片倉コープアグリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

片倉コープアグリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

片倉コープアグリは東証スタンダード市場に上場し、各種肥料や化学品、不動産賃貸などを展開する企業です。直近の業績は、肥料の販売数量増加などにより増収となったものの、販管費の増加により営業減益となり、構造改革費用の計上で最終赤字となりました。


※本記事は、片倉コープアグリ株式会社の有価証券報告書(第111期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 片倉コープアグリってどんな会社?

(1) 会社概要


1920年の設立以来、長きにわたり肥料の製造販売を行っています。1957年に日本チッカリン肥料などと経営統合し、1997年には東証第一部への上場を果たしました。その後、2015年にコープケミカルと経営統合を行い、現在の社名に変更して事業基盤をさらに拡大しています。

現在の同社グループは、連結従業員数797名、単体従業員数612名体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業会社の全国農業協同組合連合会で、第2位も事業会社の丸紅、第3位は金融機関の農林中央金庫です。

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は二井英一氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
二井 英一 代表取締役社長 丸紅に入社後、同社執行役員農業化学品本部副本部長などを歴任。2024年に顧問を経て現職。
橘田 安正 代表取締役常務執行役員 全国農業協同組合連合会に入会後、同会山梨県本部副本部長などを経て2021年より現職。
一條 龍男 取締役常務執行役員 同社に入社後、経営企画室長や肥料本部長などを歴任し、2021年より現職。
杉本 真 取締役執行役員 農林中央金庫に入庫し、同金庫シンガポール支店長などを経て2020年より現職。


社外取締役は、小田孝治(丸紅 執行役員)、佐野公哉(片倉工業 顧問)、木村武(日本土壌肥料学会 常務理事)、加藤貴子(増田法律事務所 弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「肥料」「化学品」「不動産」および「その他」事業を展開しています。

肥料事業


配合肥料、化成肥料、ペースト肥料などの各種肥料および育苗培土の生産と販売を行っています。全国農業協同組合連合会などの系統組織を主要な顧客として、農業生産に不可欠な資材を広く供給しています。

これらの製品の販売から収益を得ています。事業の運営は片倉コープアグリ、および連結子会社の大日本産肥やアグリドックなどが担当しています。

化学品事業


化粧品原料、飼料用リン酸カルシウム、工業用リン酸、合成雲母などを生産・販売しています。農業以外の新素材関連の研究開発も行い、高付加価値な機能性材料を国内外の市場に展開しています。

製品の販売を通じて収益を得ています。運営は片倉コープアグリを中心に、関連会社の防城天睦化工などが製品の製造と販売を担っています。

不動産事業


オフィスビルや営業用店舗などを賃貸し、保有する不動産の有効活用を図っています。2025年には東京都渋谷区に新たな賃貸用ビルを竣工させ、安定的な収益基盤の拡充を進めています。

不動産の賃貸収入から収益を得るビジネスモデルです。物件の運営と管理は片倉コープアグリ、および子会社のKCA L&Eが担当しています。

その他事業


食品の製造・販売をはじめ、化学工業品の販売、運送業務、プラントや機械・電気設備などの設計および施工、構内での請負作業など、多様な周辺事業を展開しています。

製品の販売や請負作業による手数料などから収益を得ています。運営はカタクラフーズ、KCA L&E、コープ朝日興産などの子会社がそれぞれ担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は400億〜500億円規模で安定して推移しています。経常利益は一時赤字となる期もあったものの、直近では黒字を維持しています。一方、当期利益については、生産拠点の再編などに伴う構造改革費用を計上した影響により、直近では赤字に転落しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 390億円 510億円 412億円 414億円 427億円
経常利益 12億円 35億円 -8億円 7億円 4億円
利益率(%) 3.1% 6.9% -1.9% 1.6% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 20億円 -5億円 3億円 -12億円

(2) 損益計算書


売上高が増加し、売上総利益も拡大して粗利率が改善したものの、販管費の増加により営業利益は減益となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 414億円 427億円
売上総利益 62億円 65億円
売上総利益率(%) 15.0% 15.2%
営業利益 7億円 5億円
営業利益率(%) 1.6% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が18億円(構成比30%)、運賃が15億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


肥料事業は販売数量の増加などにより増収となったものの、システム関連費用の増加等により利益は横ばいにとどまりました。化学品事業は減収減益となりました。不動産事業は新規ビルの本格稼働により大幅な増収増益を達成し、高い利益率を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
肥料 336億円 351億円 0.3億円 0.1億円 0.0%
化学品 71億円 66億円 7億円 4億円 5.6%
不動産 3億円 6億円 -0.1億円 2億円 32.9%
その他 4億円 4億円 0.3億円 0.2億円 5.6%
調整額 -億円 -億円 -1億円 -1億円 -%
連結(合計) 414億円 427億円 7億円 5億円 1.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2億円 53億円
投資CF -25億円 -38億円
財務CF 21億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-5.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も46.8%で市場平均を下回っています。いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「企業活動を通して社会に貢献する」を基本理念として掲げています。将来にわたって社会からの信頼を高めるべく、企業の社会的責任を最重要視し、公明正大な事業活動を通して企業価値の向上および持続的成長、株主利益の拡大を図ることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社の行動基準(グループ・コンプライアンス・マニュアル)を定め、コンプライアンスを最重要事項に位置づけた企業活動を行っています。また、年齢や性別等に関係なく、すべての従業員が働きやすい環境で持てる力を十分に発揮し、やりがいを持って働くことのできる会社を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2030年度までを「構造改革期間」と位置づけ、中長期的には以下の数値目標を掲げています。

* 親会社株主に帰属する当期純利益:2030年度17億円以上、2034年度20億円以上
* ROE:2030年度6%以上、2034年度8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


肥料事業では製販分離体制の運用や生産拠点の再編を進め、低コスト生産体制と農業ソリューション事業の展開を加速します。化学品事業では東南アジア市場への販路拡大や、環境対応素材等の展開を強化します。不動産事業では安定的なキャッシュ・フロー創出を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本」を最重要資産の一つと位置づけ、多様な知識、経験および価値観を有する人材の確保と育成に取り組んでいます。ライフステージに合わせた柔軟な職掌制度の導入や、適性に合わせた教育ローテーションを提供し、多様な人材を能力本位で管理職へ登用する方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.6歳 18.7年 5,723,975円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.7%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 73.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内市場環境の変化


肥料事業は農業政策や農業者の高齢化等による耕地面積減少、化学品事業は物価上昇に伴う消費者の生活防衛意識の高まりや景気後退による顧客企業の減産により、需要低迷や販売数量の減少が生じるリスクがあります。

(2) 肥料流通の変化


肥料の国内流通は全国農業協同組合連合会などの系統組織が大きなシェアを占めており、同社の販売も大半を系統組織に依存しています。何らかの理由で流通シェアが減少したり、流通が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料事情および製品在庫


原材料を輸入品に依存しているため、海外情勢や為替変動等により価格高騰や供給不足が生じるリスクがあります。また、原材料市況が大きく下落した場合、保有する原材料や製品在庫の資産価値が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。