日本化学産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本化学産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する化学メーカーです。薬品事業と建材事業の2本柱で事業を展開しており、薬品事業では工業薬品や電池材料等を扱っています。直近の業績は、主力である薬品事業の販売数量拡大や製品単価の上昇等が寄与し、増収増益のトレンドで推移しています。


※本記事は、株式会社日本化学産業 の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本化学産業ってどんな会社?


工業薬品および住宅建材の製造販売を主軸に、独自の金属加工技術や化学技術で多様な産業を支える企業です。

(1) 会社概要


同社は1924年に東亜化学工業として創業し、1939年に柳澤有機化学工業所を設立、1946年に日本化学産業へ改称しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1963年には建材事業を開始して多角化を進めました。1999年にはタイに現地法人を設立し、海外展開も積極的に行っています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は450名(単体390名)です。筆頭株主は同社の取引先で構成される持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は大手生命保険会社となっており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
日化産取引先グループ持株会 11.53%
日本カストディ銀行(信託口) 7.22%
大樹生命保険 5.06%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長兼薬品事業統括本部長は角谷博樹氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
角谷博樹 代表取締役社長兼薬品事業統括本部長 住友金属鉱山を経て2019年同社入社。薬品生産本部担当、R&Dセンター長、専務執行役員などを歴任し、2024年6月より現職。
柳澤英二 取締役会長 新日本製鐵(現日本製鉄)を経て1987年同社入社。建材本部長、社長室長などを経て2003年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
太田武之 取締役管理本部長 三井銀行(現三井住友銀行)、太陽石油常務執行役員などを経て2019年同社入社。総務部門担当などを歴任し、2024年7月より現職。
山本晃 取締役経営企画室長兼建材本部担当兼サステナビリティ推進担当 新日本製鐵(現日本製鉄)、日鉄エンジニアリング常勤監査役などを経て2023年同社入社。社長付特命担当などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、鉢村健(元日本銀行神戸支店長)、滝順子(滝公認会計士事務所代表)、神田安積(弁護士法人東京フロンティア基金法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「薬品事業」「建材事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 薬品事業


工業薬品の製造販売を行っています。主な製品には、OA機器やエレクトロニクス分野で使用される表面処理用薬品、触媒用薬品、電池・電子部品用薬品、セラミックス・ガラス用薬品などがあり、多品種・多用途にわたる無機・有機金属薬品を提供しています。また、二次電池用正極材の受託加工も行っています。

主な収益は、顧客への製品販売による対価や受託加工料です。運営は主に日本化学産業が行っており、連結子会社であるサイアム・エヌケーエスCO.,LTD.もタイにおいて工業薬品の製造販売を行っています。

(2) 建材事業


住宅建材製品の製造販売を行っています。アルミスパンドレル成型加工技術やアルミ表面処理技術を活かし、防火、通気、防水関連の機能を有した住宅建材製品(軒裏換気孔、防火通気見切り縁など)を開発・提供しています。

主な収益は、ハウスメーカーや建材商社等の顧客への製品販売による対価です。この事業の運営は、主に日本化学産業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近で増加傾向にあり、200億円台半ばまで伸長しています。利益面では、経常利益率が10%を超える高い水準を維持しており、特に直近の決算では増収増益を達成しました。当期純利益も安定して確保しており、堅調な業績推移と言えます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 196億円 237億円 241億円 224億円 254億円
経常利益 26億円 45億円 33億円 26億円 32億円
利益率(%) 13.2% 19.0% 13.6% 11.4% 12.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 31億円 20億円 16億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに前年より改善しており、収益性が向上していることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 224億円 254億円
売上総利益 53億円 61億円
売上総利益率(%) 23.4% 24.2%
営業利益 22億円 29億円
営業利益率(%) 9.7% 11.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与賞与が9.4億円(構成比29%)、研究開発費が5.1億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


薬品事業は、エレクトロニクス分野の回復や製品単価の上昇等により大幅な増収増益となりました。一方、建材事業は住宅着工戸数の低迷やコスト上昇の影響を受け、減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
薬品事業 185億円 217億円 22億円 32億円 14.6%
建材事業 39億円 37億円 8億円 6億円 16.1%
調整額 - - -8億円 -9億円 -
連結(合計) 224億円 254億円 22億円 29億円 11.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た現金を投資に回さず、借入返済等に充てている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 31億円 33億円
投資CF -13億円 -115億円
財務CF -10億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.6%でスタンダード市場の製造業平均(57.5%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「企業は公器」との理念に基づき、法と社会倫理を遵守するとともに、透明性、信頼性の高い企業運営を推進することを経営の基本方針としています。「利益ある成長」の達成によって企業価値を高め、社会に貢献することを目指しています。また、長年蓄積したノウハウと技術力を追求し、成長力の確保と財務体質の強化を図る方針です。

(2) 企業文化


基本方針として「金属の独自技術を磨き、新たな価値の創造を続けることで、多様なパートナーとともに、サステナブルな社会の実現に挑戦する」ことを掲げています。コーポレート・ガバナンスの充実やコンプライアンスの徹底を重視し、透明性が高く信頼される企業であることを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、2023年10月よりスタートした中期経営計画に取り組んでいます。この計画では、2030年のありたい姿を視野に入れ、持続的な成長を目指しています。具体的な数値目標としてKPI等を掲げた記載はありませんが、事業環境の変化に対応しながら成長領域に果敢に挑戦し、変革を担う人材の育成を図ることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「事業基盤の強化」「成長領域の拡大」「社会課題の解決」を基本戦略としています。具体的には、高付加価値製品の創出や生産体制の進化を進めるとともに、イノベーション創出や海外市場の展開を図ります。特に脱炭素社会の構築に向けて、二次電池用正極材の受託加工やリサイクル事業の強化に注力し、循環型社会の実現を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成を人的資本経営の最も重要な取り組みと位置づけ、「一人ひとりが能力を高め多様性を活かして役割期待に能動的に応えつつ成長し、企業の持続的成長とサステナビリティ実現に向け主体的に活躍する人材を育成する」ことを基本方針としています。OJTとOFF-JTを組み合わせた育成や、階層別・選抜型研修の実施、DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 16.6年 6,277,862円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 60.0%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 80.1%


※男性育児休業取得率については、取得実績がないため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育児休業取得率(100.0%)、Scope1排出量(6,294t-CO2)、Scope2排出量(7,103t-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格変動と供給リスク

薬品事業の非鉄金属・石油関連原料や、建材事業の鉄・ステンレス・アルミ等は、市場価格が急騰・急落する可能性があり、価格転嫁ができない場合に利益を圧迫するリスクがあります。また、非鉄金属原料は生産国が偏在しているため、地政学的要因や自然災害等による供給障害が発生する可能性があります。

(2) 特定取引先への依存リスク

同社グループが製造・販売する工業薬品はメーカーへ納入する中間材が主体であるため、納入先メーカーの事業戦略変更等が生じた場合、製品の納入が中止されるなどのリスクがあります。これは同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 技術開発と投資効果のリスク

事業優位性を維持するためには絶え間ない新製品・新技術の開発が必要ですが、研究開発投資に対して必ずしも目標とした成果が得られないリスクがあります。開発の遅れや成果が出ない場合、競争力の低下を招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。