※本記事は、菊水化学工業株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 菊水化学工業ってどんな会社?
建築物の下地調整から仕上塗材までを総合的に扱う、業界唯一の総合仕上材メーカーです。
■(1) 会社概要
1959年に建築化粧仕上材の販売を目的として設立され、1963年に現在の菊水化学工業に商号を変更しました。1988年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、2014年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、台湾や中国など海外へも進出し、2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。
従業員数は連結で426名、単体で407名です。筆頭株主は菊水化学工業取引先持株会で、第2位はティー・サポート、第3位は菊水化学工業社員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 菊水化学工業取引先持株会 | 8.34% |
| ティー・サポート | 7.26% |
| 菊水化学工業社員持株会 | 4.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は遠山眞樹氏が務めています。取締役8名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 遠山眞樹 | 代表取締役社長 | 1988年ティー・サポートの前身企業に入社。同社代表取締役を経て、2015年に同社社外取締役、2024年に常務取締役管理本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 今井田広幸 | 取締役会長 | 1981年同社入社。住宅事業本部長などを経て、2021年に代表取締役社長に就任。同社の成長を牽引し、2026年より現職。 |
| 中原章義 | 常務取締役管理本部長兼建材塗料事業本部担当 | 1983年同社入社。経営企画室長や建材塗料事業本部長などを歴任。2025年に常務取締役営業統括に就任し、2026年より現職。 |
| 稲葉信彦 | 取締役生産本部長兼資材部担当 | 1988年同社入社。管理本部長やツーアール代表取締役などを経て、台湾や中国の関連会社役員を歴任。2026年より現職。 |
| 村山直樹 | 取締役住宅事業本部長兼品質保証部部長兼商品開発本部長 | 1988年同社入社。長年にわたり品質保証部部長を務め、2022年に執行役員住宅事業本部長に就任。2025年より現職。 |
社外取締役は、川合伸子(川合伸子法律事務所代表者)、浅賀哲(浅賀法律事務所開設)、中嶋善明(御幸ビルディング副社長執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、製品販売・工事の単一セグメントで事業を展開しています。
建築仕上塗材や建築下地調整塗材、タイル接着材などの建築および土木資材の製造・販売、ならびに建築物の改修改装工事であるビルリフレッシュを展開しています。塗装業や防水業、左官業など様々な業種に向けて、環境対策や省エネ対策、美観回復といった建物の課題を解決する製品および工法を提供しています。
収益は、製品の販売代金や工事の請負代金から得ています。製品の開発、製造、販売から施工までを一貫して行うメーカー責任施工体制を強みとしています。事業の運営は主に親会社である菊水化学工業が行うほか、子会社のツーアールや海外の連結子会社などが各地域および専門分野における販売や工事を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は214億円から224億円の範囲で安定して推移しています。利益面では、原材料やエネルギー価格の高騰による影響を受けた時期もありましたが、価格改定や高付加価値製品の販売注力により、直近の経常利益および当期利益は回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 222億円 | 224億円 | 224億円 | 214億円 | 216億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 7億円 | 6億円 | 3億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 2.9% | 2.8% | 1.6% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 | 5億円 | 4億円 | 2億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績は、売上高および各段階利益ともに増加しています。環境配慮型製品や課題解決型の工事受注に注力したことで、収益性が改善しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 214億円 | 216億円 |
| 売上総利益 | 49億円 | 51億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.0% | 23.4% |
| 営業利益 | 3億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | 1.2% | 1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が13億円(構成比27%)、運賃が8億円(同16%)を占めています。製造原価においては材料費が大部分を占めており、原材料価格の変動が原価に影響を与えやすい構造となっています。
■(3) セグメント収益
改修市場での高付加価値提案に努めましたが、物価高や人手不足の影響で住宅塗り替え需要が低調に推移しました。しかし、価格改定や需要創造の取り組みにより、全体として微増収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 製品販売・工事 | 214億円 | 216億円 |
| 連結(合計) | 214億円 | 216億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 8億円 |
| 投資CF | 1億円 | -3億円 |
| 財務CF | -7億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「みんなのために よりよい商品 ゆたかな愛情」を社是として掲げています。社会性、科学性、人間性を追求し、売上利益だけでなく環境との調和を図ることを基本としています。業界唯一の下地から仕上げまでを扱う総合仕上材メーカーとして、すべての局面で責任を持った製品を提供し、建物や構造物の長寿命化の一翼を担うことを使命としています。
■(2) 企業文化
行動基準として「基本方針」「品質方針」「コンプライアンス宣言」「安全衛生方針」を定めています。特に「われわれの力でやり遂げよう」「科学性を高めよう」「創造性を高めよう」といった自律的かつ科学的なアプローチを重視し、常にお客様目線で「業界No.1品質」を目指す文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と企業価値向上のため、売上高や営業利益のほか、財政状態の収益性および効率性を示す客観的な経営指標・数値目標として以下を掲げています。
* ROE 8%
* 自己資本比率 50%
■(4) 成長戦略と重点施策
サステナビリティ方針である「Repaint the future」のもと、環境対応製品の開発や働き方改革の推進に注力しています。具体的には、高度経済成長期に建設されたインフラ施設の老朽化に伴うメンテナンス市場への参入や、無機・水系製品の普及拡大を進めています。また、多様な働き方ができる制度整備により、安心して働ける環境づくりを重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人ひとりの成長と活躍が企業の競争力の源泉であると考え、人的資本への投資を重視しています。性別や国籍、学歴に関わらず多様な人材を採用し、階層別研修や専門スキルの習得など事業部に適した教育を実施しています。また、働きがいのある環境を整備するため、多様な働き方の推進や健康経営に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.8歳 | 14.4年 | 5,298,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.0% |
| 男性育児休業取得率 | 77.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 99.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況の変動リスク
同社の主力製品である建築内外装製品は、住宅に関わる公共投資および民間設備投資の動向に影響を受けます。そのため、景気後退による建設や改修需要の縮小、消費マインドの低下が発生した場合、同社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 業界の競争環境リスク
建築仕上材業界は、特に汎用製品において価格競争が激化しています。同社は独自技術やノウハウに基づく製品を展開し特許等も保有していますが、類似製品との競合や他社の積極的な投資による競争激化を完全に防ぐことは難しく、競争環境の変化が業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 原材料の調達リスク
同社の製品に使用される原材料は石化原料への依存度が高く、原油やナフサ価格の変動によるコスト上昇のリスクがあります。また、仕入先の事故等により原材料調達が困難になる恐れもあるため、同社は調達先の複数化やグローバル調達を推進し、安定的な調達とコスト低減に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。