※本記事は、松本油脂製薬株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
松本油脂製薬グループは、界面活性剤、その他の2部門に関係する製品等の製造、販売を主な事業内容としています。同社グループは、連結子会社2社と持分法適用関連会社1社を含む計4社で構成され、事業活動を展開しています。
単体従業員数は330名、連結従業員数は399名です。セグメントは日本、アジアの2つです。
国内においては松本油脂製薬が界面活性剤、合成糊料、合成樹脂製マイクロスフェアーなどの製造・販売を一手に担い、海外2社の連結子会社を通じてグローバルに事業を展開しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
松本油脂製薬は、研究開発型の企業として、専門性の高い分野で事業を展開しています。従業員の能力向上と専門性の深化を重視し、安定した環境でキャリアを築きたいと考える方にとって、魅力的な選択肢となるでしょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、従業員の長期的なキャリア形成を支援する環境が整っていると考えられます。平均勤続年数や平均年齢から、経験豊富な人材が定着し、安定して働いている傾向がうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,549,000円 |
| 平均勤続年数 | 15.5年 |
| 平均年齢 | 41.4歳 |
| 単体従業員数 | 330人 |
| 連結従業員数 | 399人 |
| 単体のグループ内比率 | 82.7% |
退職給付制度として、同社は退職一時金制度の他、退職金制度の一部に確定給付企業年金制度(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)を採用しています。これらの制度は国内および海外のグループ会社に適用されています。
退職給付債務は21.3億円、年金資産は15.0億円となっています。退職一時金制度はありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、界面活性剤および高分子分野における研究開発型企業として、持続的な成長と高い収益性を維持するため、従業員一人ひとりの能力向上と専門性の深化が不可欠であると認識しています。人材を最も重要な経営資源と捉え、市場水準も勘案した安定的な基本給の維持・向上を重視しています。
個人の成果や業績貢献度、スキルアップの状況等を多角的に評価し、賞与や手当等を通じて適切に報いる報酬体系を構築しています。人材育成においては、職場でのOJTを軸とした実務教育の徹底に加え、職責に応じた階層別研修の実施、各種検定・資格取得の支援体制を整備しています。
社内環境整備では、従業員が心身ともに健康に働くことができる環境の構築を目指し、ワークライフバランスの推進として男性労働者の育児休業取得を積極的に推進しています。多様性の確保にも努めており、中途採用者や外国人の管理職登用の水準維持向上に加え、女性労働者比率およびリーダー職に占める女性比率の向上に向けた具体的な登用・育成計画を推進しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体のデータを示します。連結グループに属するすべての会社では行われていないため、提出会社のものを記載しております。男女賃金差異は、女性活躍推進法に基づき算出されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| リーダー職以上にある者に占める女性労働者の割合 | 2.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 85.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異 (全労働者) | 53.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異 (正規雇用労働者) | 100.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異 (パート・有期雇用労働者) | 91.2% |
人的資本・多様性
なお、外国人の管理職登用に関する事項はプライバシーに関する事項が含まれるため指標や目標は設けず、実績の公表も控えています。中途採用者のリーダー職以上に占める割合は約30%と高水準であるため指標は設けていませんが、水準の維持・向上に努めています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 労働者に占める女性労働者の割合 | 12.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
松本油脂製薬は、界面活性剤やその他の化学製品の製造・販売を主軸とする化学メーカーです。国内外に拠点を持ち、幅広い産業分野に製品を提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、界面活性剤とその他の2つの部門を中心に事業を展開しています。主要な製品は界面活性剤、合成糊料、合成樹脂製マイクロスフェアーなどであり、繊維工業や鉄鋼金属工業、製缶工業、トイレタリー、香粧品など多岐にわたる顧客に製品を供給しています。収益は主にこれらの製品の製造・販売から得られています。
日本
日本セグメントでは、同社が界面活性剤、合成糊料、合成樹脂製マイクロスフェアーなどの製造・販売を行っています。また、持分法適用関連会社の日本クエーカー・ケミカルが鉄鋼金属工業用や製缶工業用界面活性剤の研究・販売を担っています。収益は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽・両性イオン界面活性剤、高分子・無機製品等の各分野からの販売によって得られています。前期と比較すると、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、高分子・無機製品等の分野で売上高が減少しましたが、陽・両性イオン界面活性剤の分野では売上高が増加しました。
アジア
アジアセグメントでは、連結子会社の株式会社マツモトユシ・インドネシアと立松化工股份有限公司が繊維工業用界面活性剤や糊料を製造し、自国内で販売しています。同社はこれら2社から製品を仕入れ、インドネシアおよび台湾以外の国へ販売するほか、2社が製造工程で使用する合成糊料の中間体を販売しています。収益は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽・両イオン界面活性剤、高分子・無機製品等の各分野からの販売によって得られています。前期と比較すると、陰イオン界面活性剤の分野で売上高が増加しましたが、非イオン界面活性剤、陽・両イオン界面活性剤、高分子・無機製品等の分野では売上高が減少しました。
同社グループの収益は日本セグメントが大部分を占めており、アジアセグメントがこれに次ぐ規模となっています。主要な顧客としては、丸紅ケミックス株式会社と日本クエーカー・ケミカル株式会社への販売が大きな割合を占めています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 404億円 | 388億円 |
| アジア | 27.1億円 | 23.1億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は直近の期で減少に転じましたが、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は増加しています。特に経常利益は、前期と比較して大きく増加する結果となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 372億円 | 396億円 | 415億円 | 431億円 | 411億円 |
| 経常利益 | 77.4億円 | 94.7億円 | 107億円 | 96.8億円 | 108億円 |
| 経常利益率 | 20.8% | 23.9% | 25.8% | 22.4% | 26.3% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 54.9億円 | 72.5億円 | 75.0億円 | 68.3億円 | 80.4億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 1,697.19 | 2,259.37 | 2,586.38 | 2,354.19 | 2,770.53 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、前期から減少しています。また、従業員1人あたり営業利益も前期から減少する結果となりました。これらの指標は、同社グループの生産性が前期と比較して低下傾向にあることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 108.4百万円 | 102.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 23.3百万円 | 20.5百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
松本油脂製薬は、強固な財務基盤と安定したキャッシュフローを維持している同社グループです。本業で着実に利益を上げながら、将来に向けた投資もバランス良く行っている状況を示しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、高い自己資本比率と手元資金の厚みによって安定していることがうかがえます。自己資本比率はプライム市場の製造業平均を大きく上回る水準で推移しています。ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均を上回る水準となっています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 814億円 | 913億円 |
| 自己資本比率 | 83.4% | 84.2% |
| ROE(自己資本利益率) | 8.9% | 9.5% |
| 現金及び預金 | 320億円 | 333億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローは、本業で安定的に資金を生み出し、その資金を投資に回しつつも、最終的に手元資金を増やしている状況を示しています。営業活動によるキャッシュフローは増加となりましたが、前連結会計年度からは減少しています。税金等調整前当期純利益や減価償却費、利息及び配当金の受取額が主な収入要因となっています。
投資活動によるキャッシュフローは、有価証券の取得や投資有価証券の取得による支出があったものの、投資有価証券の売却による収入などにより、前連結会計年度に比べて減少幅が縮小しました。財務活動によるキャッシュフローは、配当金の支払額が主な支出となり、前連結会計年度から減少幅が縮小しています。これらの結果、フリーキャッシュフローはプラスで推移しており、本業で得た資金で投資を賄い、余剰資金を生み出している状況です。同社グループは、営業活動によるキャッシュフローと自己資金で設備投資を賄うことを基本方針としており、今後も継続的な設備の新設・更新を予定しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 77.7億円 | 66.6億円 |
| 投資CF | △90.6億円 | △53.5億円 |
| 財務CF | △12.4億円 | △11.7億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △12.9億円 | 13.1億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、為替レートの変動によるリスクを認識しています。海外売上高比率が高く、米ドル建取引が多いため、売上債権について為替リスクを有している状況です。
また、原材料価格の市場変動もリスク要因としています。原油由来の原料を主要部分として使用しており、原油価格の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、労働組合は結成されていませんが、労使関係は円満に推移していると記載されています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
松本油脂製薬は、界面活性剤の技術を中核とする研究開発型の企業です。規模の拡大よりも、グローバル経済に対応できる「より強く」「より利益率の高い」企業を目指し、独自の技術開発と顧客ニーズの把握を重視しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
松本油脂製薬グループは、界面活性剤の技術を中核に据えた研究開発型の企業です。従業員の約3割が研究開発関連業務に従事し、繊維産業をはじめとする多様な産業の製品品質向上と生産性向上に貢献する製品を提供しています。
同社グループは、規模の拡大よりも、グローバル経済に対応できる「より強く」「より利益率の高い」企業になることを目指しています。現状に安住することなく、新しい分野での独自の技術開発を図り、顧客ニーズを的確に把握することで、これまで培ってきた技術力を深化・拡大していくことを経営方針としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
松本油脂製薬グループは、研究開発を重視し、現状の延長線のみの研究活動に安住せず、常に新しい分野での技術開発に挑戦する姿勢を大切にしています。顧客ニーズを的確に把握し、技術力を大きく伸ばしていくことが求められます。
コーポレート・ガバナンス体制の下、法に則った透明な会社運営を行い、ステークホルダーの期待に応え、持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。多様性の確保を重視し、女性の活躍推進を軸に、女性、外国人、中途採用者の管理職登用を推進しています。
従業員の心身の健康増進や生産性向上にも取り組み、男性労働者の育児休業取得推進にも力を入れています。環境に配慮した企業活動も重要な価値観としており、環境マネジメントシステムに基づいた活動を継続しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
松本油脂製薬グループを取り巻く経営環境は、原材料価格やエネルギーコストの高騰、地政学リスク、不安定な為替変動等、不透明な要因が多く、厳しい状況が続くものと予想されています。
このような状況下で、同社グループは引き続き経営基盤の強化に取り組んでいます。競争力のある新製品の開発、販路の拡大、品質管理体制・安定供給体制の維持、並びに社内の合理化に全社一丸となって取り組み、業績の拡充と収益率の向上に努める方針です。
また、生産設備の有効活用と既存設備の見直しを検討し、研究開発においては、社会情勢の変化に対応すべく、付加価値の高い新素材・新用途の開発を機動的に進めていくことを重点テーマとしています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
松本油脂製薬は監査役会設置会社であり、取締役会と監査役会が連携して経営を監督する体制です。社外役員も積極的に登用し、客観的な視点を取り入れています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
松本油脂製薬の筆頭株主は松本興産であり、同社グループの創業家関連企業とみられます。上位株主には、海外の金融機関や国内の主要銀行、そして創業家関係者が複数名を連ねています。特定の株主グループが経営に影響力を持つ資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松本興産 | 23.50% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8221-623793(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 11.32% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.67% |
| 木 村 直 樹 | 4.59% |
| 鰐 洲 みよ子 | 4.25% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
松本油脂製薬の役員は10名(男性10名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は木村直樹氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木 村 直 樹 | 代表取締役社長 | 1971年4月株式会社朝日新聞社入社、1975年1月同社取締役、1978年9月同社入社。1992年7月同社代表取締役社長、1999年4月松本興産株式会社代表取締役社長より現職。 |
| 藤 井 修 治 | 代表取締役専務管理本部長 | 2008年4月株式会社三井住友銀行大阪西法人営業部長、2013年6月株式会社ダスキン取締役。2024年6月同社代表取締役専務管理本部長より現職。 |
| 川 原 廣 治 | 代表取締役専務営業本部長兼輸出部長 | 2010年6月株式会社三菱東京UFJ銀行執行役員、2011年6月三菱UFJニコス株式会社常務執行役員。2026年4月同社代表取締役専務営業本部長兼輸出部長より現職。 |
| 橘 興 林 | 取締役営業本部副本部長 | 2011年6月同社輸出部副部長。2018年6月同社取締役営業本部副本部長より現職。 |
| 桂 嘉 宏 | 取締役 | 2002年4月株式会社三井住友銀行南大阪ブロック部長、2013年12月ホウライ株式会社取締役兼執行役員。2024年6月同社取締役、2026年3月松本興産株式会社代表取締役専務営業本部長より現職。 |
社外取締役は、辻卓史氏(元鴻池運輸代表取締役社長)、谷所敬氏(元カナデビア代表取締役取締役会長)です。
同社は監査役制度を採用しており、取締役会と監査役会が連携して経営を監督する体制です。社外取締役は長年の経営経験に基づき、客観的な視点から経営の監督を行っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
松本油脂製薬の役員報酬は、企業価値の持続的な向上を図るため、各職責を踏まえた適正な水準を基本方針としています。業務執行取締役および監督機能を担う社外取締役の報酬は、いずれも基本報酬のみの月額固定報酬制です。報酬額は、役位、職責、在任年数、他社水準、同社業績、従業員給与水準を総合的に考慮して決定されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 1.3億円 | 26.6百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 9百万円 | 9.0百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 29百万円 | 7.2百万円 |
個人別報酬が開示されている役員は存在しません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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