※本記事は、保土谷化学工業株式会社 の有価証券報告書(第167期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 保土谷化学工業ってどんな会社?
1916年創業の化学メーカーです。有機合成技術を核に、有機EL材料や機能性樹脂、農薬などを展開しています。
■(1) 会社概要
1916年に程谷曹達工場として発足し、1933年に株式を公開しました。1939年に現在の社名となり、1949年には東京・大阪・名古屋各証券取引所に上場しました。長年の化学品製造に加え、2001年には有機EL材料の製造を開始し、現在の主力事業の一つへと成長させています。2022年の東証市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は942名、単体では478名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は化学メーカーの東ソーです。東ソーとは歴史的に資本・取引関係があり、機能性樹脂事業等において関係性を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.94% |
| 東ソー | 8.60% |
| みずほ銀行 | 3.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表者は取締役社長代表取締役の松本祐人氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松本 祐人 | 取締役社長代表取締役 | 1983年入社。電子・色素材料事業部長、事業推進部長などを経て、2016年11月より現職。 |
| 笠原 郁 | 取締役 | 1981年入社。研究開発部長、研究開発部門副総轄、常務執行役員などを経て、2020年6月より現職。 |
| 佐藤 伸一 | 取締役 | 1982年日本長期信用銀行入行。2014年同社入社。内部統制部長、法務部長、常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
| 松野 眞一 | 取締役(監査等委員) | 1981年入社。経営企画部長、郡山工場長、常務執行役員、桂産業社長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、加藤周二(元経済産業省・マコト取締役会長)、坂井眞樹(元農林水産省・水産物安定供給推進機構専務理事)、藤野しのぶ(キャリアカウンセラー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機能性色素」「機能性樹脂」「基礎化学品」「アグロサイエンス」「物流関連」および「その他」事業を展開しています。
■機能性色素
有機EL材料、画像記録材料(トナー用電荷制御剤等)、各種染料(アルミ着色用等)、バイオ材料などを製造・販売しています。スマートフォンやタブレット端末、プリンターなどが主な用途です。
収益は製品の販売対価として顧客から得ています。運営は同社のほか、韓国の子会社であるSFC CO., LTD.、HODOGAYA CHEMICAL KOREA CO., LTD.、REXCEL CO., LTD.などが製造・販売を行っています。
■機能性樹脂
ウレタン原料(PTG)、防水材・止水材などの建築・土木用材料、医薬・電子材料用の中間体などを製造・販売しています。また、一部で防水工事なども行っています。
収益は製品の販売および工事代金として得ています。運営は同社が製造・販売を行うほか、連結子会社の保土谷建材が製造・販売および工事を行っています。
■基礎化学品
過酸化水素およびその誘導品(過酢酸、過炭酸ナトリウム等)などの工業用基礎原料を製造・販売しています。紙パルプの漂白や工業薬品、食品添加物など幅広い産業で使用されています。
収益は製品の販売対価として得ています。運営は主に同社が行い、一部製品は連結子会社の桂産業を通じて販売されています。
■アグロサイエンス
除草剤、殺虫剤、酸素供給剤などの農薬および農業資材を製造・販売しています。緑地管理や農業生産の現場が主な顧客です。
収益は製品の販売対価として得ています。運営は同社のほか、連結子会社の保土谷UPLおよび保土谷アグロテックなどが製造・販売を行っています。
■物流関連
倉庫業、貨物運送取扱業、ISOタンクコンテナ保管事業などを展開しています。危険物倉庫などの特殊な保管ニーズにも対応しています。
収益は保管料や輸送量に応じた対価として得ています。運営は連結子会社の保土谷ロジスティックスが行っています。
■その他
上記セグメントに含まれない事業として、化学品の分析や研究開発業務の受託などを行っています。
収益は業務受託料として得ています。運営は主に連結子会社の保土谷コントラクトラボが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は過去最高水準に達しています。利益面では、2023年3月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後は回復基調にあり、直近では増益となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 412億円 | 419億円 | 433億円 | 443億円 | 486億円 |
| 経常利益 | 58億円 | 69億円 | 42億円 | 47億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 16.5% | 9.7% | 10.6% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 16億円 | 12億円 | 17億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約10%増加し、売上総利益率も改善しています。これは増収効果に加え、生産性の向上などが寄与したと考えられます。営業利益率は10.0%となり、高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 443億円 | 486億円 |
| 売上総利益 | 171億円 | 192億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.6% | 39.5% |
| 営業利益 | 40億円 | 49億円 |
| 営業利益率(%) | 8.9% | 10.0% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が56億円(構成比39%)、人件費が28億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
機能性色素セグメントが大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。有機EL材料の需要伸長が主な要因です。基礎化学品やアグロサイエンスは前期比で減収または減益となりましたが、物流関連は増収増益で推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機能性色素 | 212億円 | 251億円 | 32億円 | 38億円 | 15.3% |
| 機能性樹脂 | 83億円 | 85億円 | -1億円 | -1億円 | -0.6% |
| 基礎化学品 | 78億円 | 75億円 | 2億円 | 4億円 | 5.5% |
| アグロサイエンス | 49億円 | 55億円 | 4億円 | 3億円 | 5.5% |
| 物流関連 | 17億円 | 18億円 | 3億円 | 4億円 | 19.7% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 0億円 | 0億円 | 11.1% |
| 調整額 | - | - | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 443億円 | 486億円 | 40億円 | 49億円 | 10.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
保土谷化学工業は、営業活動により潤沢な資金を創出し、事業活動を支えています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資や資産運用を行っています。財務活動では、借入金の返済や株主への還元を実施し、安定的な財務基盤の維持に努めています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 83億円 | 57億円 |
| 投資CF | -40億円 | -65億円 |
| 財務CF | -21億円 | -19億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「化学技術の絶えざる革新を通じ、お客様が期待し満足する高品質の製品・サービスを世界に提供し、環境調和型の生活文化の創造に貢献する」ことをPURPOSE(経営理念)としています。
■(2) 企業文化
中期経営計画「SPEED 25/30」において、「スペシャリティ製品を軸としたオリジナリティにあふれるポートフォリオと環境に優しいモノづくりで、持続可能な社会の実現に貢献する企業」を目指す企業像として掲げています。また、研究開発・生産・販売部門が三位一体となって顧客の要望に対応する体制を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2021年度を初年度とする中期経営計画「SPEED 25/30」を推進しており、2025年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:500億円
* 営業利益:75億円
* 営業利益率:15%
* ROE:9%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、「事業強化」「新製品創出」「生産性向上」「経営基盤強化(DXの推進)」を重点施策としています。具体的には、有機EL材料の販売チャンネル多様化、環境対応型製品の販売拡大、バイオPTGの展開などを進めています。また、生産体制の増強や新製品開発のための設備投資も積極的に行っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「SPEED 25/30」において、エンゲージメントの向上による「役職員全員が働きがいを実感できること」を戦略目標としています。成長意欲、挑戦意欲、革新志向を持った「自ら学び考え行動できる人材」の採用・育成を推進し、企業価値向上と連動した人事施策を実行しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.6歳 | 16.9年 | 6,980,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.1% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 53.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外での事業活動リスク
売上高の約5割を海外市場が占めており、特に韓国には複数の現地法人を有しています。為替レートの変動に加え、紛争、テロ、政情不安、地政学リスクの高まりなどが生じた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料調達リスク
原材料・燃料を国内外から調達しており、調達先の情勢や需給変動、物流網の混乱等により調達コストが上昇したり、入手困難となったりするリスクがあります。特に国外からの調達については各国の環境規制等の影響を受ける可能性があります。
■(3) 製品価格および市場競争リスク
競合会社との価格競争激化や市場・顧客ニーズの変化により、シェアの低下や利益の減少を招く可能性があります。また、主要製品の需要は主要市場である日本・欧米・アジアの景気動向の影響を受けます。
■(4) 研究開発および知的財産権リスク
最先端の研究開発に取り組んでいますが、市場やニーズの急変等により開発方針の変更が発生する可能性があります。また、他社による類似技術の開発や、将来的に他社から知的財産権への抵触を訴えられるリスクも存在します。



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