H.U.グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

H.U.グループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するH.U.グループホールディングスは、臨床検査の受託や臨床検査薬の製造・販売等を中核とする総合ヘルスケア企業です。直近の業績では、検査オペレーションの改善や販売価格の適正化などにより増収増益(営業利益ベース)を達成し、安定した事業基盤を築いています。


※本記事は、H.U.グループホールディングスの有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. H.U.グループホールディングスってどんな会社?


臨床検査の受託と検査薬の製造・販売を両輪とし、日本の医療インフラを支える企業グループです。

(1) 会社概要


同社は1950年に富士臓器製薬として設立され、1970年に臨床検査センター(現エスアールエル)を設立しました。2005年に持株会社体制へ移行し、みらかホールディングスへ社名を変更しました。その後、2020年に現在のH.U.グループホールディングスへ社名を変更し、国内外のヘルスケア領域で事業を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で5,157名、単体で351名です。筆頭株主ならびに第2位、第3位の株主は、いずれも資産管理業務等を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.90%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 5.65%
日本カストディ銀行(信託口) 4.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は11.8%です。代表執行役社長兼グループCEOは石川剛生氏が務めています。取締役9名のうち7名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
石川剛生 代表執行役社長兼グループCEO 防衛庁入庁、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て同社入社。富士レビオ代表取締役社長等を経て2026年より現職。
竹内成和 取締役 執行役 CBS・ソニー入社、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント代表取締役会長等を経て同社入社。2023年より現職。
北村直樹 取締役 執行役常務財務担当 ソニー入社、ソネットエンタテインメント経営企画部長を経て同社入社。エスアールエル取締役等を経て2021年より現職。


社外取締役は、青山繁弘(元サントリーホールディングス副社長)、天野太道(元トーマツグループCEO)、粟井佐知子(元ラ・プレリージャパン社長)、伊藤良二(元ベイン・アンド・カンパニー日本支社長)、白川もえぎ(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、宮川圭治(元ドイツ証券副会長)、吉田仁(元アスクル副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「検査・関連サービス事業」「臨床検査薬事業」「ヘルスケア関連サービス事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

検査・関連サービス事業


大規模病院から地域の診療所に至るまで、幅広い医療機関から特殊検査や一般検査を受託しています。また、企業向けの健康診断代行や、食品・環境・化粧品に関する各種検査サービスも提供しています。

収益源は、医療機関や企業からの検査受託料やサービス代行料です。運営は主にエスアールエルや日本医学臨床検査研究所、H.U.ウェルネスなどが担当し、米国等でも遺伝学的検査サービスを展開しています。

臨床検査薬事業


国内外の医療機関や受託臨床検査会社に向けて、臨床検査薬や検査機器の製造・販売を行っています。また、CDMO事業として世界各国の企業に対する検査薬の開発受託や原材料の供給も行っています。

収益源は、検査薬および検査機器の販売代金や、抗体等のバイオ原料の供給対価です。運営は主に富士レビオ・ホールディングスや富士レビオ、米国や欧州の海外子会社が連携して行っています。

ヘルスケア関連サービス事業


大規模病院内での医療器具の滅菌業務や手術業務支援、医療材料の物流管理・搬送サービスの受託を行っています。また、訪問看護を主とした在宅サービス事業も展開しています。

収益源は、医療機関からの業務受託料や医療機器・衣服のレンタル・販売料、在宅サービスの利用料です。滅菌関連は主に日本ステリが、在宅サービスはStarQガイア等の子会社が運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、直近では2,400億円台で堅調に推移しています。利益面では2024年3月期に損失を計上したものの、その後は黒字へと回復し、収益性の改善が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,729億円 2,609億円 2,370億円 2,430億円 2,474億円
経常利益 474億円 220億円 -72億円 47億円 28億円
利益率(%) 17.4% 8.4% -3.1% 2.0% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 59億円 129億円 97億円 221億円 79億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益はともに前期を上回って推移しており、売上総利益率も改善傾向にあります。これに伴い、営業利益および営業利益率も増加しており、本業の稼ぐ力が着実に高まっていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,430億円 2,474億円
売上総利益 672億円 714億円
売上総利益率(%) 27.6% 28.9%
営業利益 26億円 48億円
営業利益率(%) 1.1% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が139億円(構成比21%)、給料・賞与が132億円(同20%)、研究開発費が112億円(同17%)を占めています。また、売上原価は1,760億円(売上高に対する構成比71%)となっています。

(3) セグメント収益


中核である検査・関連サービス事業および臨床検査薬事業がいずれも売上を牽引しており、特に検査・関連サービス事業がグループ全体の売上高の大部分を占めています。ヘルスケア関連サービス事業も安定した売上規模を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
検査・関連サービス事業 1,530億円 1,573億円
臨床検査薬事業 605億円 607億円
ヘルスケア関連サービス事業 295億円 293億円
連結(合計) 2,430億円 2,474億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面(改善型)となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 220億円 216億円
投資CF -160億円 113億円
財務CF -53億円 -264億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ヘルスケアにおける新しい価値の創造を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献する」をMissionとして掲げています。また、グループの経営資源を最大限活用し、共創・挑戦・イノベーションを通じて世界の社会課題を解決していくことをVisionとして定めています。

(2) 企業文化


「顧客本位」「新しい価値の創造」「誠実と信頼」「相互の尊重」の4つを価値観・行動様式として定めています。世界初、オンリーワンの価値創造を目指してリスクをとって変革に挑戦し、組織の垣根を越えたオープンで建設的なコミュニケーションを重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


5か年の中期経営計画「H.U.2030 2.0」を策定し、「世界のH.U.グループ」を目指した戦略を推進しています。2030年3月期の経営数値目標として、以下の指標を掲げています。

* ROE:13%以上
* 連結EBITDAマージン:16%以上
* 連結営業利益率:11%以上
* ROIC:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


患者ニーズ(Patient Journey)を支える医療インフラとして、疾患別の成長戦略を明確化しています。特に、潜在的な市場が拡大しているオンコロジー(がん)およびNEURO(認知症)領域を成長領域、感染症領域を重点領域と特定し、独自の検査項目の開発やグローバル市場への展開に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「新たな価値を創造する人財の育成」をマテリアリティに設定し、「人を想い、人が高める」をキーワードに多様かつ健康で活性化された組織風土づくりに取り組んでいます。従業員一人ひとりが主体的なキャリア形成を通じて成長し、「自立・自走・自責」の姿勢で行動できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.2歳 12.1年 8,102,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用) 70.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 56.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2(Scope1+2)排出量削減目標(33.6%)、健康経営優良法人ホワイト500の認定(5社)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報の取扱および情報システムに関するリスク


大量の患者個人情報や検査データを保有しているため、システム障害やサイバー攻撃等によるサービスの停止・情報漏洩が生じた場合、グループの信頼性が失墜し、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 精度管理および品質保証に関するリスク


検査・関連サービス事業等において、人為的ミスや不測の事態により製品・サービスの品質が担保できなくなった場合、同社グループの信頼性が損なわれ、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 研究開発および技術革新に関するリスク


効率的かつ迅速な新製品・新技術の開発に継続投資していますが、人財確保の遅れや薬事承認の未達等により想定した成果が出ない場合、または競合他社に技術開発を先行された場合、競争力が低下し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。