ダイニック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイニック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイニックは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、各種クロスなどの印刷情報関連事業、カーペット等の住生活環境関連事業、食品容器用蓋材等の包材関連事業を展開する企業です。直近の業績は、販売価格の転嫁や採算性の改善が寄与し、売上高442億円、経常利益25億円と前年度比で増収増益を達成しました。


※本記事は、ダイニック株式会社の有価証券報告書(第163期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイニックってどんな会社?


ダイニックは、印刷情報関連、住生活環境関連、包材関連などの製品を製造・販売する総合素材メーカーです。

(1) 会社概要


1919年に日本クロス工業として設立され、1961年に東京証券取引所へ上場しました。1974年に現在のダイニックへ商号変更し、1979年の香港での子会社設立を皮切りに海外展開を本格化させています。直近では2024年に中国に持分法適用関連会社を設立するなど、事業基盤の拡大を続けています。

同社グループの従業員数は連結で1,077名、単体で611名です。筆頭株主はニックグループ持株会で、第2位は同社従業員持株会、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
ニックグループ持株会 6.53%
ダイニック従業員持株会 3.19%
ヨシダトモヒロ 3.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は山田英伸氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
山田英伸 代表取締役社長 1988年同社入社。Dynic (H.K) Ltd.社長、埼玉工場長等を経て2021年代表取締役社長に就任。2023年より現職。
佐々木範明 常務取締役企画部門統括兼コンプライアンス担当 1982年安田信託銀行入行。2012年同社入社。財務部門本社経理部部長等を経て2021年より現職。
髙木哲雄 取締役事業部門統括兼貿易部門担当 1993年同社入社。貿易部門統括等を経て2023年取締役。2026年より現職。
中里岳雄 取締役情報関連事業統括兼市場開拓担当 1988年同社入社。第二事業部長等を経て2021年取締役。2025年より現職。
新家隆 取締役財務部門統括 1990年同社入社。財務部門統括資金グループ長兼経理グループ等を経て2020年取締役。2024年より現職。
坂本啓 取締役住宅工業用途関連事業統括兼第四事業部長 1989年同社入社。第四事業部長を経て2021年より現職。
塚田一範 取締役王子・真岡工場生産部門統括兼食品包材事業統括 1989年同社入社。真岡工場長等を経て2022年取締役。2024年より現職。
福田明治 取締役滋賀・埼玉・富士工場生産部門統括 1989年同社入社。滋賀工場長を経て2024年より現職。
竹下昌弘 取締役総務・人事部門統括兼営業所統括・東京本社所長 1990年同社入社。人事部門人事グループ長、富士工場長を経て2024年より現職。
尾作亘 取締役開発部門統括 1990年同社入社。埼玉工場長、開発技術センター長を経て2025年より現職。


社外取締役は、伊藤祐子(弁護士)、下中美都(平凡社代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷情報関連事業」「住生活環境関連事業」「包材関連事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 印刷情報関連事業


書籍装幀用クロス、各種クロス、フィルムコーティング製品、表示ラベル用素材などの印刷被写体や、プリンターリボン、有機EL用水分除去シートなどの印字媒体・電子特材を製造・販売しています。

製品の販売を通じて顧客から代金を受領するビジネスモデルです。事業運営は同社のほか、ダイニック・ジュノやオフィス・メディアなどの国内子会社、および複数の海外子会社が行っています。

(2) 住生活環境関連事業


カーペット、壁装材、ブラインド、自動車内装用不織布、産業用フィルター、テント地などの住空間や産業用環境資材の製造・販売を行っています。

製品の販売による収益を柱としています。運営は同社および国内子会社のダイニック・ジュノに加え、インドネシアの海外子会社であるPT. DYNIC TEXTILE PRESTIGEが行っています。

(3) 包材関連事業


容器密封用アルミ箔・蓋材、各種紙管紙器、パップ剤用エンボス加工製品、食品鮮度保持剤などの包装資材や部材を製造・販売しています。

製品の販売を通じて収益を得るモデルです。事業運営は同社と、国内子会社の大和紙工が共同で行っています。

(4) その他


ファンシー商品の製造・販売のほか、商品等の運送や庫内整理などの物流・サービス関連事業を展開しています。

商品の販売代金や物流サービス等の手数料から収益を得ています。運営は同社、ダイニックファクトリーサービス、大平産業、ニックフレートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は堅調な拡大傾向にあります。経常利益は原材料価格高騰の影響を受けた時期もありましたが、販売価格への転嫁や採算性の改善が進み、直近では利益率5.6%まで向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 389億円 416億円 421億円 441億円 442億円
経常利益 16億円 10億円 15億円 22億円 25億円
利益率(%) 4.1% 2.5% 3.5% 5.1% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 5億円 10億円 10億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいで推移していますが、売上総利益率が19.7%から20.3%に改善しています。原材料価格の高騰に対し、販売価格への転嫁が浸透したことで営業利益も増加し、収益性が向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 441億円 442億円
売上総利益 87億円 90億円
売上総利益率(%) 19.7% 20.3%
営業利益 21億円 23億円
営業利益率(%) 4.8% 5.2%


販売費及び一般管理費(67億円)のうち、給料・手当が22億円(構成比33%)、発送配達費が14億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


印刷情報関連事業は食品包材向けの熱転写リボンが堅調に推移し増収となりました。一方、住生活環境関連事業は壁装材の受注が低調で減収となっています。包材関連事業は乳製品向けの蓋材や医療用途が好調で増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
印刷情報関連事業 222億円 224億円
住生活環境関連事業 122億円 119億円
包材関連事業 77億円 80億円
その他 19億円 19億円
連結(合計) 441億円 442億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.3%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 13億円 25億円
投資CF -11億円 -4億円
財務CF -5億円 -24億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「技術の優位性」「人の和」を経営理念に掲げ、「For The Customer」を経営・営業姿勢の基盤としています。経営環境の変化にスピーディーに反応して進化し、株主や顧客、取引先、社員にとって価値ある企業グループであり続け、社会の発展に貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化


多様な人材が仕事と家庭を両立できる企業風土の構築に取り組んでおり、「より働きやすい会社」「より働きがいのある会社」を目指しています。コンプライアンスの徹底や「CSR調達基準書」の展開など、誠実かつ公正で透明性の高い企業活動を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年4月から始まる新中期経営計画「SOLID FOUNDATION 2029」において、収益性とROEの向上を重要なKPIとして掲げています。安定配当が可能な収益の確保と企業価値の向上を目指しています。

* 売上高経常利益率:7.2%
* 自己資本利益率(ROE):7.5%

(4) 成長戦略と重点施策


各事業分野で「選択と集中」を進めつつ、積極的な成長投資と開発による収益基盤の強化を図ります。主力事業では伸びしろの大きい食品包材分野や環境対応製品の開拓を狙うほか、非財務分野でも気候変動への対応や人的資本投資などのサステナビリティに関する施策を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「風通しの良い職場」づくりと採用の多様化を推進し、女性活躍や中途採用に広く門戸を開いています。ジョブチャレンジ制度やグローバルキャリアエントリー制度を活用して人材の育成を図るほか、健康経営優良法人の認定要件を満たす取り組みを継続し、ゼロ災害へのアプローチなど心身の健康増進施策も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.2歳 17.4年 6,149,442円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 82.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 71.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の高騰や競合による市場リスク


同社グループは石油関連製品の原材料を多く使用しており、原油価格や為替の変動が調達コストに影響を及ぼす可能性があります。また、多岐にわたる取扱製品において競合他社との価格競争が激化した場合、収益性が低下するリスクがあります。

(2) 金利変動に伴う借入金への依存リスク


事業活動や設備投資に必要な資金の一部を銀行等からの借入金で調達しているため、有利子負債の残高が一定の規模に達しています。将来的に市場金利が上昇した場合、支払利息の増加を通じて同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 保有有価証券等の資産価値変動リスク


同社グループは取引先等の有価証券を保有していますが、投資先の業績不振や株式市場における市況の悪化によって評価損が発生するリスクがあります。市場価値が著しく下落した場合には、同社グループの財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。