※本記事は、積水化成品工業の有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 積水化成品工業ってどんな会社?
発泡プラスチックスの素材製造から最終商品の販売までを一貫して手掛ける化学メーカーです。
■(1) 会社概要
積水化成品工業のルーツは1959年に発足した積水スポンジ工業で、発泡性ポリスチレンビーズなどの事業からスタートしました。1969年に現在の積水化成品工業へと商号を変更し、その後国内外に生産・販売拠点を拡大してきました。近年ではグローバル事業の再構築を進めており、事業構造のスリム化を図っています。
現在の従業員数は、連結で2,106名、単体で437名となっています。筆頭株主は積水化学工業で、第2位は資産管理業務などを行う信託銀行、第3位には従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 積水化学工業 | 21.61% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.21% |
| 積水化成品従業員持株会 | 4.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古林 育将 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1992年入社。積水化成品中部代表取締役社長、第1事業本部長、事業本部統括担当などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 佐々木 勝已 | 取締役専務執行役員コーポレート戦略本部長管理管掌 | 1983年入社。第2事業本部企画部長、経営戦略本部コーポレート企画センター長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 浅田 英志 | 取締役常務執行役員環境・安全・品質保証センター長生産・研究・環境管掌 | 1989年入社。第2事業本部グローバルテクニカルセンター長、研究開発センター長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 浅野 泰正 | 取締役常務執行役員第1事業本部長 | 1987年入社。第1事業本部技術部長、生産技術センター長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 今西 康貴 | 取締役常務執行役員第2事業本部長 | 1993年入社。コーポレート戦略本部経営企画部長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、若林市廊(元長瀬産業代表取締役)、小椋悟(元住友電気工業常勤監査役)、其田真理(元個人情報保護委員会事務局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ヒューマンライフ分野」および「インダストリー分野」を展開しています。
■ヒューマンライフ分野
農水産資材、食品包装材、建築・土木資材などの発泡プラスチックス製品を製造・販売しています。主な顧客はスーパーなどの小売業や、農水産業、建設業などであり、環境負荷低減に貢献する省資源素材を用いた製品展開も進めています。
収益源はこれらのエスレンビーズやエスレンシートといった製品の販売代金です。同事業の運営は積水化成品工業を中心に、積水化成品北海道や積水化成品関西などのグループ各社が行っています。
■インダストリー分野
自動車部材、産業包装材、電子部品材料、医療・健康用材料など、工業用途に向けた発泡プラスチックス製品を製造・販売しています。自動車向けの軽量化部材や、電子機器向けの機能性ポリマー微粒子などを提供しています。
収益源は、ピオセランやテクポリマーといった工業用材料および成形加工品の販売代金です。同事業の運営は、積水化成品工業や積水化成品中部などの国内各社のほか、米国、メキシコ、台湾、タイなどの海外子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向から一転して当期に減少しました。一方で、経常利益や当期利益は期によって変動が激しく、特に当期は事業譲渡などによる特別損益の影響もあり、親会社所有者帰属の当期利益が大幅な黒字へと転換しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1176億円 | 1247億円 | 1303億円 | 1371億円 | 1139億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 7億円 | 27億円 | 1億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | 0.6% | 2.1% | 0.1% | 2.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -102億円 | 3億円 | -10億円 | -84億円 | 58億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は前期比で減少したものの、販売価格の適正化や原価低減活動が寄与し、売上総利益率は改善しました。これに伴い、営業利益は前期から大きく増加し、利益率も上昇する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1371億円 | 1139億円 |
| 売上総利益 | 273億円 | 266億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.9% | 23.3% |
| 営業利益 | 6億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | 2.2% |
販売費及び一般管理費(240億円)のうち、給与手当・賞与が62億円(構成比26%)、保管・運送費が53億円(同22%)を占めています。売上原価(873億円)は、売上高に対して約77%の構成比となっています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、両分野ともに前期比で減少しています。ヒューマンライフ分野では節約志向による市況低迷などが影響し、インダストリー分野では欧州子会社の事業譲渡などの構造改革によるスリム化が減収の主な要因となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ヒューマンライフ分野 | 550億円 | 524億円 |
| インダストリー分野 | 821億円 | 615億円 |
| 連結(合計) | 1371億円 | 1139億円 |
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)の傾向を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.0%で、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念は「われわれ積水化成品グループは、人間尊重と相互信頼を基本に全員経営を実践し、“新しい幸せ”を目指して常にイノベーションをし続けます」です。また、コーポレートビジョンとして「人と地球を大切に、新たな価値を創造するニューケミカル・ソリューション・カンパニー」を目指す姿として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、創業の精神である「働く者の幸せのために」を具現化し、企業活動の根幹として「全員経営」の実践を重視しています。また、サステナビリティの基盤として「環境・安全・品質に配慮したモノづくり」や「コンプライアンスを重視した誠実な経営活動」を据え、従業員一人ひとりの自発的な貢献意欲を引き出す組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、新中期経営計画「Going Beyond 2027 ~ 変革と完遂 ~」のもと、2027年度に向けて以下の目標を掲げています。
・売上高:1,000億円
・営業利益:45億円
・親会社株主に帰属する当期純利益:29億円
・ROE:6.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
意識・行動変革による「収益力の強化」と「経営基盤の強化」を基本方針としています。高収益成長事業への経営資源投入や低採算事業の見直しによるポートフォリオの変革を進めるとともに、資源循環事業の強化や新たな環境貢献ビジネスの確立を図ります。また、生産革新によるコスト競争力の強化や資本コストを意識した経営を実践します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「積水化成品グループ100年ビジョン」の実現に向け、一人ひとりが持つ可能性を「資本」と捉えた人的資本経営を実践しています。自律的キャリア形成の支援や心身ともに健康で働ける職場環境の整備、多様性を尊重した適材適所の人員配置を通じて、従業員が能力を最大限に発揮し、働きがいを感じられる組織づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.0歳 | 19.4年 | 7,790,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 80.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(18.3%)、女性採用比率(26.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 労働災害や火災等による安全確保リスク
事業拠点において労働災害や火災などが発生した場合、社会的信用の失墜や生産活動の停止による機会損失、顧客への補償などにより、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、保安委員会を設置し、安全パトロールや各種訓練を実施して無事故・無災害に努めています。
■(2) 製品の品質不具合や欠陥に関するリスク
製品に予期しない欠陥や不具合が生じた場合、製品の回収や損害賠償などが発生し、業績や財政状況に大きな影響を与える可能性があります。同社は品質委員会を通じて品質マネジメントシステムを強化し、国内外の法令や規制を遵守するとともに、製造物責任保険にも加入して万一の事態に備えています。
■(3) 原材料の市況変動と調達リスク
主原料であるスチレンモノマーやポリスチレン等の価格変動をタイムリーに製品価格へ転嫁できない場合や、地政学リスク、自然災害などによる仕入先の供給不安が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。調達先や使用原料の多元化、物流ルートの安定化を図り、適宜顧客との価格折衝を行っています。
■(4) 国外での事業活動に関する地政学リスク
アジア、欧州、米国、中米などグローバルに生産・販売を展開しているため、予期せぬ法規制の変更、地政学的な問題、経済情勢の悪化、社会的混乱などが生じた場合、事業活動に支障をきたす可能性があります。情報収集を積極的に行い、事業環境の変化に即応できる体制を整えています。



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