フマキラー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フマキラー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、殺虫剤、家庭用品、園芸用品、防疫用剤の製造販売を主要事業としています。直近の業績は、海外事業の成長や円安効果により売上高が739億円と伸長し増収となりましたが、経常利益は25億円と減益になりました。


※本記事は、フマキラー株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フマキラーってどんな会社?


殺虫剤や家庭用品等の製造販売を行う企業です。世界初の電気蚊取りを発明するなど技術力に定評があります。

(1) 会社概要


同社は1874年に創業し、1924年に殺虫剤「強力フマキラー」の製造販売を開始しました。1962年に現在の社名へ変更し、1964年には東京証券取引所市場第二部に株式を上場しています。2010年にはエステーと資本業務提携契約を締結しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は2,498名、単体では242名です。筆頭株主は資本業務提携先であるエステーで、第2位は創業家に関連する公益財団法人、第3位は銀行です。

氏名 持株比率
エステー 10.48%
公益財団法人 大下財団 8.05%
株式会社みずほ銀行 3.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性20名、女性1名、計21名で構成され、女性役員比率は4.8%です。代表取締役社長は大下一明氏が務めています。社外取締役比率は約38.1%です。

氏名 役職 主な経歴
大下 一明 取締役社長(代表取締役) 営業本部長などを経て2005年より現職。
加藤 孝彦 専務取締役(代表取締役)国内営業本部長 エステー常務執行役などを経て2020年入社、2022年より現職。
Dato’Brian Tan Guan Hooi 常務取締役 Texchem Resources Bhd.社長などを経て2022年より現職。
力石 敬三 常務取締役 エステーなどを経て2013年入社、PT. FUMAKILLA NOMOS社長等を兼務し現職。
村元 俊亮 常務取締役国際本部長 国際本部長として海外事業を統括し現職。
井上 裕章 取締役広島工場長生産本部長 広島工場長兼生産本部長として現職。
郷原 和哉 取締役管理本部長 エステー経営管理部門などを経て2020年入社、管理本部長として現職。
土井 将和 取締役国内営業本部副本部長首都圏支店長 国内営業本部副本部長兼首都圏支店長として現職。
杉山 隆史 取締役 開発本部長などを経て現職。


社外取締役は、中野佳信(元稲畑産業代表取締役専務)、國富純(元ジェイ・エム・エス取締役)、古屋雅弘(元日本土地建物代表取締役社長)、安倍寛信(元三菱商事執行役員)、的場稔(シンジェンタジャパン取締役会長)、武井康年(弁護士)、三宅稔子(弁護士)、吉島亨(大下産業非常勤顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「東南アジア」「欧州」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


殺虫剤、家庭用品(除菌剤、花粉対策商品等)、園芸用品(肥料、除草剤等)、防疫用剤等の製造販売を行っています。国内市場向けに加え、海外への輸出拠点としての機能も有しています。

主に卸売業者や小売店を通じた製品販売により収益を得ています。運営は同社、日広産業、FSブルームなどが担当しています。

(2) 東南アジア


インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、ミャンマーなどにおいて、殺虫剤を中心とした製品の製造販売を行っています。蚊が媒介する感染症リスクが高い地域であり、殺虫剤は生活必需品となっています。

現地での製品販売により収益を得ています。運営はPT. FUMAKILLA INDONESIA、Fumakilla Malaysia Berhad、Fumakilla Vietnam Pte.,Ltd.等の現地子会社が担当しています。

(3) 欧州


イタリアを拠点に、殺虫剤等の製造販売を行っています。家庭用殺虫剤に加え、農業用殺虫剤などの展開も進めています。

欧州市場における製品販売により収益を得ています。運営はZAPI INDUSTRIE CHIMICHE S.P.A.、FUMAKILLA EUROPE S.R.L.等の現地子会社が担当しています。

(4) その他


報告セグメントに含まれないインド、メキシコ等における事業です。殺虫剤等の販売を行っています。

製品販売により収益を得ています。運営はFUMAKILLA INDIA PRIVATE LIMITED、FUMAKILLA AMERICA, S.A. DE C.V.等の現地法人が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5期間で約1.5倍に拡大しています。一方、経常利益は第73期に減少した後、25億円前後で推移しており、利益率は低下傾向が見られます。積極的な事業拡大に伴い売上規模は成長していますが、利益面では原材料高騰等の影響を受けている様子がうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 485億円 527億円 617億円 677億円 739億円
経常利益 39億円 25億円 23億円 28億円 25億円
利益率(%) 7.9% 4.8% 3.8% 4.1% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 14億円 7億円 14億円 15億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は9.1%増加し739億円となりました。売上総利益率は29.6%から30.5%へ改善しています。営業利益は24億円から26億円へ増加しましたが、営業利益率は3.6%で横ばいとなっています。販管費の増加を売上総利益の増加で吸収し、増益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 677億円 739億円
売上総利益 200億円 226億円
売上総利益率(%) 29.6% 30.5%
営業利益 24億円 26億円
営業利益率(%) 3.6% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が39億円(構成比19%)、運送費が37億円(同18%)を占めています。売上原価は513億円で、売上高に対する構成比は69.5%です。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上高が増加しました。特に東南アジアと欧州は2桁増収と好調です。利益面では、日本は赤字幅が拡大しましたが、東南アジアと欧州の増益により全体では増益となりました。海外事業が収益を牽引する構造となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 292億円 282億円 -6億円 -7億円 -2.5%
東南アジア 269億円 318億円 23億円 24億円 7.5%
欧州 97億円 116億円 3億円 5億円 4.2%
その他 18億円 22億円 0.0億円 0.6億円 2.9%
調整額 -59億円 -76億円 4億円 4億円 -
連結(合計) 677億円 739億円 24億円 26億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.9%で市場平均(57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ひとの命を守る。ひとの暮らしを守る。ひとを育む環境を守る。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、殺虫剤、家庭用品、園芸用品をコア事業と位置づけ、世界中の人々がいつまでも安心して快適に暮らすことのできる社会づくりに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は社是として「誠魂長才」を掲げています。これは、何事に対しても誠心誠意、真心をもって事に当り、常に努力して才能を伸ばし、知識を広め、社会・国家に貢献するという価値観を表しています。この精神に基づき、中長期的な視点から企業価値の向上に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業の成長性と収益性を重視し、売上高、経常利益、新製品寄与率を経営目標の指標としています。具体的には以下の数値目標を掲げています。

* 2026年3月期 売上高:771億円
* 2026年3月期 経常利益:29億80百万円
* 初年度新製品売上寄与率:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、グループ全体の事業領域と地理的な拡大に伴う経営基盤強化と事業展開の加速を重点施策としています。国内では、研究開発拠点「ブレーンズ・パーク広島」を活用した高付加価値商品の開発や、外来生物対策などの課題解決型製品の提供を推進します。海外では、東南アジアや欧州などの拠点連携を強化し、各国のニーズに合った製品展開により収益拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「従業員を大切に」を掲げ、社員一人ひとりの能力向上と成長が企業の持続的発展につながると考えています。「従業員一人ひとりの個性を活かし、フマキラーグループの未来を自ら切り開く人材を育む」という人材育成ビジョンのもと、年齢・性別を問わない階層別研修などを通じ、将来にわたり活躍できる人材の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.4歳 14.0年 6,312,767円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.0%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 61.3%
男女賃金差異(正規雇用) 77.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(全社:66.1%)、年次有給休暇取得率(提出会社:63.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 商品の季節性


同社グループの業績は、殺虫剤や園芸用品など季節性商品の売上構成比が高く、天候や気温の影響を強く受けます。需要期である夏季に向けた出荷が集中する一方、シーズン後の返品リスクもあり、季節により売上や損益が偏る傾向があります。これに対し、年間を通じて販売が見込める家庭用品の開発や流通在庫の調整等に取り組んでいます。

(2) 原材料の高騰


主要原材料である溶剤、噴射剤、化学薬品、樹脂、鋼材等の価格は、為替変動や国際情勢の影響を受け変動します。原材料価格が高騰した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、複数サプライヤーからの調達による安定化や、VA/VE活動を通じたコストダウンにより、リスク軽減を図っています。

(3) 海外での事業活動リスク


アジアや欧州など世界約70ヶ国で事業を展開しており、海外売上比率は6割を超えています。各地域におけるテロ、内乱、政情不安等の予期せぬ事象が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。現地情報の収集に努めるなど対策を講じていますが、グローバル展開に伴うカントリーリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。