※本記事は、株式会社大阪ソーダ の有価証券報告書(第170期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大阪ソーダってどんな会社?
基礎化学品から機能化学品、ヘルスケアまで幅広く展開する化学品メーカーです。世界トップシェア製品も有しています。
■(1) 会社概要
1915年にかせいソーダの製造販売を目的として設立され、1949年に大阪証券取引所、1953年に東京証券取引所へ上場しました。2015年には社名をダイソーから現在の大阪ソーダへ変更し、ブランド価値の向上を図っています。近年では米国やドイツに拠点を設立するなどグローバル展開を加速させています。
同社グループの従業員数は連結1019名、単体664名です。大株主は、資産管理業務を行う信託銀行が上位を占めるほか、メインバンクである都市銀行が名を連ねています。特定のオーナー家による支配ではなく、機関投資家や金融機関が主要株主となる安定した資本構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.40% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.47% |
| 三菱UFJ銀行 | 3.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表者は代表取締役社長執行役員の寺田健志氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 寺田 健志 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年同社入社。化学品事業部長、経営戦略本部長、機能材事業部長などを歴任し、2017年6月より現職。 |
| 小西 淳夫 | 取締役上席執行役員生産技術本部長 | 1989年同社入社。生産技術本部長、岡山化成社長などを歴任。2019年6月より現職。 |
| 木村 武司 | 取締役上席執行役員ヘルスケア事業部長機能材事業部長 | 三菱ケミカル執行役員を経て2021年同社入社。執行役員ヘルスケア事業部長などを経て2024年4月より現職。 |
社外取締役は、二村文友(元新日鐵化学社長)、百嶋計(元独立行政法人造幣局理事長)、宮田興子(元神戸薬科大学学長・理事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「基礎化学品」「機能化学品」「ヘルスケア」「商社部門ほか」の4つの報告セグメントを展開しています。
■(1) 基礎化学品
かせいソーダ、塩酸、液化塩素、エピクロルヒドリン、アリルクロライドなどの産業用基礎原料を製造・販売しています。これらは幅広い産業分野で使用される必須化学品です。
収益は、国内外の顧客からの製品販売代金により得ています。製造・販売は主に大阪ソーダが行い、一部の販売は連結子会社のダイソーケミカルを通じて行われています。
■(2) 機能化学品
アリルエーテル類、エピクロルヒドリンゴム、ダップ樹脂、電極、レンズ材料などを製造・販売しています。電子材料や自動車部材など、高機能が求められる分野向けの製品群です。
収益は、メーカー等への製品販売代金となります。製造・販売は大阪ソーダが行うほか、電極についてはダイソーエンジニアリング、ゴム製品はElite Advanced Polymers Inc.などが担当しています。
■(3) ヘルスケア
医薬品精製材料、医薬品原薬・中間体、光学活性体などを製造・販売しています。医薬品の製造プロセスに不可欠な材料や原薬を提供し、製薬メーカーを支援しています。
収益は、製薬会社等からの製品販売代金です。大阪ソーダが製造・販売するほか、医薬品原薬等はサンヨーファイン、海外販売はDAISO Fine Chem USA,Inc.などが担っています。
■(4) 商社部門ほか
化学製品の物流、資源リサイクル事業、および塗料原料や電子材料等の仕入販売を行っています。グループ内外の物流機能や商社機能を担うセグメントです。
収益は、物流業務の受託料や商品の販売代金です。運営は主にダイソーケミカル(商社機能)、DSロジスティクス(物流)、ジェイ・エム・アール(リサイクル)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は900億円台から1000億円超の範囲で推移しています。2023年3月期に売上高1042億円、経常利益172億円の高水準を記録した後、翌期は調整局面となりましたが、直近の2025年3月期は再び増収増益基調に戻っています。利益率は10%台半ばの高い水準を維持しており、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 973億円 | 881億円 | 1,042億円 | 946億円 | 964億円 |
| 経常利益 | 88億円 | 134億円 | 172億円 | 120億円 | 142億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 15.3% | 16.5% | 12.7% | 14.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 47億円 | 88億円 | 86億円 | 52億円 | 88億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大しています。売上総利益率は26.2%から30.0%へと改善しており、収益性が向上しています。営業利益も増益となっており、本業の儲けを示す営業利益率は11.1%から13.7%へと上昇しました。コストコントロールと高付加価値製品の販売が寄与していると考えられます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 946億円 | 964億円 |
| 売上総利益 | 248億円 | 289億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.2% | 30.0% |
| 営業利益 | 105億円 | 132億円 |
| 営業利益率(%) | 11.1% | 13.7% |
販売費及び一般管理費のうち、販売運賃及び諸掛が54億円(構成比34%)、研究開発費が30億円(同19%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の変動費が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上動向を見ると、基礎化学品とヘルスケアが増収となりました。特にヘルスケアは医薬品精製材料の需要拡大により大きく伸長しています。機能化学品はほぼ横ばいでしたが、アリルエーテル類などが堅調でした。商社部門ほかは電子材料等の需要回復があったものの、生活関連商品の減少により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 基礎化学品 | 363億円 | 376億円 |
| 機能化学品 | 291億円 | 291億円 |
| ヘルスケア | 119億円 | 137億円 |
| 商社部門ほか | 173億円 | 160億円 |
| 連結(合計) | 946億円 | 964億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 86億円 | 170億円 |
| 投資CF | -43億円 | -81億円 |
| 財務CF | -32億円 | -42億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、企業理念として「独創的な技術と製品により安心で豊かな社会の実現に貢献します」を掲げています。また、経営ビジョンとして「化学を通じて社会が求める新たな価値を提供する企業グループ」を目指しています。独自の技術力を活かして社会課題の解決に貢献する姿勢を示しています。
■(2) 企業文化
環境・安全に配慮したものづくりを通じてサステナブルな社会の実現に貢献すること、およびグローバル競争力のある技術と品質で顧客ニーズに応えることを重視しています。また、社員一人ひとりの価値観を大切にし、ともに成長する企業を目指すという方針のもと、多様な人材が活躍できる風土を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Shape the Future-2025」(2023年~2025年度)の最終年度を迎え、「既存事業の継続的基盤強化」「新製品創出力の強化」「サステナビリティ経営の推進」の3つの基本方針に基づき施策を実行しています。具体的な数値目標として、安定したキャッシュ創出と成長分野への投資による事業基盤の拡充を進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業の継続的基盤強化」では、ヘルスケア事業の設備増強や機能化学品の市場深耕を進めています。「新製品創出力の強化」では、環境・エネルギー、モビリティ、情報・通信、健康・ヘルスケアの4分野に注力し、全固体電池用材料や半導体周辺材料などの開発を加速させています。サステナビリティ経営も推進し、企業価値向上に努めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材の価値観を取り入れ、働きがいのある労働環境を作ることを目指しています。女性向けキャリア研修や初期キャリアのローテーション制度を導入し、長期的なキャリア形成を支援しています。また、フレックスタイムや在宅勤務などの制度整備により、多様な働き方を推進し、適材適所の人材登用を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 18.2年 | 7,198,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 68.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 80.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合・市況変動等リスク
基礎化学品事業におけるクロール・アルカリ製品やエピクロルヒドリンなどは、市場価格や原材料価格の変動を受けやすい構造です。景気変動や他社との競合、大型プラント建設による需給緩和などが、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達リスク
原材料の安定調達に努めていますが、原料メーカーの事故、品質不良、倒産などによる供給停止が発生した場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。これにより、同社グループの業績が悪影響を受けるリスクがあります。
■(3) 製品品質と製造物責任
品質保証体制を整備していますが、予期せぬ製品の欠陥などが発生した場合、製造物責任賠償や社会的信用の低下を招く可能性があります。これらは業績や財務状況に悪影響を及ぼす要因となり得ます。
■(4) 海外事業展開に伴うリスク
アジア、欧州、北米などで事業を展開しており、各国の法的規制の変更、政治・経済情勢の悪化、社会的混乱などのカントリーリスクが存在します。これらの事象が発生した場合、海外での事業活動や業績に影響が出る可能性があります。



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