関東電化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

関東電化工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する化学メーカーです。半導体用特殊ガスや電池材料などの精密化学品事業を主力とし、基礎化学品や鉄系事業も展開しています。当期は、精密化学品事業での販売数量減や価格低下による減収要因があったものの、原材料価格の低下等により、前期の赤字から増益(黒字転換)を果たしました。


※本記事は、株式会社関東電化工業 の有価証券報告書(第118期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 関東電化工業ってどんな会社?


フッ素関連技術を核に、半導体・液晶用特殊ガスやリチウムイオン電池材料等の精密化学品を展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1938年に金属マグネシウム等の製造を目的に設立され、1951年に株式を店頭公開、1963年には東京証券取引所市場第一部に指定されました。独自のフッ酸電解技術を確立し、1970年にフッ素系ファイン分野へ進出。1997年にはリチウムイオン電池用電解質である六フッ化リン酸リチウムの製造を開始しました。

同グループの従業員数は連結1,177名、単体821名です。筆頭株主は外資系証券会社のGOLDMAN SACHS INTERNATIONALで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。

氏名 持株比率
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 11.33%
日本マスタートラスト信託銀行 11.12%
朝日生命保険相互会社 6.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表者は代表取締役社長の長谷川 淳一氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川 淳一 代表取締役社長(内部監査室担当) 2000年1月同社入社。営業本部長、精密化学品部長等を歴任し、2015年6月代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
新美 和生 取締役常務執行役員(経理財務部、情報システム部担当) 1984年4月朝日生命保険相互会社入社。同社主計部長等を経て、2020年6月同社顧問および取締役執行役員に就任。2024年6月より現職。
八髙 賢一 取締役執行役員技術本部長(海外工場、資材部担当) 1992年4月同社入社。渋川工場長、海外事業推進部長等を歴任。2023年6月取締役執行役員に就任し、2024年6月より現職。
米村 泰輔 取締役執行役員経営企画部長(経営企画部、海外事業推進部担当) 1998年4月同社入社。渋川工場品質保証部長、渋川工場長等を歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、松井 秀樹(弁護士)、羽深 等(元信越化学工業)、假屋 ゆう子(元鳥居薬品取締役)、網谷 多加子(公認会計士)、越野 純子(鈴茂器工取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「基礎化学品事業」、「精密化学品事業」、「鉄系事業」、「商事事業」、「設備事業」を展開しています。

基礎化学品事業


無機・有機化学薬品等の製造販売を行っており、主な顧客は化学工業製品を使用する幅広い産業分野です。か性ソーダ、塩酸、トリクロールエチレン、パークロールエチレンなどを取り扱っています。

収益は製品の販売による対価であり、運営は主に関東電化工業が行っています。

精密化学品事業


半導体・液晶製造用の特殊ガス(三フッ化窒素、六フッ化タングステン等)や、リチウムイオン二次電池材料(六フッ化リン酸リチウム等)の製造販売を行っています。半導体デバイスメーカーや電池メーカーが主要顧客です。

収益は製品販売による対価のほか、ライセンス契約に基づく技術支援料等が含まれます。運営は関東電化工業のほか、関東電化ファインプロダクツ韓国、関東電化KOREA、台灣關東電化股份有限公司、宣城科地克科技有限公司などが担っています。

鉄系事業


複写機やプリンターの現像剤用キャリヤーや、鉄酸化物等の製造販売を行っています。

収益は製品の販売による対価です。運営は関東電化工業および株式会社関東電化ファインテックが行っています。

商事事業


同社製品の販売や、同社グループへの原材料供給、特殊ガスの容器整備などを行っています。

収益は商品の販売や容器整備業務による対価です。運営は主に関電興産株式会社が行っています。

設備事業


化学工業用設備等の設計、建設、保全工事を行っています。同社グループの設備工事や一般産業用の工事を請け負っています。

収益は工事契約に基づく対価であり、運営は株式会社上備製作所が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第116期をピークに減少傾向にありますが、利益面では第117期に赤字を計上した後、第118期にはV字回復を果たしました。第117期は電池材料の収益性低下などが響きましたが、第118期は原材料価格の低下等により利益率が改善し、黒字転換しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 519億円 623億円 787億円 648億円 624億円
経常利益 56億円 111億円 137億円 -13億円 45億円
利益率(%) 10.7% 17.9% 17.4% -2.0% 7.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 78億円 94億円 -46億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価の減少幅が大きく、売上総利益率は大幅に改善しました。これにより、営業利益は前期の赤字から黒字へと転換しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 648億円 624億円
売上総利益 72億円 140億円
売上総利益率(%) 11.1% 22.4%
営業利益 -20億円 43億円
営業利益率(%) -3.0% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、発送諸掛が23億円(構成比24%)、研究開発費が18億円(同19%)を占めています。また、売上原価には棚卸資産評価損が11億円(売上原価の2%)含まれています。

(3) セグメント収益


精密化学品事業は販売数量減などで減収となりましたが、営業利益は黒字転換しました。鉄系事業は増収増益となり、商事事業、設備事業も黒字を維持しています。一方、基礎化学品事業は減収となり、営業損失が継続しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
基礎化学品事業 88億円 80億円 -1億円 -6億円 -7.2%
精密化学品事業 513億円 495億円 -28億円 40億円 8.1%
鉄系事業 18億円 23億円 2億円 4億円 15.5%
商事事業 7億円 7億円 2億円 1億円 19.8%
設備事業 22億円 19億円 7億円 3億円 17.7%
調整額 -53億円 -37億円 -0億円 0億円 -
連結(合計) 648億円 624億円 -20億円 43億円 6.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に充てており、財務体質の改善を進めながら成長投資も行う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 112億円 131億円
投資CF -106億円 -141億円
財務CF 18億円 -47億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均(プライム9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.4%で市場平均(プライム46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「会社の永遠の発展を追求し、地球環境との調和を図りながら適正な利益を確保することにより、株主、ユーザー、従業員と共に繁栄する企業を目指して持続可能な社会づくりに貢献する」を経営の理念としています。独自の技術とサービスで期待に応え、信頼される企業を築くことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「誠意・創造性・迅速な対応・自然との調和」をモットーとしています。これに基づき、独自の技術と心のこもったサービスを提供し、ユーザーの期待に応えるとともに、信頼される企業を築き上げるべく全社をあげて事業の発展に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は新中期経営計画において、「Dominate 1000 ~持続的成長と競争力育成~」をキーワードに掲げています。経営環境の変化を踏まえ、当初の計画期間を2年間延長し、最終年度の連結数値目標を設定しています。

* 売上高:1,000億円
* 営業利益:150億円
* ROE:12%以上
* ROIC:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「創造的開発型企業」を目指し、精密化学品事業を中心とした事業拡大や、事業ポートフォリオ改革、ROIC経営の推進、政策保有株式の縮減などを進めています。特に半導体用特殊ガスは製造拠点の複数化による安定供給体制の構築、電池材料はライセンスビジネス拡大やリサイクルプラント建設を推進しています。

* 基礎化学品事業:無機製品へのシフトや精密化学品事業への展開等の構造改革。
* 研究開発:顧客密着型の研究開発推進、韓国での研究開発業務開始。
* 資本効率向上:政策保有株式の約30%を2026年度までに段階的に縮減。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人こそが企業価値向上の源泉」とし、人材育成と社内環境整備に注力しています。多様な人材(女性、外国人、キャリア、障がい者等)の採用・育成・登用を進め、経営戦略と連動した人材開発を行うため人材開発室を新設しました。「自ら気づき、考え、挑戦しつづける人材」を求める人材像とし、新たな育成プログラムを運用しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.3歳 16.0年 6,931,067円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 32.4%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用) 79.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職新卒採用の女性比率(22%)、障がい者雇用率(2.71%)、女性の育児休業取得率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化


同社グループの主力製品は半導体・液晶用フッ素系製品です。これらの業界は循環的な市況変動が大きく、需給環境に大きな変化があった場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。また、川下における技術革新により、同社製品への需要自体がなくなる可能性もあります。

(2) 競争の激化


同社グループは、韓国・中国等のメーカーと激しい競争を繰り広げています。競争力の維持・強化に取り組んでいますが、技術・品質面での優位性が失われ、価格競争に陥った場合には、販売シェアや価格の低下により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業活動


同社グループは東アジアを中心に海外事業活動を強化しています。しかし、予期しない法令・規制の変更、政治・社会情勢の変化、テロ、感染症等のリスクがあり、これらが発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

関東電化工業の転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

関東電化工業の2026年3月期3Q決算は、精密化学品事業の想定以上の好調により、通期業績予想を売上高665億円、営業利益45億円へ上方修正しました。渋川工場の事故復旧を完了し、徹底した安全管理体制への刷新が進む中、「攻めの成長」を支える技術人材の重要性がかつてなく高まっている現状を解説します。