※本記事は、株式会社ダイニック の有価証券報告書(第162期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイニックってどんな会社?
印刷情報関連や住生活環境関連などの製品を製造・販売し、多彩なニッチ市場で展開する化学素材メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1919年に日本クロス工業として設立され、1961年に東京証券取引所に上場しました。1974年に現在の社名へ商号変更し、染色加工技術を基盤に多角化を進めてきました。2022年の市場区分見直しにより、現在はスタンダード市場に上場しています。
同社グループの従業員数は連結で1,089名、単体で606名です。筆頭株主はグループ従業員等で構成されるニックグループ持株会、第2位はダイニック従業員持株会であり、社内関係者による保有比率が高いのが特徴です。第3位のヤクルト本社は、同社の包材関連事業における主要な取引先です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニックグループ持株会 | 6.02% |
| ダイニック従業員持株会 | 3.20% |
| ヤクルト本社 | 2.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は山田英伸氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田英伸 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。香港法人社長、第二事業部長、埼玉工場長、生産部門統括などを経て、2023年6月より現職。 |
| 佐々木範明 | 常務取締役企画部門統括兼コンプライアンス担当 | 1982年安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。同行京都支店長などを経て、2012年同社入社。財務部門本社経理部部長などを歴任し、2021年6月より現職。 |
| 髙木哲雄 | 取締役事業部門統括兼食品包材事業統括/第七事業部長 | 1993年同社入社。貿易部門統括、英国およびチェコ法人社長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 中里岳雄 | 取締役情報関連事業統括兼第二事業部長 | 1988年同社入社。第二事業部情報関連販売グループ2グループ長などを経て、2021年6月より現職。 |
| 新家隆 | 取締役財務部門統括 | 1990年同社入社。財務部門統括資金グループ長兼経理グループ、本社資金部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 坂本啓 | 取締役住宅工業用途関連事業統括兼第四事業部長 | 1989年同社入社。第四事業部住宅関連販売グループ長などを経て、2021年6月より現職。 |
| 塚田一範 | 取締役王子・真岡工場生産部門統括兼食品包材事業統括 | 1989年同社入社。第二事業部布クロス製造グループ長、真岡工場長、王子工場長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 福田明治 | 取締役滋賀・埼玉・富士工場生産部門統括 | 1989年同社入社。第一事業部滋賀第一製造グループ長、滋賀工場長を経て、2024年6月より現職。 |
| 竹下昌弘 | 取締役総務・人事部門統括兼営業所統括兼東京本社所長 | 1990年同社入社。人事部門人事グループ長、富士工場長を経て、2024年6月より現職。 |
| 尾作亘 | 取締役開発部門統括 | 1990年同社入社。第二事業部メディア技術グループ長、埼玉工場長、開発技術センター長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、伊藤祐子(弁護士)、下中美都(平凡社代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「印刷情報関連事業」、「住生活環境関連事業」、「包材関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■印刷情報関連事業
書籍装幀用クロス、通帳用クロス、表示ラベル用素材などの印刷被写体や、プリンターリボン等の印字媒体、文具紙工品、電子デバイス用部材などを取り扱っています。出版、金融、物流、電子部品業界など幅広い顧客に向けて製品を提供しています。
製品の販売による代金が主な収益源です。運営は主にダイニックが行っていますが、海外ではDynic USA Corp.やDynic (H.K) Ltd.などの現地法人が製造・販売を担っています。国内ではダイニック・ジュノやオフィス・メディアなどが販売に関わっています。
■住生活環境関連事業
カーペット、壁装材、ブラインド等のインテリア製品や、自動車内装材、フィルター、産業用不織布、衣料用芯地などを取り扱っています。住宅メーカー、自動車部品メーカー、アパレル業界などが主な顧客です。
製品の販売による代金が主な収益源です。運営は主にダイニックが行っていますが、中国の昆山司達福紡織有限公司やインドネシアのPT. DYNIC TEXTILE PRESTIGEなどの海外子会社も製造・販売を行っています。
■包材関連事業
食品や医薬品向けの容器密封用アルミ箔・蓋材、紙管紙器、鮮度保持剤などを製造・販売しています。食品メーカーや医薬品メーカーが主な顧客であり、内容物の保護や機能性維持に貢献しています。
製品の販売による代金が主な収益源です。運営は主にダイニックが行っており、連結子会社の大和紙工が断裁加工品や打抜き加工品の製造・販売を担っています。
■その他
ファンシー商品の販売や、グループ内の製品輸送・倉庫保管業務などを行っています。
商品販売代金や運送・作業料が収益源です。運営はダイニックのほか、ダイニックファクトリーサービス、大平産業、ニックフレートなどがそれぞれの事業を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。経常利益も変動はあるものの、直近では大きく伸長し、利益率も改善しています。当期純利益についても、直近では10億円を超える水準まで回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 359億円 | 389億円 | 416億円 | 421億円 | 441億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 16億円 | 10億円 | 15億円 | 22億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 4.1% | 2.5% | 3.5% | 5.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 13億円 | 5億円 | 10億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、利益率が改善しています。営業利益率も上昇しており、収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 421億円 | 441億円 |
| 売上総利益 | 75億円 | 87億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.9% | 19.7% |
| 営業利益 | 12億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・手当が21億円(構成比32%)、発送配達費が14億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
印刷情報関連事業と包材関連事業が増収となる一方、住生活環境関連事業とその他事業は減収となりました。特に印刷情報関連事業の伸びが全体の増収を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 印刷情報関連事業 | 197億円 | 222億円 |
| 住生活環境関連事業 | 130億円 | 122億円 |
| 包材関連事業 | 72億円 | 77億円 |
| その他 | 22億円 | 19億円 |
| 連結(合計) | 421億円 | 441億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ダイニックのキャッシュ・フローは、営業活動で収入を得つつも、設備投資や借入金の返済等で支出が発生しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益は計上したものの、仕入債務の減少等により前年度より収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得等で支出となりましたが、前年度よりは支出が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加があったものの、長期借入金の返済等により支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 30億円 | 13億円 |
| 投資CF | -14億円 | -11億円 |
| 財務CF | -11億円 | -5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「技術の優位性」「人の和」を経営理念として掲げています。ステークホルダーにとって価値ある企業グループであり続けるため、積極的に社業の拡大と成長に努め、社会の発展に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
「For The Customer」を経営姿勢および営業姿勢の基盤に置いています。経営環境の変化にスピーディーに反応し、進化することを心がける姿勢を重視しています。また、サステナブルな社会構築への貢献や、コンプライアンスの遵守も重要な価値観としています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは「中期経営計画SOLID FOUNDATION2026」を推進しています。最終年度である2026年3月期の数値目標として、連結ベースで以下の指標を掲げています。
* 売上高経常利益率:5.2%
* 自己資本利益率(ROE):5.9%
■(4) 成長戦略と重点施策
事業部門では、印刷情報関連で熱転写リボンや有機EL用乾燥剤の拡大、包材関連で新機能・新市場への展開を図ります。住生活環境関連では採算改善を進めます。技術開発部門では環境対応やニッチ市場向け製品、抗ウイルス関連の開発を継続し、炭素・シリコン素材の加工技術開発にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材投資として、「健康経営優良法人」認定を満たす取り組みや、女性従業員比率の向上、管理職への登用推進を行います。また、海外拠点の人材育成など、戦略的な人材育成のための制度導入を進め、サステナブルな社会構築に貢献できる人材基盤の強化を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 17.6年 | 5,887,531円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 75.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の割合(14.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場競合と原材料価格の変動
印刷情報、住生活、包材の各事業において競合が多く、販売価格の低下圧力が業績に影響する可能性があります。また、石油関連原材料を多く使用しているため、市況高騰や円安により原材料費が上昇した場合、業績が悪化するリスクがあります。
■(2) 海外事業展開のリスク
中国をはじめ海外に10社の関係会社を有し、海外市場拡大を推進していますが、各国の法的規制や政治的・経済的リスクの影響を受ける可能性があります。また、外貨建取引の規模拡大に伴い、為替相場の変動が売上高や利益に影響を与える可能性があります。
■(3) 市場金利変動の影響
総資産に占める借入金の比率が31.9%あり、市場金利が上昇した場合には支払利息が増加し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 固定資産の減損リスク
生産能力や品質向上のために継続的な設備投資を行っており、多額の固定資産を保有しています。事業の収益性が低下し投資回収が見込めなくなった場合、減損損失を計上する必要が生じ、業績に影響を与える可能性があります。



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