※本記事は、積水化成品工業株式会社 の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 積水化成品工業ってどんな会社?
同社は発泡プラスチックスのパイオニアとして、自動車部材から食品容器まで幅広い製品を展開する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1959年に積水スポンジ工業として設立され、1969年に現商号へ変更しました。1964年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、1978年には東京・大阪両証券取引所市場第一部に指定されました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東京証券取引所プライム市場に上場しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は3,294名、単体従業員数は446名です。筆頭株主は同社製品の原材料供給等で関係のある積水化学工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には従業員持株会が入っており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 積水化学工業 | 21.68% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.02% |
| 積水化成品従業員持株会 | 4.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長社長執行役員は古林育将氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古林 育将 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1992年入社。積水化成品中部社長、経営企画部長、第1事業本部長等を歴任。2025年6月より現職。 |
| 佐々木 勝已 | 取締役専務執行役員コーポレート戦略本部長管理管掌 | 1983年入社。企画部長、コーポレート企画センター長等を歴任。2024年6月より現職。 |
| 浅田 英志 | 取締役常務執行役員生産技術センター長、研究開発センター長グループ環境関連管掌 | 1989年入社。グローバルテクニカルセンター長、基礎研究所長、GX推進部長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 浅野 泰正 | 取締役常務執行役員第1事業本部長 | 1987年入社。技術部長、生産技術センター長等を歴任。2025年6月より現職。 |
| 今西 康貴 | 取締役常務執行役員第2事業本部長 | 1993年入社。コーポレート戦略本部経営企画部長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、若林市廊(元長瀬産業代表取締役常務執行役員)、小椋悟(元住友電気工業執行役員)、其田真理(元財務省理財局国有財産業務課長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ヒューマンライフ分野」および「インダストリー分野」事業を展開しています。
**(1) ヒューマンライフ分野**
農水産資材、食品包装材、流通資材、建築・土木資材などを提供しており、発泡ポリスチレンビーズ(エスレンビーズ)や発泡シート(エスレンシート)などが主力製品です。人々の生活に密着した領域で、省資源や軽量化に貢献する素材・製品を展開しています。
収益は、主にスーパーマーケットや食品加工業者、建設業者等への製品販売による対価を得ています。運営は、同社および積水化成品北海道、積水化成品関西などの国内関係会社が主に行っています。
**(2) インダストリー分野**
自動車部材、車輌部品梱包材、産業部材、電子部品材料、医療・健康用材料などを提供しています。高機能発泡体「ピオセラン」や微粒子ポリマー「テクポリマー」などが主力で、自動車の軽量化や電子機器の機能向上に貢献しています。
収益は、自動車部品メーカーや電子部品メーカー等への製品販売による対価を得ています。運営は、同社および積水化成品中部などの国内拠点に加え、欧州、米国、メキシコ、アジア等の海外関係会社がグローバルに展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあり、最新期では1,371億円に達しています。一方、利益面では変動が大きく、特に当期純利益は赤字と黒字を行き来しており、最新期では大幅な赤字を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,189億円 | 1,176億円 | 1,247億円 | 1,303億円 | 1,371億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 14億円 | 7億円 | 27億円 | 1億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 1.2% | 0.6% | 2.1% | 0.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 37億円 | -102億円 | 3億円 | -10億円 | -84億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上総利益の伸びは限定的であり、利益率は横ばいまたは微減傾向です。営業利益は前期と比較して半減しており、収益性の低下が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,303億円 | 1,371億円 |
| 売上総利益 | 264億円 | 273億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.3% | 19.9% |
| 営業利益 | 13億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 1.0% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が71億円(構成比27%)、保管・運送費が56億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ヒューマンライフ分野は増収増益となり、特に利益面で大きく伸長しました。一方、インダストリー分野は売上が微増したものの、大幅な減益となり、連結全体の利益を押し下げる要因となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヒューマンライフ分野 | 491億円 | 550億円 | 18億円 | 30億円 | 5.5% |
| インダストリー分野 | 812億円 | 821億円 | 24億円 | 5億円 | 0.6% |
| 連結(合計) | 1,303億円 | 1,371億円 | 27億円 | 1億円 | 0.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持していますが、投資活動による支出を賄うには至っておらず、手元資金を取り崩す形となっています。財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスであり、借入金の返済等を進めている状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 74億円 | 48億円 |
| 投資CF | -38億円 | -57億円 |
| 財務CF | -37億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-12.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創立100周年(2059年)に向けた「積水化成品グループ100年ビジョン」において、「人と地球を大切に、新たな価値を創造するニューケミカル・ソリューション・カンパニー」をコーポレートビジョンとして掲げています。創業の精神である「働く者の幸せのために」や、人間尊重と相互信頼を基本とした全員経営の実践をベースに、イノベーションを通じて新しい幸せを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、サステナビリティの基盤として「環境・安全・品質に配慮したモノづくり」、「コンプライアンスを重視した誠実な経営活動」、「全員経営の実践」の3点を据えています。また、「環境価値・社会価値・経済価値を高め、持続的に発展する」ことを目指し、従来のCSRをより高次元な形に置き換えたサステナビリティ方針のもと、事業活動を通じて社会的責任を果たす文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2025年4月開始の新中期経営計画「Going Beyond 2027 ~ 変革と完遂 ~」を策定しました。意識・行動変革による「収益力の強化」と「経営基盤の強化」を完遂し、企業価値向上に繋げることを基本方針としています。
* 売上高:1,000億円(2027年度計画)
* 営業利益:45億円(2027年度計画、営業利益率4.5%)
* 経常利益:43億円(2027年度計画)
* ROE:6.0%(2027年度計画)
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、収益力の強化と経営基盤の強化に取り組む方針です。具体的には、インダストリー分野での高付加価値品への資源集中、環境貢献ビジネスの拡大、グローバル戦略の再構築などを推進します。また、資本効率と資本コストを意識した経営の実践、環境・社会課題解決に向けた取組み強化、人的資本経営の推進とガバナンス強化を重点施策として掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「働く者の幸せのために」という創業の精神に基づき、従業員一人ひとりの可能性を資本と捉える「人的資本経営」を推進しています。人材育成、健康経営、評価・処遇、エンゲージメント向上、ダイバーシティ、働き方改革の6つを人事方針として定め、自律的キャリア形成の支援や多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.8歳 | 19.3年 | 7,266,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | 87.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 93.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(16.9%)、女性採用比率(28.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料の市況変動
主な原材料であるスチレンモノマー等の価格変動を製品価格に転嫁できない場合や、供給不安、納入遅延等が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、調達先の多元化や物流ルートの安定化、適時の価格改定交渉等に努めています。
■(2) 国外での事業活動
アジア、欧州、米州等で事業を展開しており、予期せぬ法規制の変更、地政学的不安定、感染症拡大等の社会的混乱が業績に影響を及ぼす可能性があります。リスク最小化のため情報収集を行い、環境変化に即応できる体制を整えています。
■(3) 環境マネジメントと気候変動
化学物質の漏出や事故による環境汚染が発生した場合、社会的信用の失墜や対策費用が発生する可能性があります。また、気候変動対応は喫緊の課題であり、環境委員会を設置してマネジメントに努めるとともに、2030年のCO2排出量削減目標や2050年のカーボンニュートラル実現に向けた活動を加速しています。
■(4) 製品の品質保証
製品に予期せぬ欠陥や不具合が生じた場合、リコールや損害賠償等により業績に影響を与える可能性があります。品質委員会を設置してマネジメントシステムを強化し、法令や規格を遵守するとともに、製造物責任保険への加入等の対策を講じています。



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