児玉化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

児玉化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する児玉化学工業は、樹脂成形、鋳鍛造、粉末冶金を主力とする企業です。直近の業績では、メプロホールディングスの買収により事業規模が大幅に拡大し、売上高は827億円と前年比で大幅な増収増益を達成しました。樹脂技術と金属技術の融合による競争力強化を推進しています。


※本記事は、児玉化学工業の有価証券報告書(第99期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 児玉化学工業ってどんな会社?


児玉化学工業は、樹脂加工と金属加工の異素材融合技術を強みに、自動車部品や住宅設備などを提供する企業です。

(1) 会社概要


1946年に創立され、1955年に児玉化学工業へと改称しプラスチックス成形品の生産を開始しました。1962年に東京証券取引所第二部に上場(現在はスタンダード市場に移行)しています。その後、タイなどの海外進出を進め、2025年にはメプロホールディングスを買収し、樹脂と金属の加工技術を有する企業へと進化しました。

従業員数は連結で2,730名、単体で185名です。筆頭株主は投資事業を行うエンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合で、第2位は個人の小林智治氏です。

氏名 持株比率
エンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合 52.07%
小林智治 1.34%
楽天証券共有口 1.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は北村以知雄氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
北村 以知雄 代表取締役社長 パイオニアにてカーOEM事業部長等を歴任後、2020年入社。経営企画室長等を経て、2024年より現職。
齋藤 義一 常務取締役 1979年入社。西湘工場長やタイ子会社社長等を経て、2020年に常務取締役に就任し、2026年より現職。
杉﨑 浩一 取締役 パイオニアを経て2024年に経理財務部長として入社。執行役員等を経て、2026年より現職。
竹嶋 斎 取締役 PwCアドバイザリーや東京製綱を経て2024年に経営企画室長として入社。2026年より現職。


社外取締役は、三村智彦(エンデバー・ユナイテッド代表取締役)、高石英明(スギホールディングス社外取締役)、浦部明子(水戸証券取締役)、鈴木洋之(みずほ証券取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「樹脂成形事業」「鋳鍛造事業」「粉末冶金事業」を展開しています。

樹脂成形事業


自動車産業向けのインストルメントパネルなどの樹脂製部品や、洗面ミラーキャビネットなどの住宅関連製品、冷蔵庫・エアコン用の樹脂部品を提供しています。主な顧客は自動車メーカーや住宅設備メーカー、家電メーカーです。

運営は児玉化学工業のほか、タイの子会社などが担っています。収益源は、これら樹脂成形製品の製造・販売を通じた顧客からの対価です。

鋳鍛造事業


自動車用のアルミダイカスト部品(エンジン部品やトランスミッション部品など)および鉄鍛造部品(シャフトなど)の製造販売を行っています。主な顧客は自動車メーカーや二輪車メーカーです。

運営は柳河精機や九州柳河精機などの子会社が主体となって行っています。収益源は、顧客に引き渡す鋳鍛造製品の販売対価です。

粉末冶金事業


焼結含油軸受や軟磁性材製品、自動車の可変動弁部品などの焼結機械部品の製造販売を行っています。ハイブリッド車や電動車向けの部品としても用いられています。

運営はダイヤメットや海外の現地法人が担っています。製品の製造および顧客への販売による対価が主な収益源となっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、長らく150億円前後で推移していましたが、2026年3月期にメプロホールディングスを買収したことで、売上高が827億円へと急拡大しました。利益面でも、負ののれん発生益の計上などにより大幅な黒字転換を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 149億円 154億円 147億円 158億円 827億円
経常利益 6億円 4億円 0億円 1億円 23億円
利益率(%) 3.9% 2.8% 0.2% 0.6% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 1億円 -3億円 -1億円 235億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益も大きく伸長しています。企業規模の拡大によるコスト吸収力の向上や価格改定の効果などにより、営業利益率は1.0%から3.2%へと改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 158億円 827億円
売上総利益 24億円 102億円
売上総利益率(%) 15.4% 12.3%
営業利益 2億円 27億円
営業利益率(%) 1.0% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が8億円(構成比49%)、給料及び手当が2億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


メプロホールディングスの買収により、鋳鍛造事業と粉末冶金事業が新たに追加され、収益構造が大きく変化しました。既存の樹脂成形事業も堅調に推移し、全セグメントで安定した黒字を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
樹脂成形事業 158億円 166億円 - 12億円 7.0%
鋳鍛造事業 - 486億円 - 16億円 3.2%
粉末冶金事業 - 175億円 - 5億円 2.8%
連結(合計) 158億円 827億円 - 27億円 3.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等で借入返済を進める改善型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14億円 70億円
投資CF -12億円 77億円
財務CF -9億円 -47億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は82.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「異素材加工技術の統合を軸に、製造業発展の一翼を担う」をグループパーパスとして掲げています。樹脂と金属という異なる2つの加工技術を融合し、多様な素材や部材で構成される機能モジュールをワンストップで提供する企業への進化を志向しています。

(2) 企業文化


"モノづくり"への飽くなき探求と品質への拘りをベースとし、社会変化に柔軟に対応する姿勢を大切にしています。SDGsなどに代表される社会課題の解決に貢献することで、企業価値の向上と持続的な成長を実現し、ステークホルダーとの信頼関係の構築に努めています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「児玉化学工業グループ新中期計画2028」を策定し、2029年3月期を最終年度とする数値目標を掲げています。具体的には、以下の数値の達成を目指して事業運営を行っています。

・売上高830億円
・営業利益32億円
・営業利益率3.9%

(4) 成長戦略と重点施策


PMI(ポストマージャーインテグレーション)の完遂による経営基盤の強化を最重要課題としています。また、樹脂加工と金属加工のノウハウを生かし「樹脂と金属の融合」を合言葉に、自動車産業の構造変化や住宅市場のニーズに対応する新しい事業領域の開拓を積極的に推進します。さらに、ESGの取り組みを強化し、持続的成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人づくり(良い社員)、現場づくり(良い職場)」を基本方針とし、人的資本への継続的な投資を通じて企業価値の向上を図っています。次世代の中核人材の育成と人材構成の最適化を重要課題と位置づけ、キャリア形成や後継者育成の仕組みの整備、シニア人材の活用などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.7歳 16.1年 5200000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 74.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 70.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) 66.2%


※男性育休取得率について、社会保険法に基づき原則5日間の産休取得が法令で定められているため取得率は100%ですが、育児休暇としては該当なしとされています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、30~40代構成比(15.0%)、年間研修時間(5.0時間)、資格取得率(20.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注量の変動リスク

主事業は受注生産であり、顧客の発注方針や工法変更、競合他社との受注競争、生産動向等によって受注高が変動し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定企業グループへの販売依存

売上高の約9割が自動車産業向けであり、特定企業グループ向けが占める割合が連結売上高の4割程度と高くなっています。該当グループでリコールや不祥事が発生した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 原材料価格の変動

製品の主原料である熱可塑性樹脂やアルミニウムなどの金属材料について、資源価格の上昇分を製品価格に転嫁できない場合、同社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。