※本記事は、ニチバン株式会社の有価証券報告書(第122期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニチバンってどんな会社?
絆創膏やセロテープなど、粘着技術を基盤とした医療用・産業用テープを展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1918年に歌橋製薬所として創業し、絆創膏類の製造を開始しました。1947年にはセロハン粘着テープの製造を始め、1961年に現在のニチバンへ商号を変更しています。その後も国内外で事業を拡大し、2017年にはタイに、2020年にはドイツに販売子会社を設立するなど、グローバルな事業展開を推進しています。
現在の従業員数は連結で1,271名、単体で778名です。筆頭株主は事業展開でも関係のある大鵬薬品工業で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はニチバン取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大鵬薬品工業 | 33.49% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.81% |
| ニチバン取引先持株会 | 5.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は高津敏明氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高津敏明 | 代表取締役社長 | 1990年同社入社。事業統括本部購買部長や上席執行役員社長付などを経て、2019年より現職。 |
| 酒井寛規 | 専務取締役 | 1985年同社入社。執行役員管理部長や広報宣伝室長などを経て、2020年より現職。 |
| 原秀昭 | 取締役常務執行役員社長付 事業戦略本部 | 1984年同社入社。テープ事業本部長などを経て、2026年より現職。 |
| 髙橋泰彦 | 取締役常務執行役員経営企画室長 | 1986年同社入社。安城工場長や広報宣伝部長などを経て、2021年より現職。 |
社外取締役は、石原達夫(スプリング法律事務所代表)、佐藤彰紘(真和総合法律事務所パートナー)、真田弘美(石川県立看護大学学長)、菅原順子(元カルピス社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、メディカル事業およびテープ事業を展開しています。
■メディカル事業
ドラッグストアなどの大衆薬市場向けや医療機関向けに、高機能救急絆創膏ケアリーヴシリーズや鎮痛消炎剤ロイヒシリーズ、止血製品、手術後の傷あとケアテープなどの医薬品や医療機器、医療補助テープなどを提供しています。
主に製品の販売を通じて卸売業者や販売代理店から収益を得ています。運営は同社が行うほか、ニチバンメディカルやニチバンテクノに製造を委託し、海外ではタイやドイツの販売子会社を通じてグローバルな体制を構築しています。
■テープ事業
文具事務用品市場や産業用テープ市場向けに、セロテープや両面テープであるナイスタック、農産物向けのたばねらテープ、和紙マスキングテープなどの各種粘着テープおよび関連機器等を提供しています。
主に製品の販売を通じて卸売業者や販売代理店から収益を得ています。運営は同社が行うほか、ニチバンプリントやニチバンテクノに製造を委託し、関連会社からも商品を仕入れ、海外子会社を通じた販売網を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して成長を続けており、500億円台に到達しました。一方、経常利益は原材料価格の高騰や外部環境の変化等の影響を受け増減を繰り返しており、直近は減益となっています。利益率は概ね4〜5%台で推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 431億円 | 456億円 | 469億円 | 495億円 | 505億円 |
| 経常利益 | 26億円 | 17億円 | 22億円 | 27億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 3.8% | 4.7% | 5.4% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 20億円 | 17億円 | 16億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、営業利益は減少しています。これは主にヘルスケア分野における利益率の高い製品の売上減少や、原材料価格の高騰等に伴う売上原価の増加が影響したことによります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 495億円 | 505億円 |
| 売上総利益 | 149億円 | 150億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.1% | 29.8% |
| 営業利益 | 26億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が30億円(構成比24%)、物流費が18億円(同14%)、広告宣伝費が12億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上高を見ると、メディカル事業は国内の救急絆創膏や海外での販売が牽引し微増となりました。テープ事業は製品の価格改定や環境配慮型製品の訴求効果により売上が伸長し、両事業ともに増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| メディカル事業 | 246億円 | 249億円 |
| テープ事業 | 249億円 | 255億円 |
| 連結(合計) | 495億円 | 505億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 25億円 |
| 投資CF | -17億円 | -22億円 |
| 財務CF | -8億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
粘着の分野を原点として新たな価値を創造する技術で快適な生活に貢献し続けることで、同社グループにかかわるすべての人々の幸せを実現することを基本理念としています。事業活動を通じて社会や自然との共生を目指し、ステークホルダーとともに持続可能な社会の実現に貢献する方針を掲げています。
■(2) 企業文化
国籍や性別などの違いを受け入れ、多種多様なライフスタイルや価値観を尊重するダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進しています。一人ひとりが個性を発揮し、協力し高め合う組織づくりを重視し、安心して挑戦し真のチームワークを発揮できる心理的安全性の高い職場環境の構築を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画を推進し、収益性重視の観点から営業利益、資本の将来における成果の観点からROEを客観的な指標に設定しています。2026年度の目標値として以下の数値を掲げています。
* 営業利益:36億円
* ROE(自己資本当期純利益率):5.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期ビジョンの実現に向けて、事業ポートフォリオの再構築、グローバル企業化、人的資本経営を重点テーマとしています。不採算製品の黒字化等によるテープ事業の収益改善を図るとともに、成長領域のヘルスケアやグローバル市場へ経営資源を集中させます。海外は販売3拠点を中心に展開し、グローバル比率30%の達成を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人こそが企業活動の最大の原動力であると位置づけ、次なる時代を牽引するリーダーと多彩な能力を発揮する自律的人財の育成に注力しています。従業員の健康とエンゲージメントの向上を重要な基盤とし、多様な働き方を実現できる環境整備や、若手の抜擢・登用を可能とする新人事制度の導入等を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.6歳 | 19.5年 | 7,159,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.3% |
| 男性育児休業取得率 | 94.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 56.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の変動と供給依存
同社の製品はプラスチックフィルムや紙、天然ゴムなど市況の影響を受ける原材料が多く、自然災害や地政学的リスクによる価格高騰の影響を受けます。また一部の原材料は特定の購入先に依存しているため、供給先でのトラブル等により原材料が確保できなくなった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場動向と需要変化
主要市場におけるサステナビリティへの取り組みや消費者の需要変化は、小売店等の販売政策を通じて同社の販売高に影響を与えます。また、季節商品の入れ替え時に返品を受け入れる商習慣や、販売後の売上値引の発生により、これらが多額に発生した場合には財務状況や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 激化する価格競争
同社が属する市場において、市場縮小や新規企業の参入などにより競争が激化し、製品の販売価格が下落するリスクがあります。また、原材料価格の高騰や物価上昇に対する製品価格への転嫁が遅れた場合、収益性が低下し、同社グループの財政状態やキャッシュ・フローに重要な影響を及ぼす可能性があります。



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