※本記事は、ヤマト モビリティ & Mfg.株式会社 の有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤマト モビリティ & Mfg.ってどんな会社?
合成樹脂成形品や物流機器、EV関連製品を製造・販売するメーカーです。
■(1) 会社概要
1955年に大和化工材として設立し、工業用プラスチック製品の成形加工販売を開始しました。1992年にヤマト・インダストリーへと改称し、1995年に株式を店頭登録、2004年にジャスダックに上場しています。2024年に現在のヤマト モビリティ & Mfg.に社名を変更しました。
同社グループは連結で321名、単体で100名の従業員を擁しています。筆頭株主は資本業務提携先で自動車関連開発支援等を行うIATで、第2位も資本業務提携先である永田紙業、第3位はマイルストーン キャピタル マネジメントとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| IAT | 27.06% |
| 永田紙業 | 11.81% |
| マイルストーン キャピタル マネジメント | 7.31% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役CEOは鈴木昭寿氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木 昭寿 | 代表取締役CEO | 1982年日産自動車入社。東風汽車有限公司経営企画本部長、日産中国投資有限公司執行副総経理等を経て、2024年より現職。 |
| 重岡 幹生 | 代表取締役COO | 1986年同社入社。香港大和工貿代表取締役社長、樹脂事業海外統括等を歴任。2021年代表取締役社長執行役員を経て、2024年より現職。 |
| 河原畑 宏二 | 専務取締役 | 1980年三井物産入社。三井物産プラスチックトレード常務執行役員等を経て、2015年同社入社。2023年より現職。 |
| 永田 耕太郎 | 専務取締役 | 1989年永田紙業入社。同社代表取締役社長等を経て、2010年同社常務取締役に就任。2023年より現職。 |
| 渋谷 俊泰 | 取締役 | 1986年同社入社。BIG PHILIPPINES CORPORATION代表取締役社長等を経て、2022年より現職。 |
| 劉 剣 | 取締役 | 2001年IAT設立、代表取締役社長に就任し現在に至る。2023年より現職。 |
| 池添 洋一 | 取締役 | 1983年伊藤忠商事入社。同社執行役員、中国日本商会会長等を経て、2023年より現職。 |
| 李 立忠 | 取締役 | 1987年天津自動車研究所入社。奇瑞汽車常務副総経理等を経て、IAT Automobile Technology副董事長を務める。2024年より現職。 |
| 松尾 芳行 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年同社入社。HMヤマト代表取締役社長、同社内部監査室担当等を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、尾崎貴章(コンピタント代表取締役)、冨山健(冨山税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「合成樹脂成形関連事業」「物流機器関連事業」「EV関連事業」を展開しています。
■(1) 合成樹脂成形関連事業
OA機器部品、セールスプロモーション製品、住設機器、自動車用品、情報通信関連用品、家電部品などの各種合成樹脂成形品の製造販売を行っています。顧客の要望に沿った金型・製品設計、成形方法の提案から組立、検査に至る一貫した生産体制によりサービスを提供しています。
顧客からの製品販売代金を主な収益源としています。運営は同社のほか、子会社のヤマト・テクノセンターや埼玉ヤマトに金型製造や合成樹脂成形品の製造を委託し、主に同社が販売する形態をとっています。また、フィリピン子会社のBIG PHILIPPINES CORPORATIONも輸出向けに事業を展開しています。
■(2) 物流機器関連事業
コンビテナーなどの物流機器の製造販売を行っています。省力化や使用環境に適した魅力ある製品の開発と提供に取り組んでおり、幅広い産業の物流課題の解決に向けた機器を扱っています。
顧客からの物流機器の販売代金を主な収益源としています。運営は同社が主体となり、中国企業へ生産委託した製品を日本国内で販売しています。特殊な物流機器に関しては、一部国内の提携先に生産委託する体制を構築しています。
■(3) EV関連事業
優れた技術力とコスト競争力を有するEV部品と、耐久性に優れた国産トラックの車体基盤を組み合わせ、中古トラックを電動化する事業を展開しています。また、汎用リチウム電池モジュールの開発販売等も進めています。
EVコンバージョントラック等の販売代金を主な収益源としています。運営は同社が主体となっており、新たな収益の柱として大口顧客との商談などを進め、事業基盤の確立を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は140億円から160億円台で推移していましたが、直近では中国子会社の連結除外等により大幅な減収となりました。経常利益は黒字と赤字を行き来しており、当期は新規事業の基盤整備に向けた先行投資などにより大幅な経常損失を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 155億円 | 154億円 | 161億円 | 97億円 |
| 経常利益 | -3億円 | 0.9億円 | 0.2億円 | 0.8億円 | -7億円 |
| 利益率(%) | -1.9% | 0.6% | 0.1% | 0.5% | -7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.0億円 | 0.0億円 | -1億円 | -3億円 | -8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い売上総利益も縮小しましたが、売上総利益率は微増しています。一方で事業立ち上げに向けた先行投資や組織体制整備の負担が重く、営業利益は赤字に転落しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 161億円 | 97億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.1% | 12.2% |
| 営業利益 | 2億円 | -4.4億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | -4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が6億円(構成比35.2%)、荷造運搬費が1.2億円(同7.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の合成樹脂成形関連事業は連結対象範囲の変更等により大幅な減収となり、赤字に転落しました。物流機器関連事業は需要一巡で減収減益です。EV関連事業は売上は拡大したものの、事業立ち上げに向けた先行投資が重く大幅な営業損失となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 合成樹脂成形関連事業 | 128億円 | 77億円 | 0.6億円 | -0.5億円 | -0.6% |
| 物流機器関連事業 | 33億円 | 21億円 | 2億円 | 0.5億円 | 2.4% |
| EV関連事業 | 0.1億円 | 0.3億円 | -0.9億円 | -4.4億円 | -1600.7% |
| 連結(合計) | 161億円 | 97億円 | 2億円 | -4.4億円 | -4.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | -4.3億円 |
| 投資CF | -2億円 | -8億円 |
| 財務CF | -4億円 | -0.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-83.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は11.1%で、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営方針として、高い技術力を追求し、価格競争力と適切な納期を実現しつつ、新製品の提供等による新しい価値の創造と更なるグローバル化の進展によって、顧客に安心・信頼・満足・喜びを提供することを掲げています。また、会社の健全な存続と発展を目指しています。
■(2) 企業文化
国内外の法令や社会規範を遵守し、事業活動が地球環境に与える負荷の低減に配慮する価値観を重視しています。また、人権や個人の多様性を尊重し、健康的で安全に働きやすい職場環境を維持することで、コーポレート・ガバナンスの充実やステークホルダーとの信頼関係構築に努める文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期3ヶ年経営計画を推進し、中長期的な成長戦略の実現と恒常的な黒字体質の構築を目指しています。また、サステナビリティに関する数値目標として、2030年度までに以下の達成を掲げています。
* CO2排出量:46%削減(2013年比)
* 再生可能エネルギー使用率:30%
* サステナブル製品売上比率:50%
■(4) 成長戦略と重点施策
収益力の回復と利益ある成長を果たすため、「継続的に利益を創出し、成長を実感できる企業」を目標としています。モールドロックビジネスに次ぐ全社横断的な新規事業の創出を図るほか、EV関連事業の基盤確立による収益化、海外事業の再構築に注力します。また、新基幹システムの安定運用による業務効率向上も図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人権を尊重し、ジェンダーや国籍で職種等を区別せず、多様な人材の活躍を推進しています。適性のある人材を公平に管理職に登用するほか、新たな教育プログラムの導入により社員の自発的な自己啓発や能力向上を支援し、働きがいを持てる企業風土の醸成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.3歳 | 17.8年 | 5,511,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 65.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 64.0% |
※男性育児休業取得率について、同社は公表義務の対象ではないため「-」となっています。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性・外国人・中途採用者管理職比率(62%)、年間労働災害件数(0件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する不確実性
中国子会社における事業環境の悪化やEV関連事業への先行投資費用の増加等により、大幅な営業損失と営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しています。収益や資金繰りの改善に向けた施策を進めているものの、計画通りに進捗しない場合、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定顧客への依存と方針変更のリスク
OA・住設メーカー向けの合成樹脂成形部品等の取引において、上位顧客グループに対する売上依存度が相当部分を占めています。取引先における製造拠点の移動や規模縮小、取引方針の変更などがあった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料価格の高騰と調達への影響
製品の主原料である石油化学製品や鋼材等の価格高騰、エコマテリアルへの転換に伴うコスト増を販売価格に転嫁できない場合、収益性が低下するリスクがあります。また、災害等によりサプライチェーンに障害が発生し、製品の製造や納品が困難になる可能性もあります。



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