大伸化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大伸化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の大伸化学は、有機溶剤(シンナー)の製造販売を行う化学メーカーです。塗料・インキ業界や自動車業界向けに多品種少量生産を行う点に強みがあります。直近の業績は、売上高は増加したものの、原材料価格の高騰等の影響により経常利益は減益となりました。


※本記事は、大伸化学株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大伸化学ってどんな会社?

シンナー等の有機溶剤の製造販売を主力とする化学メーカーです。多品種少量生産と短納期対応に特徴があります。

(1) 会社概要

1952年にシンナーの製造販売を目的として設立されました。1995年に店頭登録、2004年にジャスダック証券取引所に上場しました。その後、市場統合を経て2022年の東証市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。2022年には山崎梱包運輸を完全子会社化しています。

連結従業員数は231名、単体では190名です。大株主は、筆頭株主が坪井典明氏、第2位が有限会社坪井となっており、創業家やその資産管理会社が大株主であると推測されます。また、第3位には光通信株式会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
坪 井 典 明 13.21%
有限会社 坪井 12.16%
光通信株式会社 7.48%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は堀越進氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
堀越 進 代表取締役社長 1983年入社。第二営業部副部長、第三営業部長、樹脂カット事業部長等を歴任し、2013年執行役員、2016年取締役を経て、2019年6月より現職。
坪田 法幸 常務取締役営業本部長東日本統括第一営業部長 1985年入社。大阪支店長を経て、2019年取締役就任。営業本部副本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
澤井 光範 取締役製造本部長越谷工場長システムセンター長 1990年入社。越谷工場長、執行役員製造副本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
山田 栄司 取締役資材部長 1990年入社。仙台営業所所長、資材部長を経て、2022年執行役員。2025年6月より現職。


社外取締役は、野﨑満(元株式会社有沢製作所)、福田純一郎(元綜研化学株式会社)です。

2. 事業内容

同社グループは、「化学品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 化学品事業

有機溶剤(シンナー)の製造販売を行っています。ラッカーシンナー、合成樹脂塗料用シンナー、洗浄用シンナー、印刷用溶剤、特殊シンナー、単一溶剤などを取り扱い、塗料、印刷、自動車、化学工業、医薬品など幅広い業界に製品を供給しています。

収益は、これらの製品を販売代理店やエンドユーザーに販売することで得ています。運営は主に大伸化学が行っており、連結子会社の山崎梱包運輸株式会社が東日本地域における製品の配送を担っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近の業績を見ると、売上高は増加傾向にありますが、利益面では減少傾向が見られます。2025年3月期は前期比で増収減益となりました。原材料価格の高騰などが利益を圧迫している状況がうかがえます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 344億円 325億円 347億円
経常利益 13億円 9億円 9億円
利益率(%) 3.8% 2.9% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 6億円 5億円

(2) 損益計算書

売上高は増加しましたが、売上総利益率は若干低下しています。販売費及び一般管理費も増加傾向にあり、営業利益率の低下につながっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 325億円 347億円
売上総利益 43億円 43億円
売上総利益率(%) 13.2% 12.4%
営業利益 8億円 8億円
営業利益率(%) 2.5% 2.3%


コスト分析:
販売費及び一般管理費のうち、運賃が15億円(構成比44%)、従業員給料及び手当が6億円(同18%)を占めています。売上原価の内訳は、原材料費などの当期材料費が234億円(構成比91%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.6%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -2億円 27億円
投資CF -4億円 -3億円
財務CF -2億円 -2億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、品質の向上に努め安定供給の責を果し、顧客の満足が得られる品質の確保と納期を遵守して製品の品質向上を目指すことを基本方針としています。また、差別化できる新製品の開発、生産性の向上、販売体制の強化を図り、強固な経営基盤を確立することや、リサイクルによる資源の有効活用と環境重視の経営などを掲げています。

(2) 企業文化

一人一人がまたはグループで、課題を謙虚に学び、考え、評価し、迅速に改善することを方針として掲げています。また、顧客の満足を得るために、信頼性の高い生産管理、高度な品質管理体制の確立に総力を挙げて取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、収益力の向上と財務体質の強化を経営目標の中心として重視しています。収益機会の増加とともに生産、物流面の合理化を推進して、売上高及び経常利益をさらに高めることを目指しています。
* 売上高経常利益率5.0%程度

(4) 成長戦略と重点施策

今後は、新製品の拡販や新規需要先の開拓によるシェア拡大、鉱構造物の造膜型塩分低減剤やグリセリン事業などの新規事業の育成に取り組む方針です。また、人材育成や財務体質の強化も重点的な経営課題として挙げています。環境と生産性を重視して越谷、兵庫工場への設備投資を計画的に実施し、生産・物流面の合理化を推進します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「自律型人材」の育成に努め、多様な人材がモチベーション高く働けることを目指しています。入社時教育、職場でのOJT、社外講師によるOff-JTなどを通じて、社員一人一人の能力を伸ばす方針です。また、安全な職場環境づくりに取り組み、社員の心身の健康を守るとともに、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境の確保に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.1歳 17.4年 6,446,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 15.5%


※男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については、公表義務の対象ではないため記載がありません。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料市況等の影響

化学品事業の主原料は石油化学製品であるため、中東地域等の地政学リスクや海外経済の動向により、原材料の調達価格が影響を受けます。原油価格や為替に異常な変動が生じた場合、事業活動や業績に影響を与える可能性があります。対応策として、主要な原材料は複数の取引先から購入し、安定調達に取り組んでいます。

(2) 法的規制等への対応

有機溶剤等の化学物質を取り扱っているため、消防法、毒劇法、環境関連法令の改正に伴う規制強化などが業績に影響を及ぼす可能性があります。また、運送業務においても各種法令の規制を受けています。これに対し、法令順守の徹底や最新情報の取得、セミナーへの参加などを通じて対応体制を強化しています。

(3) 自然災害や事故等の発生

大規模な地震や台風等の自然災害、火災や爆発事故、疫病の発生などが操業停止や物流の停滞を招き、業績に影響を与える可能性があります。生産拠点の分散配置(越谷工場、兵庫工場)やバックアップサーバーの設置、防災訓練の実施、安全管理体制の強化などのリスク分散・低減策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。