※本記事は、丸尾カルシウム株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 丸尾カルシウムってどんな会社?
大正15年創業の老舗無機化学品メーカーです。独自の粉体技術を活かし、多様な産業に素材を提供しています。
■(1) 会社概要
同社は1926年に丸尾製粉合資会社として創業し、1948年に丸尾製粉を設立しました。1963年に現在の丸尾カルシウムへと商号を変更し、翌1964年には大阪証券取引所市場第二部に上場を果たしています。その後、市場統合を経て、2022年の市場区分見直しにより東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結246名、単体219名です。筆頭株主は同社の関連当事者で重質炭酸カルシウムの仕入先でもある中国砿業、第2位は社長の丸尾治男氏、第3位は化学品事業を行う山陽化学産業です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中国砿業 | 11.49% |
| 丸尾 治男 | 7.39% |
| 山陽化学産業 | 5.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は丸尾治男氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸尾 治男 | 取締役社長(代表取締役)関係会社管掌 | 営業本部長、常務取締役、専務取締役等を経て2019年より現職。 |
| 深津 秀郎 | 専務取締役営業本部長経営企画室長 | アスモ(現デンソー)を経て入社。営業本部長、常務取締役等を経て現職。 |
| 森下 俊哉 | 常務取締役生産本部長RC推進室長 | 中央研究所長、技術本部長、生産本部長等を経て現職。 |
| 今井 一史 | 取締役相談役 | 管理本部長、生産本部長、代表取締役副社長等を経て現職。 |
社外取締役は、久保眞治(元日本ペイント取締役専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「炭酸カルシウム製造販売」および「その他」事業を展開しています。
■炭酸カルシウム製造販売事業
合成樹脂、塗料、ゴムの補強充填剤、薬品および食品添加用など、多岐にわたる用途向けの各種炭酸カルシウムを製造販売しています。主力製品である化合炭酸カルシウムや重質炭酸カルシウムは、プラスチック製品や自動車部品、建材などの基礎素材として広く利用されています。
製品販売による収益が主たる収入源です。運営は主に同社が行い、子会社の九州カルシウムが一部製品の製造を、丸尾(上海)貿易有限公司が中国での販売を担っています。また、関連当事者である中国砿業から重質炭酸カルシウムを仕入れ、同社が販売する商流もあります。
■その他事業
炭酸カルシウム以外の無機化学品の販売を行っています。具体的には、グループ外からタルクやシリカなどを仕入れ、顧客のニーズに合わせて提供しています。
商品販売による収益を得ています。運営は同社および丸尾(上海)貿易有限公司が行っており、顧客へのソリューション提案の一環として取り扱っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は120億円台後半で推移しており、比較的安定していますが、直近では横ばいとなっています。利益面では、第76期に回復を見せましたが、第77期はコスト増等の影響により利益率が低下し、減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 116億円 | 126億円 | 129億円 | 128億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 3億円 | 2億円 | 4億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 2.5% | 2.0% | 2.8% | 1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 3億円 | 1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期とほぼ同水準を維持しましたが、売上原価の上昇により売上総利益が減少しました。販管費も微増しており、営業利益は大きく減少して損益分岐点付近まで低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 129億円 | 128億円 |
| 売上総利益 | 23億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.7% | 16.8% |
| 営業利益 | 1.4億円 | 0.1億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 0.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が7億円(構成比30%)、従業員給料・賞与・福利厚生費が5億円(同22%)を占めています。物流コストや人件費の負担が大きい構造です。
■(3) セグメント収益
化合炭酸カルシウムは国内での販売数量減少などにより減収となりました。重質炭酸カルシウムも微減となっています。その他品目は、グループ外からの購入品販売が増加し、増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 化合炭酸カルシウム | 51億円 | 47億円 |
| 重質炭酸カルシウム | 40億円 | 40億円 |
| その他 | 37億円 | 42億円 |
| 連結(合計) | 129億円 | 128億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
丸尾カルシウムは、運転資金や設備投資資金の調達を自己資金または金融機関からの借入で行う方針です。
営業活動では、仕入債務の減少などにより資金が減少しましたが、減価償却費の計上などにより増加しました。投資活動では、有形固定資産や投資有価証券の取得、定期預金の払い戻しなどにより、資金が大きく減少しました。財務活動では、長期借入れによる収入が主な増加要因となり、長期借入金の返済や社債の償還などにより、資金が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.1億円 | 2.5億円 |
| 投資CF | -3.5億円 | -11.7億円 |
| 財務CF | -7.6億円 | 1.2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「創造 融和 誠実」を社是として掲げています。地球が作り出した安心・安全な素材である「炭酸カルシウム」の新たな価値を創造し、社員一同が助け合い、誠実なもの作りを通じて、人々の豊かな生活を支えることを旨としています。
■(2) 企業文化
1982年に定めた「基本方針」のもと、誠実なもの作りとチャレンジ精神を重視しています。「信義を尊び誠実を旨とする」「未知に挑戦し困難に立ち向かう勇気を持つ」「良いものを造る」「栄光の社歴と伝統をふまえ生活の向上を図る」という4つの指針を掲げ、社会に信頼され、会社と社員がともに栄える企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、豊かな持続可能な社会の実現に向け、継続的に「人」と「もの」に投資するための指標として、中長期的に以下の経営指標を掲げています。
* ROE(自己資本当期純利益率):8%
■(4) 成長戦略と重点施策
企業価値の向上と社会貢献を目指し、AIを活用した生産システムの抜本的見直しや、脱炭素に向けた焼成技術の進化、資本コストを意識した経営を推進しています。また、M&Aや提携を通じた新市場開拓にも取り組んでいます。
* AI駆使による生産方法の見直しと新生産システムの確立
* 焼成技術進化によるCO2排出量低減と生産コスト低減
* 政策保有株売却や自社株買い等の資本政策の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働いて楽しい会社」を実現するため、挑戦を賞賛し、仲間を支え合う文化の醸成に努めています。女性や外国籍社員など多様な仲間の知恵を尊重し、チームワークを発揮して大きな成果を目指す「人」を大事にする経営を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.3歳 | 20.2年 | 5,633,024円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 11.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異 | - |
※男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原料の調達について
一部の原料は特定少数の仕入先や海外からの調達に依存しています。そのため、仕入先国の政治・経済情勢や為替動向によって仕入量や価格が大きく変動し、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品の品質と責任について
国際的な品質管理システムに基づき製品を製造し、生産物責任賠償保険にも加入していますが、想定を超える重大な品質トラブルが発生した場合、社会的信用の失墜や補償費用などにより、経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 事故及び災害について
製造設備の停止防止策や生産拠点の分散など安定供給体制を整備していますが、予想を超える大規模な産業事故や自然災害が発生し製造設備が損壊した場合、生産活動に支障をきたし、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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