※本記事は、松本油脂製薬株式会社 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 松本油脂製薬ってどんな会社?
界面活性剤の技術を中核に、繊維・自動車・建築など幅広い産業向けに機能性化学品を提供する研究開発型企業です。
■(1) 会社概要
1939年3月に松本商店を前身として設立され、1952年には界面活性剤の製造販売を開始しました。1979年には熱膨張性マイクロカプセルの製造販売を始め、事業領域を拡大しました。2004年12月にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年4月の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
同グループの従業員数は連結398名、単体329名です。筆頭株主は同社関連会社の松本興産、第2位は外国法人の資産管理を行う信託銀行、第3位は金融機関の三菱UFJ銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 松本興産 | 23.50% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8221-623793 | 11.29% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名(監査役含む)の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は木村直樹氏が務めています。取締役7名のうち社外取締役は2名で、社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村直樹 | 代表取締役社長 | 朝日新聞社を経て同社入社。取締役副社長を経て1992年7月より現職。松本興産代表取締役社長を兼務。 |
| 藤井修治 | 代表取締役専務管理本部長 | 三井住友銀行大阪西法人営業部長、ダスキン取締役を経て同社入社。管理本部副本部長などを歴任し2024年6月より現職。 |
| 川原廣治 | 専務取締役営業本部長兼輸出部長 | 三菱東京UFJ銀行執行役員、三菱UFJニコス常務執行役員などを経て同社社外監査役。2025年5月より現職。 |
| 橘興林 | 取締役営業本部副本部長 | 同社輸出部副部長を経て2018年6月より現職。 |
| 桂嘉宏 | 取締役 | 三井住友銀行、ホウライ取締役を経て松本興産専務取締役営業本部長(現任)。2024年6月より同社取締役。 |
社外取締役は、辻卓史(元鴻池運輸代表取締役会長)、谷所敬(元日立造船代表取締役取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「アジア」の2つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
界面活性剤部門では鉄鋼金属工業用や製缶工業用の界面活性剤などを、その他部門では合成糊料や合成樹脂製マイクロスフェアーなどを製造・販売しています。主な顧客は繊維産業や自動車産業など多岐にわたります。
収益は製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に松本油脂製薬が行っており、関連会社の日本クエーカー・ケミカルが特定分野の研究・販売を行っています。
■(2) アジア
インドネシアおよび台湾において、繊維工業用の界面活性剤や繊維工業用糊料などを製造し、現地で販売しています。また、同社がこれら海外子会社から製品を仕入れ、第三国へ販売することもあります。
収益は製品の販売によって得ています。運営は連結子会社の株式会社マツモトユシ・インドネシアおよび立松化工股份有限公司が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は296億円から431億円へと着実に成長しています。経常利益は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、当期は減益となりました。利益率は20%を超える高い水準を維持しており、収益性の高さがうかがえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 296億円 | 372億円 | 396億円 | 415億円 | 431億円 |
| 経常利益 | 48億円 | 77億円 | 95億円 | 107億円 | 97億円 |
| 利益率(%) | 16.2% | 20.8% | 23.9% | 25.8% | 22.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 34億円 | 55億円 | 72億円 | 75億円 | 68億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費・一般管理費も増加しました。営業利益は増加したものの、営業外費用の増加などにより経常利益は減少しています。売上総利益率は30%台前半で安定しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 415億円 | 431億円 |
| 売上総利益 | 130億円 | 137億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.2% | 31.7% |
| 営業利益 | 88億円 | 93億円 |
| 営業利益率(%) | 21.1% | 21.5% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が11億円(構成比25%)、研究開発費が8億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは増収増益となり、全体の業績を牽引しました。一方、アジアセグメントは売上高は増加したものの、セグメント利益は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 389億円 | 404億円 | 85億円 | 90億円 | 22.3% |
| アジア | 26億円 | 27億円 | 3億円 | 3億円 | 10.7% |
| 連結(合計) | 415億円 | 431億円 | 88億円 | 93億円 | 21.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得た資金で借入金の返済や配当支払いを行い、投資も自己資金の範囲内で実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 74億円 | 78億円 |
| 投資CF | -179億円 | -91億円 |
| 財務CF | -10億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、規模の拡大よりもグローバル経済に対応できる「より強い」「より利益率の高い」企業になることを目指しています。各種産業のユーザー製品の品質向上と生産性向上に不可欠な製品を供給することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
界面活性剤の技術を中核に据えた研究開発型の企業文化を持っています。従業員のおよそ3割が研究開発関連業務に従事しており、現状の延長線上の研究にとどまらず、新しい分野での技術開発を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
成長性と収益性の向上に努め、売上高および売上高営業利益率を継続して高めていくことを目標としています。また、株主利益の増大を図るため、1株当たり当期純利益も重要な指標として捉えています。
■(4) 成長戦略と重点施策
界面活性剤分野だけでなく、高分子分野においても独自の技術開発を継続し、新しい分野への展開を図ります。広範囲な顧客ニーズを把握し、繊維向け油剤から高分子マツモトマイクロスフェアー、金属加工油剤に至るまでの開発系譜を深化・拡大させていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様性の確保が企業価値向上に資するとの考えのもと、女性活躍推進を軸とした多様性確保に努めています。人材育成ではOJTに加え、階層別研修や資格取得支援を展開しています。また、従業員の健康増進と生産性向上を目的として、男性労働者の育児休業取得を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 14.8年 | 7,313,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 99.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 82.3% |
※女性管理職比率については、HTMLの「サステナビリティに関する考え方及び取組」において「リーダー職以上にある者に占める女性労働者の割合 2.9%」との記載があります。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替レートの変動
アジア地域を中心に海外売上高比率が高く、多くが米ドル建取引であるため、為替変動の影響を受けます。外貨建債権債務の両建て等でリスク軽減を図っていますが、完全に回避できるわけではありません。
■(2) 原材料価格の市場変動の影響
主要原料は原油に由来しており、中東情勢や需給バランス、為替変動等による原油価格の変動が原材料価格に波及し、業績に影響を及ぼす可能性があります。技術対応力による高品質製品の開発やコストダウンで利益確保に努めています。
■(3) 株価の下落
投資有価証券として上場または非上場の株式を保有しており、これらの時価または実質価額が帳簿価額を著しく下回った場合、評価損の計上が必要となり、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。



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