片倉コープアグリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

片倉コープアグリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

片倉コープアグリは、東証スタンダード市場に上場し、肥料、化学品、不動産事業などを展開する企業です。直近の決算では、売上高は微増ながら、価格是正やコスト抑制により営業利益および経常利益が黒字転換を果たしました。最終損益も黒字化し、全体として増収増益の回復基調にあります。


※本記事は、片倉コープアグリ株式会社 の有価証券報告書(第110期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 片倉コープアグリってどんな会社?


創業100年を超える歴史を持ち、肥料事業を主力に化学品や不動産事業も展開する、JA全農および丸紅グループの関連会社です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1920年に設立された日支肥料に遡り、1957年に片倉チッカリンへ商号変更しました。1997年に東証一部へ上場後、2015年にコープケミカルと経営統合し、現在の片倉コープアグリが発足しました。2022年の市場区分見直しを経て、現在はスタンダード市場に上場しています。2025年には物流・エンジニアリング子会社を合併し、KCA L&Eを発足させています。

連結従業員数は821名、単体では614名体制です。大株主の構成は、筆頭株主が農業協同組合の全国組織である全国農業協同組合連合会(JA全農)、第2位が総合商社の丸紅、第3位が系統金融機関の農林中央金庫となっており、農業界および商社との結びつきが非常に強い資本構成となっています。

氏名 持株比率
全国農業協同組合連合会 23.58%
丸紅 22.60%
農林中央金庫 3.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は二井 英一氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
二井 英一 代表取締役取締役社長 丸紅入社後、アグリ事業本部長や常務執行役員を歴任。2024年より現職。
橘田 安正 代表取締役常務執行役員 全国農業協同組合連合会出身。山梨県本部副本部長等を経て、2021年より現職。
一條 龍男 取締役常務執行役員 同社入社後、肥料業務部長や経営企画室長を歴任。2021年より現職。
杉本 真 取締役執行役員 農林中央金庫出身。シンガポール支店長等を経て、2020年より現職。
髙橋 正臣 取締役 全国農業協同組合連合会耕種資材部長。2024年より現職。


社外取締役は、小田 孝治(丸紅 執行役員)、佐野 公哉(片倉工業 相談役)、木村 武(日本土壌肥料学会 常務理事)、加藤 貴子(増田法律事務所 弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「肥料事業」、「化学品事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

肥料事業

配合肥料、化成肥料、ペースト肥料、液状肥料などの各種肥料および育苗培土の製造・販売を行っています。また、土壌微生物の機能を利用した資材や、環境課題に応えるバイオスティミュラント資材の展開も進めています。

収益は主に製品の販売代金から得ています。販売の多くは、大株主である全国農業協同組合連合会(JA全農)や丸紅を通じて行われています。運営は同社のほか、大日本産肥、アグリドック、宮古カルサインなどの連結子会社が行っています。

化学品事業

化粧品原料、飼料用リン酸カルシウム、工業用リン酸、合成雲母(マイカ)などの製造・販売を行っています。化粧品原料などの有機素材や、電子材料用途などの無機素材を取り扱っています。

収益は製品の販売代金により得ています。運営は主に同社が行い、物流や一部製造に関してはコープ商事物流(現 KCA L&E)や関連会社が関与しています。

不動産事業

保有する不動産の有効活用を目的として、オフィスビルや商業施設、営業用店舗などの賃貸を行っています。

収益はテナントからの賃貸料収入です。運営は同社およびコープ商事物流(現 KCA L&E)が行っています。

その他事業

上記セグメントに含まれない事業として、運送業務、設備の建設・補修工事、食品の製造販売、飼料や農産物の取り扱いなどを行っています。

収益は、運送代金、工事代金、食品販売代金などから得ています。運営は、カタクラフーズ、コープ商事物流、コープエンジニアリング(両社は合併しKCA L&E)、コープ朝日興産などの連結子会社および同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で推移していますが、2023年3月期に510億円まで拡大した後、反動減が見られました。利益面では、2024年3月期に赤字転落しましたが、直近の2025年3月期には黒字転換を果たし、回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 354億円 390億円 510億円 412億円 414億円
経常利益 13億円 12億円 35億円 -8億円 7億円
利益率(%) 3.6% 3.1% 6.9% -1.9% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 10億円 20億円 -5億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、売上原価の低減により売上総利益が大きく改善しています。これにより、営業利益および営業利益率はマイナスからプラスへと転換し、収益性が回復しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 412億円 414億円
売上総利益 47億円 62億円
売上総利益率(%) 11.5% 15.0%
営業利益 -9億円 7億円
営業利益率(%) -2.1% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が16億円(構成比30%)、運賃が13億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学品事業が売上・利益ともに伸長し、全体を牽引しました。主力である肥料事業は売上が微減したものの、黒字転換を果たしています。不動産事業は減収減益となりましたが、その他事業は増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
肥料事業 336億円 330億円 -12億円 1億円 0.2%
化学品事業 54億円 60億円 4億円 6億円 10.5%
不動産事業 4億円 3億円 1億円 0億円 0.9%
その他 18億円 20億円 0億円 1億円 4.7%
調整額 -億円 -億円 -1億円 -1億円 -
連結(合計) 412億円 414億円 -9億円 7億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

パターン判定:積極型

営業CFはプラスを維持し、財務CFで調達した資金と合わせて投資CFに回している状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 2億円
投資CF -22億円 -25億円
財務CF 11億円 21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.5%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.5%でスタンダード市場(製造業)平均(57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「企業活動を通して社会に貢献する」を基本理念として掲げています。この理念のもと、企業の社会的責任を最重要視し、公明正大な事業活動を通じて企業価値の向上、持続的成長、および株主利益の拡大を図ることを基本方針としています。

(2) 企業文化


社会からの信頼を高めるために、企業の社会的責任(CSR)を重視する文化があります。揺るがない企業理念や行動規範のもと、ステークホルダーの課題に対応し、経営効率や投資効率を一層重視しながら、次の100年の成長に向けた改革に踏み出す姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けて「日本が誇る農業ソリューションカンパニーへ」「世界へ向けて素材の機能性を創出する肥料・化学品メーカーへ」というグループビジョンを掲げています。数値目標として以下を設定しています。

* 純利益:20億円以上
* ROE:8%以上
* DER:0.5程度

(4) 成長戦略と重点施策


「事業ポートフォリオ変革」を掲げ、肥料事業の収益力強化と、化学品事業および新規領域への重点投資を推進します。肥料事業ではバイオスティミュラント資材への本格進出やコスト構造改革を行い、化学品事業では海外展開やM&Aを通じた成長を目指しています。また、不動産事業では渋谷再開発ビルの安定収益化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本」を最重要資産の一つと位置づけ、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。新卒・キャリア採用を問わず能力本位で管理職へ登用するほか、2023年より「エリア総合職」「専門職」コースを導入し、職掌転換制度により柔軟なキャリア形成を支援しています。また、3つのローテーション制度を通じて専門性と総合力を備えた人材を育成しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.6歳 19.4年 5,609,708円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.7%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.3%
男女賃金差異(正規) 78.1%
男女賃金差異(非正規) 65.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内農業環境の変化


主力である肥料事業は、国内農業政策や環境変化の影響を強く受けます。農産物消費量の減少、農業者の高齢化や耕地面積の減少に伴う肥料需要の低下、あるいは減肥政策などが進んだ場合、同社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 肥料流通の系統依存


肥料の国内流通において、同社グループは全国農業協同組合連合会(JA全農)などの系統組織への販売に大きく依存しています。系統組織の流通シェアが大きく減少したり、流通自体が困難になる事態が発生した場合、販売面で大きな影響を受ける可能性があります。

(3) 原料事情および価格変動


肥料および化学品事業の主要原料の多くを海外に依存しているため、国際市況、為替、エネルギー価格、地政学的リスク(戦争や輸出規制など)の影響を受けやすくなっています。原料価格の高騰や調達難、供給不足が発生した場合、生産コストの上昇や操業への支障により、業績が悪化する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。