扶桑薬品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

扶桑薬品工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

扶桑薬品工業は東京証券取引所プライム市場に上場し、輸液を中心とする注射剤や人工腎臓用透析剤等の医療用医薬品の製造・販売を主力事業としています。直近の第103期は、後発医薬品の販売促進等により売上高は増加したものの、原材料費や人件費、研究開発費の増加により営業利益・経常利益は減益となりました。


※本記事は、扶桑薬品工業株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 扶桑薬品工業ってどんな会社?


同社は、透析液や輸液などの基礎的な医療用医薬品を製造・供給する老舗の製薬メーカーです。

(1) 会社概要


扶桑薬品工業は1937年に国産ブドウ糖の販売を主事業として設立され、1949年に現在の社名に変更しました。1964年には日本初の透析液となる人工腎臓灌流原液を開発して供給を開始しています。1989年に東京証券取引所に株式を上場し、2024年には茨城工場で粉末型透析剤製造の新規ラインを稼働させました。

同社の従業員数は単体で1,374名です。筆頭株主は同社関連団体とみられるぶどう協和会で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は敷島振興となっています。

氏名 持株比率
ぶどう協和会 7.02%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.60%
敷島振興 5.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は戸田幹雄氏が務めています。なお、取締役における社外取締役の比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
戸田幹雄 代表取締役社長 1966年同社入社、1969年取締役、1977年代表取締役専務取締役を経て、1979年より現職。
戸田幹洋 代表取締役専務経営企画部長 2003年国際協力事業団青年海外協力隊参加、2016年同社入社、2021年取締役を経て、2025年より現職。
岡純一 取締役生産本部長 1971年同社入社、2005年城東工場長、2009年取締役を経て、2022年より現職。
伊藤雅教 取締役研究開発センター担当 1974年同社入社、2011年研究開発センター部長、2013年取締役を経て、2021年より現職。
大谷英樹 取締役営業本部長 1987年同社入社、2017年営業本部長ならびに取締役に就任し、2021年より現職。


社外取締役は、柏木孝(元大阪市副市長)、渡部靖彦(渡部靖彦公認会計士事務所代表)、池野由香里(弁護士法人栄光社員弁護士)です。

2. 事業内容


同社は、「医薬品事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 医薬品事業


輸液を中心とする注射剤や人工腎臓用透析剤等の医療用医薬品、および医療用機械器具の製造・販売を行っています。また、他社からの医療用医薬品の製造受託も手がけており、全国の病院などの医療機関を主な顧客としています。

収益源は、医薬品や医療用機械器具の販売代金、および製造受託に伴う対価です。製品の研究開発から製造、販売に至るまで、事業の運営は扶桑薬品工業が単体で行っています。

(2) 不動産事業


大阪市などの地域において、自社で保有する賃貸用のオフィスビル等に関する不動産の賃貸事業を行っています。企業等のオフィス用途のテナントを主な顧客としています。

収益源は、テナント企業から定期的に受け取る不動産賃貸収入(賃料)です。当該事業の運営は扶桑薬品工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益も概ね安定して推移していましたが、直近の期においては原材料費や人件費等の上昇により減益となりました。また、1期前は訴訟関連損失引当金繰入額の計上により当期純損失となりましたが、直近の期は黒字に回復しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 496億円 510億円 554億円 606億円 623億円
経常利益 20億円 22億円 19億円 38億円 23億円
利益率(%) 4.0% 4.3% 3.4% 6.2% 3.8%
当期利益 15億円 16億円 14億円 -33億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加している一方で、売上総利益率および営業利益率は低下しています。これは原材料費や人件費の上昇等に伴う売上原価率の上昇が影響しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 606億円 623億円
売上総利益 165億円 160億円
売上総利益率(%) 27.3% 25.7%
営業利益 41億円 26億円
営業利益率(%) 6.8% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が26億円(構成比19.3%)、荷造運搬費が23億円(同17.4%)、研究開発費が20億円(同15.1%)を占めています。また、当期総製造費用の内訳としては、材料費が123億円(構成比52.5%)、経費が60億円(同25.6%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は医薬品事業を主力としており、売上の大部分を占めています。当期は腎・透析関連の後発医薬品の販売促進等により、医薬品事業の売上高が増加しました。不動産事業については安定した推移となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医薬品事業 604億円 622億円
不動産事業 1億円 1億円
連結(合計) 606億円 623億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる「勝負型」の傾向を示しています。本業の収益がマイナスとなっている中、将来の成長に向けた投資を借入等の資金調達によって継続している局面と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -33億円 -62億円
投資CF -32億円 -15億円
財務CF 76億円 63億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.8%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「生命(いのち)支えて、生命(いのち)育む」をパーパスとして掲げています。徹底した品質管理と持続的な安定供給を行う基礎的医薬品メーカーとして、また腎臓・泌尿器領域のアンメットメディカルニーズに対応するスペシャリティファーマとして、社会になくてはならない企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


社是の一つとして「社会寄与につながる経営方針」を掲げています。人の健康と生命に密接に関与する医薬をつくる企業にはふさわしい倫理が求められるという経営理念のもと、透析治療をはじめとする医療現場を支え、社会との共生を目指す誠実な企業文化のもとで事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


持続的かつ安定的な企業価値の向上を重視し、2030年度を最終年度とする中期経営方針「FUSOビジョン2030 Next Stage」において、以下の経営目標を掲げています。収益性と資本効率の向上を図ることで、中長期的にPBR1倍超の実現を目指しています。

* 売上高700億円
* ROE8%超

(4) 成長戦略と重点施策


透析剤のさらなる開発に加え、腎臓・泌尿器領域や不妊治療関連分野においてアンメットメディカルニーズに応える革新的新薬・製品の創製に注力します。また、岡山第二工場の建設による生産拠点の再編やサプライチェーンマネジメント部門の新設により、品質管理と安定供給体制の強化、生産効率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「将来の成長を支える人材の採用と育成を戦略的に強化し、従業員エンゲージメントを向上させる」ことを基本方針としています。資格取得支援制度の拡充やジョブローテーションの推進により自発的な学びを促すとともに、柔軟な働き方やDE&Iの推進を通じ、多様な人材が個性を発揮できる環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.2歳 18.8年 6,049,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.3%
男性育児休業取得率 61.5%
男女賃金差異(全労働者) 68.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 68.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.16%)、重大労災事故件数(0件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療費抑制策・法的規制等への対応


医療用医薬品の薬価引き下げや後発医薬品の使用促進等の医療費抑制策が、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、関連法令違反により許認可等が取り消された場合、製品の回収や販売中止などにつながるリスクがあります。

(2) 医薬品の開発・発売における不確実性


医薬品の開発には多大な時間と費用を要しますが、有効性や安全性が承認に必要な水準に達しない場合、開発の継続を断念することがあります。その結果、投下資本の回収が困難になることや、製品の上市が遅延するリスクが存在します。

(3) 特定の主力製品(透析剤)への依存


同社の主力製品である人工腎臓用透析剤は厳しい市場競争にさらされています。新たな医療ニーズに応える事業展開を推進しているものの、革新的な製品や治療技術の登場などにより市場環境が想定を超えて変化した場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 医薬品の副作用・安全性問題


発売後に予期せぬ副作用が確認される可能性があります。賠償責任保険には加入しているものの、製品に重大な副作用等の安全性の問題が発生した場合、製品の回収や販売中止等により売上が減少し、ブランドイメージが著しく悪化するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。