※本記事は、中国塗料株式会社の有価証券報告書(第129期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中国塗料ってどんな会社?
船舶用を中心とした塗料の製造およびグローバル販売を展開する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1917年に創業し、船底塗料の製造を開始しました。1923年に現在の社名に改組し、1961年には東京証券取引所に上場を果たしました。1973年の香港現地法人設立を皮切りに、シンガポールや英国など世界各地に拠点を設け、グローバル展開を推進しています。直近では2025年にイタリアの塗料製造会社を完全子会社化しました。
現在の同社グループは、連結従業員数2,198名、単体従業員数493名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に資産管理等を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。第3位には広島銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.58% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.65% |
| 広島銀行 | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は伊達健士氏が務めており、社外取締役の比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊達健士 | 代表取締役社長 | 1995年同社入社。海外現地法人の取締役社長や営業本部長などの要職を歴任し、2021年より代表取締役社長兼営業本部長に就任。2023年より現職。 |
| 田中秀幸 | 専務取締役技術・生産担当 | 1988年同社入社。防汚技術や研究開発部門のリーダーを務め、技術生産本部長などを経て2025年より現職。 |
| 小林克徳 | 常務取締役管理・コンプライアンス担当 | 1990年同社入社。財務部長や海外管理部長、情報システム部長などの管理部門を牽引し、管理本部長を経て2025年より現職。 |
| 清水貴夫 | 取締役経営戦略担当 | 1985年日本興業銀行入行。2014年に同社へ入社し、経営企画部長や管理本部副本部長を歴任。2025年より現職。 |
社外取締役は、稲見俊文(元三菱鉱石輸送社長)、門伝明子(弁護士・報酬諮問委員会委員長)、工藤匠(元東洋船舶執行役員コーポレート本部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」「韓国」「東南アジア」「欧州・米国」およびその他の事業を展開しています。
■(1) 日本
日本国内における船舶用塗料、工業用塗料などの製造および販売を行っています。海運業界や建設業界向けに環境対応型の製品を提供するほか、塗装技術サービスの請負やコンサルティング業務も展開しています。
主な収益源は、顧客からの塗料の製品代金や技術サービス料です。運営は同社のほか、大竹明新化学や神戸ペイントなどが担当しています。また、同社が所有する不動産の賃貸などを行うその他の事業も展開しています。
■(2) 中国
中国市場における船舶用塗料やコンテナ用塗料、重防食向けを中心とした工業用塗料などの製造および販売を行っています。現地の造船所やコンテナ製造業者を主な顧客としています。
塗料の販売による製品代金が主な収益源です。中国国内での事業運営は、主に上海や広東などに拠点を置くCHUGOKU MARINE PAINTS (Shanghai) 等の子会社4社が担当しています。
■(3) 韓国
韓国における船舶用塗料の製造および販売を主力として展開しています。現地の主要な大型造船所などを顧客とし、新造船向けおよび修繕船向けに環境対応型塗料などを提供しています。
顧客への塗料販売に伴う製品代金が主な収益源です。韓国における事業運営は、現地子会社であるCHUGOKU SAMHWA PAINTSが担当しています。
■(4) 東南アジア
東南アジア全域で船舶用塗料、コンテナ用塗料、工業用塗料の製造および販売を展開しています。各国の修繕船向け需要やインフラ投資に伴う建材向け需要に対応しています。
現地顧客からの塗料の販売代金が主な収益源です。事業運営は、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、インド、ミャンマーに所在する6社の子会社がそれぞれの地域で担当しています。
■(5) 欧州・米国
欧州および米国市場において、船舶用塗料や工業用塗料の製造および販売を行っています。主に修繕船向けの環境対応型製品や高付加価値製品を中心に提供しています。
顧客に対する塗料製品の販売代金が収益源となっています。運営は、オランダ、英国、ドイツ、ギリシャ、米国、イタリアなどに拠点を置く子会社7社がそれぞれ担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して拡大を続けています。利益面についても、原材料高などの影響をこなしながら、販売価格の適正化や高付加価値製品の拡販を進めたことにより、大幅な増益傾向が続いており、利益率も大きく改善しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 843億円 | 995億円 | 1162億円 | 1312億円 | 1394億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 44億円 | 130億円 | 165億円 | 178億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | 4.4% | 11.2% | 12.6% | 12.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 31億円 | 68億円 | 74億円 | 103億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加えて、製品ミックスの改善等により売上総利益率が向上しています。各種経費は増加したものの、増収効果が上回り、営業利益は増益を達成し、本業の収益性が高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1312億円 | 1394億円 |
| 売上総利益 | 426億円 | 468億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.5% | 33.6% |
| 営業利益 | 154億円 | 174億円 |
| 営業利益率(%) | 11.7% | 12.5% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料等が103億円(構成比35.1%)、運送費が58億円(同19.7%)、販売手数料が13億円(同4.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各地域のセグメントにおいて、船舶向け塗料を中心に需要を的確に取り込み、おおむね堅調な増収を記録しています。特に欧州・米国セグメントでは修繕船向けの環境対応型製品の販売が好調で、売上を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 427億円 | 449億円 |
| 中国 | 214億円 | 229億円 |
| 韓国 | 194億円 | 194億円 |
| 東南アジア | 189億円 | 202億円 |
| 欧州・米国 | 286億円 | 319億円 |
| 連結(合計) | 1312億円 | 1394億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益と資産売却等によって得た資金で借入返済を進める、改善型のキャッシュ・フロー状況となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 145億円 | 144億円 |
| 投資CF | -1億円 | 16億円 |
| 財務CF | -125億円 | -103億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も60.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「最高の品質で、顧客の信頼と満足を確保する」「世界的視野に立ち、常に技術革新を行い新製品の開発に努める」「誠実を旨とし、和を重んじ公明正大を期す」といった経営理念を掲げています。事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献し、すべてのステークホルダーの幸福を追求することを経営の基本スタンスとしています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を体現するため、従業員の健康や安全を確保しつつ、働きがいのある環境づくりや成長機会の提供に努めています。また、取引先とはビジネスパートナーとして共存共栄の関係を築き、環境や人権等に配慮した取引を通じて持続可能な社会の実現を目指す価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、新たな中期経営計画「CMP New Century Plan 3」(2026〜2030年度)において、サステナブルで高収益なグローバル・ニッチ・トップ企業を目指し、以下の2030年度目標を掲げています。
* 売上高:1,800億円
* 営業利益:230億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:160億円
* EBITDA:270億円
* ROE:12%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
将来的に船舶用塗料での世界トップシェアを狙うため、攻めの姿勢に転換し、販売面・製品面での競争力強化を図ります。また、工業用塗料分野では世界的なインフラ投資を背景に、海外の重防食を中心に成長を目指すとともに、国内外の生産・研究拠点へ積極的な戦略投資を行います。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材がグローバルに活躍し、ウェルビーイング(社員の幸せ)を実現することを人材戦略の目的に掲げています。変化に対応し組織成果を最大化する「自律型人財」の育成を重視しており、人事制度の改革やキャリア形成を主眼に置いた人材育成システムの再構築、多様な働き方を支える環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.5歳 | 15.5年 | 7,643,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.0% |
| 男性育児休業取得率 | 69.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 79.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 74.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 船舶・コンテナ市場の市況変動
同社グループの売上高の大部分は船舶用およびコンテナ用塗料が占めています。世界経済の停滞により新造船の建造量やコンテナの生産量が減少した場合、塗料の販売量が低下し、同社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 主要原材料の価格高騰と調達難
塗料の製造に必要な樹脂や溶剤、非鉄金属等の主要原材料は、ナフサ価格や国際市況の変動に大きく影響を受けます。需要増による調達の支障や価格の想定以上の高騰が生じた場合、利益率が低下するリスクがあります。
■(3) グローバル展開に伴うカントリーリスク
同社は海外売上比率が高く、各国での現地生産・販売体制を拡大しています。進出先における経済動向の悪化、政治体制の変動、税制や法環境の変更、テロや紛争などの予期せぬ事象が発生した場合、事業活動に支障を来す恐れがあります。
■(4) 国内外における価格・技術競争の激化
各種塗料市場において、国内外の競合他社と価格や性能面での厳しい競争にさらされています。価格競争により販売価格が著しく低下した場合や、他社から画期的な新製品が投入された場合、競争力と採算性が悪化するリスクがあります。



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