※本記事は、ステラケミファ株式会社の有価証券報告書(第83期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ステラケミファってどんな会社?
同社は半導体製造に不可欠な高純度薬品事業を中心に、輸送などの物流事業も展開する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1916年に創業し、1944年に橋本化成工業として設立して硫酸銅の生産を再開しました。1990年に社名を橋本化成に変更後、1997年に現在のステラケミファへと社名変更しています。2000年に東京証券取引所市場第一部への上場を果たし、その後はシンガポールや中国に子会社や合弁会社を設立するなど海外事業も推進しています。
現在は、連結で683名、単体で293名の従業員を擁しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はFUKADA、第3位はNIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC(常任代理人 香港上海銀行東京支店)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.26% |
| FUKADA | 9.72% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 4.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は橋本亜希氏が務めています。取締役13名のうち5名が社外取締役であり、社外取締役比率は約38.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋本 亜希 | 代表取締役社長 | 2012年3月同社入社。取締役執行役員社長室長、代表取締役副社長を経て、2015年1月より現職。 |
| 坂 喜代憲 | 代表取締役副社長 | 1982年4月同社入社。取締役泉工場兼三宝工場長、ブルーエキスプレス代表取締役社長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 高野 順 | 専務取締役技術・IR担当兼研究開発部長 | 1985年4月同社入社。取締役社長、常務取締役等を経て、2026年6月より現職。 |
| 小方 教夫 | 取締役執行役員営業統括 | 1992年10月同社入社。執行役員東京営業部長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 土谷 匡章 | 取締役執行役員生産統括 | 1989年4月同社入社。三宝工場長、執行役員三宝工場長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 中島 康彦 | 取締役執行役員財務・IR担当 | 大和銀行(現りそな銀行)入行。経理部長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 飯島 猛司 | 取締役執行役員シンガポール担当 | 1991年3月同社入社。執行役員大阪営業部長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 菊山 裕久 | 取締役監査等委員 | 1977年3月同社入社。取締役常務執行役員等を歴任後、2016年6月より現職。 |
社外取締役は、西村勇作氏(弁護士法人梅ヶ枝中央法律事務所パートナー弁護士)、松村真恵氏(松村真恵税理士事務所所長)、山本淳氏(弁護士法人堂島法律事務所パートナー弁護士)、西野佳代子氏(西野佳代子税理士事務所所長)、内田明美氏(イリソ電子工業社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「高純度薬品」、「運輸」および「その他」事業を展開しています。
■高純度薬品
半導体デバイスの高集積度化を可能にする超高純度エッチング剤や洗浄剤、原子力関連施設で使用される中性子吸収材などの製造と販売を行っています。国内外の半導体メーカーやエネルギー関連施設などが主な顧客となります。
顧客からの製品販売代金を主な収益源としています。事業の運営はステラケミファが主体となり、シンガポールや中国にある海外子会社、および関連会社のステラファーマなどが現地での展開や販売を担っています。
■運輸
化学製品に特化した物流事業を中心に、倉庫保管業や通関業などの各種輸送関連サービスを提供しています。高純度薬品事業を物流や原料調達の面から支える重要な役割も担っています。
顧客からの貨物輸送料や倉庫保管料、通関手数料などを収益源としています。運営は主にブルーエキスプレスが中心となり、シンガポールの物流子会社や上海の海外子会社が現地展開を行っています。
■その他
自動車の整備や各種保険の代理業などのサービスを提供しています。
顧客からの自動車整備代金や保険代理業務に伴う手数料を収益源としています。この事業はブルーオートトラストが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、一時期減益が見られたものの、直近では需要回復や価格転嫁の進展により売上高と各種利益が持ち直し、増収増益基調へと回復しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 373億円 | 354億円 | 304億円 | 363億円 | 368億円 |
| 経常利益 | 57億円 | 43億円 | 31億円 | 42億円 | 44億円 |
| 利益率(%) | 15.3% | 12.3% | 10.1% | 11.5% | 12.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 43億円 | 18億円 | 16億円 | 24億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加えて、原材料価格の上昇に伴う販売価格への適正な転嫁を実施したことで、売上総利益および営業利益が増加し、収益性の改善につながっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 363億円 | 368億円 |
| 売上総利益 | 83億円 | 86億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.8% | 23.3% |
| 営業利益 | 43億円 | 46億円 |
| 営業利益率(%) | 12.0% | 12.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が6億円(構成比16%)、給料及び手当が6億円(同15%)を占めています。また、売上原価は282億円で、売上高全体の77%を占めています。
■(3) セグメント収益
高純度薬品はAI関連需要を背景とした半導体部門の出荷増により増収となりました。また、運輸も運送取扱量の増加により増収となり、全事業において堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 高純度薬品 | 315億円 | 318億円 |
| 運輸 | 46億円 | 49億円 |
| その他 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 363億円 | 368億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態(積極型)です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 71億円 | 60億円 |
| 投資CF | -43億円 | -82億円 |
| 財務CF | -28億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
スローガン『Beyond the Chemical ~化学を超えて 化学の向こうへ~』のもと、事業活動を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めています。人々が幸せになれる製品を生み出し、その結果としてより企業価値の高い企業を目指すという思いを込めています。
■(2) 企業文化
それぞれの事業において、「迅速果断」な意思決定のもと、既成概念にとらわれない強靭な経営体制を築くことを重視しています。変化を恐れず常に前向きに挑戦し続ける経営の実践に努め、ステークホルダーの期待に応える「健全で信頼される企業」として社会に貢献する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期から2028年3月期までを対象とする第4次中期経営計画を策定し、地盤固めを経た「変革」の時と位置づけています。高純度薬品事業の伸張に牽引される収益拡大を基軸に、最終年度における以下の数値目標の達成を目指しています。
* 営業利益を55億円
* ROEを8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
主力製品である半導体用高純度薬液の競争力を維持・強化し、北米市場や台湾市場へのアプローチによる海外シェア拡大に注力します。また、原材料の調達先の分散化や、フッ素化学の独自技術を活かした新規事業の創出を推進します。あわせて、人的資本の強化やデジタル化の推進による経営基盤の強化にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的成長の原動力は「人」であると認識し、性別や国籍、キャリアに拘らない多様な人材の採用を行っています。組織の方向性を理解し、自ら考え主体的に行動できる「自律型人材」の育成に取り組み、社員一人ひとりがやりがいを持って健康に働ける社内環境の整備を通じてパフォーマンス向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.5歳 | 15.2年 | 7,318,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金、譲渡制限付株式報酬を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 66.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 76.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(85%)、定年退職後の再雇用率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の調達リスク
同社グループの原材料等の一部は特定の地域に在る供給源に依存しており、供給が逼迫または中断した場合には生産活動の遅れや停止に繋がる可能性があります。調達リスクを軽減するために複数の地域やサプライヤーからの購入、継続的な新規供給源の開発に取り組んでいます。
■(2) 特定事業への高い依存
売上高において高純度薬品事業の半導体関連が占める割合が高く、市況変動が大きい半導体業界の動向に業績が左右されやすい状況です。電子や電気機器業界の需要下降や価格競争の激化による販売価格の下落が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 災害や事故等に伴う生産活動の停止リスク
突発的な自然災害や不慮の事故により製造設備の損壊や原材料の調達困難が生じた場合、生産活動が制限される可能性があります。事業継続計画の策定や保険の付保による損害軽減策を講じていますが、生産の中断は事業に影響を及ぼすリスクとなります。



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