高砂香料工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高砂香料工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、フレーバーやフレグランス等を扱う日本最大手の香料メーカーです。海外売上高比率が高く、グローバルに事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、海外市場での伸長や為替の円安効果もあり、売上高は前期比17.0%増、経常利益は同225.3%増の増収増益となりました。


※本記事は、高砂香料工業株式会社 の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高砂香料工業ってどんな会社?


香料の製造・販売を行う日本におけるリーディングカンパニーであり、アジア地域でも有数のグローバル企業です。

(1) 会社概要


同社は1920年に高砂香料株式会社として設立され、香料の製造販売を開始しました。1951年に高砂化学工業と合併し、現在の商号となりました。1969年には東京証券取引所市場第一部に指定され、その後も海外現地法人の設立や工場の竣工を進めてグローバル展開を加速させています。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は4,154名、単体では1,068名が在籍しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業上の関係を有する生命保険会社、第3位も信託銀行となっています。上位株主には金融機関や事業会社が名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.70%
日本生命保険相互会社 7.50%
日本カストディ銀行(信託口) 5.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員は桝村聡氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
桝村 聡 代表取締役社長執行役員安全統括本部長、人事・総務本部、管理本部担当 1983年入社。研究開発本部長、安全統括本部長などを歴任し、2014年に代表取締役社長執行役員に就任。現在は安全統括本部長などを担当。
山形 達哉 取締役常務執行役員コーポレート本部長 1986年入社。欧州現地法人社長や企画開発本部長などを経て、2018年より現職。現在は安全統括副本部長やグローバルSAPマネジメント部長などを兼務。
染川 健一 取締役常務執行役員フレーバー事業本部長 1987年入社。欧州現地法人社長や高砂フードプロダクツ社長などを歴任。現在はフレーバー事業本部長として支店を担当。
谷中 史弘 取締役常務執行役員研究開発本部長兼ファインケミカル事業本部長 1984年入社。フレーバー研究所長を経て、2016年に取締役常務執行役員に就任。現在は研究開発本部長とファインケミカル事業本部長を兼務。
水野 直樹 取締役常務執行役員サプライチェーンマネジメント本部長 1985年入社。フレグランス・アロマイングリディエンツ事業本部長や調達本部長を歴任。現在はサプライチェーンマネジメント本部長を務める。
川端 茂樹 取締役常務執行役員経営戦略本部長兼経営企画部長兼法務部長 1985年三菱銀行入行。同行監査部与信監査室長などを経て、2014年に同社常勤監査役に就任。現在は経営戦略本部長などを担当。


社外取締役は、野依良治(名古屋大学特別教授・ノーベル化学賞受賞者)、松田浩明(虎ノ門第一法律事務所パートナー弁護士)、塚本恵(元キャタピラージャパン合同会社代表執行役員)、辻篤子(元名古屋大学国際機構特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア」の4つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本


国内において、飲料や菓子、調理加工食品等に使用されるフレーバー、洗剤や香粧品等に使用されるフレグランス、香料素材であるアロマイングリディエンツ、医薬品中間体等のファインケミカルの製造・販売を行っています。また、各事業に関連する研究活動も展開しています。
収益は、主に顧客である食品メーカーや日用品メーカー等への製品販売から得ています。運営は、主に高砂香料工業が担っているほか、高砂ケミカル、高砂スパイス、高砂珈琲などの国内連結子会社も製造や販売を行っています。

米州


米国、メキシコ、ブラジル等の米州地域において、フレーバー、フレグランス、アロマイングリディエンツ、ファインケミカルの製造・販売を行っています。現地市場のニーズに合わせた製品開発や販売活動を展開しています。
収益は、現地の顧客企業への製品販売によって得ています。運営は、米国子会社であるTakasago International Corporation (U.S.A.)を中心に、メキシコやブラジルの現地法人が行っています。

欧州


ドイツ、フランス、スペイン等の欧州地域において、フレーバー、フレグランス、アロマイングリディエンツの製造・販売を行っています。香水の本場であるフランスに拠点を構えるなど、地域の特性を活かした事業展開を行っています。
収益は、欧州地域の顧客企業への製品販売から得ています。運営は、Takasago Europe Perfumery Laboratory S.A.R.L.(フランス)、Takasago Europe G.m.b.H.(ドイツ)、Takasago International Chemicals (Europe), S.A.(スペイン)などの現地法人が行っています。

アジア


シンガポール、中国、インド、インドネシア等のアジア地域において、フレーバー、フレグランス、アロマイングリディエンツの製造・販売を行っています。成長著しいアジア市場において、現地の嗜好に合わせた製品を提供しています。
収益は、アジア地域の顧客企業への製品販売から得ています。運営は、Takasago International (Singapore) Pte. Ltd.をはじめ、中国、インド、インドネシア等にある多数の現地法人が行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸やその他のサービス業を行っています。
収益は、保有する不動産の賃貸料収入等から得ています。運営は、高砂香料工業および一部の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。特に当期は売上高が2,000億円を超え、利益面でも経常利益が前期比で大幅に増加し、利益率も改善しています。当期純利益も高い水準を記録しており、成長性がうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,504億円 1,624億円 1,868億円 1,959億円 2,292億円
経常利益 73億円 102億円 80億円 47億円 153億円
利益率(%) 4.8% 6.3% 4.3% 2.4% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 72億円 89億円 74億円 27億円 133億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は改善傾向にあり、収益性が向上しています。営業利益も前期と比較して大幅に増加しており、本業の収益力が強化されていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,959億円 2,292億円
売上総利益 565億円 774億円
売上総利益率(%) 28.8% 33.8%
営業利益 23億円 153億円
営業利益率(%) 1.2% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が177億円(構成比28%)、給料及び手当が174億円(同28%)を占めています。売上原価では、原材料費等の製造費用が計上されています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに前期比で増収となっており、全地域で事業が拡大しています。特に米州とアジアの増収率が高くなっています。利益面でも、前期は欧州が損失を計上していましたが、当期は全ての地域セグメントで黒字化し、全体として利益率が向上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 723億円 736億円 14億円 45億円 6.1%
米州 503億円 665億円 2億円 26億円 3.9%
欧州 333億円 393億円 -12億円 25億円 6.2%
アジア 400億円 498億円 22億円 49億円 9.9%
その他 14億円 14億円 - - -%
調整額 - - -2億円 9億円 -%
連結(合計) 1,959億円 2,292億円 23億円 153億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

高砂香料工業のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の増加により、前期から大きく増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出が増加したため、前期よりも流出額が大きくなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金や短期借入金の増加、および長期借入金の返済や配当金の支払いがあったものの、全体として増加に転じました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 100億円 189億円
投資CF -68億円 -91億円
財務CF -5億円 69億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「香りを原点とする革新的な技術を通して、新しい価値を創造し続ける」を企業理念として掲げています。この理念に基づき、香りを起点とした技術革新により社会に新たな価値を提供し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


2040年の「ありたい姿」として「Vision 2040」を定めており、「人にやさしく、環境にやさしく」をスローガンとしています。具体的には、「多様な価値観を尊重する」「自然と共生し、人々の生活に彩りを与える」「夢と誇りを持って未知の世界へ挑戦する」「常に高い技術を追求する、かけがえのない会社」という4つの理想像を掲げ、企業および社員としての姿勢を示しています。

(3) 経営計画・目標


2024年度より中期経営計画「New Global Plan-2(NGP-2)」を推進しています。本計画では、2026年度までの3年間で達成すべき目標や施策を定めており、社会価値と経済価値を創出し続ける企業グループを目指しています。具体的な数値目標として、売上高や営業利益などの指標を設定し、進捗管理を行っています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「NGP-2」において、「海外の成長」「国内の収益性改善」「サステナブルな経営」の3つを基本方針としています。海外では、事業軸による成長戦略や新規顧客開拓、サプライチェーンの最適化を通じて成長を目指します。国内では、製品ポートフォリオの適正化や新領域の開拓、費用構造改革等により収益性改善を図ります。また、サステナビリティ推進のため、人的資本の価値最大化や業務遂行力の向上により経営基盤を強化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、グループ共通のダイバーシティ・インクルージョンポリシーに基づき、多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。ジェンダー、国籍、職歴、年齢等を問わず中核人材を登用し、女性管理職比率の向上や外国籍人材の採用を推進しています。また、階層別研修や自己啓発支援などの教育制度を充実させ、従業員の成長を支援するとともに、育児・介護支援など働きやすい環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 17.8年 8,628,296円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.0%
男性育児休業取得率 85.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.8%
男女賃金差異(正規雇用) 84.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 69.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がいのある方の雇用率(1.8%)、中途採用者に占める管理職比率(25%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動に係るリスク


気候変動に起因する環境規制の強化や新たな環境税の導入、顧客からの環境対応要求への対応が遅れた場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。また、地球温暖化による気候変動や天候不順が天然原料の供給に影響を及ぼし、原料価格が高騰するリスクがあります。これに対し、TCFDへの賛同や温室効果ガス削減目標の設定、再生可能原料の活用などに取り組んでいます。

(2) 原料調達に係るリスク


世界的な景気変動、需給バランス、異常気象等により、天然原料をはじめとする原料価格が高騰した場合、利益を圧迫する可能性があります。また、地政学的リスクやサプライヤーの事故等による供給途絶、コンプライアンス違反等のリスクもあります。同社は、原料の互換性を高めることや複社購買の推進、サプライヤーとの協働、責任ある調達ポリシーに基づく活動等を通じてリスク低減に努めています。

(3) グローバル事業展開に係るリスク


同社グループは世界各国で事業を展開しており、各国の法律・規制・税制の変更、テロ・戦争等の政治的・経済的混乱、感染症の蔓延などの社会的混乱が、現地の生産・販売活動に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、各国の政治・経済情勢や法規制の動向に関する情報を継続的に収集し、リスク管理を行っています。

(4) 経済情勢・為替レートの変動に係るリスク


日本や海外主要市場の景気後退により製品需要が悪化するリスクや、消費者の買い控えが発生する可能性があります。また、海外事業の比重が高いため、為替レートの変動が円換算後の連結業績に影響を与えるほか、急激な変動が経済の不確実性を高める恐れがあります。事業ポートフォリオの拡充や主要ビジネスの基盤強化、為替変動を織り込んだ計画策定等により対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。