※本記事は、株式会社H.U.グループホールディングスの有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. H.U.グループホールディングスってどんな会社?
臨床検査受託の大手「エスアールエル」と臨床検査薬の「富士レビオ」を中核とする、総合ヘルスケア企業グループです。
■(1) 会社概要
1950年に医薬品製造の富士臓器製薬(現富士レビオ)として設立され、1970年には臨床検査センターの東京スペシアル レファレンス ラボラトリー(現エスアールエル)が設立されました。2005年に持株会社体制へ移行し、みらかホールディングスが発足。2020年に現在のH.U.グループホールディングスへ商号変更しました。
連結従業員数は5,444名、単体では339名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)、第3位は外国法人等の常任代理人である株式会社みずほ銀行決済営業部(STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001)となっており、機関投資家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 19.16% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 6.53% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 6.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表執行役会長 兼 社長兼 グループCEOは竹内成和氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹内 成和 | 取締役 代表執行役会長 兼 社長兼 グループCEO |
1976年CBS・ソニー入社。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント会長、エイベックス・グループ・ホールディングス代表取締役CFO等を経て、2016年同社代表執行役社長。2023年より現職。 |
| 北村 直樹 | 取締役 執行役常務 兼 CFOHS担当 |
1993年ソニー入社。Sony Corporation of America等を経て2011年同社入社。H.U. America CEO等を歴任し、2021年より現職。 |
社外取締役は、青山繁弘(元サントリーホールディングス副会長・指名委員長)、天野太道(元トーマツグループCEO・監査委員長)、粟井佐知子(元ラ・プレリージャパン社長)、伊藤良二(元ベイン・アンド・カンパニー日本支社長・報酬委員長)、白川もえぎ(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、宮川圭治(元ドイツ証券投資銀行本部副会長)、吉田仁(元アスクル取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「検査・関連サービス事業」、「臨床検査薬事業」、「ヘルスケア関連サービス事業」を展開しています。
■(1) 検査・関連サービス事業(LTS)
大規模病院等の医療機関から特殊検査を受託するほか、地域の中小規模病院や診療所から一般検査および特殊検査を受託しています。また、健康診断代行や食品・環境・化粧品の検査も行っています。
収益は、医療機関等から受け取る検査受託料や、企業・健康保険組合からの健診代行手数料等で構成されます。運営は主に株式会社エスアールエルが行い、健診代行等はH.U.ウェルネス株式会社、食品検査等は株式会社日本食品エコロジー研究所が担当しています。
■(2) 臨床検査薬事業(IVD)
臨床検査薬の製造・販売および機器の提供を行っており、CDMO(医薬品開発製造受託)事業や原材料供給も展開しています。全自動化学発光酵素免疫測定システム「ルミパルス」などが主力製品です。
収益は、医療機関や検査センターへの製品販売代金や、CDMO事業における受託料・ライセンス料等から得ています。運営は、国内では富士レビオ株式会社、海外ではFujirebio Diagnostics, Inc.やFujirebio Europe N.V.などが担っています。
■(3) ヘルスケア関連サービス事業(HS)
病院内での医療器具の滅菌業務や手術業務支援、院外滅菌サービスのほか、福祉用具のレンタル事業や訪問看護などの在宅サービスを展開しています。
収益は、医療機関からの滅菌業務委託料や、利用者・介護保険からの福祉用具レンタル料等で構成されます。滅菌関連は日本ステリ株式会社、福祉用具レンタルはケアレックス株式会社、在宅サービスはStarQガイア株式会社の子会社等が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2,200億円から2,700億円の範囲で推移しています。利益面では、2022年3月期に高い利益水準を記録しましたが、その後減益傾向となり、2024年3月期には赤字を計上しました。直近の2025年3月期は黒字回復を果たしています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,230億円 | 2,729億円 | 2,609億円 | 2,370億円 | 2,430億円 |
| 経常利益 | 255億円 | 474億円 | 220億円 | -72億円 | 47億円 |
| 利益率(%) | 11.4% | 17.4% | 8.4% | -3.1% | 2.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 59億円 | 129億円 | 97億円 | 221億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加し、売上総利益も拡大しています。営業利益は前期の赤字から黒字に転換しました。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,370億円 | 2,430億円 |
| 売上総利益 | 632億円 | 672億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.7% | 27.6% |
| 営業利益 | -40億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | -1.7% | 1.1% |
販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が136億円(構成比21%)、給料・賞与が132億円(同20%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
検査・関連サービス事業は増収となり、赤字幅が縮小しました。臨床検査薬事業は新型コロナ関連製品の減少により減収減益となりました。ヘルスケア関連サービス事業は滅菌関連の伸長により増収増益を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 検査・関連サービス事業 | 1,467億円 | 1,530億円 | -125億円 | -46億円 | -3.0% |
| 臨床検査薬事業 | 619億円 | 605億円 | 129億円 | 113億円 | 18.8% |
| ヘルスケア関連サービス事業 | 283億円 | 295億円 | 13億円 | 18億円 | 6.0% |
| 調整額 | - | - | -58億円 | -58億円 | - |
| 連結(合計) | 2,370億円 | 2,430億円 | -40億円 | 26億円 | 1.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、営業活動により安定的に資金を生み出し、成長に必要な資金調達を行っています。営業活動では、事業活動を通じて多くの資金を獲得しました。一方、投資活動では、設備投資や子会社株式の取得等に資金を使用しました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い等を行いました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 166億円 | 220億円 |
| 投資CF | -161億円 | -160億円 |
| 財務CF | -58億円 | -53億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ヘルスケアにおける新しい価値の創造を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献する」というMissionを掲げています。また、10年後のありたい姿として「グループが共有する経営資源を最大限活用し、共創・挑戦・イノベーションを通じて世界の社会課題を解決する」というVisionを策定しています。
■(2) 企業文化
同社は「顧客本位」「新しい価値の創造」「誠実と信頼」「相互の尊重」を価値観・行動様式として定めています。お客様の期待を超え、リスクをとって変革に挑戦し、透明性の高い活動を通じて信頼を向上させ、多様な価値観を尊重し合う組織風土を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期から2030年3月期までの5か年中期経営計画「H.U.2030」を策定しています。2030年3月期の経営数値目標として、以下の指標を掲げています。
* ROE:13%以上
* 営業キャッシュ・フロー:5年累計1,500億円以上
* 連結EBITDA(マージン):16%以上
* 連結営業利益率:11%以上
* ROIC:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「H.U.2030」では、これまでの投資の刈り取りフェーズとして、一体化経営の深化と高収益体質への変革を推進します。具体的には、新規検査項目のLTS/IVD同時導入による市場形成、グループ技術を活用した独自試薬の開発・外販、グループ顧客基盤の活用によるクロスセル強化などに取り組みます。また、LTSではH.U. Bioness Complexの完全稼働による生産性向上、IVDではCDMO事業の拡大、HSでは手術関連サービスの強化等を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人を想い、人が高める」をキーワードに、多様かつ健康で活性化された組織風土づくりに取り組んでいます。変革のドライバーとなる「人(従業員)」の意識と行動を変革し、新たな価値を創造する人財を育成することを重要課題としています。「人権方針」「ダイバーシティ方針」「労働安全衛生方針」「人財育成方針」を定め、組織的・体系的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.3歳 | 12.1年 | 8,170,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金および賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.8% |
| 男性育児休業取得率 | 70.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 71.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 50.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報の取扱および情報システムに関するリスク
大量の患者個人情報や検査データを保有しているため、セキュリティ確保と個人情報保護法の遵守が重要課題です。システム障害やサイバー攻撃等により、情報の流出やサービス停止、検査報告の遅延等が発生した場合、社会的信用の失墜や業績への悪影響が生じる可能性があります。また、システム開発における遅延やコスト増のリスクもあります。
■(2) 精度管理および品質保証に関するリスク
検査・関連サービスにおける精度管理は最も重要な事項であり、外部精度管理への参加や各種認定取得を行っています。しかし、人為的ミスや不測の事態により製品・サービスの品質が担保できない場合、信頼性の低下により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。臨床検査薬や滅菌サービスにおいても同様に品質保証体制を整備しています。
■(3) 研究開発および技術革新に関するリスク
H.U.グループ中央研究所を中心に研究開発投資を行っていますが、想定した成果が得られない、競合他社に先行される、開発途中で断念する等の可能性があります。また、急速な技術革新への対応が遅れた場合、製品・サービスの競争力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人的資本に関するリスク
「会社の力とは、個人の力の総和である」という人事理念のもと、人財確保や育成に取り組んでいます。しかし、これらの施策が機能しない場合や労働市場の変化により優秀な人財の確保が困難になったり、流出が生じたりした場合、事業活動に支障をきたし、業績に悪影響を与える可能性があります。



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