大阪ソーダ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大阪ソーダ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大阪ソーダは東京証券取引所プライム市場に上場する化学メーカーです。基礎化学品、機能化学品、ヘルスケア、商社部門の事業を展開しています。当期の売上高は999.6億円、親会社株主に帰属する当期純利益は154.6億円となり、前期に続いて増収増益を達成し、各段階利益において過去最高を更新しました。


※本記事は、株式会社大阪ソーダの有価証券報告書(第171期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大阪ソーダってどんな会社?


大阪ソーダは、基礎化学品から高付加価値なヘルスケア素材まで幅広い化学製品を製造・販売する総合化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1915年に関西財界有志により、かせいソーダの製造販売を目的に設立されました。1949年に大阪証券取引所、1953年に東京証券取引所へ上場しています。1988年に社名をダイソーへ変更した後、2015年に現在の大阪ソーダへ商号を変更しました。近年は国内外での現地法人設立などグローバル展開を推進しています。

現在の従業員数は連結で1032名、単体で677名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位には総合金融機関である三菱UFJ銀行が名を連ねており、機関投資家や金融機関を中心とした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.19%
日本カストディ銀行(信託口) 7.33%
三菱UFJ銀行 3.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は寺田健志氏が務めています。取締役6名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
寺田健志 代表取締役社長執行役員 1988年同社入社。化学品事業部長、経営戦略本部長等を経て、2017年6月より現職。
小西淳夫 取締役上席執行役員生産技術本部長 1989年同社入社。岡山化成代表取締役社長などを経て、2019年6月より現職。
木村武司 取締役上席執行役員ヘルスケア事業部長機能材事業部長 1982年三菱化成工業入社。三菱ケミカル執行役員を経て2021年同社入社。2024年4月より現職。


社外取締役は、二村文友(元新日鐵化学社長)、百嶋計(元独立行政法人造幣局理事長)、宮田興子(元神戸薬科大学学長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「基礎化学品」「機能化学品」「ヘルスケア」「商社部門ほか」の事業を展開しています。

基礎化学品


同セグメントでは、かせいソーダ、塩酸、液化塩素、水素ガス、エピクロルヒドリン、アリルクロライドなどの各種基礎化学品の製造と販売を行っています。主に産業の基礎素材として、幅広い製造業の顧客に向けて製品を供給しています。

収益は、これらの基礎化学品の販売代金から得ています。事業の運営は主に大阪ソーダが担い、製造・販売を行うほか、連結子会社であるダイソーケミカルを通じた販売も行っています。

機能化学品


同セグメントでは、アリルエーテル類、エピクロルヒドリンゴム、ダップ樹脂、省エネタイヤ用改質剤、電極、レンズ材料などの高付加価値な機能性化学品の製造と販売を行っています。

収益は、各機能性素材および電極などの販売代金によって構成されています。事業の運営は大阪ソーダが製造・販売を担うほか、一部製品をダイソーケミカルが販売し、ダイソーエンジニアリングが電極の製造・販売を行っています。

ヘルスケア


同セグメントでは、医薬品精製材料、医薬品原薬・中間体、光学活性体などの製造および販売を行っています。また、カラムや装置などの分析機器の製造・販売も手がけており、製薬企業などを主な顧客としています。

収益は、これら医薬関連素材および分析機器の販売代金から得ています。運営は大阪ソーダとダイソーケミカルのほか、サンヨーファイン、サンヨーファイン医理化テクノロジーなどの国内外の子会社が担っています。

商社部門ほか


同セグメントでは、塗料原料、接着剤原料、感光性樹脂、電子材料、住宅関連製品などの仕入・販売を行っています。また、自社製品の物流業務や資源リサイクル事業も展開しています。

収益は、仕入商品のマージンや物流サービス、リサイクル事業の対価として得ています。運営は主にダイソーケミカルが担うほか、大曹化工貿易(上海)等の海外子会社、DSロジスティクス、ジェイ・エム・アールが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、原材料価格や市況の変動による一時的な減収減益の時期があったものの、概ね堅調に推移しています。当期においては、生産設備の供給問題解消による販売数量増に加え、医薬品精製材料などの高付加価値製品が伸長し、各段階利益ともに大きく回復・成長しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 881億円 1042億円 946億円 964億円 1000億円
経常利益 134億円 172億円 120億円 142億円 196億円
利益率(%) 15.3% 16.5% 12.7% 14.7% 19.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 88億円 86億円 52億円 88億円 136億円

(2) 損益計算書


前期と比較して、売上高の増加以上に売上総利益が大きく伸長しており、売上総利益率および営業利益率がいずれも向上しています。これは、製品ミックスの改善や高収益事業であるヘルスケア領域の成長などが寄与し、収益性が高まっていることを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 964億円 1000億円
売上総利益 289億円 337億円
売上総利益率(%) 30.0% 33.7%
営業利益 132億円 176億円
営業利益率(%) 13.7% 17.6%


販売費及び一般管理費のうち、販売運賃及び諸掛が57億円(構成比36%)と最も大きく、次いで研究開発費が30億円(同19%)、給料・賞与が28億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である基礎化学品は、設備の稼働回復と市況改善により大幅な増収増益となりました。機能化学品は一部需要減で減収となったものの利益は確保しています。ヘルスケアは医薬品精製材料などが好調に推移し、利益率48.9%と全社収益を牽引する高収益事業へと成長しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
基礎化学品 376億円 417億円 23億円 62億円 14.8%
機能化学品 291億円 279億円 43億円 46億円 16.6%
ヘルスケア 137億円 146億円 70億円 72億円 48.9%
商社部門ほか 160億円 156億円 9億円 9億円 6.0%
連結(合計) 964億円 1000億円 132億円 176億円 17.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 170億円 199億円
投資CF -81億円 -54億円
財務CF -42億円 -93億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.2%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る良好な水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「独創的な技術と製品により安心で豊かな社会の実現に貢献します」というグループ企業理念を掲げています。化学を中心とした事業活動を通じて、産業基盤を支える製品群の開発・供給を行い、持続可能な社会の実現へ貢献するとともに、自らの企業価値を向上させることを社会的使命としています。

(2) 企業文化


同社は、経営ビジョンとして「化学を通じて社会が求める新たな価値を提供する企業グループ」を目指しています。環境・安全に配慮したものづくりでサステナブルな社会の実現に貢献し、グローバル競争力のある技術と品質で顧客ニーズに応え、社員一人ひとりの価値観を大切にして共に成長する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


創立120周年となる2035年に向けた「ありたい姿」の実現を目指し、新中期経営計画「Transform Our Future 2030」(2026~2030年度)を策定しています。全社一丸となってポートフォリオ経営を推進し、最終年度である2030年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

* 営業利益300億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の価値再構築とヘルスケア領域の成長加速、全社総力を結集して挑む新事業創出、事業環境の変化にしなやかに応える経営基盤の強靭化を基本方針としています。特に電子材料分野における全固体電池用高イオン伝導性材料や、ライフサイエンス分野におけるVHH抗体の開発受託事業など、独自技術を活かした新製品創出に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、多様な人材の価値観を取り入れた労働環境の構築を目指しています。「自律した社会人」「自己成長を続ける人」を人材ポリシーに掲げ、女性向けキャリア研修の導入や多様な働き方を支援する制度整備を行い、管理職能力の向上と組織能力の底上げを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.1歳 17.3年 7,272,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.2%
男女賃金差異(正規雇用) 85.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合・市況変動等にかかるリスク


同社の基礎化学品事業におけるクロール・アルカリ製品やエピクロルヒドリン等は、市況製品であり販売価格および原材料調達価格が変動しやすい構造です。他社による大型プラント建設等による需給緩和や景気変動が、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の調達にかかるリスク


同社グループは複数調達先の確保などにより安定的な原材料調達に努めていますが、原料メーカーの事故による供給中断や品質不良、倒産などによる供給停止が発生した場合、生産活動に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 製品の品質にかかるリスク


同社は事業活動全般における品質保証体制を構築し、コンプライアンス教育等を通じて品質管理に努めています。しかし、予期せぬ品質問題により製品に関連する事故等が発生した場合、賠償費用の発生や社会的評価の低下により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。