※本記事は、理研ビタミン株式会社の有価証券報告書(第90期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 理研ビタミンってどんな会社?
加工食品から各種改良剤まで幅広く手がける食品・化成品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1938年に理研栄養薬品として設立され、1949年にビタミン油の製造販売を目的とする理研ビタミン油として発足しました。1961年に株式を上場し、1963年の理研油脂工業との吸収合併を経て食品分野へ本格進出しました。1980年に現在の社名に変更し、2022年には東証プライム市場へ移行しています。
従業員数は連結で1,887名、単体で1,016名です。筆頭株主は理研ビタミン取引先持株会で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 理研ビタミン取引先持株会 | 11.40% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.13% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(退職給付信託口・ミヨシ油脂口) | 3.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は望月敦氏が務めています。社外取締役の比率は約41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山木一彦 | 取締役会長 | 1983年入社。業務用食品営業本部長、代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
| 望月敦 | 代表取締役社長 | 1985年入社。国際事業本部長、加工用食品営業本部長などを経て、2025年より現職。 |
| 仲野隆久 | 代表取締役専務 | 1985年入社。ヘルスケア事業部長、事業戦略推進部長などを経て、2023年より現職。 |
| 道津信夫 | 代表取締役専務 | 1985年入社。食品改良剤開発部長などを経て、2025年より現職。 |
| 冨取隆浩 | 常務取締役 | 1988年第一勧業銀行入行。みずほ総合研究所専務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 中野正明 | 取締役 | 1987年入社。加工用食品グローバルマーケティング部長などを経て、2025年より現職。 |
| 牧之段武彦 | 取締役 常勤監査等委員 | 1986年入社。千葉工場長、品質保証本部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、平野伸一(元アサヒグループホールディングス社長)、藤永敏(元武田薬品工業経営企画部主席部員)、末吉永久(元千葉簡易裁判所民事調停官)、末吉亙(元三菱HCキャピタル社外取締役)、氏原亜由美(元PwC Japan有限責任監査法人パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内食品事業」「国内化成品その他事業」「海外事業」の報告セグメントを展開しています。
■国内食品事業
家庭用や業務用の加工食品、および食品業界向けの各種原料や改良剤、ビタミンなどの製造や販売を行っています。顧客は一般家庭から外食産業、各種加工食品メーカーまで多岐にわたります。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。事業の運営は同社のほか、子会社である理研食品やサニー包装などが担っています。
■国内化成品その他事業
プラスチックや化粧品などに使用される化成品用改良剤や、飼料用添加物の製造および販売を行っています。主な顧客は国内外の化学品業界や関連メーカーです。
収益は、これらの製品の販売代金として得ています。運営は同社と子会社の健正堂が製造を担い、販売は同社および栄研商事が中心となって行っています。
■海外事業
食品用改良剤や化成品用改良剤、エキスや調味料などを海外市場向けに製造し、世界各地で販売しています。東南アジアや北米、中国などが主要な販売地域です。
収益は製品の販売を通じて獲得しています。製造は同社およびマレーシアや中国などの子会社が担い、販売はシンガポールやアメリカなどの各海外拠点が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は安定して成長を続けており、特に直近の数期間では連続して増加しています。一方で、経常利益や当期利益は事業環境の変化や一時的な費用の影響を受けて変動が見られ、直近では減益となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 792億円 | 888億円 | 915億円 | 956億円 | 963億円 |
| 経常利益 | 62億円 | 77億円 | 103億円 | 94億円 | 77億円 |
| 利益率(%) | 7.8% | 8.7% | 11.3% | 9.9% | 8.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 207億円 | 42億円 | 81億円 | 94億円 | 79億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、原材料価格や人件費の高騰などにより売上総利益は減少し、利益率も低下しています。結果として営業利益も減益となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 956億円 | 963億円 |
| 売上総利益 | 313億円 | 298億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.7% | 30.9% |
| 営業利益 | 87億円 | 69億円 |
| 営業利益率(%) | 9.1% | 7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当・賞与が50億円(構成比22%)、運送保管料が48億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内食品事業と国内化成品その他事業は増収を確保しましたが、利益面ではコスト上昇が響き伸び悩みました。海外事業は販売数量の減少と競争激化により減収となり、営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内食品事業 | 648億円 | 664億円 | 67億円 | 64億円 | 9.6% |
| 国内化成品その他事業 | 80億円 | 87億円 | 9億円 | 9億円 | 10.4% |
| 海外事業 | 228億円 | 213億円 | 11億円 | -4億円 | -1.9% |
| 連結(合計) | 956億円 | 963億円 | 87億円 | 69億円 | 7.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益と資産売却などによって借入の返済を進める、財務体質の改善局面にあることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 79億円 | 60億円 |
| 投資CF | 4億円 | 17億円 |
| 財務CF | -100億円 | -80億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「社会に対し、食を通じて健康と豊かな食生活を提供する」などの5つの経営理念を掲げています。創業以来一貫して天然物の有効利用を事業展開の根幹に据え、独自の技術力や開発力を通じて多彩な製品を創り出し、日本や世界各地に届けることを目指しています。
■(2) 企業文化
「コンプライアンス精神に基づいた事業活動を行い、社会的責任を果たす」ことや、「フレキシビリティのある、かつ創造力に溢れた企業として発展する」ことを重視しています。さらに、「人間尊重の思想に基づき魅力ある職場をつくる」ことも掲げ、従業員一人ひとりの創意工夫を尊重する風土を築いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2034年度をゴールとする中長期ビジョンの実現に向け、「中期経営計画2027」を策定し、事業体制の再構築に取り組んでいます。
* 2028年3月期目標 売上高1,100億円
* 2028年3月期目標 営業利益100億円
* 2028年3月期目標 ROE10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
成長が見込める海外市場への取り組みを強化するため、海外拠点の人員増や先行投資を進めています。また、国内では付加価値の高い新製品の開発や、フードロス削減につながる提案を強化することで、持続的な成長と社会課題の解決の両立を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な企業価値向上のため、国内基盤の強化と海外展開を支える人材ポートフォリオを形成し、重点的な育成を行っています。グローバル人材やイノベーション人材、DX人材などの確保を進めるとともに、従業員エンゲージメントの向上を図ることで、挑戦と成長を促進する組織風土づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.5歳 | 15.5年 | 8,412,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.1% |
| 男性育児休業取得率 | 95.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 73.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 75.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 54.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グローバル人財比率(15.4%)、女性採用比率(24.6%)、男性育児休業平均取得日数(56.8日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の市況変動
食品事業は消費動向や販売先の需要変動の影響を受けやすく、人口減少や競争激化による市場縮小が進んでいます。これらの経済状況の変化や想定外の変動が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 原材料の調達環境の悪化
天然物を中心とする原材料は国内外から幅広く調達していますが、気候変動や地政学的な要因、自然災害などにより、安定的な価格や十分な調達量を確保できなくなるおそれがあり、コスト上昇につながるリスクを抱えています。
■(3) 為替相場の変動
同社グループは全世界で事業を展開しているため、為替相場の変動が外国通貨で販売する製品や調達する原材料の価格に直接影響を及ぼします。急激な為替変動が生じた場合は、経営成績や財務状況に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外事業の展開に伴うカントリーリスク
海外市場では、各国の法制度や税制、経済的・政治的不安、食習慣の違いなど多様なリスクが存在します。米中の貿易動向や地政学的リスクの高まりなどにより、事業展開や競争力に悪影響が及ぶ懸念があります。



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