広栄化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

広栄化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の化学メーカー。住友化学の連結子会社として、医薬品や農薬の中間体、機能性化学品等の製造販売を行うファイン製品事業を展開しています。2025年3月期の業績は、売上高200億円(前期比3.0%増)、経常利益3.6億円(同2.5%増)と増収増益で着地しました。


※本記事は、広栄化学株式会社 の有価証券報告書(第164期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 広栄化学ってどんな会社?


住友化学グループの一員として、医農薬中間体や機能性化学品など高付加価値な製品を提供する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1917年に広栄製薬として設立され酢酸の製造を開始しました。1950年に広栄化学工業へ改称し、1962年にはアミン類の製造を始めています。1997年に大阪証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。その後、2020年に現在の広栄化学へ社名を変更しています。

同社(単体)の従業員数は398名です。筆頭株主は総合化学メーカーであり親会社の住友化学で、発行済株式の半数以上を保有しています。第2位は地域金融機関である近畿産業信用組合、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
住友化学 55.85%
近畿産業信用組合 4.91%
種田 修 2.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長社長執行役員は西本麗氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
西本 麗 代表取締役社長社長執行役員 住友化学入社後、同社執行役員、常務執行役員、代表取締役専務執行役員、代表取締役副社長執行役員を経て、2021年6月より現職。
和田 英男 取締役 住友化学入社後、同社健康・農業関連事業業務室部長を経て、2019年4月広栄化学理事。2025年4月より専務執行役員として経理企画室、サステナビリティ推進を担当。
江川 彰彦 取締役 1984年広栄化学入社。営業本部副本部長、営業本部長などを歴任。2023年6月より取締役常務執行役員、2025年4月より取締役。
深堀 敬子 取締役 1981年広栄化学入社。物流購買室長、研究開発本部長などを歴任。2022年4月より取締役常務執行役員として研究開発本部、サステナビリティ推進を担当。
清水 正生 取締役 住友化学入社後、同社常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
浜辺 昭彦 取締役(監査等委員) 1986年広栄化学入社。経理室長、内部統制・監査室長などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、上田亮子(日本投資環境研究所主任研究員)、瀧口健(元住石貿易取締役副社長)、養老信吾(養老信吾法律事務所代表)、八田陽子(元KPMGパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファイン製品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医農薬関連化学品


医薬品、動物薬、農薬などの製造に不可欠な中間体や原料を提供しています。顧客は主に製薬会社や農薬メーカーであり、長年培った有機合成技術を活かして、顧客のニーズに合わせた製品を供給しています。

収益は、これらの化学品を顧客へ販売することで得られる対価です。主要な販売先には親会社である住友化学や欧米の化学メーカーが含まれます。運営は主に広栄化学が行っています。

(2) 機能性化学品


触媒、溶剤、高分子添加剤、樹脂関連、IT関連、写真薬等に使用される化学品を製造・販売しています。独自の技術基盤である含窒素化合物などを活用し、多様な産業分野に向けて高機能な化学品を提供しています。

収益は、各産業の顧客に対する製品販売代金です。特に有機金属触媒関連製品やイオン液体製品などの高付加価値製品の拡販に注力しています。運営は広栄化学が行っています。

(3) その他ファイン製品


上記に含まれない工業薬品製品やカーボンニュートラル関連製品、各種合成樹脂原料などを取り扱っています。これらも同社の技術力を背景とした製品群であり、幅広い用途で利用されています。

収益は、これらの製品の販売による対価です。近年ではCO2吸収アミンなどの環境対応製品の開発・販売にも取り組んでいます。運営は広栄化学が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は170億円台から200億円台へと緩やかな増加傾向にあります。一方で利益面では、2021年3月期をピークに減少傾向が続いています。特に経常利益率は低下しており、原材料価格の高騰などが影響していると考えられます。2025年3月期は増収増益となりましたが、利益水準の回復が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 176億円 173億円 186億円 194億円 200億円
経常利益 17億円 8億円 9億円 3億円 4億円
利益率 9.5% 4.6% 4.6% 1.8% 1.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 9億円 7億円 3億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は低下しています。一方で、販売費及び一般管理費が減少したことで、営業利益は増益となりました。コスト削減努力が進んでいるものの、原価率の上昇が利益率改善の重荷となっている構造が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 194億円 200億円
売上総利益 53億円 47億円
売上総利益率 27.2% 23.5%
営業利益 4億円 6億円
営業利益率 2.1% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が11億円(構成比27%)、給料手当及び賞与が7億円(同18%)を占めています。売上原価においては、原材料費が75億円(構成比49%)、経費が45億円(同29%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品区分別の売上動向を見ると、機能性化学品が大きく伸長しました。医農薬関連化学品は北米向けが増加したものの全体では減収となり、その他ファイン製品も減少しました。全体としては機能性化学品の成長が全社の増収を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
医農薬関連化学品 98億円 93億円
機能性化学品 67億円 80億円
その他ファイン製品 29億円 27億円
連結(合計) 194億円 200億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

広栄化学は、借入金の返済を財務活動の中心に据えています。

同社の営業活動によるキャッシュ・フローは、生産実績の増加や運転資金の改善により、前事業年度を上回る収入を確保しました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出が前事業年度を下回りました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済が主な支出要因となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 40億円 48億円
投資CF -20億円 -17億円
財務CF -18億円 -33億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、長年培ってきた含窒素有機化合物群のコアテクノロジーを進化させ、新たな技術を確立することで、基幹化合物や機能製品などの高付加価値製品を創出することを目指しています。これらを通じて社会の発展に貢献し、株主、地域社会、取引先、従業員など全てのステークホルダーから信頼される企業を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、「広栄スピリット」と呼ばれる無形資産を培っています。具体的には、大胆な挑戦、ファーストペンギンとなる勇気、飽くなき探求心、オープンイノベーション、一致団結、臨機応変といった価値観です。これらを活かし、リスクマネジメントやコンプライアンス遵守、サステナビリティ活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2025年度-2027年度)において、「変革への挑戦」をスローガンに掲げています。収益力強化、事業成長加速、経営基盤強化を基本方針とし、最終年度の数値目標を設定しています。

* 売上高:247億円
* 営業利益:33億円

(4) 成長戦略と重点施策


収益力の強化に向けて、マルチプラントでの生産品目拡販やアミン事業の競争力強化に取り組みます。また、事業成長の加速として、有機金属触媒関連製品の拡大やカーボンニュートラル関連製品(CO2吸収アミン)の開発・受託拡大を推進します。さらに、住友化学グループとのシナジーによる新製品開発も加速させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源と捉え、「自己成長を通じたプロフェッショナル人材」「当事者意識と主体性を持ち挑戦する人材」などを求めています。長期的なキャリア形成支援や、社内大学「広栄MANABIYA」を通じた自律的な学習機会の提供、心理的安全性の高い職場環境の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.1歳 14.8年 6,894,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%
男女賃金差異(正規) 80.7%
男女賃金差異(非正規) 42.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(13.7%)、障がい者雇用率(3.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料・燃料価格の変動リスク


主要原料であるアセトアルデヒドやメタノール等の価格は市況により変動します。また、国産ナフサ高騰やウクライナ情勢の影響により、原材料価格、輸送費、電力コストが大幅に上昇しています。これらのコスト上昇分を製品価格に転嫁できない場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品価格競争とシェア変動


同社事業は厳しい価格競争に直面しています。国内企業に加え、インドや中国などの安価な海外品との競争により、製品価格や販売シェアが低下するリスクがあります。コスト削減効果を上回る価格低下やシェア縮小が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 為替レートの変動リスク


同社は輸出売上高比率が高く、その多くが外貨建て取引です。そのため、円高が進行すると円換算での輸出債権回収額が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。為替予約や原料の外貨建て購入などによりリスク軽減を図っていますが、完全な回避は困難です。

(4) 気候変動等環境問題への対応


炭素税の導入や排出権取引制度などの環境規制が強化された場合、原燃料価格や電力価格が上昇する可能性があります。これにより製造コストが増加し、経営成績や財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。同社は温室効果ガスの削減を経営の重要課題と捉え、対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。