東邦アセチレン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦アセチレン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東邦アセチレンは東京証券取引所プライム市場に上場しており、各種高圧ガスの製造・販売および溶接機器等の仕入販売を主要事業としています。2025年3月期は、酸素ガスの出荷が好調だったものの、器材需要の減少や大規模定期修理の影響等により、前期比で減収減益となりました。


※本記事は、株式会社東邦アセチレンの有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東邦アセチレンってどんな会社?


溶解アセチレンの製造から始まり、産業用・医療用ガスや関連機器を幅広く手掛ける高圧ガスメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1955年3月、溶解アセチレンの製造販売を目的に設立されました。1961年9月に東京証券取引所市場第二部に上場し、2017年6月に市場第一部へ指定替えとなりました。その後、2022年4月の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

2025年3月31日現在、従業員数は連結で761名、単体で119名です。筆頭株主はその他の関係会社である化学メーカー、第2位は産業ガス大手の事業会社、第3位は通信関連企業となっています。

氏名 持株比率
東ソー 24.61%
日本酸素ホールディングス 9.91%
光通信 7.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は堀内秀敏氏です。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
堀内 秀敏 代表取締役社長社長執行役員 東洋曹達工業(現 東ソー)入社。同社執行役員オレフィン事業部長などを経て、2023年上席執行役員。2024年6月より現職。
大上 譲二 代表取締役常務執行役員営業本部長 1985年入社。東邦岩手代表取締役社長、同社上席執行役員営業本部長などを歴任。2024年6月より現職。
佐古 慶治 取締役常務執行役員管理本部長 東洋曹達工業(現 東ソー)入社。同社執行役員ポリマー事業部ポリエチレン部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、山下豊(元ティーシートレーディング社長)、菅谷とも子(元ANAあきんど社長)、正井健太郎(元日立製作所理事)、堀谷宏志(東ソー経営企画部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス関連事業」「エスプーマ関連事業」「器具器材関連事業」「自動車機器関連事業」「製氷機関連事業」および「その他」事業を展開しています。

ガス関連事業


溶解アセチレン、酸素、窒素、アルゴン、水素、液化石油ガス等の各種高圧ガスを製造・販売しています。これらは鉄鋼、半導体、化学、医療など幅広い分野で使用され、家庭用・工業用の燃料としても供給されています。主な顧客は製造業や医療機関、一般消費者です。

収益は、需要家や販売店への製品・商品の販売代金から得ています。溶解アセチレン等は北日本アセチレン、水素は東邦酒田水素等の子会社や同社工場で製造し、販売は同社および株式会社東酸、東ホー株式会社などの関係会社が行っています。

エスプーマ関連事業


食材を泡状にする調理法「エスプーマ」に使用される食品添加物用亜酸化窒素や、専用の調理用器材を飲食店向けに販売しています。新たな食感や演出を求める外食産業などが主な顧客です。

収益は、食品用ガスや関連器材の販売代金から得ています。運営は主に同社が行い、全国の配送拠点から顧客へ直接販売するほか、一部は株式会社東酸などの販売店を通じて販売しています。

器具器材関連事業


溶接材料、溶接切断器具、および液化石油ガス供給機器などの生活関連器具を仕入販売しています。造船、建機、建築鉄骨などの製造現場や、一般家庭が主な顧客となります。

収益は、これらの商品の販売代金から得ています。販売活動は同社および株式会社東酸、東ホー株式会社、荘内ガス株式会社などの関係会社を通じて、需要家や販売店に対して行われています。

自動車機器関連事業


自動車部品メーカーに対し、生産ライン等で使用される機器について仕入販売を行っています。

収益は、機器の販売代金から得ています。運営は主に東ホー株式会社が行っています。

製氷機関連事業


漁業協同組合や食品メーカーに対し、製氷・冷凍機械等の設計・施工を行っています。

収益は、機械設備の設計・施工請負代金から得ています。機械の製造等は主に株式会社タガワが行っています。

その他


建物等の建設工事の設計・施工を行っています。収益は工事代金から得ており、三協建設工業株式会社などが運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台で推移しており、第90期までは増加傾向にありましたが、当期はわずかに減少しました。経常利益は第87期から第90期にかけて増加しましたが、当期は減益となりました。当期純利益も同様の傾向で、全体として安定した黒字基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 298億円 313億円 341億円 354億円 348億円
経常利益 13億円 14億円 17億円 24億円 22億円
利益率(%) 4.3% 4.3% 4.9% 6.9% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.4億円 8.2億円 9.9億円 14.2億円 12.9億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微減となり、売上原価も減少したものの、売上総利益は減少しました。販管費はほぼ横ばいで推移しており、結果として営業利益は減少しました。売上総利益率は31.5%と前期と同水準を維持していますが、営業利益率は若干低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 354億円 348億円
売上総利益 112億円 110億円
売上総利益率(%) 31.5% 31.5%
営業利益 21億円 19億円
営業利益率(%) 6.0% 5.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が35億円(構成比39%)、運搬費が13億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は、ガス関連事業や自動車機器関連事業が増収となった一方、器具器材関連事業や製氷機関連事業が減収となりました。利益面では、エスプーマ関連事業や製氷機関連事業が増益となりましたが、ガス関連事業や器具器材関連事業の減益が響き、全体では減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ガス関連事業 210億円 212億円 21億円 19億円 9.1%
エスプーマ関連事業 18億円 18億円 5億円 5億円 30.4%
器具器材関連事業 105億円 95億円 5億円 3億円 3.5%
自動車機器関連事業 6億円 10億円 -0.1億円 0.2億円 2.2%
製氷機関連事業 12億円 11億円 1億円 2億円 18.8%
その他 2億円 3億円 0.5億円 0.6億円 20.8%
調整額 - - -11億円 -12億円 -
連結(合計) 354億円 348億円 21億円 19億円 5.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、自己資金を基本としつつ、必要に応じて金融機関からの借入も活用して運転資金や設備投資資金を調達しています。

営業活動では、売上債権の回収が進んだものの、仕入債務の支払いなどにより、前連結会計年度に比べて得られた資金は減少しました。投資活動では、有形固定資産の取得支出が減少し、保険積立金の解約による収入が増加したことで、支出は減少しました。財務活動では、長期借入による収入の減少や配当金の支払い増加により、支出が増加しました。

これらの活動の結果、現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 24億円 22億円
投資CF -15億円 -10億円
財務CF -5億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、産業ガスおよび関連する技術・機器等を通じて経済的価値を創造するとともに、社会に貢献することを基本方針としています。企業倫理と遵法の精神に基づき、事業基盤の強化、収益力の向上、健全な財務体質の維持等を行い、持続的な企業成長と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは「東邦アセチレングループCSR憲章」を掲げ、環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した活動を推進しています。法令遵守や企業倫理に基づく誠実な行動を重視し、従業員の働きがいやダイバーシティを尊重する風土の醸成に努めています。また、地域社会との共生や環境保全活動にも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は2022年度を初年度とする中期経営計画において、以下の定量目標を掲げています。
* 連結売上高:400億円
* 経常利益:25億円(経常利益率6%以上)
* 親会社株主に帰属する当期純利益:16億円
* ROE:8%以上
* 年間配当:1株当たり10円以上(株式分割後基準)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、既存事業の競争力強化と成長分野への投資を推進します。ガス事業ではセパレートガスの用途開発や安定供給体制の確立、エネルギー分野では災害対策機器の普及や省エネ機器の販路開拓を図ります。また、エスプーマ事業の用途開発や、水素事業および食品添加用ガスの生産能力増強に向けた投資も行っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最重要経営資源と位置づけ、持続的な企業価値向上に向けた人的資本経営を推進しています。階層別の研修による人材育成や、女性活躍推進法に基づく行動計画に沿った女性従業員の活躍支援を行っています。また、ワークライフバランスの実現のため、残業削減や在宅勤務等の制度整備を進め、多様な人材が活躍できる環境づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 16.3年 6,143,000円


※平均年間給与は賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 産業ガス市場の競争と需要変動


国内の産業ガス市場は大手による寡占と飽和状態にあり、販売シェア争いが激化しています。同社の主要顧客である鉄工、造船、半導体等の業界動向や、人口減少による民生用需要の減少が販売量に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料価格および販売価格の変動


電力コストや原油価格の高騰等は製造コストを押し上げ、これらを販売価格に転嫁できない場合、収益に悪影響を及ぼす可能性があります。また、液化石油ガスの輸入価格変動も販売価格や収益に影響を与える要因となります。

(3) コンプライアンスおよび法的規制


事業活動において法令違反が発生した場合、社会的信用の低下等により業績に影響する可能性があります。また、「高圧ガス保安法」等の法的規制の変更や環境規制の強化による対応コストの増加も、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。