※本記事は、児玉化学工業株式会社 の有価証券報告書(第98期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 児玉化学工業ってどんな会社?
プラスチック加工技術を核に、自動車部品や住宅設備機器等の製造販売を行う独立系メーカーです。
■(1) 会社概要
1946年に前身となる小関商事株式会社が設立され、1955年に現商号へ変更しました。1962年に東証2部へ上場し、長年にわたりプラスチック成形品の生産を行っています。1988年にはタイへ進出するなど海外展開も早くから着手しました。2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行し、2025年4月には株式会社メプロホールディングスを子会社化し、金属加工分野との融合を目指しています。
現在の連結従業員数は615名、単体では177名です。筆頭株主は投資ファンドであるエンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合で、発行済株式の6割超を保有しています。その他の大株主には個人投資家や信託銀行が名を連ねており、ファンド主導の経営体制の下で事業再構築を進めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合 | 62.50% |
| 小林 崇将 | 1.55% |
| 三菱UFJ信託銀行株式会社 | 0.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は北村 以知雄氏が務めています。社外取締役比率は71.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北村 以知雄 | 代表取締役社長 | 元パイオニア株式会社執行役員。2020年11月に同社入社。事業企画部長、執行役員、取締役を経て、2024年6月より現職。 |
| 齋藤 義一 | 常務取締役生産統轄 | 1979年同社入社。埼玉工場製造部次長、西湘工場長、取締役執行役員生産本部長等を歴任。2020年6月より現職。 |
社外取締役は、三村智彦(エンデバー・ユナイテッド代表取締役)、珍部千裕(エンデバー・ユナイテッド シニアエグゼクティブディレクター)、高石英明(スギホールディングス社外取締役)、浦部明子(弁護士)、鈴木洋之(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「モビリティ事業」、「リビングスペース事業」および「アドバンスド&エッセンシャル事業」を展開しています。
■(1) モビリティ事業
自動車の内外装部品(インストルメントパネル、バンパー、ドアトリム、コンソール等)の製造販売を行っています。軽量化や意匠性を高めるプラスチック成形技術を強みとし、自動車メーカーのティア1サプライヤー等へ製品を供給しています。
収益は主に自動車部品メーカー等からの製品販売代金や金型代金です。運営は主に同社およびタイの連結子会社であるECHO AUTOPARTS(THAILAND) CO.,LTD.が行っています。
■(2) リビングスペース事業
住宅関連製品(洗面化粧台、浴室天井、浴槽エプロン等)や家電部品(冷蔵庫内装部品等)、食品容器、プラスチックシート製品などの製造販売を行っています。住宅設備メーカーや家電メーカーのニーズに応じた製品を提供しています。
収益は住宅設備機器メーカーや家電メーカー等からの製品販売代金です。運営は同社のほか、タイのTHAI KODAMA CO.,LTD.およびベトナムのTHAI KODAMA (VIETNAM) CO.,LTD.が行っています。
■(3) アドバンスド&エッセンシャル事業
エンターテインメント関連製品(ゲームソフト用パッケージ等)や、自動車・電気機器部品用の物流資材トレーなどの製造販売を行っています。
収益はゲームソフトメーカーや部品メーカー等からの製品販売代金です。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は130億円から150億円台で推移しています。2024年3月期は一時的に利益水準が低下しましたが、2025年3月期は増収に伴い経常利益が回復しました。一方で、当期純利益は直近2期連続でマイナスとなっており、最終赤字からの脱却が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 138億円 | 149億円 | 154億円 | 147億円 | 158億円 |
| 経常利益 | 3.5億円 | 5.8億円 | 4.3億円 | 0.2億円 | 1.0億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 3.9% | 2.8% | 0.2% | 0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.5億円 | 3.0億円 | 0.5億円 | -3.1億円 | -1.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上総利益率は14.5%から15.4%へと改善しました。販管費も増加したため営業利益は横ばいですが、経常利益段階では大幅な改善が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 147億円 | 158億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.5% | 15.4% |
| 営業利益 | 1.7億円 | 1.6億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 1.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃及び荷造費が8.8億円(構成比38.5%)、給料及び手当が4.6億円(同20.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
モビリティ事業は国内での販売増により増収増益となりました。リビングスペース事業は住宅着工の低迷等により減収減益となりました。アドバンスド&エッセンシャル事業は一過性の影響等により減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| モビリティ事業 | 96億円 | 111億円 | 3.0億円 | 5.1億円 | 4.6% |
| リビングスペース事業 | 45億円 | 43億円 | 3.7億円 | 3.4億円 | 7.9% |
| アドバンスド&エッセンシャル事業 | 5.4億円 | 4.9億円 | 0.8億円 | 0.1億円 | 1.5% |
| 連結(合計) | 147億円 | 158億円 | 0.1億円 | 1.0億円 | 0.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**健全型**:営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、その範囲内で投資や借入返済を行っている状態です。本業でしっかり現金を稼ぎ、投資と財務のバランスを取っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 14億円 |
| 投資CF | -19億円 | -12億円 |
| 財務CF | 6.1億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、時代のニーズに速やかに応える機敏な対応と、グローバルな視点での独創的な開発システムにより、プラスチックの可能性を追求することを掲げています。常にお客様の信頼に値する製品づくりに徹し、全てのステークホルダーに対し魅力ある企業であり続けることを経営理念としています。
■(2) 企業文化
「モノづくり」への飽くなき探求と品質への拘りを持ち、社会変化に柔軟に対応することを重視しています。また、公正な企業活動を通じて社会に貢献し、リスクマネジメントやコンプライアンスの徹底を図る姿勢を大切にしています。人と地球に優しい企業の実現を目指し、環境保全活動にも積極的に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中期経営計画「KCI2025」において目標を掲げています。直近の企業買収を踏まえ、2026年3月期の目標数値を以下の通り設定しています。
* 売上高:750億円
* 営業利益:12億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、株式会社メプロホールディングスの買収により、樹脂と金属の2つのコア技術の融合による競争優位の確立を目指しています。今後は、買収した企業との相互連携によるシナジー効果の早期獲得や、生産性・財務体質の改善に取り組みます。また、モビリティ分野への依存度低減を図るため、培った競争力を活用して新市場や顧客の開拓を推進する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人類の普遍的な価値の追求と社会創生への貢献を掲げ、社員への手厚い教育サポートや働き甲斐の追求を行っています。ダイバーシティ推進による人事制度の見直しを行い、属性によらない機会の平等な提供を進めることで、多様な人材の活躍と確保、育成、定着を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.9歳 | 15.6年 | 4,647,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.5% |
| 男性育児休業取得率 | 0.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 86.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リサイクル材使用率(20%目標)、女性管理職比率(20%目標)、35歳以上人間ドック受診率(20%目標)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 受注量の変動リスク
同社グループの主事業は受注生産であり、得意先の発注方針や生産動向、競合他社との競争により受注高が変動する可能性があります。これにより、グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 主要取引先への依存
売上高の約7割がモビリティ事業であり、特定の自動車メーカーグループ向けの製品が連結売上高の約3割を占めています。当該取引先グループでリコールや不祥事が発生した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料価格の変動
製品の主原料である熱可塑性樹脂などの石油化学製品価格が高騰し、それを製品価格に転嫁できない場合、業績が悪化する可能性があります。同社は複数購買先の確保等で変動抑制に取り組んでいます。
■(4) 資金調達に関するリスク
金融機関からの借入金には一部財務制限条項が付されており、業績悪化等によりこれに抵触した場合、期限の利益を喪失する可能性があります。これにより、同社グループの財務状況や資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性があります。



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