関東電化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関東電化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関東電化工業は東京証券取引所プライム市場に上場する化学メーカーです。基礎化学品や半導体・液晶用特殊ガス、電池材料などの精密化学品を製造・販売する事業を主力に展開しています。直近の業績は、精密化学品事業における販売数量の増加や価格上昇などが大きく牽引し、増収および各段階利益で増益のトレンドとなっています。


※本記事は、関東電化工業株式会社の有価証券報告書(第119期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 関東電化工業ってどんな会社?


基礎化学品や半導体向け特殊ガスなどの精密化学品事業をグローバルに展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1938年9月に設立され、群馬県渋川工場で操業を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たし、1970年9月には独自のフッ酸電解技術を確立してフッ素系ファイン分野へと進出しました。1997年に水島工場で電池材料の製造を開始したほか、2017年には韓国に関東電化ファインプロダクツ韓国を設立するなど、海外展開と精密化学品領域の拡充を進めています。

同社グループの従業員数は連結で1,169名、単体で802名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位には安定的な関係構築や技術交流等を目的とした取引先・金融機関などの事業会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.54%
朝日生命保険相互会社 6.21%
日本ゼオン 6.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は長谷川淳一氏が務めています。社外取締役比率は38.4%(取締役13名中5名)です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川 淳一 代表取締役社長 2000年に関東電化工業へ入社。営業本部精密化学品第2部長や営業本部長などを歴任。2015年より現職。
新美 和生 取締役常務執行役員 1984年に朝日生命保険相互会社へ入社。同社主計部長等を経て、2020年に同社へ入社。2024年より現職。
八髙 賢一 取締役執行役員 1992年に同社へ入社。海外事業推進部長や関東電化ファインプロダクツ韓国代表理事等を経て、2024年より現職。
米村 泰輔 取締役執行役員 1998年に同社へ入社。渋川工場第1製造部長や渋川工場長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、松井秀樹(丸の内総合法律事務所共同代表弁護士)、羽深等(元信越化学工業)、假屋ゆう子(元鳥居薬品取締役)、網谷多加子(網谷公認会計士事務所所長)、越野純子(元JVCケンウッド執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「基礎化学品事業」「精密化学品事業」「鉄系事業」「商事事業」「設備事業」を展開しています。

基礎化学品事業


無機・有機化学薬品などの基礎的な化学品の製造および販売を行っています。か性ソーダや塩酸、トリクロールエチレンなどの製品を国内外の幅広い産業の顧客に対して提供しています。

収益源は、顧客に製品を引き渡すことによる製品販売代金です。同事業の製造および販売の運営は、主に関東電化工業が単独で行っています。

精密化学品事業


半導体や液晶製造用の特殊ガス、およびリチウムイオン二次電池向け電池材料などの精密化学品の製造および販売を行っています。高純度のフッ素系特殊ガスなどを世界の半導体・電子材料メーカーなどに提供しています。

収益源は、特殊ガスや電池材料などの販売代金です。製造は同社および関東電化ファインプロダクツ韓国、宣城科地克科技が行い、販売は同社や関東電化KOREA、台灣關東電化などが担っています。

鉄系事業


複写機やプリンターの現像剤に用いられるキャリヤー製品や、着色剤として利用される鉄酸化物などの鉄系製品の製造および販売を行っています。

収益源は、これら鉄系製品の販売代金です。製造は主に関東電化ファインテックが担い、販売は関東電化工業が行っています。

商事事業


基礎化学品事業や精密化学品事業で取り扱う化学工業薬品等の製品販売に加えて、特殊ガスの容器整備などを行っています。

収益源は、化学薬品の販売代金や容器の整備手数料などです。同事業の運営は主に関電興産が行っています。

設備事業


化学工業用設備プラントや一般産業用プラントに関する設計、建設、保全工事などの設備関連事業を展開しています。

収益源は、顧客から請け負う工事等の設備関連代金です。同事業の運営は上備製作所が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績は、半導体市況等の影響を受けて過去に一時的な落ち込みが見られましたが、直近では精密化学品事業の牽引により収益性が回復傾向にあります。売上高は安定して600億円台で推移し、利益面でも着実な改善が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 623億円 787億円 648億円 624億円 654億円
経常利益 111億円 137億円 -13億円 45億円 66億円
利益率(%) 17.9% 17.4% -2.0% 7.2% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 67億円 84億円 -52億円 33億円 23億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で堅調に推移し、売上総利益率および営業利益率ともに改善を見せています。利益率の上昇は、特殊ガスや電池材料などの高付加価値製品の販売増などが寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 624億円 654億円
売上総利益 140億円 158億円
売上総利益率(%) 22.4% 24.2%
営業利益 43億円 55億円
営業利益率(%) 6.9% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が23億円(構成比22.3%)、発送諸掛が23億円(同22.0%)、従業員給与等が18億円(同17.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


精密化学品事業が売上高の大部分を占め、全社的な成長を牽引しています。設備事業や商事事業などの周辺領域も安定した売上を維持していますが、鉄系事業は一部製品の販売減により減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
基礎化学品事業 80億円 80億円
精密化学品事業 495億円 525億円
鉄系事業 23億円 19億円
商事事業 7億円 8億円
設備事業 19億円 22億円
連結(合計) 624億円 654億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


積極型:営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 131億円 73億円
投資CF -141億円 -92億円
財務CF -47億円 7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「会社の永遠の発展を追求し、地球環境との調和を図りながら適正な利益を確保することにより、株主、ユーザー、従業員と共に繁栄する企業を目指して持続可能な社会づくりに貢献する」ことを経営理念に掲げています。独自の技術と心のこもったサービスで期待に応え、信頼される企業を目指しています。

(2) 企業文化


「誠意・創造性・迅速な対応・自然との調和」をモットーに事業の発展に取り組む文化を重視しています。安全・環境を専管する組織を設置し、レスポンシブル・ケア(RC活動)を推進するなど、化学物質の総合的な安全対策や地球環境への配慮を実践する姿勢が組織の基盤に根付いています。

(3) 経営計画・目標


第12次中期経営計画「Dominate 1000 ~持続的成長と競争力育成~」において、2030年に想定される社会を見据えた創造的開発型企業への成長を目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:1,000億円
* 営業利益:150億円
* ROE:12%以上
* ROIC:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


特殊ガス市場の成長性を機会と捉え、新規ガスの開発や製造拠点の複数化による安定供給体制の構築を進めます。電池材料領域では、ライセンスビジネスの拡大やリチウムイオン二次電池リサイクルプラントの建設を通じて需要を取り込みます。また、ROIC経営の推進や政策保有株式の縮減により資本効率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「創造的開発型企業」の基盤として、人材育成と社内環境整備を一体で推進しています。人材開発の中核として全体育成と選抜育成の2本柱を設け、基礎力から幹部職に必要なスキルを段階的に習得させるとともに、経営人材・プロフェッショナル人材を計画的に育成・配置し、組織の持続的成長を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 16.7年 7,375,922円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 70.8%
男女賃金差異(全労働者) 80.4%
男女賃金差異(正規雇用) 81.1%
男女賃金差異(パート・有期) 55.0%


また、同社は「指標と目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.9%)、女性の育児休業取得率(100%)、年次有給休暇取得率(85.6%)、総合職新卒採用の女性比率(28.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体・液晶業界の市況変動


同社の主力製品である半導体・液晶用フッ素系製品は、川下業界の循環的な市況変動が激しく、需給環境に大きな変化があった場合や、技術革新によって製品への需要そのものが失われた場合には、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 東アジア市場等での競争激化


韓国や中国などの競合メーカーとの激しい競争環境にあり、同社製品の技術・品質面での優位性が失われた場合や、激しい価格競争に巻き込まれた場合には、販売シェアの低下や販売価格の下落が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原燃料価格の変動と調達リスク


製造工程において電力を最大の原材料とし、タングステン、無水フッ酸、リチウム化合物などを外部から調達しています。電力をはじめとする原燃料の価格高騰や調達状況の悪化が生じ、製品価格への転嫁が十分に進まない場合は、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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