イサム塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イサム塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イサム塗料は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、自動車補修用、建築用、工業用を中心とした各種塗料および関連商品の製造販売を主力事業とする企業です。直近の業績は、原材料価格の上昇を一部販売価格へ転嫁したことや、環境対応型塗料の拡販に注力した結果、増収増益の堅調な推移となっています。


※本記事は、イサム塗料株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. イサム塗料ってどんな会社?


自動車補修用塗料などを主力とし、環境対応型製品の開発に強みを持つ塗料メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1927年に大阪市で個人商店として創業し、各種工業薬品の販売を開始しました。1949年に合成樹脂塗料の製造販売を始め、1955年にイサム塗料へ社名を変更しました。1984年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に属しています。

現在の従業員数は連結で213名、単体で206名です。筆頭株主は創業関係者とみられる北村初美氏、第2位は北村健氏となっており、第3位には取引先を対象とした持株会であるイサム塗料栄勇会が名を連ねています。

氏名 持株比率
北村初美 23.25%
北村健 23.20%
イサム塗料栄勇会 7.73%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は北村倍章氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
北村倍章 取締役社長(代表取締役) 2005年同社入社、取締役就任。常務取締役、支店長等を経て、2019年より現職。
深田修也 取締役情報システム部長 1991年同社入社。工場技術部長、支店販売部長等を経て2019年取締役就任。2021年より現職。
山碕昌之 取締役 1993年同社入社。支店販売部長、支店長等を経て2021年取締役就任。2026年よりイサムエアーゾール工業代表取締役社長兼務。
角井和夫 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。工場生産管理部長、工場長等を経て2019年取締役就任。2024年より現職。


社外取締役は、澤田直樹(澤田直樹税理士事務所代表)、樫元雄生(ながやま・かしもと法律事務所共同経営者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「塗料事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 塗料事業


自動車補修用、工業用、建築用等の各種塗料やシンナー類、塗装関連製品を製造・販売しています。特に自動車補修分野では水性塗料などの環境対応型製品の開発・普及に注力しており、顧客ニーズに応じた安全かつ高品質な製品ラインナップを提供しています。

収益は主に顧客への塗料・関連製品の販売から得ています。製品の製造および販売は主に同社が行い、子会社のイサムエアーゾール工業がエアゾール製品の製造を、明勇色彩が製品の充填・小分け作業を、進勇商事が塗装関連製品の仕入・販売をそれぞれ担っています。

(2) その他事業


同社グループが保有する不動産を活用し、不動産の賃貸管理や駐車場経営などの運営業務を行っています。

収益は不動産の賃貸料や駐車場の利用料などから得ています。運営は主に子会社のイサム土地建物が不動産賃貸を、イサムモータープールが駐車場経営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、継続的な増収トレンドを描いています。売上高は71億円から84億円へと順調に拡大しました。経常利益も6億円から11億円へと増加し、利益率も8.3%から12.8%へと着実に改善しています。原材料価格等の上昇を販売価格へ適正に転嫁したことなどが寄与し、収益性の向上が確認できます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 71億円 76億円 80億円 82億円 84億円
経常利益 6億円 6億円 8億円 8億円 11億円
利益率(%) 8.3% 8.4% 9.4% 9.4% 12.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 3億円 4億円 4億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の82億円から当期は84億円へと増加し、売上総利益も25億円から28億円へと拡大しました。売上総利益率の改善に加え、コストコントロールの徹底により、営業利益は6億円から9億円へと大幅な増益を達成しており、本業の稼ぐ力が向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 82億円 84億円
売上総利益 25億円 28億円
売上総利益率(%) 30.3% 33.4%
営業利益 6億円 9億円
営業利益率(%) 7.7% 10.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が5億円(構成比29%)、支払手数料が2億円(同11%)、賞与及び賞与引当金繰入額が2億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の塗料事業では、自動車補修用塗料を中心とした既存市場での拡販や、大型車両分野・工業用分野などの新規開拓が奏功し、売上を伸ばしました。その他の事業も安定して推移しており、グループ全体の業績拡大に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
塗料事業 81億円 83億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 82億円 84億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.5%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5億円 10億円
投資CF -3億円 -2億円
財務CF -1億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「良品質な塗料を通して、広く社会に貢献する」という経営理念を掲げています。また、「時代の要求する製品」「愛される商品」を開発することを社是とし、常に「業界の先駆者たれ」をモットーに技術開発を推進しています。色彩産業としての新しい高い地位を目指し、社会に貢献していく姿勢を示しています。

(2) 企業文化


社員全員が「お客様に一番近いメーカーであり続けよう」という経営ビジョンを強く意識して日々の業務に取り組んでいます。顧客の声に耳を傾け、顧客起点の製品開発を推進するとともに、地球環境との調和や社会環境の保護を最優先課題として取り組む文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


経営指標として、株主資本利益率やキャッシュ・フローを重視し、総合的な結果としてROE等の向上につなげることを目標としています。経営の安定性と収益性の両立を図りながら、企業価値の継続的な向上を目指す計画を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


自動車業界の環境変化を見据え、自動車補修分野でのシェア拡大を図るとともに、大型車両用分野や工業用分野など新しいマーケットの開拓に注力します。また、環境対応型製品の開発普及を促進し、業務のIT化や生産設備の更新による生産性の向上、人的資本への投資を通じた持続的な成長戦略を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「お客様に一番近いメーカーであり続けよう」というビジョンのもと、顧客起点の製品開発を推進できる人材の育成を最重要課題と位置づけています。全従業員を対象とした社員教育制度の整備やリスキリングの推進によりモチベーションの向上とスキルアップを図り、多様な人材が安心して能力を発揮できる組織づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.4歳 17.2年 6,737,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体の正社員に占める女性社員の比率(14.8%)、単体の正社員に占める女性社員の比率(13.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達と価格変動リスク


同社グループが使用する原材料は石油関連製品への依存度が高く、原油やナフサ価格の動向が塗料原料の価格に影響を及ぼします。また、特定メーカーに依存している原材料の調達が困難となった場合、生産体制や経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 環境関連等の公的規制リスク


塗料業界は大気汚染防止法やPRTR法など様々な法的規制の適用を受けています。同社グループは環境対応に注力していますが、今後新たな法規制の施行や強化が行われた場合、販売活動の制限や法対応コストの増加が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品開発と市場変化リスク


同社グループは多様化・高機能化する市場ニーズや環境保護を目的とした新製品・塗装システムの開発を行っています。しかし、製品開発や販売政策の展開が適正な時期に行われなかった場合、将来の成長力や収益性が低下し、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 災害や感染症拡大による生産停止リスク


生産拠点が滋賀工場に集中しているため、同工場が地震等の自然災害に罹災して生産が困難となった場合、業績に大きな影響を及ぼします。また、大規模な事故や感染症の拡大により物流体制や営業活動に支障が生じた場合も、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。