アイカ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイカ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所プレミア市場に上場。化成品および建装建材の製造販売を主軸事業としています。直近の業績は、売上高が過去最高を更新し増収増益(経常利益)となりましたが、減損損失の計上により親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。


※本記事は、アイカ工業株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイカ工業ってどんな会社?


接着剤などの「化成品」とメラミン化粧板などの「建装建材」を柱に、国内外で事業展開する化学メーカーです。

(1) 会社概要


1936年に愛知化学工業として設立され、1960年には現在主力のメラミン化粧板の生産を開始しました。1966年に現社名のアイカ工業へ改称し、1986年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。近年は海外展開を加速させており、2019年にはウィルソナート・アジア各社の株式取得などにより子会社化しています。

連結従業員数は4,963名、単体では1,226名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家による保有比率が高くなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.38%
日本カストディ銀行(信託口) 6.16%
アイカ工業取引先持株会 3.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名(社外含む)の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長には小野勇治氏、代表取締役社長執行役員には海老原健治氏が就任しており、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
小野 勇治 代表取締役会長 1979年入社。化成品カンパニー長、代表取締役社長執行役員などを歴任し、2022年4月より現職。
海老原 健治 代表取締役/社長執行役員 1991年入社。R&Dセンター長、機能材料カンパニー長、化成品カンパニー長などを経て、2022年4月より現職。
大村 信幸 取締役/常務執行役員化成品カンパニー長 1988年三井物産入社。2009年同社入社。海外事業部長、化成品カンパニー長などを経て、2023年1月より現職。
岩塚 祐二 取締役/常務執行役員建装・建材カンパニー長 1989年入社。化成品カンパニー長、購買部長などを経て、2023年4月より現職。
森 良二 取締役(常勤監査等委員) 1982年入社。購買部長、建装・建材カンパニー副カンパニー長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、蟹江浩嗣(元日本碍子代表取締役副社長)、清水綾子(弁護士)、宮本正司(公認会計士)、山本光子(パーソルテンプスタッフ相談役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化成品」「建装建材」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 化成品


外装・内装仕上塗材、塗り床材、各種接着剤、有機微粒子などを製造・販売しています。建設・土木業界から自動車、電子材料などの産業分野まで幅広い顧客層を持ちます。

製品の販売代金が主な収益源です。運営は、アイカ工業および西東京ケミックス、アイカインドネシア、昆山愛克樹脂、アイカ・アジア・パシフィック・ホールディング傘下の海外子会社などが担っています。

(2) 建装建材


メラミン化粧板、化粧合板、室内用ドア、インテリア建材、カウンター、収納扉、不燃化粧材、押出成形セメント板などを製造・販売しています。住宅、店舗、オフィス、公共施設などの建築市場が主な顧客です。

製品の販売代金が主な収益源です。運営は、アイカ工業、アイカインテリア工業、アイカハリマ工業、アイカテック建材などの国内グループ会社に加え、アイカ・ラミネーツ・インディアなどの海外子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近2期は2,000億円を超え成長しています。経常利益は安定的で、利益率は9〜11%台を維持しています。当期純利益は100億円前後で推移していますが、直近では減損損失の影響等によりやや減少しました。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 1,914億円 1,915億円 1,746億円 2,145億円 2,421億円
経常利益 212億円 213億円 184億円 218億円 221億円
利益率(%) 11.1% 11.1% 10.6% 10.2% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 118億円 106億円 104億円 119億円 105億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は12.8%増加し、売上総利益も増加しましたが、原材料価格高騰等の影響により売上総利益率は若干低下しています。営業利益は微増となりました。販管費の増加も利益率に影響を与えています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 2,145億円 2,421億円
売上総利益 541億円 568億円
売上総利益率(%) 25.2% 23.5%
営業利益 203億円 206億円
営業利益率(%) 9.5% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が99億円(構成比27%)、荷造運搬費が93億円(同26%)を占めています。売上原価では、原材料費などの製造費用が大半を占めています。

(3) セグメント収益


化成品セグメントは、接着剤や建設樹脂が好調で増収となりましたが、利益は微増にとどまりました。建装建材セグメントは、メラミン化粧板やボード・フィルム類が伸長し増収増益となりました。全体として、両セグメントともに売上規模を拡大させています。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
化成品 1,223億円 1,413億円 74億円 75億円 5.3%
建装建材 922億円 1,007億円 164億円 167億円 16.6%
調整額 - - -34億円 -37億円 -
連結(合計) 2,145億円 2,421億円 203億円 206億円 8.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アイカ工業は、営業活動により資金を増加させ、事業活動の基盤を強化しています。一方で、将来の成長に向けた設備投資や事業拡大のための投資活動により、資金は減少しています。また、株主への還元や自己株式の取得といった財務活動も行われ、資金は減少しました。これらの活動の結果、同社全体の資金は増加しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF 117億円 199億円
投資CF -83億円 -91億円
財務CF -11億円 -94億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社是・経営理念・経営方針・サステナビリティ方針・行動規範」を構成要素とした「アイカポリシー」を体系化しています。事業活動を通じて社会課題の解決に取り組み、より良い社会づくりに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「挑戦と創造」を社是として掲げ、これをグループ従業員共通の価値観としています。また、行動規範の基本原則として、法令遵守、人権尊重、社会との調和などを定め、ステークホルダーとの対話を重視しながら、社会の要請と変化に迅速に対応する企業文化の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期を最終年度とする新中期経営計画「Value Creation 3000 & 300」を策定し、アイカ10年ビジョンの総仕上げに取り組んでいます。

* 売上高:3,000億円
* 経常利益:300億円
* ROE:10.0%を目途

(4) 成長戦略と重点施策


「収益性の改善」、「成長事業の創出・育成」、および「経営基盤の構築」を基本方針としています。特に、化成品・建装建材の両セグメントでの付加価値向上、非建設分野向け機能材料事業や海外事業の強化、社会課題解決に貢献する商品群(AS商品)の拡充に注力しています。また、気候変動対応や人的資本投資などの非財務目標の達成にも取り組んでいます。

* 海外売上高比率:50%以上
* AS商品売上高:280億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材を最も重要な経営資源」と捉え、4年累計40億円以上(単体)を人的資本に投資する方針です。「グローバル人材育成」「リーダー人材育成」「プロフェッショナル人材育成」をテーマに掲げ、多様な人材が活躍できる環境(ダイバーシティ&インクルージョン)の整備やエンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 40.9歳 16.5年 6,896,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 53.1%
男女賃金差異(全労働者) 80.7%
男女賃金差異(正規雇用) 79.1%
男女賃金差異(非正規) 62.6%


※上記は提出会社のデータです。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人的資本投資額(8.7億円)、エンゲージメントスコア(3.9Point)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 世界経済の変動によるリスク


同社グループは海外売上高比率が約5割に達しており、事業展開する各国・地域の景気変動、地政学リスク、為替変動などが経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、情報収集や現地ガバナンスの強化、ローカル人材の活用などで対処しています。

(2) 市場ニーズ・顧客ニーズの変化に関するリスク


競合他社との競争激化やニーズ変化への対応遅れにより、シェア低下や販売価格低下などが生じる可能性があります。これに対し、独自性の高い技術開発や、コア技術の応用による他用途・他地域への展開、産官学連携などによる新製品開発を推進しています。

(3) 特定の部門における建設需要への依存度に関するリスク


建装建材部門や化成品部門の一部製品は、国内建設市場への依存度が高いため、住宅着工数などの建設需要減少の影響を受ける可能性があります。これに対し、非住宅市場の開拓や、非建築分野である機能材料事業への注力により、建設需要に左右されない体質への転換を図っています。

(4) 主要原材料の価格変動、供給不足に関するリスク


原油・ナフサ価格の高騰や世界情勢による需給バランスの変化により、原材料価格の高騰や調達困難が生じる可能性があります。これに対し、複数購買の実施や取引先との連携強化を図り、安定的な供給体制の構築に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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