旭有機材 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭有機材 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

旭有機材は東京証券取引所プライム市場に上場し、管材システム事業、樹脂事業、水処理・資源開発事業の3部門をグローバルに展開しています。直近の業績では、海外での半導体関連の設備投資需要の落ち着きや、成長分野への事業基盤強化に伴う固定費の増加などの影響を受け、前年同期比で減収減益となっています。


※本記事は、旭有機材株式会社の有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 旭有機材ってどんな会社?


同社は配管システム、樹脂製品、水処理関連の3事業を柱とするメーカーです。

(1) 会社概要


1945年3月に日窒化学工業の子会社として航空機用強化木の製造を目的に設立されました。同年11月に合成樹脂成型品等へ事業転換し社名変更。1950年11月に旭有機材工業へと改称し、1952年よりアサヒAVバルブの製造を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第2部へ上場し、2016年に現社名に変更しています。

同社グループの従業員数は連結で1,748名、単体で899名です。筆頭株主は事業会社の旭化成で、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
旭化成 30.80%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.50%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 7.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長執行役員 CEOは中野賀津也氏が務めています。取締役7名中、社外取締役は4名となっており、過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
中野賀津也 代表取締役社長執行役員 CEO 1981年旭化成工業に入社。2009年に同社へ入社し、管材システム事業部長等を経て2018年代表取締役社長に就任。管理本部長等を歴任し、2025年4月より現職。
末留末喜 取締役副社長執行役員 COO 1992年に同社へ入社。経営企画室長などを経て、2017年取締役に就任。管材システム事業部長、樹脂事業部長などを歴任し、2025年4月より現職。
氷上英夫 取締役専務執行役員 CFOコーポレート統括本部長 1986年旭化成工業に入社。旭化成で経営戦略や事業開発を歴任後、2023年同社へ入社し取締役に就任。管理本部長等を経て2025年4月より現職。


社外取締役は、吉村温子(VG-C代表取締役)、柏木雅人(元旭化成ファーマ執行役員)、窪木登志子(窪木法律事務所所長)、福井実(元産業技術総合研究所上席イノベーションコーディネーター)です。

2. 事業内容


同社グループは、「管材システム事業」「樹脂事業」「水処理・資源開発事業」を展開しています。

(1) 管材システム事業


塩化ビニル等の合成樹脂製配管材料の製造・販売、および配管工事の設計・施工を行っています。主力製品である樹脂バルブを中心に、半導体製造装置向けの精密バルブなど電子産業用途や、海水淡水化施設向けの大口径バルブ等、幅広い市場に製品を提供しています。

製品の販売やエンジニアリングサービスから収益を得ています。運営は同社やアサヒアメリカ等が製造・販売を担い、アビトップや大和興産などが販売代理店として展開しています。

(2) 樹脂事業


鋳物用樹脂、鋳物用レジンコーテッドサンド、一般工業用樹脂、発泡材料用樹脂、電子材料用樹脂などの製造および販売を行っています。半導体の高度化に貢献する低メタル化技術を活用した電子材料のほか、建築現場向けの高断熱ウレタンや自動車向け製品などを提供しています。

製品の販売から収益を得ています。事業の運営は同社を中心に、中国の旭有機材樹脂(南通)有限公司、インドのアサヒモディマテリアルズ、メキシコのアサヒユウキザイメキシコなどの海外子会社も製造・販売を担い、ランドウィックが断熱・内装工事を行っています。

(3) 水処理・資源開発事業


水処理分野において水処理施設の設計、施工、維持管理の請負や環境改善薬剤の提供を行うほか、資源開発分野ではさく井工事の設計や請負、地熱発電における蒸気井の掘削工事などを展開しています。

工事の請負代金や施設の維持管理サービス、薬剤の販売から収益を得ています。この事業の運営は、主にドリコおよびドリコアクアサーブが設計・施工・請負等を担当し、旭環美水処理(蘇州)有限公司が設備製作・販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は増加傾向から直近2期でやや落ち着きを見せています。利益面では2期前まで急拡大を遂げたものの、その後は半導体工場建設の見直し等の外部環境の変化や事業基盤強化に伴う固定費の増加により、減益傾向となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 647億円 771億円 874億円 852億円 801億円
経常利益 70億円 121億円 161億円 113億円 80億円
利益率(%) 10.8% 15.7% 18.4% 13.2% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 24億円 65億円 55億円 48億円 33億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益がいずれも減少しており、売上総利益率もやや低下しています。さらに、販売費及び一般管理費は微増しており、営業利益の大幅な減少につながる構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 852億円 801億円
売上総利益 329億円 295億円
売上総利益率(%) 38.7% 36.9%
営業利益 111億円 76億円
営業利益率(%) 13.1% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が84億円(構成比38%)、製品運送費が23億円(同10%)、不動産賃借料・リース料が18億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上を見ると、管材システム事業は海外の設備投資遅れ等で減収となりました。水処理・資源開発事業も一部工事の進捗遅延により減収となっています。樹脂事業は、環境対応型の高付加価値品へのシフトを進めましたが、前年同等の水準に留まりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
管材システム事業 523億円 481億円
樹脂事業 230億円 230億円
水処理・資源開発事業 98億円 90億円
連結(合計) 852億円 801億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で十分なキャッシュを創出し、その資金で投資や借入金の返済を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 113億円 104億円
投資CF -52億円 -95億円
財務CF -16億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは企業理念の中で、存在価値を「信頼の品質と真摯な対応による安心の提供」と定めています。その実現のために「ものづくりのプロセスを、お役立ちで支える」ことを使命とし、顧客の課題解決に真摯に向き合うことで、専門性の高い独自の技術を基にニッチトップ企業として社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、使命を果たすための目指す姿として「『はじめて』に挑み『違い』をつくる」という価値観を掲げています。この企業理念を社員一人ひとりが活動の拠り所とし、より良い企業風土と強い企業文化を磨いて強くすることで、現状にとどまらず変化を先取りして成長を続ける組織づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年度を最終年度とする中期経営計画「GNT2030」を策定し、以下の目標を掲げています。

* 連結売上高 1,200億円
* 連結営業利益 200億円
* EBITDA 300億円
* ROIC 10%
* ROE 15%
* D/Eレシオ 0.5以下
* 総還元性向 50~70%程度

(4) 成長戦略と重点施策


同社は成長戦略を「強化拡大」「事業変革」「深化・安定成長」に分類し、事業ポートフォリオ戦略を推進しています。管材システム事業では電子産業分野の販路拡大やエンジニアリング機能とのシナジー創出、樹脂事業では電子材料分野での低メタル化技術の活用による用途拡大を目指します。また無形資産を原動力として強化します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」が重要な経営資本であるという認識のもと、事業を成長させる人材の確保と、自らが主役となって仕事に取り組む人創りを進めています。多様な社員を公正に評価し成長機会を提供する人事制度改革に加え、働き甲斐と働きやすさを追求する環境整備を行い、社員のワークエンゲージメント向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.1歳 16.1年 6,833,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.0%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワークエンゲージメント(偏差値48.6)、ストレスチェック受検率(99.1%)、離職率(5.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 政治情勢の変化


同社グループは国内外に生産・営業拠点を有しており、投資先市場での予期せぬ法令改正や規制強化、戦争・紛争等の政治的・社会的混乱が事業活動に支障をきたす可能性があります。海外危機対応マニュアルの整備や情報収集を行い、リスク顕在化時は従業員の安全確保と被害の最小化に努めています。

(2) 大規模な事故・災害の発生


国内外の生産工場において、設備の故障等に起因する火災・爆発・漏洩などの重大事故や、大規模災害による工場損壊が発生した場合、生産活動が停止し業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。定期的な点検・訓練の実施やBCP(事業継続計画)の策定、損害保険への加入等を通じてリスクの低減を図っています。

(3) 人材不足・流出


既存事業の急速な拡大に伴う人材不足や、技能・ノウハウを持つ人材の流出により、企業の成長力が低下するリスクがあります。これに対応するため、新卒とキャリア採用の両方を活用した計画的な人材確保を進めるとともに、経営層との対話を通じて社員が能力を発揮できる組織文化の醸成や組織開発に取り組んでいます。

(4) サプライチェーンと原材料調達


同社の製品は塩化ビニル樹脂やフェノール樹脂など石油化学系原料の比率が高く、市況変動や地政学的リスクによる価格高騰・供給不足が生じた場合、生産活動や収益に悪影響を及ぼす可能性があります。複数社からの調達や情報収集を徹底し、原材料高騰時には適時製品価格への反映を図ることで対策しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。