イサム塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イサム塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の塗料メーカーです。自動車補修用塗料を主力とし、工業用・建築用塗料の製造販売も行っています。直近の業績は、製品価格への転嫁や工業用塗料の堅調な推移により、売上高は82億円、経常利益は8億円と増収増益で着地しました。自己資本比率80%超の安定した財務基盤を有しています。


※本記事は、イサム塗料株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イサム塗料ってどんな会社?


自動車補修用塗料を主力とする独立系塗料メーカーで、環境対応型製品の開発に注力しています。

(1) 会社概要


同社は1927年に北村溶剤化学製品所として創業し、1955年に現在の社名へ変更しました。1950年に合成樹脂塗料の製造を開始し、1980年に日本証券業協会大阪店頭登録、1984年には大阪証券取引所市場第二部に上場しました。その後、2013年の現物市場統合に伴い東京証券取引所市場第二部へ上場し、現在はスタンダード市場に上場しています。

現在の従業員数は連結212名、単体205名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は北村初美氏、第2位は北村健氏となっており、創業家と見られる個人が大株主の上位を占めています。第3位には取引先を対象とした持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
北村 初美 23.25%
北村 健 23.20%
イサム塗料栄勇会 8.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は北村倍章氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
北村 倍章 取締役社長(代表取締役) 2005年同社入社。常務取締役、東京支店長、名古屋支店長などを経て2019年より現職。
深田 修也 取締役情報システム部長 1991年同社入社。滋賀工場技術部長、大阪支店長などを経て2021年より現職。
山碕 昌之 取締役大阪支店長 1993年同社入社。東京支店販売部長、東京支店長を経て2021年より現職。
角井 和夫 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。滋賀工場長、顧問を経て2024年より現職。


社外取締役は、澤田直樹(税理士法人ゆびすい代表社員)、樫元雄生(ながやま・かしもと法律事務所共同経営者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「塗料事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 塗料事業


自動車補修用、工業用、建築用等の各種塗料およびシンナー類の製造販売を行っています。特に自動車補修用塗料はメンテナンス分野に特化しており、同社の主力製品となっています。建築用はメンテナンスを主軸としつつ新築にも対応し、工業用はユーザーごとの個別対応を行っています。

主な収益は、製品の販売代金です。同社が各種塗料類やシンナー類を製造販売し、子会社の明勇色彩が充填・小分け作業を、イサムエアーゾール工業がエアゾール製品の製造を担っています。また、子会社の進勇商事は塗装関連製品の仕入販売を行っています。

(2) その他


不動産の賃貸管理および運営業務を行っています。また、駐車場経営も含まれます。

収益は、保有不動産の賃貸料収入や駐車場の利用料などです。運営は主に子会社のイサム土地建物(不動産賃貸)やイサムモータープール(駐車場経営)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は70億円台から80億円台へと緩やかに拡大傾向にあります。経常利益も6億円から8億円の水準で推移しており、安定した黒字経営を継続しています。利益率も8〜9%台を維持しており、堅実な収益性を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 72億円 71億円 76億円 80億円 82億円
経常利益 7.0億円 5.9億円 6.4億円 7.5億円 7.7億円
利益率(%) 9.8% 8.3% 8.4% 9.4% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.1億円 3.0億円 3.3億円 4.1億円 4.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は前期の80億円から当期は82億円へと増加しました。売上総利益率は約30%の水準を維持しています。原材料価格やエネルギーコストの上昇等の影響はあるものの、販売価格への転嫁等により利益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 80億円 82億円
売上総利益 24億円 25億円
売上総利益率(%) 30.6% 30.3%
営業利益 6.5億円 6.3億円
営業利益率(%) 8.1% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が5.2億円(構成比28%)、支払手数料が2.1億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


塗料事業が売上の大部分を占めています。当期は自動車補修用塗料における環境対応型製品の販売や、工業用塗料での個別営業活動などが寄与し、塗料事業は増収となりました。利益面では原材料価格等のコスト上昇の影響を受けましたが、価格転嫁等の対策により一定の水準を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
塗料事業 79億円 81億円 6.0億円 5.8億円 7.2%
その他 1.0億円 1.0億円 0.4億円 0.4億円 43.8%
連結(合計) 80億円 82億円 6.5億円 6.3億円 7.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済・配当に回す「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 8.0億円 4.9億円
投資CF -7.1億円 -3.3億円
財務CF -1.1億円 -1.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.5%で市場平均(スタンダード市場製造業57.5%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「良品質な塗料を通して、広く社会に貢献する」という経営理念を掲げています。「時代の要求する製品」「愛される商品」を開発することを社是とし、常に「業界の先駆者たれ」をモットーに技術開発を推進しています。また、顧客および株主の信頼や期待に応える安定した経営を基本方針としています。

(2) 企業文化


社員全員が「お客様に一番近いメーカーであり続けよう」という経営ビジョンを意識して業務を遂行する文化があります。顧客満足の向上につなげるとともに、地球環境との調和や社会環境の保護を背景とした市場ニーズに基づき、色彩産業としての新しい高い地位を目指して事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループでは、経営の安定性と収益性の両立を図りながら企業価値の向上を目指しています。具体的な数値目標として以下の指標を掲げています。

* 2030年にCO2排出量を2013年度比46%削減する
* 正社員に占める女性社員の比率を15%以上にする

(4) 成長戦略と重点施策


自動車補修用塗料市場が縮小傾向にある中、同社は製品開発力の強化と新規市場の開拓に注力しています。環境対応型製品の開発を加速させるとともに、生産効率化や業務効率化による収益確保を目指しています。

* 自動車補修用分野でのシェア拡大と大型車両・工業用分野など新市場の開拓
* YouTube公式チャンネルを活用したBtoB、BtoCへの製品PR強化
* 環境対応型製品(水性塗料など)の開発・普及促進
* 本社への管理業務集中化や滋賀工場への生産・受注業務集中化による生産性向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「お客様に一番近いメーカーであり続けよう」というビジョンのもと、顧客起点の製品開発を推進できる人材の育成を最重要課題の一つと位置づけています。全従業員を対象とした社員教育制度を整備し、モチベーション向上やスキルアップに取り組むほか、働き方改革やメンタルヘルス対策を推進し、より良い労働環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 16.8年 6,499,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性社員の比率(15.3%(連結))、正社員に占める女性社員の比率(14.2%(単体))などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達について


使用する原材料は石油関連製品への依存度が高く、原油・ナフサ価格等の動向が業績に影響を与える可能性があります。また、特定のメーカーに依存している原材料があり、メーカーの罹災や事故により調達困難となった場合、生産活動に支障をきたすおそれがあります。

(2) 公的規制について


塗料業界は、大気汚染防止法やPRTR法など様々な法的規制を受けています。同社は環境方針を定め対応していますが、今後新たな規制の施行や強化が行われた場合、販売活動の制限や対応費用の増加により、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 災害に対するもの


同社グループの生産拠点は滋賀工場のみであるため、地震等の災害により同工場が稼働困難となった場合、経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、感染症拡大等により生産・物流・営業活動に支障が生じた場合も同様のリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。