藤倉化成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤倉化成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

藤倉化成は東証スタンダード上場のアクリル樹脂派生製品メーカーです。コーティング、塗料、電子材料などを展開しています。直近決算は売上高555億円と増収ながら、減損損失の計上等により当期純利益は減益となりました。グローバル展開の加速や佐野事業所の新工場建設による生産体制強化を推進しています。


※本記事は、藤倉化成株式会社 の有価証券報告書(第114期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 藤倉化成ってどんな会社?


アクリル樹脂派生製品の製造・販売を行う化学メーカーで、コーティング材や電子材料などをグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


1938年に藤倉化学工業として設立され、1958年に現社名へ変更しました。1962年に東証二部に上場し、2001年に東証一部へ指定替えとなりました。2023年には東証スタンダード市場へ移行しています。近年では海外拠点の再編や新工場建設など、グローバルな生産体制の整備を進めています。

連結従業員数は1,222名、単体では437名体制です。筆頭株主は事業会社のフジクラで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。フジクラとは製品販売等の取引関係があります。

氏名 持株比率
フジクラ 21.99%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.06%
日本カストディ銀行(信託口) 4.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長は加藤大輔氏、代表取締役社長は栗原進氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 大輔 代表取締役会長 1977年入社。コーティング事業部長等を経て2013年社長就任。2025年4月より現職。
栗原 進 代表取締役社長 1991年入社。管理本部経理部担当部長、管理本部長等を経て2025年4月より現職。
梶原 久 常務取締役 1982年入社。コーティング事業部名古屋営業所長等を経て2021年より現職。
川口 浩俊 取締役 1991年入社。海外事業企画部長、アセアン統括部長等を経て2021年より現職。
土谷 豊弘 取締役 中央監査法人等を経て2016年入社。管理本部経理部長等を経て2023年より現職。
石井 貴宏 取締役 1993年入社。電子材料事業部営業部長等を経て2023年より現職。
須藤 和弘 取締役 1991年入社。塗料事業部技術一部長、生産部長等を経て2025年より現職。
石本 貴幸 取締役 1998年入社。化成品事業部化成品部長等を経て2025年より現職。
渡邉 博明 取締役(監査等委員) 1981年入社。電子材料事業部長、常務取締役等を経て2023年より現職。


社外取締役は、長浜洋一(元フジクラ代表取締役会長)、川井克之(公認会計士川井克之事務所長)、妹尾智子(仰星コンサルティングディレクター)、宮川浩(宮川公認会計士税理士事務所長)、迎田由紀(LTE法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コーティング」、「塗料」、「電子材料」、「化成品」、「合成樹脂」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。

**(1) コーティング事業**
プラスチック用コーティング材などを自動車や家電、化粧品容器向けなどに提供しています。国内のほか、北米、欧州、アジア等の海外市場でも展開しています。
収益は主に製品の販売代金です。運営は同社が行うほか、海外ではRED SPOT PAINT & VARNISH CO.,INC.やFujichem Sonneborn Ltd等が製造・販売を担っています。

**(2) 塗料事業**
建築用のコーティング材などを提供しており、住宅の外壁や内装向けを中心としています。新築およびリフォーム市場を主要な顧客としています。
収益は製品の販売代金です。運営は同社およびフジケミ近畿、フジケミカル等が製造を行い、フジケミ東京等の販売会社を通じて販売しています。

**(3) 電子材料事業**
導電性樹脂塗料や導電性接着剤などを提供しています。電子機器のシールド材や回路形成材料として使用されています。
収益は製品の販売代金です。運営は主に同社が製造・販売を行うほか、フジケミ近畿等のグループ会社を通じても販売されています。

**(4) 化成品事業**
トナー用バインダー樹脂や粘・接着剤ベース樹脂などの機能性樹脂ベース等を提供しています。プリンター関連や産業用材料として利用されます。
収益は製品の販売代金です。運営は主に同社が製造・販売を行い、フジケミ近畿などを通じても販売されています。

**(5) 合成樹脂事業**
アクリル樹脂の原材料や加工品などを仕入れ、顧客に提供しています。
収益は商品の販売代金です。運営は主に子会社の藤光樹脂が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、直近5期で最高水準に達しています。一方、利益面では原材料価格の高騰や海外事業の影響、減損損失の計上などにより変動が見られます。特に直近の当期純利益は、特別損失の計上により前期比で減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 495億円 482億円 508億円 526億円 555億円
経常利益 19億円 14億円 5億円 18億円 20億円
利益率(%) 3.8% 3.0% 1.0% 3.5% 3.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 10億円 2億円 5億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しました。特に原材料価格の高騰などが影響し、営業利益率は横ばいで推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 526億円 555億円
売上総利益 154億円 160億円
売上総利益率(%) 29.3% 28.8%
営業利益 13億円 13億円
営業利益率(%) 2.5% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が37億円(構成比25%)、研究開発費が29億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


全般的に売上高は増加傾向にありますが、コーティング事業では利益が減少しました。一方、塗料事業や化成品事業では増益となり、セグメント間での収益性の違いが見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コーティング 294億円 289億円 13億円 7億円 2.4%
塗料 112億円 117億円 2億円 3億円 2.9%
電子材料 32億円 40億円 -1億円 0.3億円 0.9%
化成品 42億円 46億円 -0.5億円 2億円 5.0%
合成樹脂 46億円 64億円 0.1億円 0.2億円 0.4%
連結(合計) 526億円 555億円 13億円 13億円 2.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の財源を安定的に確保することを基本方針としており、一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用し、短期的な運転資金を銀行借入により調達しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費などにより収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金や短期借入金の純増減などにより支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 33億円 33億円
投資CF -12億円 -15億円
財務CF -23億円 -19億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは『ともに挑み ともに繋ぐ 常にお客様目線で上質な価値を創出する』を経営理念として掲げています。技術力と機動力を活かして時代の変化に即応し、地球環境に優しい製品・サービスを創出することで社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


2030年のありたい姿として『共創×進化×化学の力で新たな価値を提供する』を掲げています。既存の事業領域を「そだてる」「のばす」「ささえる」に分類し、それぞれの領域で収益性を追求しながら持続的な成長を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度を初年度とする中期経営計画において、2026年3月期の数値目標を掲げています。

* 売上高:630億円
* 営業利益:40億円
* ROE:8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「技術開発の拡充」「注力事業の強化」「基盤事業の収益性拡大」の3つの事業戦略を推進しています。特に国内では佐野事業所のリニューアルを進め、新工場の建設により生産効率と事業競争力の向上を図ります。海外ではグローバルネットワークの拡充を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「個性の尊重と多様性の拡充、イノベーションを創出する組織」を基本的な考え方としています。適材適所の配置や多様な研修制度による能力開発、ワークエンゲージメントの向上に取り組み、2030年のありたい姿の実現に向けて自ら行動する人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.9歳 17.3年 6,830,855円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規) 74.4%
男女賃金差異(非正規) 55.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業展開に伴うリスク


海外売上高比率が高く、為替変動や各国の政治経済情勢の影響を受ける可能性があります。特に北米、欧州、アジア等に拠点を持ち、法規制の変更や地政学的リスクが顕在化した場合、業績に影響を及ぼすおそれがあります。

(2) 原材料価格の変動リスク


製品の主原料として石油化学製品を使用しており、原油価格やナフサ価格の変動が調達コストに直結します。価格高騰時には収益性が圧迫される可能性があり、調達先の分散や価格転嫁等の対策を講じています。

(3) 法規制およびコンプライアンスリスク


国内外での事業活動において、化学物質管理や環境規制、知的財産権などの法的規制を遵守する必要があります。規制の強化や変更、または予期せぬ法違反が発生した場合、事業活動の制限やコスト増加につながる可能性があります。

(4) 自然災害や感染症のリスク


主要な生産拠点が特定の地域に集中している場合、地震や台風などの自然災害により操業が停止するリスクがあります。また、感染症の流行によるサプライチェーンの寸断や需要減少も事業継続に影響を与える要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。