、直近は6億円となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 306億円 | 329億円 | 317億円 | 342億円 | 345億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 11億円 | 9億円 | 15億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 3.2% | 2.9% | 4.3% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 6億円 | 4億円 | 6億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増となったものの、売上原価の増加幅を抑えたことで売上総利益は増加しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期と比較して減益となり、営業利益率もわずかに低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 342億円 | 345億円 |
| 売上総利益 | 73億円 | 75億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.4% | 21.7% |
| 営業利益 | 14億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が28億円(構成比45%)、福利厚生費が5億円(同8%)を占めています。売上原価は270億円で、売上高に対する構成比は78%となっています。
■(3) セグメント収益
情報コミュニケーションは商業印刷物の減少やコスト増加により減収となりました。ソリューションセールスは自社ブランド製品等の販売増により増収を達成しました。半導体関連マスクは生産体制の再編による生産性向上で増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 情報コミュニケーション | 166億円 | 161億円 |
| ソリューションセールス | 115億円 | 119億円 |
| 半導体関連マスク | 61億円 | 64億円 |
| 不動産賃貸 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 342億円 | 345億円 |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 11億円 |
| 投資CF | -13億円 | -15億円 |
| 財務CF | -9億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.3%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「溢れるほどの情熱をもって、革新しつづける」を企業理念に掲げています。持株会社の社名にある「iP」には、「持続可能な社会に貢献すべく、溢れるほどの情熱(passion)をもって革新(innovation)しつづける」という決意が込められています。顧客の課題解決を通じて広く社会に貢献することを使命とし、社会から信頼され必要とされる存在になることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営の基本方針である「熱意・和合・奉仕」という社是や、基本理念、そして「責任ある行動をしよう」「お客様に感謝しよう」「仲良く朗らかに元気よく働こう」「社運発展のためお互いに協力しよう」「よき家庭の一員となろう」という5つの行動規範を実践する文化を重視しています。役員や従業員はこれらの行動規範を常に携帯し、行動の基礎として日々の業務に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は2024年度から2026年度までの3年間を対象とする中期経営計画を推進しており、最終年度の財務目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高350億円以上
* 営業利益16億円以上
* 営業利益率4.5%以上
* ROE7.0%以上
* PBR0.7倍以上
* 海外売上比率12%以上
* 連結配当性向30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
既存の印刷事業の収益力強化に加え、半導体関連マスク事業やグローバルパッケージ事業への積極的な投資を通じた事業ポートフォリオの変革を推進しています。国内印刷市場の縮小に対応するため、成長分野の育成や海外展開の強化に注力し、情報コミュニケーション領域ではワンストップソリューションの提供により、顧客の課題解決を支援するビジネスモデルへの転換を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは「企業価値向上」と「社員の幸せ」の両立を目指し、人的資本への投資強化と多様な人材の活躍促進を進めています。社員一人ひとりの自律的なキャリア形成を支援するため、能力開発とキャリア開発の両面から教育体制を整備し、管理職のマネジメント力向上を図っています。また、労働時間の適正化や柔軟な働き方の拡充など、働きがいのある職場環境の整備を組織的・戦略的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.1歳 | 15.4年 | 5,419,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 67.5% |
※男性労働者の育児休業取得率については、男性の育児休業取得の対象となる労働者が無いことを示しています。
また、同社は「人的資本に関する取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(76.4%)、労働者の月ごとの平均残業時間(15.5時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 印刷関連市場(紙媒体)の縮小
デジタル化の進展やメディアの多様化に伴い、同社グループの主力である国内印刷関連市場は長期的な縮小傾向にあります。市場の縮小が急激に進んだ場合、操業度の低下による固定費負担の増加などが生じ、業績に大きな影響を与える可能性があります。これに対し、半導体関連マスク事業などの強化によるビジネスモデルの転換や、生産設備の最適化による低コスト生産体制の構築を進めています。
■(2) 事業の繁閑による業績変動
商業印刷を主力としているため、顧客の事業年度に合わせた案件が多く、下期に売上や利益が偏重する傾向があります。同時期にビジネス阻害要因が発生した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。対策として、ワンストップソリューションの提供により継続的な受注を増やすとともに、季節性の異なるグローバルパッケージ事業や半導体関連マスク事業などを拡大し、リスクの低減を図っています。
■(3) 原材料・エネルギー等の価格高騰
事業活動で使用する原材料、エネルギー、物流費などの価格は、世界情勢や為替レート等により変動します。これらの価格上昇や供給制約が生じた場合、生産コストの増加や納期遅延が生じる可能性があります。これに対し、販売価格への適切な転嫁や複数購買先の確保、生産性向上によるコスト削減に努めるとともに、特定の市場環境に過度に依存しない収益構造への転換を進めています。



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