藤倉化成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤倉化成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤倉化成は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、コーティング、塗料、電子材料、化成品などのアクリル樹脂派生製品を展開する化学メーカーです。2026年3月期の連結業績は、塗料分野や化成品分野の販売が堅調に推移したことで、売上高は556億円と微増収となり、営業利益は23億円と大幅な増益を達成しました。


※本記事は、藤倉化成の有価証券報告書(第115期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 藤倉化成ってどんな会社?


アクリル樹脂をベースとしたコーティング材や塗料、電子材料などの高付加価値製品を提供する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1938年に航空機用有機ガラスや塗料の製造を目的に藤倉化学工業として設立されました。1958年に現在の藤倉化成へ商号を変更し、1962年に東京証券取引所へ上場しています。その後、米国やアジア、欧州へグローバルに生産・販売拠点を拡大し、自動車や建築、電子部品向けにコーティング・化学製品事業を展開しています。

従業員数は連結で1,198名、単体で427名体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は電線ケーブルなどを製造する事業会社のフジクラで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は外国法人となっています。フジクラとは資本提携関係にあり、同社への製品の販売も行っています。

氏名 持株比率
フジクラ 22.55%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.79%
BNP PARIBAS FRANKFURT 2S/JASDEC/GERMAN RESIDENTS-OTHERS 3.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は栗原進氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤大輔 代表取締役会長 1977年同社入社。コーティング事業部営業部長、コーティング事業部長、米国子会社代表取締役社長、電子材料事業部長、代表取締役社長を経て、2025年4月より現職。
栗原進 代表取締役社長技術戦略推進室担当 1991年同社入社。管理本部経理部担当部長兼管理会計課長、管理本部管理部長兼企画課長、管理本部長を経て、2025年4月より現職。
梶原久 常務取締役鷲宮事業所長、塗料事業部長、関連会社(塗料事業三販社)担当 1982年同社入社。コーティング事業部名古屋営業所長、コーティング事業部長を経て、2021年6月に常務取締役、塗料事業部長。2025年6月より現職。
川口浩俊 常務取締役コーティング事業部長、関連会社(海外)担当 1991年同社入社。海外事業企画部長、アセアン統括部長、取締役コーティング事業部長、中京ペイントサービス代表取締役社長等を経て、2026年6月より現職。
土谷豊弘 取締役管理本部長、監査室・サステナビリティ推進部・関連会社(国内)担当 中央監査法人等を経て2016年同社入社。管理本部経理部長、取締役管理本部副本部長を経て、2025年4月より現職。
石井貴宏 取締役電子材料事業部長、メディス材料部・関連会社(合成樹脂事業)担当 1993年同社入社。電子材料事業部上海駐在員事務所長、同営業部長を経て、2023年6月より現職。
須藤和弘 取締役佐野事業所長、環境安全部・輸出管理室担当 1991年同社入社。塗料事業部技術部長、同生産部長、同副事業部長を経て、2025年6月より現職。
石本貴幸 取締役鷲宮事業所副所長、化成品事業部長、技術戦略推進室長、品質保証部担当 1998年同社入社。化成品事業部化成品部長、同副事業部長兼技術戦略推進室長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、長浜洋一(元フジクラ代表取締役社長)、川井克之(公認会計士川井克之事務所長)、妹尾智子(仰星コンサルティングディレクター)、宮川浩(宮川公認会計士税理士事務所長)、迎田由紀(LTE法律事務所所属)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コーティング」「塗料」「電子材料」「化成品」「合成樹脂」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) コーティング事業


自動車、化粧品容器、ホビー向けのプラスチック用コーティング材を開発・提供しています。

同社および中京ペイントサービス、海外の現地法人が製造・調色を行い、同社やフジケミ近畿などを通じた顧客からの製品販売代金によって収益を得ています。

(2) 塗料事業


集合住宅や戸建住宅の新築・リフォーム向けの内外装用塗料や、土木インフラ施設向けのコーティング材を提供しています。

同社およびフジケミ近畿、フジケミカルが製造を担い、フジケミ東京などの販売会社を通じて製品を販売し収益を獲得しています。

(3) 電子材料事業


電子機器や自動車部品向けに、導電性樹脂塗料や導電性接着剤などの高機能性材料を開発・提供しています。

同社が製造を担い、フジケミ近畿などの関係会社を通じて製品を販売し、取引先から代金を受け取る収益モデルです。

(4) 化成品事業


半導体や光学フィルム向けの粘着剤、複合機用のトナー用バインダー樹脂、メディカル分野の体外診断薬などを提供しています。

同社が製品の製造および販売を行い、フジケミ近畿などを通じた販売代金によって収益を得ています。

(5) 合成樹脂事業


車載用ナビパネルやテレビ用の導光板・拡散板の原料となるアクリル樹脂の原材料や加工品を仕入れ、販売しています。

運営は主に子会社の藤光樹脂が担当し、製品の仕入・販売活動に伴う代金回収により収益を獲得しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は海外展開の拡大や塗料分野の堅調な需要に支えられ、右肩上がりで安定した成長を続けています。利益面では一時的な落ち込みがあったものの、直近では新製品の販売好調や利益率の向上、有価証券の売却益などにより、経常利益・当期利益ともに大幅な増益を達成し、収益性が大きく改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 482億円 508億円 526億円 555億円 556億円
経常利益 14億円 5億円 18億円 20億円 42億円
利益率(%) 3.0% 1.0% 3.5% 3.7% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 0.1億円 11億円 5億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で微増となりましたが、高付加価値製品の販売増や利益率の改善により、売上総利益および営業利益が大きく拡大しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 555億円 556億円
売上総利益 160億円 170億円
売上総利益率(%) 28.8% 30.5%
営業利益 13億円 23億円
営業利益率(%) 2.4% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が36億円(構成比25%)、研究開発費が28億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


塗料と電子材料、化成品セグメントが増収増益を牽引しています。特に電子材料は需要回復により利益が急拡大しました。一方、コーティングと合成樹脂は市況の影響で減収や利益減少となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
コーティング 289億円 278億円 7億円 6億円 2.3%
塗料 117億円 134億円 3億円 8億円 6.3%
電子材料 40億円 46億円 0.3億円 4億円 8.8%
化成品 46億円 49億円 2億円 4億円 7.9%
合成樹脂 64億円 49億円 0.2億円 -0.1億円 -0.2%
連結(合計) 555億円 556億円 13億円 23億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 33億円 30億円
投資CF -15億円 -31億円
財務CF -19億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ともに挑み ともに繋ぐ 常にお客様目線で上質な価値を創出する」を経営理念として掲げています。培ってきた技術力と規模を活かした機動力で時代の変化に即応し、地球環境に優しい製品やサービスを創出することで、顧客や社会に貢献し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営戦略と人的資本施策の連動を重視し、従業員一人ひとりの個性や多様な価値観を尊重する組織文化を育んでいます。性別や年齢に限らず、専門性や経験の違いを活かすことが新たな発想や事業価値の創出につながると考え、多様な人材が相互に刺激し合いながら最大限の能力を発揮できる風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年のありたい姿として「共創×進化×化学の力で新たな価値を提供する」を掲げ、中期経営計画を推進しています。「成長性」「効率性」「株主還元」の観点から、自己資本当期純利益率(ROE)を重要な客観的指標と位置づけています。

* ROE8%以上を目指す
* 総還元性向70%以上を目指す(配当は16円以上を維持)

(4) 成長戦略と重点施策


現在の事業を「そだてる」「のばす」「ささえる」の3領域に分け、それぞれの収益性追求と経営資源の投下により持続的な成長を目指します。固有技術を核とした研究開発の拡充により高付加価値製品や新事業領域の探索を進めるほか、各セグメントの強みを極大化するための集中投資や、生産性の向上による基盤事業の収益力拡大に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「化学の力で未来を創り、技術と信頼で社会に貢献する」という存在意義に基づき、持続可能な成長を支える人材を育成し、社員とともに成長できる環境を作ることを基本方針としています。求める人材像を明確化し、日常業務の中での人材育成や、管理職層の強化を含めた教育・訓練体制の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 17.5年 6,920,841円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性労働者の育児休業取得率 80.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 75.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 76.2%
労働者の男女の賃金の差異(非正規等) 49.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業に関する為替やカントリーリスク


同社は海外売上高比率が高く、財務諸表の円換算において為替変動の影響を受けます。また、グローバル展開を進める中で、各国の政治経済、法規制の変更、社会的な混乱が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の価格変動と調達リスク


製品の主原料として石油化学製品を使用しており、原油価格の変動に連動して原材料価格が高騰するリスクがあります。また、特定のメーカーに依存している原材料もあり、サプライチェーンの寸断によって安定供給が困難になる可能性があります。

(3) 知的財産および環境・安全関連法規の対応リスク


技術革新が加速する中、第三者との知的財産に関する係争が発生するリスクがあります。また、国内外の化学物質管理や環境保護に関する法律・規制が強化された場合、対応コストの増加や事業活動への制約が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。