※本記事は、アイカ工業株式会社の有価証券報告書(第126期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイカ工業ってどんな会社?
化成品および建装建材の製造・販売を主力事業とし、国内外で高付加価値な製品を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1936年に愛知化学工業として設立され、接着剤等の事業からスタートしました。1949年に名古屋証券取引所に上場し、1960年には主力となるメラミン化粧板の生産を開始しました。1966年に現在の社名であるアイカ工業に改称しています。その後、国内外での事業拡大やM&Aを積極的に推進し、近年もアジア地域で複数の事業会社を子会社化するなど、グローバル展開を加速させています。
現在の従業員数は連結で5314名、単体で1287名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同じく信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位はアイカ工業取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.34% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 9.03% |
| アイカ工業取引先持株会 | 3.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長は小野勇治氏、代表取締役社長執行役員は海老原健治氏が務めています。社外取締役の比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小野勇治 | 代表取締役会長 | 1979年同社入社。化成品カンパニー長等を経て、2010年代表取締役就任。2022年より現職。 |
| 海老原健治 | 代表取締役/社長執行役員 | 1991年同社入社。機能材料カンパニー長等を経て、2022年より現職。 |
| 大村信幸 | 取締役/専務執行役員海外事業カンパニー長 | 1988年三井物産入社。2009年同社入社。化成品カンパニー長等を経て、2025年より現職。 |
| 岩塚祐二 | 取締役/常務執行役員建装・建材カンパニー長 | 1989年同社入社。化成品カンパニー生産統括部長、購買部長等を経て、2023年より現職。 |
| 森良二 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年同社入社。建装材カンパニー生産統括部長等を経て、2021年より現職。 |
社外取締役は、蟹江浩嗣(元日本ガイシ代表取締役副社長)、清水綾子(石原総合法律事務所所属弁護士)、宮本正司(元有限責任あずさ監査法人代表社員)、山本光子(元パーソルテンプスタッフ取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「化成品」「建装建材」事業を展開しています。
■化成品
外装・内装仕上塗材、塗り床材、各種接着剤、有機微粒子などの製造・販売を行っています。建設分野向け樹脂の高付加価値化を進めるとともに、スマートフォンや自動車、日用品などに用いられる電子材料などの非建設分野向けにも製品を展開し、幅広い顧客のニーズに応えています。
収益モデルは、建設業界や製造業の顧客に対する製品販売による代金受領です。運営は同社をはじめ、西東京ケミックスやアイカインドネシア社などの国内外のグループ子会社が相互に協力・連携して行っています。
■建装建材
メラミン化粧板、化粧合板、室内用ドア、インテリア建材、不燃化粧材などの製造・販売を行っています。長年培ってきた木工家具市場での強みに加え、壁・床・天井などの空間全体への提案力を高め、住宅・非住宅を問わず幅広い建築市場に製品を提供しています。
収益モデルは、建築・建設業者や家具メーカーなどの顧客に対する建材製品の販売代金受領です。運営は同社のほか、アイカインテリア工業、アイカハリマ工業、アイカテック建材などの国内外のグループ会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高・経常利益ともに順調な拡大基調にあります。一時的な市場の低迷や原材料価格の高騰といった外部環境の変化を受けつつも、高付加価値製品の伸長や適正な売価設定、海外事業の展開などにより、収益性の改善が進んでいます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2145億円 | 2421億円 | 2366億円 | 2487億円 | 2518億円 |
| 経常利益 | 218億円 | 221億円 | 261億円 | 287億円 | 301億円 |
| 利益率(%) | 10.2% | 9.1% | 11.0% | 11.5% | 12.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 119億円 | 105億円 | 140億円 | 149億円 | 170億円 |
■(2) 損益計算書
収益性は着実に向上しており、売上総利益率および営業利益率ともに前年を上回る水準を達成しています。生産効率の向上や業務改革の推進が奏功し、原価上昇圧力に対してもしっかりと対応できていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2487億円 | 2518億円 |
| 売上総利益 | 679億円 | 712億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.3% | 28.3% |
| 営業利益 | 274億円 | 291億円 |
| 営業利益率(%) | 11.0% | 11.6% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が61億円(構成比14%)、給与及び賞与が58億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
化成品事業は国内の木工・家具用接着剤や電子材料向け高機能フィルムが好調だったものの、中国市場の低迷などにより売上は微減となりました。一方、建装建材事業は非住宅市場の改修需要の獲得や高付加価値商品の採用拡大により売上が伸長しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 化成品 | 1386億円 | 1363億円 |
| 建装建材 | 1101億円 | 1155億円 |
| 連結(合計) | 2487億円 | 2518億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 268億円 | 88億円 |
| 投資CF | -111億円 | -275億円 |
| 財務CF | -168億円 | 108億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.4%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「挑戦と創造」を社是とし、「共生の理念のもと、たえざる革新により新しい価値を創造し、社会に貢献していく」ことを経営理念に掲げています。化学とデザインの力で独創性のある商品をつくり、豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
人材を最も重要な経営資源と捉え、相互理解と成長を通じ、活力あふれる人材・組織の形成を重視しています。また、法令や社会秩序を守る公正で透明性の高いコンプライアンス経営を実践し、ステークホルダーとのコミュニケーションを大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Value Creation 3000 & 300」を掲げ、収益性の改善、成長事業の創出・育成、健全な経営基盤の構築に取り組んでいます。
* 売上高:2,800億円
* 経常利益:320億円
* ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内外の市場において適時適切に事業ポートフォリオを見直し、メリハリの効いた投資配分を行うことで収益性を高めます。化成品では機能材料事業や海外事業に注力し、建装建材では空間をトータル提案できる製品の育成により持続的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的成長を支える根幹は人的資本にあるとの認識のもと、事業成長を牽引するグローバル人材やリーダー人材、プロフェッショナル人材の育成に取り組んでいます。また、多様な人材が互いを認め合い、誰もが活躍できる環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 16.3年 | 8,172,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 96.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100%)、エンゲージメントスコア(3.97ポイント)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 世界経済の変動に関するリスク
グローバルに事業を展開しているため、各国の景気や予期しない法令の変更、地政学リスクに伴う需要減少などが業績に影響を及ぼす可能性があります。外部機関を通じて動向をモニタリングし、早期にリスクを把握する体制を整えています。
■(2) 市場ニーズ・顧客ニーズの変化に関するリスク
市場や顧客のニーズが多様化しており、競争激化やニーズ変化への対応が遅れた場合、販売シェアや価格の低下を招く恐れがあります。これに対し、独自性の高い新製品開発やM&Aを活用した新市場の開拓を推進しています。
■(3) 特定の事業分野への依存度に関するリスク
建装建材や化成品の一部製品は国内の建設・改修市場に依存しており、需要が減少した場合に影響を受けます。空間のトータル提案による新用途開拓や、非建築分野である機能材料事業への注力により、需要変動に左右されない体質への転換を図っています。
■(4) 企業買収等の資本提携に関するリスク
事業拡大の手段として企業買収等を積極的に実施していますが、買収先を取り巻く環境が変化し期待されたシナジー効果が得られない場合、減損損失が計上される可能性があります。入念な調査や価値評価、投資後のモニタリングを実施しリスク低減に努めています。



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