※本記事は、ステラケミファ株式会社 の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ステラケミファってどんな会社?
半導体製造に不可欠な高純度フッ化水素酸で高いシェアを持つ、大阪本社の化学メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1916年に薬種商として創業し、1944年に前身となる橋本化成工業株式会社を設立しました。1994年に韓国、2002年に中国へ進出し、海外展開を推進しています。1997年に現在のステラケミファ株式会社へ社名を変更し、2000年に大阪証券取引所および東京証券取引所市場第一部へ上場しました。
2025年3月31日現在、同社グループの従業員数は連結で694名、単体で294名です。大株主については、筆頭株主は信託銀行の日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)、第2位は株式会社FUKADA、第3位はNIPPON ACTIVE VALUE FUND PLCとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 12.54% |
| 株式会社FUKADA | 10.07% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 4.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は橋本 亜希氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 橋本 亜希 | 代表取締役社長 | 2012年3月同社入社。取締役執行役員社長室長、代表取締役副社長を経て、2015年1月より現職。 |
| 坂 喜代憲 | 代表取締役専務生産統括 | 1982年4月同社入社。取締役泉工場兼三宝工場長、ブルーエキスプレス代表取締役社長などを経て、2021年6月より現職。 |
| 高野 順 | 常務取締役研究開発担当 | 1985年4月同社入社。取締役社長、取締役常務執行役員などを経て、2021年6月より現職。 |
| 小方 教夫 | 取締役執行役員営業統括兼大阪営業部長 | 1992年10月同社入社。東京営業部長、取締役執行役員総務部長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 土谷 匡章 | 取締役執行役員三宝工場長 | 1989年4月同社入社。2010年6月三宝工場長に就任。執行役員を経て、2016年6月より現職。 |
| 中島 康彦 | 取締役執行役員経理部長 | りそな銀行大阪公務部営業第一部長などを経て、2016年8月同社出向。2017年4月同社入社、同年6月より現職。 |
| 飯島 猛司 | 取締役執行役員シンガポール担当 | 1991年3月同社入社。国際営業部長、大阪営業部長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 菊山 裕久 | 取締役監査等委員 | 1977年3月同社入社。常務取締役、相談役などを経て、2016年6月より現職。 |
社外取締役は、西村 勇作(弁護士法人梅ヶ枝中央法律事務所パートナー弁護士)、松村 真恵(松村真恵税理士事務所所長)、山本 淳(弁護士法人堂島法律事務所パートナー弁護士)、西野 佳代子(西野佳代子税理士事務所所長)、内田 明美(イリソ電子工業株式会社社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「高純度薬品」、「運輸」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 高純度薬品
半導体デバイスの高集積度化を可能にする超高純度エッチング剤や洗浄剤として使用されるフッ化物を中心とした高純度薬品などの製造および販売を行っています。また、原子力関連施設で使用される中性子吸収材、リチウムイオン電池用添加剤、医薬品中間体製造用触媒なども手掛けています。
主な収益源は、半導体メーカー等の顧客に対する製品の販売代金です。運営は主にステラケミファ、STELLA CHEMIFA SINGAPORE PTE LTD、浙江瑞星フッ化工業有限公司などが行っています。
■(2) 運輸
化学製品に特化した物流事業を中心に、倉庫保管業、通関業などを行っています。高純度薬品事業を物流や原料調達の面から支える役割も担っています。
主な収益源は、顧客からの運送・保管・通関料などの役務収益です。運営は主にブルーエキスプレス、STELLA EXPRESS(SINGAPORE) PTE LTD、青星国際貨物運輸代理(上海)有限公司が行っています。
■(3) その他
自動車整備業、保険代理業を行っています。
主な収益源は、自動車整備に伴う整備料や保険契約に伴う代理店手数料です。運営は主にブルーオートトラストが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高は300億円台で推移しており、直近の2025年3月期は前期比で増収となりました。経常利益は2022年3月期に高水準となりましたが、その後は変動があり、2025年3月期は前期から回復して40億円台となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 329億円 | 373億円 | 354億円 | 304億円 | 363億円 |
| 経常利益 | 40億円 | 57億円 | 43億円 | 31億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 12.2% | 15.3% | 12.3% | 10.1% | 11.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 30億円 | 54億円 | 23億円 | 18億円 | 29億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が増加しています。営業利益率は前期から改善しており、収益性が向上しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 304億円 | 363億円 |
| 売上総利益 | 64億円 | 83億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.2% | 22.8% |
| 営業利益 | 27億円 | 43億円 |
| 営業利益率(%) | 8.9% | 12.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比15%)、研究開発費が6億円(同15%)、荷造運搬費が5億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
高純度薬品事業は、半導体市況の回復により出荷量が増加し、売上高・利益ともに前期を上回りました。運輸事業も取扱量の増加により増収増益となりました。全セグメントで売上が増加しており、特に主力事業の回復が全体の業績を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 高純度薬品 | 260億円 | 315億円 | 22億円 | 35億円 | 11.2% |
| 運輸 | 43億円 | 46億円 | 5億円 | 8億円 | 17.1% |
| その他 | 2億円 | 1億円 | 0.2億円 | 0.2億円 | 15.5% |
| 調整額 | -33億円 | -39億円 | -0.1億円 | -0.2億円 | - |
| 連結(合計) | 304億円 | 363億円 | 27億円 | 43億円 | 12.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、営業活動で得た資金で借入金の返済や株主還元を行いつつ、投資も実施する「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 65億円 | 71億円 |
| 投資CF | -58億円 | -43億円 |
| 財務CF | -1億円 | -28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、スローガン『Beyond the Chemical ~化学を超えて 化学の向こうへ~』のもと、事業活動を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。「健全で信頼される企業」として社会に貢献し、ステークホルダーの期待に応えることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「迅速果断」な意思決定のもと、既成概念にとらわれない強靭な経営体制を築くことを重視しています。変化を恐れず常に前向きに挑戦し続ける経営の実践に努め、事業活動を通じて適正な利益を確保することを掲げています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年3月期から2028年3月期までの3年間を対象とした第4次中期経営計画を策定しています。
* 売上高:420億円
* 営業利益:55億円
* ROE:8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「事業の持続的成長」「新規事業の創出」「資本コストと株価を意識した経営の実現」「経営基盤の強化」を重点施策としています。主力である半導体用高純度薬液の競争力維持・強化に加え、通信関連やエネルギー分野などの成長領域での販売拡大を目指します。
また、フッ素化学技術を活かした新規事業の創出に取り組み、2030年代半ばに50~100億円規模の事業化を目指します。具体的には、フロー合成法の確立やマテリアルズ・インフォマティクスの活用などを進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「人」を持続的成長の原動力と位置づけ、性別や国籍、キャリアにとらわれない多様な人材の採用を進めています。様々な考え方や経験を取り入れ、一人ひとりの強みを伸ばすことで、自ら考え行動できる「自律型人材」の育成に取り組んでいます。また、社員が心身共に健康でやりがいを持って働ける職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.2歳 | 14.9年 | 7,005,000円 |
※平均年間給与は、賞与、基準外賃金および譲渡制限が解除された譲渡制限付株式報酬を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.3% |
| 男性育児休業取得率 | 120.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 83.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(89%)、定年退職後の再雇用率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の調達リスクについて
同社グループの原材料の一部は特定の地域に在る供給源に依存しており、供給の逼迫や中断が発生した場合、生産活動に遅れや停止が生じる可能性があります。また、原材料価格の高騰は売上原価の増加となり、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、調達先の分散や新規供給源の開発、販売価格への転嫁等に取り組んでいます。
■(2) 特定事業への高い依存について
同社グループの売上高において、高純度薬品事業の半導体関連が占める割合が高く、半導体業界の市況変動により業績が左右される傾向があります。半導体需要や設備投資の減少、価格競争の激化などが発生した場合、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、製品競争力の強化や他分野への展開を進めています。
■(3) 生産・事業活動に係るリスクについて
自然災害や事故により、製造設備の損壊や原材料調達難、社会インフラの機能不全などが発生した場合、生産活動が制限され、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、新たな感染症の拡大等による事業活動への支障や需要減少のリスクもあります。これに対し、設備の保守点検や防災訓練、事業継続計画の策定、保険の付保等の対策を講じています。



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