わかもと製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

わかもと製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場し、「強力わかもと」で知られるヘルスケア事業や眼科領域に強みを持つ医薬事業、グローバル事業を展開する製薬企業です。直近の業績は売上高が99億円と増収となり、経常利益は2.6億円と前年の赤字から黒字へ転換し、当期純利益も増益を達成するなど業績は回復傾向にあります。


※本記事は、わかもと製薬株式会社の有価証券報告書(第131期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. わかもと製薬ってどんな会社?


眼科領域の医薬品や「強力わかもと」などのヘルスケア製品を製造販売する製薬企業です。

(1) 会社概要


同社は1929年に合資会社「栄養と育児の会」として創立され、「わかもと」を発売したのが始まりです。1933年に株式会社となり、1943年に現在のわかもと製薬に商号変更しました。1949年には東京証券取引所に上場を果たし、1962年に主力製品となる「強力わかもと」を発売して事業を拡大してきました。

現在、同社は単体で303名の従業員を抱える体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業提携先であるロート製薬で、第2位は同じく医薬品事業で取引関係にあるキッセイ薬品工業となっています。第3位には投資ファンドのAVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLCが名を連ねています。

氏名 持株比率
ロート製薬 11.44%
キッセイ薬品工業 10.89%
AVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLC(常任代理人 みずほ銀行 決済営業部) 8.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は平井友行氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
平井友行 代表取締役社長 1989年日本興業銀行入行。みずほ証券等を経て2023年同社入社。常務取締役等を経て2026年4月より現職。
五十嵐新 取締役会長 1981年日本興業銀行入行。2010年同社入社。常務取締役、代表取締役社長等を歴任し、2026年4月より現職。
佐藤公彦 常務取締役 1988年同社入社。医薬事業部長、人事部長等を歴任。取締役管理本部長兼ヘルスケア事業本部長等を経て2026年4月より現職。
葛西洋芳 取締役 1994年同社入社。相模研究所薬理・安全性研究室長、医薬開発部長、医薬開発本部長等を経て2023年6月より現職。
谷口誠 取締役 1992年同社入社。相模大井工場長、執行役員生産本部長等を経て2024年6月より現職。
平田晴久 取締役(常勤監査等委員) 1979年同社入社。相模研究所長等を経て2014年取締役に就任。2017年6月より現職。


社外取締役は、惠島克芳(元みずほインベスターズ証券社長)、桑原育朗(弁護士)、樋川加奈(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬事業」「ヘルスケア事業」「グローバル事業」「不動産賃貸業」の報告セグメントを展開しています。

(1) 医薬事業


眼科領域を主として、先発医薬品、ジェネリック医薬品、医療機器、健康食品の製造販売を行っています。医療機関や卸向けに適正使用の推進と安全性情報の提供を行っており、眼内レンズなどの医療機器も展開しています。

収益源は、医療機関や医薬品卸売業者に対する医薬品および医療機器の販売代金です。当事業の運営は同社(わかもと製薬)が行っています。

(2) ヘルスケア事業


主力製品である「強力わかもと」に加え、薬用歯みがき「アバンビーズ」シリーズ、フェムケア商品の「フェミフローラ」などの製造販売を行っています。オンラインおよびオフラインの両軸で顧客接点の強化や広告宣伝を実施しています。

収益源は、一般消費者向け商品のドラッグストアなど小売店やネットショップを通じた販売代金です。当事業の運営は同社が行っています。

(3) グローバル事業


アジア圏、ヨーロッパ圏を中心として、「強力わかもと」などの製品および医薬品原料の輸出、新たなライセンスイン・アウトの活動を行っています。国内においても受託製造、診断薬および原料の製造販売を行っています。

収益源は、海外の販売代理店を通じた製品輸出代金やライセンス収益、国内での受託製造代金などです。当事業の運営は同社が行っています。

(4) 不動産賃貸業


コレド室町関連の不動産賃貸業を主たる事業として展開しています。

収益源は、保有する賃貸オフィスビル、商業施設および賃貸住宅からの不動産賃貸収入です。当事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の売上高は一時減少したものの、直近では大きく増加に転じています。経常利益は赤字を計上する時期もありましたが、直近では黒字に回復しており、利益水準も改善傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 84億円 87億円 77億円 78億円 99億円
経常利益 0.7億円 2.4億円 -1.6億円 -4.1億円 2.6億円
利益率(%) 0.9% 2.8% -2.1% -5.3% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.4億円 1.4億円 1.1億円 0.6億円 2.3億円

(2) 損益計算書


売上高が大きく増加し、それに伴って売上総利益も拡大しています。前期に計上していた営業赤字から脱却し、営業利益も黒字化するなど、本業の収益性が大幅に改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 78億円 99億円
売上総利益 36億円 47億円
売上総利益率(%) 46.5% 47.7%
営業利益 -4.6億円 2.6億円
営業利益率(%) -5.9% 2.6%


販売費及び一般管理費(45億円)のうち、給料手当及び賞与が12億円(構成比27%)、研究開発費が5億円(同11%)を占めています。売上原価(52億円)の当期製品製造原価(43億円)の内訳としては、原材料費が27億円(構成比59%)、製造経費が10億円(同23%)となっています。

(3) セグメント収益


主力の医薬事業は「マキュエイド眼注用」の供給再開などにより大幅な増収となりましたが、赤字が継続しています。ヘルスケア事業とグローバル事業は増収増益を達成しており、特にグローバル事業の利益の伸びが全体の黒字化に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
医薬事業 35億円 48億円 -10.9億円 -6.7億円 -14.2%
ヘルスケア事業 23億円 25億円 3.3億円 3.7億円 14.5%
グローバル事業 18億円 24億円 2.4億円 4.9億円 20.5%
不動産賃貸業 1.8億円 1.9億円 0.6億円 0.7億円 35.8%
連結(合計) 78億円 99億円 -4.6億円 2.6億円 2.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる勝負型のキャッシュ・フロー状況です。本業での現金創出がマイナスとなっていますが、借入等によって資金を調達し、将来の成長に向けた設備投資等を継続している局面と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5.9億円 -4.9億円
投資CF -0.1億円 -6.6億円
財務CF -1.0億円 2.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として「人々の健康で活き活きとした生活に貢献~QOL向上に寄与する幅広い健康関連製品の提供を通じて~」を掲げています。眼科領域のスペシャリティファーマとしての医薬品展開や、ヘルスケア事業を通じた健康関連製品の提供により、社会課題である健康寿命の延伸に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は価値・行動基準として、「お客様第一主義を徹底し、追及し続ける」「髙い倫理観と誠実な行動で社会から信頼される企業になる」「お客様、社員、株主、地域・社会のステークホルダーに貢献し、企業価値を高める」「挑戦し続ける企業風土を醸成する」を定めており、多様な人材が活躍できる実力主義を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2028年度までの5か年を対象とする「中期経営計画(Wakamoto 100―承継と挑戦―)」を策定しています。長年培ってきた事業経験やブランドを承継しながら、新しい課題に挑戦し資本収益性を確保することを目指しています。

* ROE 8.0%以上(2028年度最終年度)
* 配当性向 50%以上
* 純資産に対する政策保有株式の比率 10%以下

(4) 成長戦略と重点施策


医薬事業では新規眼内レンズの導入や周術期薬剤の早期承認を目指し、ヘルスケア事業では「強力わかもと」のインバウンド・海外需要対応のための設備投資やフェムケア商品の開発を進めます。グローバル事業では中国での越境EC拡大や東南アジアでの展開を強化し、研究開発への積極投資によって成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「変革を先導する人財の開発と挑戦し続ける企業風土の醸成」を重要な経営課題と位置づけ、人事制度改革を実施しています。複線型のキャリア等級制度や定年延長を導入し、社員が自律的に専門性やスキルを高められる環境を整備するとともに、タウンホールミーティングを通じた対話や次世代リーダー育成に向けた研修を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.4歳 17.0年 5,649,590円


※平均年間給与は時間外割増及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 85.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 87.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 薬価改定の影響


医療用医薬品事業においては、毎年実施される薬価改定により医薬品の販売価格が下落する可能性があります。継続的な薬剤費の引き下げ圧力が生じた場合、収益が圧迫され、同社の財政状態および経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 医薬品の品質と安定供給


原材料や製法の変化に伴う品質変化や異物混入により品質不良が発生した場合、医薬品の安定供給に支障をきたす可能性があります。これによって同社の社会的信用やレピュテーションが棄損された場合、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) サプライチェーンマネジメントに関するリスク


医薬品を製造する過程において、原材料メーカーからの供給が停止した場合、製品の安定供給に影響を及ぼす可能性があります。これにより販売機会を損失し、同社のレピュテーションが棄損された場合、経営成績に影響を与えるリスクがあります。

(4) 競合品との競争激化


同社の医療用医薬品事業における主力点眼剤について、後発品への切り替えが進むことなどにより、他社競合品との競争が激化するリスクがあります。市場シェアの低下や販売数量の減少が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。