※本記事は、三洋化成工業株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三洋化成工業ってどんな会社?
生活用品から自動車、電子材料まで幅広い産業に機能化学品を提供する京都発の化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1949年に三洋油脂工業として創業し、1963年に現社名へ変更しました。1978年には世界で初めて高吸水性樹脂の工業化に成功し、同年、東京・大阪証券取引所市場第一部に上場を果たしました。2001年には高吸水性樹脂事業の関連会社としてSDPグローバルを設立しましたが、2024年に同事業からの撤退を発表し、事業ポートフォリオの転換を進めています。
連結従業員数は1,680人、単体では1,293人です。筆頭株主は総合商社の豊田通商(持株比率19.24%)で、第2位株主は繊維メーカーの東レ(同17.18%)となっており、両社とは製品販売や原材料購入等で取引関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 豊田通商 | 19.24% |
| 東レ | 17.18% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名(比率15.4%)で構成されています。代表取締役社長執行役員社長は樋口章憲氏です。取締役9名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 樋口 章憲 | 代表取締役社長執行役員社長 | 1984年同社入社。サンノプコ代表取締役社長、同社取締役兼専務執行役員などを経て2021年より現職。 |
| 原田 正大 | 代表取締役専務執行役員事業本部統括 | 1989年同社入社。常務執行役員事業企画本部長、取締役兼常務執行役員界面活性剤事業本部長などを経て2025年より現職。 |
| 須崎 裕之 | 取締役常務執行役員サステナビリティ担当経営戦略部門担当 | 1988年トーメン入社。豊田通商産業化学品部長を経て同社入社。常務執行役員経営企画本部長などを経て2024年より現職。 |
| 奥 喜之 | 取締役常務執行役員全社安全担当生産部門担当 | 1990年同社入社。人事本部長、常務執行役員人事本部長などを経て2024年より現職。 |
| 西村 健一 | 取締役執行役員企業倫理担当間接部門担当 | 1988年住友銀行入行。東レ財務部長を経て同社入社。事務本部長、取締役兼執行役員管理本部長などを経て2025年より現職。 |
社外取締役は、白井文(元尼崎市長・取締役会議長)、小畑英明(元日新電機社長)、佐野由美(公益財団法人21世紀職業財団関西事務所長)、富永浩史(元豊田通商CSO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「生活・健康産業関連分野」「石油・輸送機産業関連分野」等の5つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■生活・健康産業関連分野
洗剤やヘアケア製品用の界面活性剤、殺菌・抗菌剤、ポリエチレングリコール、紙パルプ用薬剤などを提供しています。また、事業撤退を進めている高吸水性樹脂も含まれます。これらは日用品メーカーや製紙会社などに販売されています。
運営は主に三洋化成工業が行い、海外ではサンヨーカセイ(タイランド)リミテッドなどが製造・販売を担っています。ポリエチレングリコール等は子会社のサンケミカルが製造し同社が販売、紙パルプ用薬剤はサンノプコが製造・販売しています。収益は製品販売による対価です。
■石油・輸送機産業関連分野
自動車シート用ポリウレタンフォーム原料、自動車内装表皮材用ウレタンビーズ、潤滑油添加剤などを提供しています。主な顧客は自動車部品メーカーや潤滑油メーカーです。
三洋化成工業およびサンケミカルが製造し、同社が販売を行います。ウレタンビーズは米国の子会社サンヨーケミカル・テキサス・インダストリーズも製造しています。潤滑油添加剤は韓国三洋化成製造などが製造に関与しています。収益は製品販売による対価です。
■プラスチック・繊維産業関連分野
永久帯電防止剤、顔料分散剤、樹脂改質剤、塗料用薬剤、繊維用薬剤などを提供しています。プラスチック加工メーカーや繊維メーカーなどが主な顧客です。
運営は三洋化成工業に加え、サンヨーカセイ(タイランド)リミテッドが帯電防止剤等を製造しています。塗料用薬剤についてはサンノプコが製造・販売を行っています。収益はこれら製品の販売代金です。
■情報・電気電子産業関連分野
複写機・プリンター用トナーバインダー、重合トナー材料、アルミ電解コンデンサ用電解液、半導体関連材料などを提供しています。OA機器メーカーや電子部品メーカーが顧客となります。
三洋化成工業が主体となって製造・販売を行っています。半導体関連材料については、関連会社のサンアプロも製造・販売を担っています。収益源は各製品の販売による対価です。
■環境・住設産業関連分野他
廃水処理用高分子凝集剤や、ポリウレタン断熱材の原料、建築シーラント原料などを提供しています。水処理業者や建材メーカーなどが顧客です。
主に三洋化成工業が販売を行っており、ポリウレタン断熱材原料についてはサンケミカルも製造に関与しています。収益は製品販売による対価です。
■その他事業
上記セグメントに含まれない物流事業などを展開しています。三洋化成ロジスティクスが保管・出荷・運送業務を、塩浜ケミカル倉庫が倉庫業を行っています。収益はグループ内外からの物流業務受託料等です。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第99期のピーク以降、減少傾向にあり、特に直近は高吸水性樹脂事業からの撤退影響で減収となりました。利益面では、第100期に構造改革費用の計上で多額の赤字を計上しましたが、第101期にはこれらの改革効果や高付加価値品の伸長により、営業利益、経常利益ともに回復し、当期純利益も黒字転換を果たしました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,448億円 | 1,625億円 | 1,750億円 | 1,595億円 | 1,423億円 |
| 経常利益 | 120億円 | 128億円 | 99億円 | 82億円 | 97億円 |
| 利益率(%) | 8.3% | 7.9% | 5.7% | 5.1% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 73億円 | 67億円 | 57億円 | -85億円 | 42億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高は減少しましたが、不採算事業からの撤退やコスト構造の見直しが進み、売上総利益率は改善しました。営業利益率は前期の3.1%から5.9%へと大きく上昇し、本業の収益性が回復していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,595億円 | 1,423億円 |
| 売上総利益 | 293億円 | 321億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.4% | 22.5% |
| 営業利益 | 49億円 | 84億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費・保管料が55億円(構成比23.2%)、研究開発費が52億円(同21.8%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の変動費が主要な割合を占めています。
■(3) セグメント収益
「生活・健康産業」は高吸水性樹脂事業撤退により大幅な減収となりましたが、赤字からは脱却しました。「石油・輸送機産業」は主力のウレタン事業が海外安価品の影響を受け減収となりましたが、増益を確保しました。「情報・電気電子産業」は先端半導体向けが好調で大幅増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 生活・健康産業関連分野 | 459億円 | 307億円 | -14億円 | 2億円 | 0.6% |
| 石油・輸送機産業関連分野 | 505億円 | 492億円 | 28億円 | 40億円 | 8.1% |
| プラスチック・繊維産業関連分野 | 252億円 | 268億円 | 24億円 | 29億円 | 10.7% |
| 情報・電気電子産業関連分野 | 229億円 | 209億円 | 18億円 | 25億円 | 12.1% |
| 環境・住設産業関連分野他 | 150億円 | 146億円 | 5億円 | 0億円 | 0.0% |
| 連結(合計) | 1,595億円 | 1,423億円 | 49億円 | 84億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 198億円 | 139億円 |
| 投資CF | -63億円 | -51億円 |
| 財務CF | -40億円 | -119億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、創業以来の社是として「企業を通じてよりよい社会を建設しよう」を掲げています。この社是に基づき、経済的価値と社会的価値を共に向上させ、将来にわたって持続的に成長することを目指しています。
■(2) 企業文化
2030年のありたい姿に向けた経営方針「WakuWaku Explosion 2030」を策定し、「環境と調和した循環型社会」「健康・安心にくらせる社会」「一人ひとりがかがやく社会」の実現を目指しています。従業員一人ひとりが主役となり、ワクワクしながら変革を推進する風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
「新中期経営計画2025」を推進中ですが、外部環境の変化を受け、2025年度の数値目標を見直しています。
* 2025年度営業利益見通し:100億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「カーボンニュートラルへの貢献」と「QOLの向上」をミッションとし、「基盤事業の見直し」「基盤事業からの展開」「新たな成長軌道」の3つの取り組みを推進しています。具体的には、高吸水性樹脂事業からの撤退やウレタン事業の構造改革を進めるとともに、高付加価値製品群へのリソース集中、半導体分野や新規創傷治癒材などの成長領域の事業化を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様性の尊重と協働」を人事理念とし、「従業員が最も活躍できる環境を作り出すこと」をポリシーとしています。等級制度の一本化や社内複業制度などを通じて全員が活躍できる仕組みを作り、次世代リーダーの計画的な育成や、多様な人材が活躍できるDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.3歳 | 18.1年 | 7,930,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 92.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、私傷病休業者率(1.6%)、労働生産性損失率(36%)、障がい者雇用率(2.5%)、外国籍従業員採用数(3人)、エンプロイエンゲージメント(44.8)、ワークエンゲージメント(49.7)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況
同社グループの製品需要は、販売先の国や地域の経済状況に影響を受けます。日本、北米、欧州、アジアを含む主要市場において景気後退等により需要が縮小した場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替レート
海外での事業展開において、為替レートの変動が業績や財務状況に影響を与える可能性があります。特に在外子会社の財務諸表換算時の為替変動や、輸出入取引に伴う為替リスクが存在します。
■(3) 原料価格の変動
使用する原料の主要部分は原油に由来しており、原油価格は中東情勢や需給バランス等の要因で変動します。原油価格の上昇に伴う原料価格の高騰は、コスト増加要因となり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 地震等の自然災害
主力工場である名古屋工場や衣浦工場は東海地震の防災対策強化地域に位置しています。耐震強化や拠点の複数化を進めていますが、大規模な地震等の自然災害が発生した場合、生産・販売活動の停止などにより業績に重大な影響が出る恐れがあります。



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