※本記事は、リケンテクノス株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リケンテクノスってどんな会社?
コンパウンド、フイルム、食品包材の製造・販売を主力とし、幅広い産業向けに機能性樹脂製品を展開しています。
■(1) 会社概要
1951年3月に設立され、1961年に東証二部へ、1974年に東証一部へ上場しました。1989年のタイ合弁会社設立を皮切りに米国やアジア等へグローバル展開を推進しています。2001年に理研ビニル工業からリケンテクノスへ社名変更し、2022年にはリケンファブロを吸収合併するなど、事業基盤の強化を図っています。
現在の従業員数は連結で1,877名、単体で780名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位は主要金融機関であるみずほ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.25% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.95% |
| みずほ銀行 | 3.85% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は常盤和明氏が務めており、社外取締役比率は44.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 常盤和明 | 代表取締役社長執行役員 | 1983年入社。米国子会社社長、コンパウンド事業部副事業部長、経営企画室長などを経て、2016年4月より現職。 |
| 入江淳二 | 代表取締役副社長執行役員管理本部長 | 1981年富士銀行(現みずほ銀行)入行。2011年同社入社。法務・コンプライアンス室長、管理本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 梶山学之 | 取締役専務執行役員営業本部長 | 1985年入社。コンパウンド事業部副事業部長、米国子会社社長、経営企画本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 小川智三 | 取締役常務執行役員ものづくり統括本部長兼ものづくり統括本部コンパウンド本部長兼ものづくり統括本部購買本部長 | 1996年入社。米国子会社テクニカルマネージャー、製造本部長兼購買本部長などを経て、2026年1月より現職。 |
社外取締役は、中村重治(元りそな総合研究所社長)、江原茂(元損害保険ジャパン日本興亜副社長執行役員)、末村あおぎ(元有限責任監査法人トーマツパートナー)、絹川幸恵(元みずほビジネスパートナー社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「トランスポーテーション」「デイリーライフ&ヘルスケア」「エレクトロニクス」「ビルディング&コンストラクション」および「その他」事業を展開しています。
■トランスポーテーション
自動車、鉄道、船舶市場等向けに機能部品となるコンパウンドやフイルムの製造・販売を行っています。アジアや北米市場での圧倒的な存在感の確立を目指し、主に自動車分野での販売を強化しています。
収益は、完成車メーカーや部品メーカーなどの顧客への製品販売により得ています。事業の運営はリケンテクノスおよび海外の製造・販売子会社各社が担っています。
■デイリーライフ&ヘルスケア
医療、生活資材、食品包材市場等向けに、コンパウンド、フイルム、食品包材の製造・販売を行っています。医療・ヘルスケアおよび生活資材分野での高付加価値製品の拡充や新分野への挑戦を進めています。
収益は、医療機器メーカーや消費財メーカーなどからの製品販売代金として得ています。運営はリケンテクノスおよび中国の理研食品包装(江蘇)をはじめとする子会社が担っています。
■エレクトロニクス
エネルギー、情報通信、IT機器市場等向けに、電線分野のインフラを支えるコンパウンドや光学分野向けのフイルムを製造・販売しています。快適な暮らしと未来を創造する製品開発に注力しています。
収益は、電線メーカーやIT機器メーカーなどへの製品販売により得ています。運営はリケンテクノスが主体となり、子会社のリケンケーブルテクノロジーなどが加工製造を担っています。
■ビルディング&コンストラクション
住宅、ビル、建築資材、土木市場等向けに、機能的で環境に配慮した建装用フイルムやコンパウンドの製造・販売を行っています。インフラや建築資材需要が増加する海外での拡販も進めています。
収益は、建材メーカーや施工業者への製品販売により得ています。運営はリケンテクノスを中心に、製品のデザインサービスを手掛けるアイエムアイなどの子会社が担っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、原材料の仕入・販売などの業務を行っています。
収益は、原材料の販売代金として取引先企業から得ています。運営はリケンテクノスおよび一部の子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、一貫して増収増益基調で推移しています。特に売上高は着実な成長を続けており、経常利益も毎期連続して最高益を更新する堅調な伸びを見せています。利益率も年々改善傾向にあり、収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,099億円 | 1,235億円 | 1,257億円 | 1,281億円 | 1,314億円 |
| 経常利益 | 69億円 | 80億円 | 95億円 | 1,06億円 | 118億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 6.4% | 7.6% | 8.3% | 9.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 36億円 | 42億円 | 66億円 | 69億円 | 70億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る結果となりました。原材料価格の高騰を販売価格へ適切に転嫁できたことや、高付加価値製品の販売増加が寄与し、各段階の利益率も改善傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,281億円 | 1,314億円 |
| 売上総利益 | 243億円 | 256億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.0% | 19.5% |
| 営業利益 | 105億円 | 114億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 8.7% |
販売費及び一般管理費のうち、支払運賃が41億円(構成比29%)、給料及び賞与が31億円(同22%)、研究開発費が16億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
トランスポーテーションは国内外でのコンパウンド販売増により増収となりました。エレクトロニクスは価格転嫁や海外拡販が寄与し増収、ビルディング&コンストラクションも国内需要増で増収を確保しました。一方、デイリーライフ&ヘルスケアは一部販売減により微減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| トランスポーテーション | 411億円 | 428億円 |
| デイリーライフ&ヘルスケア | 368億円 | 365億円 |
| エレクトロニクス | 247億円 | 257億円 |
| ビルディング&コンストラクション | 255億円 | 263億円 |
| その他 | 0.7億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 1,281億円 | 1,314億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー・パターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 115億円 | 134億円 |
| 投資CF | -32億円 | -21億円 |
| 財務CF | -65億円 | -93億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も56.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、経営理念として「リケンテクノス ウェイ」を掲げています。これは、すべての生活空間に快適さを提供するリーディングカンパニーを目指すという存在意義を示すものです。社会の発展と人々の豊かな暮らしに貢献するため、常に挑戦し続ける姿勢を企業の根幹に据えています。
■(2) 企業文化
同社は「チャレンジメーカー」として、多様な人材がその個性を生かしながらのびのびとエネルギッシュに力を発揮できる企業文化を重視しています。一人ひとりが自発的に経営理念を実践し、現場と経営層が一体となって迅速な意思決定を行う風通しの良さと、グローバル視点での多様性を受け入れる土壌が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は3ヵ年中期経営計画「One Vision, New Stage 2027」を推進しています。脱炭素などの環境課題に対応しつつ、株主資本コストの低減につながる持続的な成長を目指しています。2030年の目標値として、二酸化炭素排出量の具体的な削減目標などを掲げています。
・2030年二酸化炭素排出量:24,139トン(2019年度比46.2%減)
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「稼ぐ力」の伸長として3つの戦略を推進しています。「Global One Company」としてグローバルな一体運営と国内成長投資を両立し、「顧客の期待の先を行く」ため情報収集力と人材育成を強化します。さらに「新規事業/新製品への挑戦」として大学との共同研究も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人の成長こそ企業の成長」を人材育成の基本方針とし、社員と会社がともに成長する関係を目指しています。グローバル競争に打ち克つための人材投資を積極的に行い、社員一人ひとりが能力を発揮できる最適な環境を提供します。また、多様な働き方を実現し、外部からのキャリア採用も交えて組織の活性化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.0歳 | 17.6年 | 8,299,037円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.5% |
| 男性育児休業取得率 | 45.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用者) | 75.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 47.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たりの育成費用(141千円)、特許出願件数(22件)、新規製品の売上高比率(14.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 中東情勢等による事業継続リスク
地政学リスクや供給構造の変化により、原材料の調達困難や価格上昇が発生し、事業継続に影響を与える可能性があります。これに対し、同社はグローバルな調達網を活用し、事業継続マネジメントの高度化を図っています。
■(2) 品質問題の発生リスク
世界的な品質基準に従って製造を行っていますが、予期せぬ市場クレームや製品リコールが発生した場合、補償費用の発生や社会的信用の低下を招く恐れがあります。同社では、生産工程内での品質管理体制と流出防止対策の強化に取り組んでいます。
■(3) 環境問題への対応遅れリスク
脱炭素社会に向けた環境配慮型製品の開発遅れや、気候変動対策に関する政策・規制への対応が遅れた場合、競争優位性が低下するリスクがあります。これに対応するため、二酸化炭素削減ロードマップの更新など、持続可能な地球環境への貢献を推進しています。



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