※本記事は、ニチバン株式会社 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニチバンってどんな会社?
1918年の創業以来、粘着技術を基盤に「セロテープ」や「ケアリーヴ」など、生活や産業を支える製品を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1918年に歌橋製薬所として創業し、絆創膏類の製造を開始しました。1947年にはセロハン粘着テープの製造を開始し、1961年に現在のニチバンへ商号を変更しています。1962年に大阪証券取引所市場第二部へ上場後、1968年には東京・大阪両証券取引所の市場第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は1,271名、単体では776名です。筆頭株主は「チオビタドリンク」などで知られる製薬会社の大鵬薬品工業であり、同社とは製品の販売や半製品の仕入を行っています。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大鵬薬品工業 | 33.20% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.40% |
| ニチバン取引先持株会 | 5.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は高津 敏明氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高津 敏明 | 代表取締役社長 経営全般 | 1990年同社入社。事業統括本部購買部長、工業品営業統括部中部営業部長、上席執行役員社長付などを経て2019年6月より現職。 |
| 酒井 寛規 | 専務取締役 管理担当CSR担当 | 1985年同社入社。執行役員管理部長、常務取締役CSR・経営統括担当などを経て2020年4月より現職。 |
| 原 秀昭 | 取締役常務執行役員 営業・開発担当事業戦略本部長 | 1984年同社入社。執行役員テープ事業本部長、取締役常務執行役員営業・開発担当国内事業本部長などを経て2024年4月より現職。 |
| 髙橋 泰彦 | 取締役常務執行役員 経営企画室長 | 1986年同社入社。執行役員安城工場長、ニチバンテクノ社長、常務執行役員経営企画室長などを経て2021年6月より現職。 |
社外取締役は、清水 與二(元アサツー ディ・ケイ代表取締役社長)、石原 達夫(スプリング法律事務所代表弁護士)、佐藤 彰紘(真和総合法律事務所パートナー)、真田 弘美(東京大学名誉教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メディカル事業」および「テープ事業」を展開しています。
■(1) メディカル事業
医薬品、医療機器、化粧品、医療補助テープなどを提供しており、主な製品には高機能救急絆創膏「ケアリーヴTM」シリーズや鎮痛消炎剤「ロイヒ」シリーズ、医療機関向けのサージカルテープなどがあります。一般消費者や医療機関を対象に製品を展開しています。
製品の販売に係る収益は、主に販売代理店への卸売を通じて得ています。運営は主にニチバンが行うほか、製造に関しては子会社であるニチバンメディカルなどが受託し、海外販売はNICHIBAN (THAILAND) CO.,LTD.やNICHIBAN EUROPE GmbHが行っています。
■(2) テープ事業
家庭用・事務用の粘着テープ「セロテープ®」や両面テープ「ナイスタックTM」、産業用の粘着テープやそれらに関連する機械器具などを提供しています。文具・事務用品市場や産業用テープ市場に向けた製品を展開しています。
収益源は、販売代理店への製品販売による対価です。運営は主にニチバンが行っていますが、製造は子会社であるニチバンプリントやニチバンテクノなどが受託しています。海外においては、タイやドイツの子会社を通じて販売活動を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間において増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は過去最高の495億円を記録しました。利益面では、原材料価格高騰の影響等により変動が見られるものの、2025年3月期は増益となり、経常利益率は5.4%まで回復しています。親会社株主に帰属する当期純利益も安定して確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 415億円 | 431億円 | 456億円 | 469億円 | 495億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 26億円 | 17億円 | 22億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 5.9% | 3.8% | 4.7% | 5.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 15億円 | 20億円 | 17億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は30%前後で推移しています。販売費及び一般管理費は増加傾向にありますが、売上高の伸長により営業利益は増加しました。営業利益率は5.2%と前期より改善しており、収益性は向上傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 469億円 | 495億円 |
| 売上総利益 | 139億円 | 149億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.6% | 30.1% |
| 営業利益 | 21億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が29億円(構成比24%)、物流費が19億円(同15%)、広告宣伝費が11億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
メディカル事業は、「ケアリーヴTM」シリーズの好調やインバウンド需要等により増収増益となりました。テープ事業は、「セロテープ®」の価格改定効果などにより増収となり、利益面でも大幅な増益を達成しました。両事業ともに売上・利益を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| メディカル事業 | 227億円 | 246億円 | 61億円 | 66億円 | 26.9% |
| テープ事業 | 241億円 | 249億円 | 3億円 | 7億円 | 2.8% |
| 調整額 | - | - | -43億円 | -47億円 | - |
| 連結(合計) | 469億円 | 495億円 | 21億円 | 26億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得たキャッシュを元に、借入金の返済や設備投資を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 37億円 |
| 投資CF | -37億円 | -17億円 |
| 財務CF | -12億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「粘着の分野を原点として新たな価値を創造する技術で快適な生活に貢献し続ける」ことで、「同社グループにかかわるすべての人々の幸せを実現する」ことを経営理念としています。この理念のもと、社会や自然との共生を目指し、ステークホルダーとともに持続可能な社会の実現に貢献する取り組みを進めています。
■(2) 企業文化
同社グループは、理念に掲げる5つの「行動指針(社会・お客様・チャレンジ・スピード・チームワーク)」の体現を重視しています。また、従業員の健康とエンゲージメントの向上、多様な人財の活躍促進、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を重視した取り組みを実施しており、従業員が安心して挑戦し、真のチームワークを発揮できる組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、中期経営計画「CREATION 2026」の最終年度である2026年度に向けた目標を設定しています。
* 営業利益:45億円
* ROE(自己資本当期純利益率):8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は中期経営計画「CREATION 2026」において、「事業ポートフォリオの再構築」「グローバル企業化」「人的資本経営」を重点テーマとしています。テープ事業の収益改善を図りつつ、成長領域であるヘルスケアとグローバル市場へ経営資源を重点配分します。また、海外拠点を中心とした成長追求や、人的資本経営の実践により、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人的資本経営」を実践し、多様な人財が個の力を高め合う「DE&I」、次世代リーダーと自律的人財の育成、従業員の「健康とエンゲージメント」を軸としています。従業員が安心して挑戦し、真のチームワークを発揮できる組織づくりを進め、多様な新しい取組を通じて「人づくり」と「組織づくり」を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 19.0年 | 7,017,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.2% |
| 男性育児休業取得率 | 92.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の変動リスク及び特定の購入先からの供給リスク
同社製品は石油由来のプラスチックフィルムや、紙、セロハン、天然ゴムなど市況の影響を受ける原材料を多く使用しています。そのため、自然災害や地政学的リスク等による価格高騰の影響を受けやすく、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、一部の原材料を特定の購入先に依存しているため、供給先のトラブルにより調達が困難になるリスクがあります。
■(2) 市場動向、需要変化に関するリスク
同社製品は販売代理店を通じて小売店等へ販売されるため、消費者の需要変化が業績に影響します。また、季節商品の入れ替え時などに返品を受け入れる商習慣や、販売後に販売代理店に対して売上値引を行う商習慣があります。そのため、多額の返品や値引が発生した場合、同社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 価格競争のリスク
同社が属する市場において、市場の縮小や新規参入による競争激化で販売価格が下落するリスクがあります。また、原材料価格の高騰や物価上昇に対して、製品価格への転嫁が遅れた場合、同社グループの財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。同社は、独自の技術力と品質を軸に、高付加価値製品の提供により差別化を図っています。



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