※本記事は、栄研化学株式会社 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 栄研化学ってどんな会社?
臨床検査薬のパイオニアとして、便潜血検査用試薬や尿検査用試薬などの製造・販売を行うヘルスケア企業です。
■(1) 会社概要
同社は1939年に創立され、1950年に細菌検査用のSS寒天培地を製品化して以来、臨床検査薬の専業メーカーとして発展しました。1990年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2002年には同第一部銘柄(現プライム市場)に指定されています。2012年には中国子会社を栄研生物科技(中国)有限公司へ社名変更し、グローバル展開を推進しています。
連結従業員数は702名(単体700名)です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行、第2位が投資ファンド、第3位が外国銀行等の常任代理人である信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.23% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC | 9.66% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 | 6.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性16名、女性2名の計18名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表執行役社長は瀨川雄司氏が務めています。取締役10名のうち7名が社外取締役であり、社外取締役比率は70.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 納富 継宣 | 取締役 代表執行役会長 | 1981年同社入社。研究開発統括部長、生産統括部長、代表執行役社長などを歴任し、2025年6月より現職。 |
| 瀨川 雄司 | 取締役 代表執行役社長 | 1990年ソニー入社。2013年同社入社後、研究開発統括部応用技術研究所長、社長室長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 森 安義 | 取締役 専務執行役研究開発統括部長 | 1995年同社入社。研究開発統括部生物化学第二研究所長、栄研生物科技(中国)有限公司董事長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、石井潔(元IHIエアロスペース社長)、中村規代実(弁護士)、藤吉彰(元エーザイ執行役)、松竹直喜(公認会計士)、植木理恵(医師・順天堂大学教授)、木野瀨祐太(コンチネンタル・インベストメント・グループ社長)、戸田達喜(平川商事財務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「検査薬事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 臨床検査薬
主に病院や検査センター等の医療機関を顧客とし、疾病の診断や治療方針の決定に用いられる様々な臨床検査薬を提供しています。主力製品には、大腸がんスクリーニングに用いられる便潜血検査用試薬、健康診断等で広く利用される尿検査用試薬、感染症診断のための微生物検査用試薬などがあります。
これらの製品は同社が開発・製造を行い、国内では卸売業者を通じて、海外では販売代理店等を通じて販売され、対価を受け取っています。また、独自技術であるLAMP法(遺伝子増幅法)に関連する特許料収入も得ています。運営は主に同社および連結子会社の栄研生物科技(中国)有限公司が行っています。
■(2) 医療機器・その他
臨床検査薬の使用に必要な検査装置や関連器具の販売を行っています。具体的には、便潜血測定装置や尿分析装置などの医療機器、および食品・環境検査用の培地などが含まれます。これにより、試薬と装置を組み合わせたトータルシステムとしての提案を行っています。
収益は、医療機器本体の販売代金や保守サービス料などから構成されています。運営は同社が主体となって行っていますが、米国子会社のEIKEN MEDICAL AMERICA INC.も検査薬の販売等を目的として設立されています(事業開始前)。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で推移しています。2022年3月期から2023年3月期にかけては高水準の利益率を維持していましたが、直近2期間においては利益率が低下傾向にあります。これは新型コロナウイルス関連製品の特需剥落や原材料価格の高騰などが影響していると考えられます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 387億円 | 430億円 | 433億円 | 401億円 | 405億円 |
| 経常利益 | 68億円 | 85億円 | 76億円 | 36億円 | 32億円 |
| 利益率(%) | 17.6% | 19.8% | 17.5% | 8.9% | 7.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 51億円 | 62億円 | 58億円 | 26億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の傾向を見ると、売上高は微増しましたが、売上原価率の上昇により売上総利益は減少しました。また、販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業利益は減少しました。利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 401億円 | 405億円 |
| 売上総利益 | 167億円 | 165億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.8% | 40.7% |
| 営業利益 | 34億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が44億円(構成比32%)、給料が25億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、製品区分別の売上高を見ると、主力の免疫血清検査用試薬(便潜血検査用試薬含む)や尿検査用試薬、微生物検査用試薬が増収となりました。一方で、その他(医療機器・遺伝子関連等)は新型コロナウイルス関連製品の減少等により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 微生物検査用試薬 | 43億円 | 45億円 |
| 尿検査用試薬 | 44億円 | 46億円 |
| 免疫血清検査用試薬 | 217億円 | 225億円 |
| 生化学検査用試薬 | 6億円 | 6億円 |
| 器具・食品環境関連培地 | 20億円 | 20億円 |
| その他 | 71億円 | 63億円 |
| 連結(合計) | 401億円 | 405億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
栄研化学は、営業活動で得た資金が大幅に増加し、事業の成長を支えています。一方で、設備投資や将来に向けた資産形成のために投資活動では資金支出が増加しました。また、自己株式の取得や株主への配当といった財務活動も行われました。これらの活動を通じて、同社は事業基盤の強化と株主還元を両立させています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 38億円 | 60億円 |
| 投資CF | -22億円 | -45億円 |
| 財務CF | -67億円 | -49億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「EIKEN WAY」として経営理念、経営ビジョン、モットーを制定しています。経営理念として「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」を掲げ、経営ビジョンでは、検査のパイオニアとして信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”」をモットーとし、品質と技術を重視する文化を持っています。また、2030年に向けたスローガンとして「Beyond the Field ~ Team × Challenge ~」を掲げ、従業員一人ひとりが能力を高め、チームで結束して新しい可能性に挑戦し、検査の未来を創っていく姿勢を打ち出しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年をゴールとする「EIKEN ROAD MAP 2030」を策定し、バックキャスティングによる中期経営計画を推進しています。新中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では、最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:469億円
* 営業利益:59億円(営業利益率12.6%)
* ROE:9.3%
* ROIC:8.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
「EIKEN ROAD MAP 2030」では、「がんの予防・治療への貢献」「感染症撲滅・感染制御への貢献」「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の3つを注力事業分野としています。海外市場の開拓・拡大、製品ポートフォリオの再構築、新製品の開発を基本方針とし、便潜血検査のグローバル展開や結核検査システム(TB-LAMP)の途上国展開、次世代シーケンサーを活用した遺伝子検査システムの拡充などを進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人を活かした活力ある企業」を目指し、多様性を尊重し受け入れ合う組織風土の醸成に取り組んでいます。職種別採用やリファラル採用などの多様な採用パイプラインの活用、ハイブリッドワークやスーパーフレックスタイムの推進、営業職への転勤免除制度の導入など、従業員のワークライフバランスとキャリア形成を支援する環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.4歳 | 14.4年 | 7,651,100円 |
※平均年間給与は基準外給与及び賞与を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.8% |
| 男性育児休業取得率 | 91.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 90.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(1.9%)、正社員一人あたり年次有給休暇取得率(63.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外事業展開に係るリスク
同社はグローバル展開を推進しており、特に主力製品である便潜血検査用試薬のスクリーニングプログラムが各国の政策や経済状況の影響を受ける可能性があります。パンデミックや地政学リスク、高い関税の賦課などが生じた場合、また新製品の薬事承認が遅延した場合には、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新製品・新技術・新規事業に係るリスク
中長期的な成長のためには新製品等の開発が不可欠ですが、研究開発には不確実性が伴います。開発の遅延や中止、市場動向との不整合等により十分な成果が得られず、投資回収が困難になった場合や、新規事業計画に遅れが生じた場合には、将来の成長計画や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 医療制度・薬事規制等に係るリスク
同社の製品は各国の薬事規制等の適用を受けます。各国の医療制度改革により医療費抑制策や薬事規制が強化された場合、または環境規制が強化された場合には、製品価格の下落や対応コストの増加、販売への制約などが生じ、経営成績に影響を与える可能性があります。



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