日本ケミファ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ケミファ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ケミファは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、医療用医薬品を中心とするヘルスケア事業を展開しています。直近の業績は、ジェネリック医薬品などの拡販で売上高が前期比増収となった一方で、経常利益は減益となっています。品質と安定供給を重視しつつ、海外展開を推進し企業価値の向上を目指しています。


※本記事は、日本ケミファ株式会社の有価証券報告書(第94期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ケミファってどんな会社?


医療用医薬品を中核として、ジェネリック医薬品、臨床検査薬、新薬開発などの事業を展開しています。

(1) 会社概要


1950年に日立化学として設立され、1969年に日本薬品工業を買収しました。1970年に現社名に変更し、1976年に臨床検査薬事業へ進出、同年東京証券取引所市場第一部に指定替えされました。2009年に日本薬品工業を連結子会社化、2015年にベトナムで現地法人を設立し、海外展開も推進しています。

従業員数は連結で878名、単体で331名です。筆頭株主は事業会社のジャパンソファルシムで、第2位は公益財団法人の山口記念科学振興財団、第3位には事業会社の豊島薬品が名を連ねています。

氏名 持株比率
ジャパンソファルシム 11.88%
山口記念科学振興財団 8.22%
豊島薬品 6.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長代表執行役員社長は山口一城氏が務めています。取締役10名のうち、社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
山口一城 代表取締役社長代表執行役員社長 1981年第一勧業銀行入行。1985年同社入社。1994年代表取締役社長、2005年代表取締役社長代表執行役員社長。2016年よりジャパンソファルシム代表取締役を務める。
安本昌秀 取締役専務執行役員経営全般補佐 リスク管理・経営企画部・情報システム部・臨床検査薬事業部担当兼ヘルスケア部長 1991年日本長期信用銀行入行。2005年同社入社。2008年執行役員。2025年より取締役専務執行役員経営全般補佐リスク管理・経営企画部等担当兼ヘルスケア部長を務める。
速水康紀 取締役常務執行役員創薬研究所・開発企画部・製剤技術開発部・海外事業部・メディカルアフェアーズ部担当 1988年山之内製薬入社。2017年同社入社。2019年執行役員。2025年より取締役常務執行役員創薬研究所・開発企画部・製剤技術開発部等担当を務める。
中島慎司 取締役執行役員法令等遵守・総務部・法務部・グループ購買・営業管理センター担当兼管理部長 1986年金門製作所入社。2000年同社入社。2012年管理部長。2026年より取締役執行役員法令等遵守・総務部・法務部・グループ購買等担当兼管理部長を務める。


社外取締役は、吉野正己(弁護士・吉野総合法律事務所)、大向尚子(西村あさひ法律事務所パートナー)、成田学(銀泉取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。

医薬品事業


主に医療用医薬品、臨床検査用の試薬および機械の製造や販売を行っています。アレルギースクリーニング機器「ドロップスクリーン」やジェネリック医薬品、新薬開発などを推進しており、国内外の医療機関や患者に向けて特色ある製品を提供しています。

収益源は、医療機関や卸売業者に対する製品の販売代金です。当事業の運営は主に同社および日本薬品工業、Nippon Chemiphar Vietnam Co., Ltd.が行っており、グループ横断的な品質保証体制のもとで医薬品の安定供給に努めています。

その他


医薬品事業以外の領域として、医薬品等の安全性試験の受託、ヘルスケア事業および不動産賃貸事業を展開しています。外部企業や研究機関からの試験の受託や、健康・美容関連製品の取り扱い、自社保有不動産の賃貸などを行っています。

収益源は、試験の受託費用や賃貸施設の家賃、ヘルスケア製品の販売代金などです。この事業の運営は主に化合物安全性研究所やシャプロが担っており、グループの多様な収益基盤として機能しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は300億円台で安定して推移しており、直近では増収基調にあります。一方で経常利益や当期利益は薬価改定などの事業環境の変化を受けて増減を繰り返しており、直近の経常利益は減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 325億円 316億円 307億円 326億円 331億円
経常利益 10億円 0.6億円 -2億円 4億円 2億円
利益率(%) 3.1% 0.2% -0.7% 1.4% 0.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -3億円 -8億円 1億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上総利益および営業利益は減少しています。薬価改定の影響やコスト負担の増加などが収益性を圧迫し、売上総利益率と営業利益率のいずれも前期と比較して低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 326億円 331億円
売上総利益 87億円 84億円
売上総利益率(%) 26.9% 25.4%
営業利益 6億円 2億円
営業利益率(%) 1.9% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料が26億円(構成比32%)、研究開発費が21億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の医薬品事業では、臨床検査薬の販売増やジェネリック医薬品の拡販により増収となったものの、薬価引き下げ等の影響により利益水準は大幅に低下しました。その他事業も受託試験などの伸長で増収を確保しましたが、利益面では赤字に転じています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
医薬品事業 314億円 319億円 5億円 2億円 0.6%
その他 12億円 12億円 1億円 -0.1億円 -0.6%
連結(合計) 326億円 331億円 6億円 2億円 0.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる健全型です。本業で生み出した資金を設備投資や借入金の返済に充当しており、安定した資金繰りが行われています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3億円 6億円
投資CF -17億円 -7億円
財務CF -3億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.0%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを経営理念として掲げています。国内外において存在価値のある企業グループとして発展し、社会的使命を果たしつつ、継続企業として長期的に成長し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「品質第一」の企業文化の醸成に注力しています。従業員への継続的な教育研修や、外部コンサルタントを招いた社内講演会などを実施し、グループ横断的に統一された管理基準や手法を運用することで、国内外の製造拠点において高い品質水準を確保する姿勢を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は、3つの事業ドメイン(ジェネリック医薬品、臨床検査薬、新薬開発)の収益基盤を強化し、成長軌道を確実なものにすることを目標としています。国内外の環境変化にタイムリーに対応すべく、期間3カ年の中期経営計画を毎年ロールオーバーし、持続的成長の実現を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ジェネリック医薬品における企業間連携を通じた製造効率化と安定供給の確保を推進しています。また、臨床検査薬「ドロップスクリーン」の国内外での拡販や、アルカリ化療法剤をはじめとする新薬パイプラインの拡充を進め、ベトナムや中東・アフリカなど海外市場での事業展開も強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、イノベーションを生む体制づくりのため「人材の確保」を最重要視しています。新卒に偏らない柔軟な採用活動や継続的なリスキリング教育、専門人材の育成を推進し、キャリア開発とワークライフバランスの両立を図ることで、従業員のエンゲージメント向上と中核人材の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.1歳 14.1年 7,501,079円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.6%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.1%
男女賃金差異(パート・有期雇用者) 77.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、単体の年次有給休暇取得率(66.9%)、日本薬品工業の男性育児休業取得率(100.0%)、日本薬品工業の年次有給休暇取得率(78.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 薬価制度・医療保険制度変更の影響
近年、中間年改定を含む薬価引き下げがスピードを増して実施されており、医療費抑制を目的とした制度変更が継続しています。これにより、取り扱い品目の収益性が悪化し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 医薬品の品質と安全性の確保
製造プロセスにおける不備や原材料の調達トラブルにより、製品の品質問題や予期せぬ副作用が発生するリスクがあります。製品の回収や供給停止が生じた場合、社会的信用の低下や損害賠償などを招き、事業展開や業績に支障を来す恐れがあります。

(3) ジェネリック医薬品等の競争激化
毎年の薬価引き下げに加えて、納入先である医療機関や保険薬局での競争により、他社製品を含めた市場価格の下落が予想以上の価格低下を強いる場合があります。また、体外診断用医薬品においても新製品の投入により競争力を失うリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。