※本記事は、中国塗料株式会社 の有価証券報告書(第128期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中国塗料ってどんな会社?
船舶用塗料を主力とする大手塗料メーカー。1917年創業の老舗で、世界的な供給網を持つグローバル企業。
■(1) 会社概要
1917年に広島で創業し、船底塗料の製造を開始しました。1949年に広島証券取引所、1961年に東京証券取引所へ上場し、現在はプライム市場に所属しています。早期から海外展開を進め、1970年代以降、香港、シンガポール、オランダなどに現地法人を設立し、グローバルな供給体制を構築しています。
連結従業員数は2,137名、単体では479名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位には地銀の広島銀行が名を連ねています。金融機関が上位株主を占めており、安定した資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.39% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.20% |
| 広島銀行 | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は伊達健士氏が務めています。取締役会における社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊達健士 | 代表取締役社長 | 1995年入社。オランダ現地法人社長、営業本部長などを経て2021年より現職。 |
| 田中秀幸 | 専務取締役 | 1988年入社。技術本部長、生産本部長などを歴任し2025年より現職。 |
| 小林克徳 | 常務取締役 | 1990年入社。財務部長、管理本部長などを経て2025年より現職。 |
| 清水貴夫 | 取締役 | 旧日本興業銀行出身。経営企画部長などを経て2024年より現職。 |
社外取締役は、稲見俊文(元三菱鉱石輸送社長)、門伝明子(弁護士)、工藤匠(元OMC Shipping社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」「韓国」「東南アジア」「欧州・米国」の各報告セグメントで事業を展開しています。
**日本セグメント**
船舶用塗料、工業用塗料などの製造・販売を行っています。また、不動産管理業務なども含みます。顧客は造船所、海運会社、建設業者などです。
収益は、製品の販売代金やサービスの対価から得ています。運営は主に同社や大竹明新化学、神戸ペイントなどが行っています。
**中国セグメント**
中国国内において、船舶用塗料、コンテナ用塗料、工業用塗料の製造・販売を行っています。世界のコンテナ製造の多くが中国で行われているため、コンテナ用塗料の需要も高い地域です。
収益は製品の販売により得ています。運営はCHUGOKU MARINE PAINTS (Shanghai) 等の現地法人が担っています。
**韓国セグメント**
大手造船所が集積する韓国において、船舶用塗料を中心とした製造・販売を行っています。新造船向けの需要が大きなウェイトを占めます。
収益は製品の販売代金です。運営はCHUGOKU SAMHWA PAINTSが主に行っています。
**東南アジアセグメント**
シンガポール、マレーシア、タイなどで船舶用塗料、工業用塗料等の製造・販売を行っています。修繕船向けの需要や、インフラ整備に伴う工業用塗料の需要に対応しています。
収益は製品販売によります。運営はシンガポールやマレーシア等の現地法人が行っています。
**欧州・米国セグメント**
オランダ、英国、米国などで船舶用塗料等の製造・販売を行っています。環境規制への対応が進む地域であり、高付加価値製品の販売に注力しています。
収益は製品販売から得ています。運営はCHUGOKU PAINTS B.V.等の現地法人が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は824億円から1,312億円へと拡大傾向にあります。特に直近では、新造船向け出荷の増加や製品価格の適正化により、売上高が伸長しました。経常利益も10億円台から165億円へと大きく回復・成長しており、利益率も改善傾向にあります。全体として増収増益の好調なトレンドを示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 824億円 | 843億円 | 995億円 | 1,162億円 | 1,312億円 |
| 経常利益 | 64億円 | 10億円 | 44億円 | 130億円 | 165億円 |
| 利益率(%) | 7.7% | 1.2% | 4.4% | 11.2% | 12.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 33億円 | 8億円 | 31億円 | 68億円 | 74億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は1,162億円から1,312億円へ増加しました。売上総利益率は30.4%から32.5%へ改善し、営業利益も122億円から154億円へと26%の増益を達成しています。原材料コストの上昇等の影響はありましたが、販売価格への転嫁や高付加価値製品の販売拡大が奏功し、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,162億円 | 1,312億円 |
| 売上総利益 | 353億円 | 426億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.4% | 32.5% |
| 営業利益 | 122億円 | 154億円 |
| 営業利益率(%) | 10.5% | 11.7% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料等が97億円(構成比36%)、運送費が53億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収となっています。特に韓国セグメントは新造船向け出荷の増加等により大幅な増収増益を達成しました。日本や東南アジア、欧州・米国でも価格適正化や需要増により増収増益となりました。中国セグメントは増収ながらも、一部評価損等の影響で減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 406億円 | 427億円 | 20億円 | 22億円 | 5.2% |
| 中国 | 200億円 | 214億円 | 31億円 | 27億円 | 12.7% |
| 韓国 | 119億円 | 194億円 | 8億円 | 25億円 | 13.1% |
| 東南アジア | 171億円 | 189億円 | 30億円 | 39億円 | 20.3% |
| 欧州・米国 | 267億円 | 286億円 | 17億円 | 22億円 | 7.6% |
| 連結(合計) | 1,162億円 | 1,312億円 | 122億円 | 154億円 | 11.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
中国塗料は、営業活動で得た資金で事業運営を支え、投資活動では定期預金の増減や固定資産の取得・売却を行い、財務活動では借入金の増減や配当金の支払いを行っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 124億円 | 145億円 |
| 投資CF | -16億円 | -1億円 |
| 財務CF | -20億円 | -125億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「最高の品質で、顧客の信頼と満足を確保する」「世界的視野に立ち、常に技術革新を行い新製品の開発に努める」などの5項目を経営理念として掲げています。また、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献し、全てのステークホルダーの幸福を追求することを志向しています。
■(2) 企業文化
「誠実を旨とし、和を重んじ公明正大を期す」ことを掲げ、法令遵守や公正な企業活動を重視しています。また、持続可能社会実現への貢献やマルチ・ステークホルダーを意識した経営を推進しており、環境・社会貢献と経済的価値の双方を追求する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
「サステナブルで高収益なグローバル・ニッチ・トップ企業」を長期ビジョンのキーメッセージとし、船舶用塗料のシェア拡大と環境貢献の両立を目指しています。中期経営計画「CMP New Century Plan 2」では、連結自己資本総還元率(D&BOE)6.2%などの指標を意識した経営を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、「環境・社会貢献による提供価値拡大」「利益体質の改善と安定化」「組織基盤の整備」「積極的な株主還元と資本効率向上」の4つを基本方針としています。特に、燃費改善に寄与する船底防汚塗料などの環境対応型製品の拡販や、製造コストに見合った販売価格の適正化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人財がグローバルに活躍」と「ウェルビーイングの実現」を目指す姿として掲げ、従業員エンゲージメントと採用競争力の向上を図っています。自律型人財の育成を重視し、人事制度改革、キャリア形成支援、女性や外国人の活躍支援、働く場所の多様化などを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.9歳 | 15.9年 | 7,510,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 73.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市況変動に関するリスク
売上高の多くを船舶用塗料とコンテナ用塗料が占めており、特にコンテナ用塗料は市況の影響を受けやすい傾向にあります。世界経済の停滞や新造船建造量、コンテナ生産量の減少などが生じた場合、販売量が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料調達に関するリスク
主要原材料である樹脂や溶剤、非鉄金属等の価格は、ナフサ価格や国際市況の影響を大きく受けます。これらの価格が高騰した場合、調達コストの上昇により利益率が低下する可能性があります。また、需給逼迫やサプライヤーのトラブル等による調達難のリスクもあります。
■(3) 海外事業活動に関するリスク
海外売上比率が高く、現地での生産・販売が拡大しています。進出先の政治体制、法規制、税制の変更や、テロ・紛争、経済情勢の悪化などが生じた場合、事業活動に支障を来し、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 競争に関するリスク
国内外で競合他社との価格や性能面での競争に晒されています。価格競争の激化により販売価格が低下した場合や、他社による画期的な新製品の出現により競争力が低下した場合には、売上や利益が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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