※本記事は、石原ケミカル株式会社 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 石原ケミカルってどんな会社?
金属表面処理剤や電子材料、自動車用ケミカル製品等の開発・製造・販売を行う化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1900年に創業し、1939年に法人化しました。1959年に国産初のクリーム状自動車用つや出し剤「ユニコン カークリーム」の製造販売を開始し、1978年には滋賀工場を開設しました。2013年に現社名へ変更し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。
同グループの従業員数は連結280名、単体233名です。筆頭株主は同社の取引先で構成される持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は生命保険会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 石原ケミカル取引先持株会 | 8.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.89% |
| 日本生命保険相互会社 | 5.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は藤本昭彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤本 昭彦 | 代表取締役社長 | 1985年入社。マーケティング部長、新規事業推進部長を経て、2022年執行役員。2023年取締役、2024年6月より現職。 |
| 酒井 保 幸 | 代表取締役会長 | 1971年川崎製鉄入社。1973年同社入社。第三営業部長、専務、石原化美(上海)商貿有限公司董事長、社長を経て、2024年6月より現職。 |
| 内田 衛 | 常務取締役 | 1986年入社。第二研究部長、開発本部長を経て、2019年常務取締役。2024年5月よりキザイ代表取締役社長を兼務。 |
| 越山 剛 | 常務取締役営業本部長 | 1983年入社。第一営業部長を経て、2019年常務取締役営業本部長。2020年4月より石原化美(上海)商貿有限公司董事長を兼務。 |
| 山 口 恭 正 | 取締役管理本部長 | 1984年中埜酢店入社。1988年同社入社。監査室長、総務部長を経て、2016年執行役員管理本部長。2017年6月より現職。 |
| 谷 田 豊 | 取締役生産本部長滋賀工場長 | 1985年入社。2013年滋賀工場長。2017年執行役員生産本部長兼滋賀工場長。2019年6月より現職。 |
| 芝 一 教 | 取締役営業本部副本部長第三営業部長 | 1986年入社。第三営業部長、石原化美(上海)商貿有限公司董事を経て、2021年取締役。2024年5月より現職。 |
| 山 下 隆 史 | 取締役常勤監査等委員 | 1973年入社。資材部長を経て、2017年常勤監査役。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、有原邦夫(アリハラマネジメント社長)、永野卓美(税理士法人はやぶさ会長社員税理士)、芝池勉(公認会計士)、大槻和子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金属表面処理剤及び機器等」「電子材料」「自動車用化学製品等」「工業薬品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 金属表面処理剤及び機器等
パソコンや携帯電話等の電子部品とプリント配線板を接合するための錫系めっき液や、回路形成用の銅めっき液、化成処理液自動管理装置などを開発・製造・販売しています。
めっき液や関連機器の販売、およびアフターサービスから収益を得ています。運営は同社、石原化美(上海)商貿有限公司、およびキザイ株式会社が行っています。
■(2) 電子材料
半導体製造装置や検査装置の部品等に使用されるマシナブルセラミックス、エンジニアリングプラスチック、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの材料を調達し、加工販売しています。
ユーザーの仕様に合わせて機械加工した製品の販売から収益を得ています。運営は主に同社が行っています。
■(3) 自動車用化学製品等
カーディーラーや自動車整備工場などで使用されるエアコン洗浄剤、コーティング剤等の業務用ケミカル製品や、建設現場等で使用される溶接用スパッター付着防止剤を開発・製造・販売しています。
各種ケミカル製品の販売から収益を得ています。運営は同社および石原化美(上海)商貿有限公司が行っています。
■(4) 工業薬品
鉄鋼・化学関連の大手ユーザーの生産工程で使用される特殊性の高い商品や、官公庁向けの薬剤などを仕入販売しています。主な商品は表面処理剤、触媒、活性炭、水処理剤等です。
仕入商品の販売による対価を主な収益源としています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりで推移しており、第87期には過去最高を更新しました。利益面においても、利益率は10%台前半から半ばで安定的に推移していましたが、第87期には大幅に伸長し、高い収益性を実現しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 170億円 | 190億円 | 203億円 | 207億円 | 236億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 25億円 | 23億円 | 25億円 | 35億円 |
| 利益率(%) | 10.9% | 13.2% | 11.1% | 11.9% | 14.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 19億円 | 18億円 | 19億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果がこれを上回り、営業利益は大きく伸長しました。その結果、営業利益率は前期よりも改善し、収益性がさらに向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 207億円 | 236億円 |
| 売上総利益 | 67億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.3% | 33.9% |
| 営業利益 | 23億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 11.2% | 14.4% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が12億円(構成比26%)、報酬給与手当及び賞与が11億円(同25%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造費用が計上されています。
■(3) セグメント収益
金属表面処理剤及び機器等セグメントは、生成AI向け需要増等により売上・利益ともに大幅に伸長しました。電子材料は半導体市況の回復により増収黒字転換しました。自動車用化学製品等は国内が堅調な一方、中国向けが低調で微増収減益となりました。工業薬品はほぼ横ばいで推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金属表面処理剤及び機器等 | 105億円 | 131億円 | 14億円 | 26億円 | 20.2% |
| 電子材料 | 6.5億円 | 8.4億円 | -0.2億円 | 0.1億円 | 0.9% |
| 自動車用化学製品等 | 36億円 | 37億円 | 10億円 | 8.4億円 | 22.6% |
| 工業薬品 | 59億円 | 60億円 | 2.6億円 | 2.5億円 | 4.2% |
| 調整額 | - | - | -3.1億円 | -3.3億円 | - |
| 連結(合計) | 207億円 | 236億円 | 23億円 | 34億円 | 14.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「改善型」です。本業で得た資金と資産売却等による収入により、借入金の返済や株主還元を進めている状態です。なお、当期の投資CFのプラスは有価証券の売却等によるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 36億円 |
| 投資CF | -3億円 | 2億円 |
| 財務CF | -9億円 | -37億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
自己開発、商品開発、市場開発の「三つの開発」を企業理念として掲げています。ニッチ市場において高い市場占有率を維持し、基幹となる3つの分野で事業をバランスよく展開することで、会社の発展を通じて関係者の信頼に応え、社会に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
主体性、多様性、人格、個性を尊重し、社員一人一人が「自己開発」に取り組み、「自ら考え、自ら行動する」企業風土の醸成を目指しています。「行動憲章」に基づき、法令順守や人権尊重、環境問題への取り組みなどを通じて、高い倫理観をもって社会的責任を果たすことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の目標達成状況を判断する指標(KPI)として、収益力の向上と安定的な成長を目指し、以下の数値を掲げています。
* 売上総利益率35%以上
* 経常利益率15%以上
* ROE(自己資本利益率)10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「成長路線の創造」を中長期経営方針とし、隣接分野や新地域への参入、高付加価値製品の市場投入による売上・利益の増加を図ります。具体的には、先端半導体用めっき液の市場拡大、カーディーラー向け新製品の拡販、第5の事業としての新規電子材料の事業化加速、および海外拠点の機能強化によるグローバル化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「三つの開発」の理念のもと、「自ら考え、自ら行動する」人材を育成することを重視しています。新卒・キャリア採用により多様な人材を確保し、階層別教育や専門スキル向上支援、海外研修などを通じて成長を支援しています。また、ワークライフバランス向上のための休暇制度や育児支援などを充実させ、健康で活き活きと働ける職場環境づくりに努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.1歳 | 13.0年 | 6,660,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 1.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 66.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 69.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 44.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職全体に占める女性・外国人・中途採用者の合計比率(46%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外活動に係わるリスク
中国や東南アジアを中心に海外市場を開拓していますが、予期せぬ法規制の変更、インフラ未整備、政治的要因やテロ・戦争等による社会的混乱が発生した場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 業界動向及び競合等
主力事業である金属表面処理剤等は電子関連分野に対応しており、技術革新や競合の台頭、需給サイクルの影響を受けます。製品の陳腐化や需要先の大幅な生産調整が起きた場合、経営に重大な影響を与える可能性があります。
■(3) 自然災害・新型ウイルス等の感染症
国内外で営業活動を展開しており、大規模な地震・台風などの自然災害や感染症により設備損害や人的被害が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 保有有価証券の時価下落
余資運用および政策保有目的で有価証券を保有しており、これらの急激な価格下落が発生した場合、業績および財政状態に影響を与える可能性があります。



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