※本記事は、丸尾カルシウム株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 丸尾カルシウムってどんな会社?
合成樹脂や塗料向けの炭酸カルシウム製造を主力とする化学メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1926年に丸尾製粉合資会社として設立され、塗料原料の製造販売を開始しました。1948年に丸尾製粉が設立され、1963年に現在の丸尾カルシウムへ商号を変更しています。翌1964年には大阪証券取引所市場第二部へ上場し、長年にわたり炭酸カルシウムを中心とする無機粉体に関する事業を展開しています。
現在の従業員数は連結で239名、単体で215名となっています。筆頭株主は重質炭酸カルシウムの製造を行い、同社と製品の仕入れなどで取引関係がある中国砿業で、第2位は代表取締役社長を務める丸尾治男氏、第3位は山陽化学産業となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中国砿業 | 11.69% |
| 丸尾治男 | 7.85% |
| 山陽化学産業 | 5.35% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は丸尾治男氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 丸尾治男 | 取締役社長(代表取締役)関係会社管掌 | 1999年同社入社。営業本部長や管理本部長などを経て、2019年4月より現職。 |
| 深津秀郎 | 専務取締役営業本部長経営企画室長 | 1994年同社入社。営業開発部長や海外営業部長などを歴任し、2019年4月より現職。 |
| 森下俊哉 | 常務取締役生産本部長RC推進室長 | 1983年同社入社。中央研究所長や技術本部長などを経て、2018年4月より現職。 |
社外取締役は、久保眞治(元日本ペイント建設塗料部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、各種炭酸カルシウムの製造・販売並びにこれらに付随する事業を展開しています。
■(1) 化合炭酸カルシウム
合成樹脂、塗料、ゴムの補強充填剤、薬品および食品添加用などの用途向けに、化合炭酸カルシウムを提供しています。長年培ってきた界面制御技術などを活かし、機能性の高い無機素材を開発しています。
主に製品の販売を通じて顧客から代金を受け取る収益モデルです。製品の製造および販売は、丸尾カルシウムが主体となって行っています。
■(2) 重質炭酸カルシウム
原石を粉砕・分級して製造される重質炭酸カルシウムを提供しています。プラスチックや塗料、製紙など、幅広い産業分野で充填剤として利用されています。
顧客への製品販売により収益を得ています。製造は丸尾カルシウムおよび子会社の九州カルシウムが担い、販売は両社に加え中国の丸尾(上海)貿易有限公司が行っています。また、関連当事者である中国砿業からの仕入れ販売も行っています。
■(3) その他無機化学品
タルクやシリカなど、自社で製造していないその他の無機化学品を外部から仕入れ、顧客に提供しています。
関係会社以外から購入した商品を顧客へ販売することで収益を得ています。販売は、丸尾カルシウムおよび丸尾(上海)貿易有限公司が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は116億円から129億円の範囲で安定して推移しています。経常利益は原材料高などの影響を受けつつも価格改定やコスト削減により2億円から4億円台を維持しており、着実な利益確保を継続しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 126億円 | 129億円 | 128億円 | 126億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 2億円 | 4億円 | 2億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | 2.0% | 2.8% | 1.5% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 1.0億円 | 3億円 | 2億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となったものの、価格改定や製造工程の見直しによる原価削減が寄与し、売上総利益および営業利益は増加しています。子会社の収益力回復もあり、営業利益率は改善傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 128億円 | 126億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.8% | 17.4% |
| 営業利益 | 0.1億円 | 0.9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.0% | 0.7% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が6億円(構成比31%)、従業員給料・賞与・福利厚生費が5億円(同22%)を占めています。売上原価は104億円で、売上高に対する構成比は83%となっています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
直近のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資を行い、さらに借入金の返済なども進める「健全型」のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | 10億円 |
| 投資CF | -12億円 | -5億円 |
| 財務CF | 1億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「創造 融和 誠実」の社是のもと、地球が作り出してくれた安心・安全な素材である「炭酸カルシウム」の新たな価値を創造し、社員一同が助け合い、誠実なもの作りを通じて、人々の豊かな生活を支えることを旨としています。豊かな、持続可能な社会実現に向け、課題の発見とその克服に努めています。
■(2) 企業文化
基本方針として、信義を尊び誠実を旨として社会の信頼を得ること、未知に挑戦し困難に立ち向かう勇気を持つこと、良いものを造ることを掲げています。また、「働いて楽しい会社」を実現するため、チャレンジを賞賛し、多様な仲間の知恵を大事にし、チームワークを発揮する文化の醸成を進めています。
■(3) 経営計画・目標
豊かな、持続可能な社会の実現に向け、継続的に「人」と「もの」に投資するための目標として、中長期の経営指標を設定し、企業価値の向上を目指しています。
* ROE(自己資本利益率):8%
■(4) 成長戦略と重点施策
令和の時代に適合した製造業となるため、AIを駆使した開発・生産・販売システムの抜本的見直しと収益向上を目指します。また、カーボンニュートラル達成に向けた生産コスト低減、政策保有株の売却等を通じた資本コストを意識した経営を進め、国内外の企業との連携による新たな市場開拓にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」を最も重要な資本と位置づけ、個人と企業双方の成長を追求する経営を進めています。自動化・DXによる生産性向上と技術承継、戦略領域へのリスキリング・最適配置、次代を担う社員の選抜・育成を戦略の柱とし、多様な人材の確保とキャリア自律の支援に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.6歳 | 20.2年 | 5,735,596円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
※男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の額の差異については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原料調達と為替変動
同社が調達する原料には、特定少数の仕入先からしか入手できないものがあり、また海外からの調達もあるため、仕入先の国の政治・経済状況や為替動向によって仕入量や価格が大きく変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 知的財産権の保護と侵害
独自の技術開発と知的財産権の保護に努めていますが、第三者による類似製品の製造販売を完全に防止できない場合や、同社の製品が他社の知的財産権を侵害していると判断された場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 製品品質と製造物責任
国際的な品質管理システムに則り製品を製造し、生産物責任賠償保険にも加入していますが、これらを超える重大な品質トラブルが発生した場合、同社グループおよび製品への信頼を失う恐れがあります。



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