日本ケミファ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ケミファ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、医療用医薬品を中核事業とする製薬企業です。ジェネリック医薬品を中心に、臨床検査薬や新薬開発も手がけています。直近の業績は、薬価改定の影響を受けつつも、ジェネリック医薬品や臨床検査薬の販売が伸長し、売上高は増収、経常利益は黒字転換を果たしました。


※本記事は、日本ケミファ株式会社 の有価証券報告書(第93期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ケミファってどんな会社?


医療用医薬品を中核とし、ジェネリック医薬品、臨床検査薬、新薬開発の3つの事業ドメインを展開する製薬企業です。

(1) 会社概要


1950年に設立され、1970年に現社名へ商号変更しました。1976年に臨床検査薬事業へ進出し、東京証券取引所市場第一部へ指定替えとなりました。1988年には痛風・高尿酸血症治療薬「ウラリット-U」を発売しました。2020年にはアレルギー検査キット「ドロップスクリーン」の販売を開始し、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は855名、単体では330名です。筆頭株主は代表取締役社長が議決権の一部を所有する関連会社のジャパンソファルシムで、第2位は豊島薬品、第3位は機関投資家の日本生命保険相互会社です。

氏名 持株比率
ジャパンソファルシム 19.56%
豊島薬品 6.63%
日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) 3.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長代表執行役員社長は山口一城氏です。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山口一城 代表取締役社長代表執行役員社長 1981年第一勧業銀行入行。1985年同社入社。1994年代表取締役社長就任。2005年より現職。ジャパンソファルシム代表取締役を兼任。
安本昌秀 取締役専務執行役員経営全般補佐 リスク管理・経営企画部・情報システム部・臨床検査薬事業部担当兼ヘルスケア部長 1991年日本長期信用銀行入行。2005年同社入社。経営企画部長、広報室担当などを経て2025年4月より現職。
速水康紀 取締役常務執行役員創薬研究所・製剤技術開発部・海外事業部・メディカルアフェアーズ部担当兼開発企画部長 1988年山之内製薬入社。大塚製薬、オンコリスバイオファーマなどを経て2017年同社入社。開発企画部長などを務め2025年4月より現職。
中島慎司 取締役執行役員法令等遵守・総務部・グループ購買・営業管理センター担当兼管理部長 1986年金門製作所入社。2000年同社入社。管理部長、購買・物流センター担当などを経て2025年6月より現職。


社外取締役は、吉野正己(吉野総合法律事務所代表弁護士)、大向尚子(西村あさひ法律事務所パートナー)、成田学(銀泉代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医薬品事業


医療用医薬品の製造・販売および臨床検査薬の取り扱いを行っています。主要製品にはジェネリック医薬品のほか、アレルギースクリーニング機器・試薬「ドロップスクリーン」などがあります。また、日本国内だけでなく、ベトナム等の海外市場への展開も進めています。

製品を医療機関や卸売業者等へ販売することで収益を得ています。運営は、日本ケミファ、日本薬品工業、Nippon Chemiphar Vietnam Co., Ltd.、ジャパンソファルシムが行っています。

(2) その他


医薬品事業以外の領域として、安全性試験の受託、ヘルスケア事業、不動産賃貸事業を展開しています。受託試験事業(CRO)では、医療機器の生物学的安全性試験や医師主導治験の支援などを行っています。

試験受託料や不動産賃貸料などが主な収益源です。運営は、主に株式会社化合物安全性研究所、シャプロ、日本ケミファが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台前半で推移しています。第91期から第92期にかけては利益面で苦戦し、当期純損失を計上していましたが、第93期においては経常利益および当期純利益ともに黒字転換を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 315億円 325億円 316億円 307億円 326億円
経常利益 6億円 10億円 0.6億円 -2億円 4億円
利益率(%) 1.8% 3.1% 0.2% -0.7% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 7億円 3億円 -2億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益率も改善しました。前期は営業損失を計上していましたが、当期は増収効果や原価率の低減等により、営業利益、経常利益ともに黒字化を達成しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 307億円 326億円
売上総利益 77億円 87億円
売上総利益率(%) 25.2% 26.9%
営業利益 -5億円 6億円
営業利益率(%) -1.6% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が25億円(構成比31%)、研究開発費が23億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の医薬品事業は、ジェネリック医薬品の拡販や臨床検査薬の伸長により増収となり、営業利益も黒字転換しました。その他事業についても、安全性試験受託などが堅調で増収となりましたが、利益面では若干の減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
医薬品事業 296億円 314億円 -6億円 5億円 1.6%
その他 11億円 12億円 1億円 1億円 8.4%
調整額 -0.2億円 -0.9億円 - - -
連結(合計) 307億円 326億円 -5億円 6億円 1.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**パターン判定: 末期型**

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 -3億円
投資CF -31億円 -17億円
財務CF 14億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを経営理念としています。国内外において存在価値のある企業グループとして発展することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「日本ケミファグループ法令等遵守行動基準」を定め、役員・使用人が法令・定款および社会規範を遵守した行動をとることを重視しています。また、持続可能な社会の実現に向けた「サステナビリティ基本方針」に基づき、環境・社会・経済的課題への取り組みを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2000年以降掲げてきた成長戦略「3つのミッション」を発展させ、「ジェネリック医薬品」「臨床検査薬」「新薬開発」の3つの事業ドメインを構成し、これらを積極的に海外へ展開することを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「ジェネリック医薬品」では品質と安定供給を最優先し、生産性向上と効率的な営業活動を推進します。「臨床検査薬」では主力品ドロップスクリーンの国内設置台数拡大と海外展開を目指します。「新薬開発」ではアルカリ化療法剤の新領域展開や、他社との提携による創薬を進めます。これら3つの事業ドメインの成果を海外へ展開することを重点施策としています。

* ジェネリック医薬品の金額シェア目標:2029年度末までに65%以上(厚生労働省目標)
* ドロップスクリーン設置台数目標:2025年度に累計2,000台

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材の確保」を重要視し、柔軟な採用、継続的な基礎教育とリスキリング、多様な働き方の受容を推進しています。新卒採用に偏重しないキャリア採用や、DX基礎教育、女性管理職の登用、男性社員の育児休業取得義務化などを通じ、イノベーションを生む体制づくりとキャリア形成のサポートを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 13.8年 7,183,262円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.4%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用) 75.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 89.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(66.4%)、日本薬品工業の年次有給休暇取得率(79.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 薬価制度・医療保険制度変更に関するリスク


薬価は診療報酬改定時だけでなく中間年にも改定されるようになり、引き下げスピードが加速しています。また、医療保険制度の見直しも行われており、これらの内容は同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 医薬品の研究開発に関するリスク


新薬の研究開発は、臨床試験で期待通りの結果が得られない場合や導出交渉が難航する場合など、計画通りに進まないリスクがあります。ジェネリック医薬品や体外診断用医薬品においても、開発が遅延・中止となり収益に結びつかない可能性があり、その場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料・商品の仕入に関するリスク


仕入先や製造国における規制、トラブル、災害等により、原材料や商品の調達に支障が生じるリスクがあります。代替品の調達が困難な場合には、製品の安定供給ができなくなり、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製造の遅滞又は休止に関するリスク


設備の故障、技術的・規制上の問題、災害等により、製品の製造が停止または遅延する可能性があります。BCP対応やバックアップ体制の整備を進めていますが、万一製造に支障が生じた場合は、製品の安定供給に影響し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。