菊水化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

菊水化学工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場・名証メイン市場に上場する建築仕上材メーカーです。建築物の内外壁用塗料や下地調整材の製造販売、改修工事を主力事業としています。直近の業績は、物価高による住宅塗り替え需要の低迷等の影響を受け、売上高214億円(前期比4.5%減)、経常利益3.4億円(同46.2%減)の減収減益となりました。


※本記事は、菊水化学工業株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 菊水化学工業ってどんな会社?


建築仕上材の製造販売と施工を行う総合仕上塗材メーカーです。下地から仕上げまで一貫した製品群を持ち、責任施工体制も構築しています。

(1) 会社概要


1959年に菊水商事有限会社として創立し、1963年に現社名へ変更しました。1988年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、2014年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2017年に中国常熟市の工場が本格稼働するなど海外展開を進め、2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場および名証メイン市場へ移行しています。

連結従業員数は442名、単体では422名です。大株主は、筆頭株主が取引先による持株会、第2位が同社常務取締役が代表を務める企業、第3位が社員持株会となっており、取引先や社内関係者が安定的に株式を保有する構成となっています。

氏名 持株比率
菊水化学工業取引先持株会 9.12%
株式会社ティー・サポート 7.22%
菊水化学工業社員持株会 4.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は今井田広幸氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
今井田 広幸 代表取締役社長 1981年入社。名古屋支店長、取締役住宅事業本部長、代表取締役常務などを経て2021年4月より現職。
中原 章義 常務取締役 営業統括兼 建材塗料事業本部長 1983年入社。経営企画室長、取締役汎用塗料事業本部担当などを経て2025年4月より現職。
遠山 眞樹 常務取締役管理本部長兼 戦略企画室担当兼 サスティナビリティ担当 1988年ティー・サポート入社。2015年同社社外取締役、2019年監査役を経て2024年4月より現職。
稲葉 信彦 取締役生産本部長兼 管理本部副本部長兼 資材部担当 1988年入社。管理本部長、取締役管理本部長兼生産本部長などを経て2024年4月より現職。
村山 直樹 取締役住宅事業本部長兼 品質保証部部長兼 商品開発本部長 1988年入社。品質保証部部長、執行役員住宅事業本部長などを経て2025年4月より現職。


社外取締役は、川合伸子(弁護士・愛知県弁護士会会長)、浅賀哲(弁護士・浅賀法律事務所所長)、中嶋善明(三菱UFJモルガン・スタンレー証券常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製品販売・工事」事業を展開しています。

(1) 製品販売・工事事業


建築物の内外壁を化粧仕上げする建築仕上材、下地調整材、タイル接着材、建築土木資材などの製造・販売を行っています。また、建築物の改修・改装工事(ビルリフレッシュ)も手掛けています。主な顧客は建設業者、塗装業者、リフォーム業者などで、住宅やマンション、非住宅建築物の新築および改修工事に使用されています。

収益は、製品の販売代金および工事請負代金から得ています。運営は主に菊水化学工業が行っており、連結子会社のツーアールが大規模修繕工事等を担当しています。海外では、菊水建材科技(常熟)有限公司や台湾菊水股份有限公司などが現地での製造・販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は220億円前後で安定的に推移していましたが、当期は214億円とやや減少しました。利益面では、経常利益が前期まで6億円台を維持していたものの、当期は3億円台へと減少しています。当期純利益も前期の3.8億円から1.7億円へと推移しており、原材料価格の高騰や住宅市場の低迷などが利益率の低下に影響していることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 205億円 222億円 224億円 224億円 214億円
経常利益 3億円 5億円 7億円 6億円 3億円
利益率(%) 1.6% 2.4% 2.9% 2.8% 1.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 0.9億円 3億円 4億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も微減しましたが、売上総利益率は23.0%と前期並みを維持しています。一方、販売費及び一般管理費が増加した影響で、営業利益は前期の約半分に減少しました。営業利益率は1.2%となり、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 224億円 214億円
売上総利益 50億円 49億円
売上総利益率(%) 22.4% 23.0%
営業利益 6億円 3億円
営業利益率(%) 2.5% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比26%)、運賃が8億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、製品販売と工事の状況を見ると、売上高は全体で減少しました。物価高による消費マインドの低下等の影響で、特に戸建て住宅の塗り替え需要が低迷したことが要因です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
製品販売・工事 224億円 214億円
連結(合計) 224億円 214億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動により資金が増加しましたが、前年度と比較すると減少しました。これは、税金等調整前当期純利益や売上債権の増減などが主な要因です。投資活動では、有価証券の売却収入増加や固定資産の取得・除却支出減少により、前年度の資金減少から資金増加に転じました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い減少により、資金の減少幅は前年度よりも拡大しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 5億円
投資CF -6億円 1億円
財務CF -4億円 -7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「みんなのために よりよい商品 ゆたかな愛情」を社是とし、社会性・科学性・人間性の追求と環境との調和を基本としています。業界唯一の総合仕上塗材メーカーとして、環境共生時代にふさわしいものづくりを通じて持続可能な社会に貢献するというビジョンを掲げています。

(2) 企業文化


「われわれの力でやり遂げよう」「科学性を高めよう」「創造性を高めよう」といった6つの項目からなる基本方針を行動基準としています。また、常に顧客目線に立ち、「業界No.1品質」を目指すことを品質方針として掲げ、安全、品質、コンプライアンスを最優先する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と企業価値の向上を目指し、売上高、営業利益、自己資本比率を重要な経営指標としています。2026年3月期連結会計年度において以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:225億円
* 営業利益:6億50百万円
* 自己資本比率:50%以上の維持

(4) 成長戦略と重点施策


今後は「製品を通じた街づくり」「事業を通じて困りごとの解決」「安心して働ける環境づくり」「ガバナンスの強化と充実」をマテリアリティと捉え、事業基盤の強化に取り組みます。特に改修市場において、環境対策や省エネ対策、剥落対策などのソリューションを提供する「リフォームのソーシャルワーカー」としての役割を強化し、建物や構造物の長寿命化に貢献していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「安心して働ける環境づくり」を掲げ、社内環境の改善、人材育成の強化、多様な働き方ができる制度整備を推進しています。性別や国籍、学歴を問わない多様な人材採用を行い、従業員がいきいきと能力を発揮できる「しあわせ創造メーカー」を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 13.7年 5,068,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.9%
男性育児休業取得率 120.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.5%
男女賃金差異(正規雇用) 70.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動リスク


主力製品である建築内外装製品は、住宅関連の公共投資や民間設備投資の影響を受けやすいため、景気後退による需要縮小が業績に影響を与える可能性があります。

(2) 業界の競争環境リスク


建築仕上材業界では価格競争が激化しており、独自技術や特許を保有していても競合他社との競争激化を完全に防ぐことは困難です。競争環境に適切に対処できない場合、経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 原材料の調達リスク


主要原材料は石油化学製品への依存度が高く、原油価格の変動影響を受けます。また、災害や事故による供給停止リスクもあります。グローバル調達等で安定化を図っていますが、著しいコスト上昇や供給不安が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 製品規格の変更リスク


JIS規格やISO9001等に基づき製品を製造販売していますが、将来的に規格変更や新たな要求事項が発生した場合、それらに対応できなければ業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。