※本記事は、株式会社カイノス の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カイノスってどんな会社?
臨床検査薬や医療機器の開発・製造・販売を一貫して手掛ける企業で、感染症検査や予防医学領域に強みを持ちます。
■(1) 会社概要
1975年にドムスヤトロンとして設立され、同年カイノスへ商号変更しました。1993年に茨城県笠間市に工場を移転し、生化学および免疫検査試薬の生産を開始しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。
同社(単体)の従業員数は157名です。筆頭株主は旭化成ファーマで、第2位は個人株主、第3位は投資事業組合を運用する法人となっています。なお、筆頭株主の旭化成ファーマは同社と製品売買等の取引がある関連当事者です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 旭化成ファーマ | 21.13% |
| 杉山 晶子 | 10.00% |
| UH Partners 2 | 7.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は長津 行宏氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長津 行宏 | 代表取締役社長 | 1982年入社。学術部長、品質保証センター長、営業本部長、事業本部長等を歴任し、2022年より現職。 |
| 林 司 | 常務取締役 | 1993年入社。開発部長、開発本部長を経て、2016年より管理本部本部長。2021年より現職。 |
| 中野 伸朗 | 取締役 | 旭化成工業入社。旭化成ファーマ診断薬事業部長等を経て、2024年より同社取締役事業本部管掌。 |
社外取締役は、菊地 謙治(税理士)、岡島 大介(旭化成ファーマ執行役員)、工藤 恵子(日本化薬診断薬部長)、飯塚 健介(シスメックス上席執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「臨床検査薬の製造及び販売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 生化学検査試薬事業
血液や尿などの検体を用いて、身体の状態を化学的に分析するための生化学検査試薬を提供しています。主な顧客は医療機関や検査センターです。
収益は、医療機関や代理店からの製品販売代金として得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 免疫血清検査試薬事業
抗原抗体反応を利用して感染症や腫瘍マーカーなどを測定する免疫血清検査試薬や、輸血検査関連製品を提供しています。感染症対策や早期診断に貢献する製品群です。
収益は、製品の販売代金として得ています。運営は主に同社が行っています。
■(3) その他事業(医療機器等)
臨床検査に使用する分析機器の販売や、それに伴う保守サービスなどを提供しています。試薬と機器をセットで提案することもあります。
収益は、機器の販売代金や保守サービス料などから得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は40億円台前半から50億円台へと堅調に推移しています。利益面では、経常利益率が15%〜18%程度の高い水準を維持しており、安定した収益基盤を確立しています。直近では売上高が増加傾向にある一方、利益率はやや低下しましたが、依然として高収益体質を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 43億円 | 46億円 | 49億円 | 51億円 | 53億円 |
| 経常利益 | 6.5億円 | 7.8億円 | 8.5億円 | 9.3億円 | 8.3億円 |
| 利益率(%) | 15.4% | 16.9% | 17.3% | 18.4% | 15.6% |
| 当期純利益(親会社所有者帰属) | 4.2億円 | 5.1億円 | 5.7億円 | 6.4億円 | 6.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、営業利益は減少しました。これは研究開発費や販売促進費などの販管費が増加したことによるものです。売上総利益率は約50%と高い水準を維持しており、製品競争力の高さがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 51億円 | 53億円 |
| 売上総利益 | 26億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.5% | 50.4% |
| 営業利益 | 8.7億円 | 8.2億円 |
| 営業利益率(%) | 17.1% | 15.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が4.6億円(構成比25%)、研究開発費が2.1億円(同11%)を占めています。売上原価は売上高の49.6%を占めています。
■(3) セグメント収益
生化学検査分野は前期と同水準で推移しました。一方、免疫検査分野は輸血検査試薬や腫瘍マーカー試薬が好調で、売上が大きく伸長しました。その他分野(機器等)は微減となりましたが、全体としては免疫検査分野の成長が増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 生化学検査分野 | 23.1億円 | 22.7億円 |
| 免疫検査分野 | 24.6億円 | 27.5億円 |
| その他 | 2.8億円 | 2.8億円 |
| 連結(合計) | 51億円 | 53億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得たキャッシュを元手に、借入金の返済や配当支払いを行い、必要な投資も自己資金の範囲内で実施しています。財務体質は極めて健全な状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4.3億円 | 7.0億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | -2.0億円 | -4.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社員全員が喜びと誇りを持ち、能力を発揮できる環境下で、独創的な臨床検査試薬を提供し続け、医療と予防医学の発展に貢献することを経営理念としています。会社の発展を通じて、取引先や株主の繁栄、社員とその家族への還元につなげることを目指しています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりの人格と人権を尊重し、性別や年齢、国籍に関わらず能力や成果に応じた公平な評価を行うことを基本方針としています。多様性や個性を尊重し、安全で働きやすい環境を確保することで、ゆとりと豊かさのある職場づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
収益面での経営指標を重視しており、売上高の成長と原価低減による高収益企業としての成長を目指しています。また、資本コストや株価を意識した経営を実現するため、安定した資本収益性の指標として以下の目標を掲げています。
* 自己資本利益率(ROE):8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
国内市場の成熟に対応するため、既存の試薬・機器事業の拡充に加え、提携企業との協業強化や独創的な製品開発を推進しています。特に、生活習慣病の予防医学領域や早期診断に役立つ製品の拡充、敗血症診断薬等のシェア拡大に注力し、事業拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業活動推進のため、多様な人材が能力を最大限発揮することを重要視しています。積極的な採用と賃上げによる人材確保、教育訓練による育成強化に取り組み、活力ある企業としての成長を目指しています。また、育児介護休業や在宅勤務制度など、仕事と育児の両立に向けた環境整備も推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.8歳 | 14.7年 | 7,221,919円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、平均勤続年数の男女比(75.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業に係る法的規制リスク
体外診断用医薬品や医療用分析機器は、開発から販売に至るまで薬機法等の規制を受けます。同社は厳格な品質管理体制を構築していますが、法規制の改訂や承認・許可等の状況によっては、事業活動や業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 研究開発及び市場変化リスク
新製品の研究開発が計画通り進まない場合や、治験で期待した結果が得られない場合に、開発の中止や延期が発生する可能性があります。また、競合他社による画期的な製品の発売や診療報酬改定の内容によっても、業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 為替変動及び原材料調達リスク
免疫や遺伝子関連の主要原料、特に輸血検査関連製品などは海外からの調達が含まれるため、為替相場の変動により原価が上昇するリスクがあります。為替予約等のヘッジ策を講じていますが、完全にリスクを回避できる保証はありません。



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