※本記事は、株式会社免疫生物研究所 の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 免疫生物研究所ってどんな会社?
抗体作製技術を基盤とし、研究用試薬や診断薬、遺伝子組換えカイコを用いたタンパク質製造などを手掛けるバイオ企業です。
■(1) 会社概要
1982年に設立され、群馬県高崎市に研究所を設置しました。2007年には大阪証券取引所ヘラクレス(現東証グロース市場)へ株式を上場を果たしています。2013年にはネオシルク化粧品を設立し、化粧品事業へ展開しました。2023年には持分法適用会社であったAI Bioを子会社化し、グループの研究開発体制を強化しています。
連結および単体の従業員数は58名です。筆頭株主は創業者の清藤勉氏で、第2位は証券業務を行うSBI証券、第3位は個人株主の林ラヒム氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 清藤 勉 | 12.07% |
| SBI証券 | 2.43% |
| 林 ラヒム | 2.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は清藤 勉氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 清藤 勉 | 代表取締役社長 | 1982年同社設立とともに代表取締役社長に就任。トランスジェニック(現トランスジェニックグループ)取締役などを歴任し、2021年よりAI Bio代表取締役社長を兼務。 |
| 中川 正人 | 常務取締役業務執行責任者兼事業グループ管理本部長 | 1983年ウェッズ入社。2007年同社入社後、財務経理部長、事業統括推進本部長などを経て、2021年より現職。AI Bio監査役を兼務。 |
| 小野寺 昭子 | 取締役人事総務部長兼内部監査室長 | 1985年同社入社。総務・経理部長、管理部長などを経て、2011年より現職。2013年よりネオシルク化粧品代表取締役社長を兼務。 |
社外取締役は、福永健司(トランスジェニック代表取締役会長)、小嶋一慶(弁護士法人ゆうあい綜合法律事務所東京事務所)です。
2. 事業内容
同社グループは、「抗体関連事業」および「化粧品関連事業」を展開しています。
■(1) 抗体関連事業
抗体を基盤とした研究用試薬や体外診断用医薬品の製造・販売、受託サービスを行う「診断試薬サービス」、リポタンパク質解析などを行う「検査サービス」、遺伝子組換えカイコによるタンパク質生産を行う「TGカイコサービス」を展開しています。製薬企業や大学等の研究機関が主な顧客です。
収益源は、製品の販売代金、受託サービスや検査サービスの利用料、および医薬シーズのライセンス導出による対価などです。運営は主に免疫生物研究所が行い、一部事業を連結子会社のAI Bioが担当しています。
■(2) 化粧品関連事業
同社グループの遺伝子組換えカイコ技術により開発された化粧品原料「ネオシルク®-ヒト型コラーゲンI」を配合した化粧品「フレヴァン」シリーズ等の製品開発および販売を行っています。
収益源は、化粧品業界や美容業界、一般消費者への製品販売による代金です。運営は、連結完全子会社のネオシルク化粧品が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に直近2期で大きく伸長しています。利益面では、かつては損失を計上していましたが、直近2期は黒字化し、経常利益率も向上しています。当期は売上高が約10億円に達し、利益率も20%を超えるなど、業績は回復・拡大基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6.0億円 | 6.5億円 | 7.9億円 | 8.2億円 | 9.7億円 |
| 経常利益 | -3.1億円 | -2.4億円 | -1.5億円 | 1.3億円 | 2.1億円 |
| 利益率(%) | -51.5% | -37.6% | -18.8% | 15.4% | 21.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.2億円 | -1.2億円 | -6.3億円 | 1.9億円 | 2.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は60%台半ばの高い水準で推移しています。営業利益率は前期の12.8%から当期は21.6%へと大きく改善しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8.2億円 | 9.7億円 |
| 売上総利益 | 5.2億円 | 6.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 63.3% | 65.4% |
| 営業利益 | 1.0億円 | 2.1億円 |
| 営業利益率(%) | 12.8% | 21.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が1.2億円(構成比28%)、給料及び手当が0.7億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である抗体関連事業は、海外販売における主力製品の伸長や受託サービスの好調により、売上高が増加しました。化粧品関連事業は規模は小さいものの、前年比で増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 抗体関連事業 | 8.1億円 | 9.6億円 |
| 化粧品関連事業 | 0.0億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 8.2億円 | 9.7億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金で借入金の返済や投資を行っており、**健全型**のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.3億円 | 1.8億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | 0.0億円 | -0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「抗体」を通じて、世界で難病に苦しむ人々が、一日も早く、病気を克服し、明るく豊かな暮らしを営めるよう社会に貢献することを経営理念としています。生物の生命維持に不可欠な免疫機構である「抗体」について研鑽し、独自の研究開発や共同研究の成果を製品の品質向上に結びつけ、治療用医薬品や診断用医薬品の開発、検査サービスを提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは研究開発型企業として、自由な発想が生み出される柔軟な組織がふさわしいと考えています。組織が硬直化し研究開発活動が滞ることのないよう、常に問題意識を持って物事に対処する集団として組織を維持運営することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、収益の拡大と財務の安定化を図り、株主への還元を早期に実現することを目指しています。そのために、市場規模が大きい診断用医薬品市場への本格参入、海外における研究用試薬市場の拡大、医薬品シーズ関連の開発コストの選択と集中、不採算事業の黒字化に取り組む方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
抗体関連事業では、Digital Marketingの強化により世界への販売拡大を目指すと同時に、協業先との連携により体外診断用医薬品領域の製品化に注力します。具体的には、外リンパ瘻や膵グルカゴン、神経筋疾患、赤痢アメーバなどの診断薬開発を進めています。また、シスメックスとの業務提携を通じて、同社の抗体ライブラリを診断薬原材料として供給する事業を拡大します。化粧品関連事業では、中国市場への再展開や高級化粧品の開発を模索しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、各事業に精通した研究員およびプロジェクトを推進できる人材の確保が必要不可欠と考えています。研究開発の効率を上げるため、ハード面とソフト面の両面から研究開発に適した環境作りを行い、企業価値の最大化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.1歳 | 16.1年 | 4,776,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 72.4% |
※男性労働者の育児休業取得率については、該当者がいないため「-」となっています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 他社との業務提携・合弁会社設立等
戦略実行のために他社との提携や合弁会社設立を行う可能性がありますが、提携先の方針変更や経営悪化により、期待通りの成果が得られない場合や事業継続が困難になる可能性があります。また、特定の提携により他社との連携が制約される可能性もあります。
■(2) 知的財産権に関連するリスク
他者の知的財産権を使用する場合はライセンス契約等を締結していますが、認識外での侵害により訴訟が提起された場合、事業戦略や業績に重大な影響を与える可能性があります。事業拡大に伴いリスクは増大するため、管理体制を強化する方針です。
■(3) 特定人物への依存
代表取締役社長である清藤勉氏は創業以来の最高経営責任者であり、事業運営等でリーダーシップを発揮しています。小規模組織であるため個々の役職員への依存度が高く、これら主要な人物が業務に関与できなくなった場合、事業展開や業績に影響を与える可能性があります。



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