※本記事は、株式会社免疫生物研究所の有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 免疫生物研究所ってどんな会社?
抗体技術を基盤とした診断試薬や検査サービス、化粧品原料の開発・販売を主な事業として展開するバイオ企業です。
■(1) 会社概要
1982年9月に医薬品などの免疫学的研究や開発、製造を目的として設立されました。1999年には初の受託製造品となる抗体の大量生産に成功し、2007年3月に大阪証券取引所ヘラクレス(現東京証券取引所グロース市場)へ株式を上場しました。その後も子会社の設立や吸収合併などを経て、診断薬や遺伝子組換え技術の分野へ事業領域を拡大しています。
従業員数は連結54名、単体54名です。筆頭株主は創業者で代表取締役社長を務める清藤勉氏であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行の共有口、第3位は資本業務提携を行う事業会社のトランスジェニックグループとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 清藤 勉 | 12.07% |
| 楽天証券共有口 | 2.72% |
| トランスジェニックグループ | 1.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は清藤勉氏が務めています。社外取締役の比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清藤 勉 | 代表取締役社長 | 1978年9月日本抗体研究所入社。1982年9月同社設立とともに代表取締役社長就任。2009年4月営業本部長就任、2021年2月AI Bio代表取締役社長就任などを経て現職。 |
| 中川 正人 | 常務取締役業務執行責任者兼事業グループ管理本部長 | 1983年4月ウェッズ入社。2007年10月同社入社。2008年6月取締役財務経理部長兼社長室長就任、2018年4月取締役事業グループ管理本部長などを経て現職。 |
| 小野寺 昭子 | 取締役人事総務部長兼内部監査室長 | 1985年4月同社入社。2001年6月取締役総務・経理部長就任、2011年6月取締役人事総務部長兼内部監査室長就任、2013年11月ネオシルク化粧品設立代表取締役社長就任などを経て現職。 |
社外取締役は、福永健司氏(トランスジェニック代表取締役会長)、岡住貞宏氏(井上・岡住司法書士行政書士事務所共同代表)、小嶋一慶氏(弁護士法人ゆうあい綜合法律事務所代表)、兒島宏和氏(兒島公認会計士事務所設立)です。
2. 事業内容
同社グループは、「抗体関連事業」および「化粧品関連事業」を展開しています。
■抗体関連事業
同事業では、主に抗体を基盤とした研究用試薬、体外診断用医薬品の製造・販売や受託サービス、遺伝子組換えカイコ技術を用いたタンパク質生産、および血中リポタンパク質の解析などの検査サービスを提供しています。製薬企業や大学などの研究機関、動物病院が主な顧客です。
収益は、製品の販売代金や受託・検査サービスの提供に対する手数料、および医薬シーズのライセンス導出に伴うロイヤリティなどから得ています。運営は主に免疫生物研究所が行い、一部の事業領域において子会社のAI Bioが参画しています。
■化粧品関連事業
同事業では、遺伝子組換えカイコの技術を用いて開発した全く新しい化粧品原料であるヒト型コラーゲンや、それを配合した化粧品の製品開発、および販売を主に行っています。化粧品業界や美容業界、一般消費者が主な顧客です。
収益は、自社ブランドのスキンケア製品などの通信販売を中心とした製品販売代金や、OEM提供による販売代金から得ています。事業の運営は、同社の完全子会社であるネオシルク化粧品が展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において売上高は増加傾向にあり、事業規模が着実に拡大しています。利益面についても、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益ともに過去の赤字から黒字転換を果たしたのち増益を続けており、利益率も大きく改善して安定的な成長を実現しています。
| 項目 | 第40期 | 第41期 | 第42期 | 第43期 | 第44期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6億円 | 8億円 | 8億円 | 10億円 | 10億円 |
| 経常利益 | -2億円 | -1億円 | 1億円 | 2億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | -37.6% | -18.8% | 15.4% | 21.6% | 29.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1億円 | -6億円 | 2億円 | 2億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は着実に増加しており、原価低減に向けた取り組みや利益率の高い製品の売上増加などによって売上総利益および営業利益も拡大しています。利益率も堅調に推移しており、事業の効率化が進み収益性が高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 第43期 | 第44期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10億円 | 10億円 |
| 売上総利益 | 6億円 | 7億円 |
| 売上総利益率(%) | 65.4% | 70.4% |
| 営業利益 | 2億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 21.6% | 28.0% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1億円(構成比28%)、給料及び手当が1億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
抗体関連事業は、海外における主力製品の継続的な採用や国内での体外診断用医薬品原料の販売増などにより増収となり、全体の業績を牽引しています。一方、化粧品関連事業は充分な販促活動が行えなかった影響で減収となっています。
| 区分 | 売上(第43期) | 売上(第44期) |
|---|---|---|
| 抗体関連事業 | 10億円 | 10億円 |
| 化粧品関連事業 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 10億円 | 10億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 第43期 | 第44期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2億円 | 3億円 |
| 投資CF | -1億円 | -1億円 |
| 財務CF | - | - |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.5%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「抗体」を通じて世界で難病に苦しむ人々が一日も早く病気を克服し、明るく豊かな暮らしを営めるよう社会に貢献することを経営理念に掲げています。生物の生命維持に不可欠な免疫機構である抗体について研鑽し、治療用・診断用医薬品の開発や検査サービスを提供することで社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
研究開発型企業として、自由な発想が生み出される柔軟な組織を理想としています。組織が硬直化して研究開発活動が滞ることのないように、常に問題意識を持って物事に対処する集団としての組織維持・運営を重視しています。また、従業員一人ひとりがやりがいを持って安心して働ける環境の構築にも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、収益の拡大と財務の安定化を図り、株主への還元を早期に実現することを目指しています。市場規模の大きい診断用医薬品市場への本格参入や、海外における研究用試薬市場の拡大、医薬シーズ関連の開発コストの選択と集中、そして不採算事業の黒字化に向けた取り組みを推進し、持続的な成長を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は資源投入の集中と研究開発の効率化を図り、治療用・診断用医薬品のパイプライン充実を進める戦略です。大学などの共同研究先に加え、優秀な人材の確保を通じて研究開発を加速し、国内外の診断薬メーカーとの提携による独創的な製品開発や、遺伝子組換えカイコ技術を活用した目的タンパク質の産業利用拡大に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
各事業に精通した研究員やプロジェクトを推進できる専門人材の確保を不可欠と考え、ハードとソフトの両面から能力を最大限発揮できる組織基盤の構築を行っています。従業員の健康や安全衛生を重視し、多様な働き方を支える人事制度の整備や次世代リーダーの育成などを通じて、一人ひとりが安心して働ける環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第44期 | 46.3歳 | 17.7年 | 4,948,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 25.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | - |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 67.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 70.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 58.9% |
※当事業年度における男性労働者の育児休業取得率については、該当者がおりません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 知的財産権に関連するリスク
他者の知的財産権を使用する際にはライセンス契約を締結していますが、認識外で他者の権利を侵害してしまう可能性があります。当該侵害に対して訴訟が提起された場合は、同社の事業戦略や業績に重大な影響を与える恐れがあり、知的財産権に関する管理体制のさらなる強化に努めています。
■(2) 個人情報の漏洩リスク
事業遂行上、顧客の個人情報や機密情報をシステム上で管理しています。社内規程の整備やセキュリティ対策を講じていますが、サイバー攻撃や不測の事態により情報が流出した場合、企業の信用失墜や社会的制裁を受けることになり、同社グループの業績悪化と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外展開による影響
同社グループの事業活動は海外にも及んでおり、各地域の政治経済状況、公的規制、為替の変動、地政学リスクや自然災害などの社会的混乱による影響を受ける可能性があります。グループ内での情報収集等で予防に努めていますが、事象発生時には業績や財務状況に影響が及ぶリスクがあります。



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