エステー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エステー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エステーは東証プライム市場に上場し、消臭芳香剤や防虫剤などの生活日用品事業を展開する企業です。直近の業績ではエアケア製品やペットケア製品の売上が伸長し、コスト抑制も進んだことで増収および営業増益を達成しました。今後もサステナブルな社会への貢献と事業成長を両立し、持続的な企業価値の向上を目指しています。


※本記事は、エステー株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エステーってどんな会社?

(1) 会社概要


1946年に創立し、防虫剤等の製造販売を開始しました。1986年に東京証券取引所市場第二部に上場し、のちに第一部へ指定されています。2007年には現在のエステーへ商号を変更しました。近年では、2024年に「ニャンとも清潔トイレ」事業を取得し、シャルダンを吸収合併するなど、事業領域の拡大を進めています。

同社グループは、連結従業員数739名、単体では460名の規模で事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は創業家出身とみられる個人の鈴木幹一氏、第3位は事業会社の日本生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.81%
鈴木 幹一 7.14%
日本生命保険相互会社 6.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表者は取締役会議長 兼代表執行役社長の上月洋氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
上月 洋 取締役会議長 兼代表執行役社長 1987年同社入社。マーケティング部門や営業部門の担当役員を歴任し、2023年より現職。
吉澤 浩一 取締役 兼専務執行役 1985年同社入社。経営企画や財務部門のマネージャーを経て、2026年より現職。
山本 一成 取締役 兼常務執行役 1992年カゴメ入社。大王製紙等を経て、2022年同社入社。2026年より現職。
橋本 成明 取締役 兼執行役 2001年同社入社。営業部門の支店長や経営企画室長を歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、前田新造(元資生堂社長)、岩田彰一郎(元アスクル社長)、野田弘子(公認会計士)、和智洋子(弁護士)、宮永雅好(大学教授等)です。

2. 事業内容


同社グループは、「生活日用品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

生活日用品事業


同社グループは生活日用品事業を展開しており、消臭芳香剤(エアケア)、防虫剤(衣類ケア)、除湿剤(湿気ケア)、手袋(ハンドケア)、猫用トイレ用品(ペットケア)などの幅広い製品を提供しています。一般消費者を主な顧客としており、日常生活の不便や不満を解消する日用品を中心に市場へ供給しています。

収益はこれら製品の製造・販売から得ており、主にエステーや子会社のエステーPROなどを通じて事業を運営しています。商品の流通においては、PALTACやあらたなどの大手卸売業者を通じて全国の小売店へ販売し、売上を計上するモデルとなっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は440億円から480億円台で安定して推移しており、当期は485億円を記録しました。経常利益は原材料価格の高騰等の影響で一時落ち込んだものの、直近ではコスト抑制や価格転嫁が進んだことで回復傾向にあり、利益率も5.0%まで改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 455億円 456億円 445億円 481億円 485億円
経常利益 35億円 27億円 19億円 21億円 24億円
利益率(%) 7.7% 6.0% 4.3% 4.3% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 15億円 8億円 34億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となりましたが、主力品の値上げや調達先の見直しによるコスト抑制が効果を発揮し、売上総利益率は37.6%に向上しました。それに伴い、営業利益も前期の17億円から20億円へと拡大し、増収増益を達成しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 481億円 485億円
売上総利益 179億円 182億円
売上総利益率(%) 37.3% 37.6%
営業利益 17億円 20億円
営業利益率(%) 3.4% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料が29億円(構成比18%)、広告宣伝費が22億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は「消臭力」等のエアケア製品や、「ニャンとも清潔トイレ」事業の取得によるペットケア製品が売上増に貢献し、全社売上高の伸長を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
生活日用品事業 481億円 485億円
連結(合計) 481億円 485億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を使って将来への投資と借入金の返済等をバランスよく行っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 33億円 21億円
投資CF -47.9億円 -6.4億円
財務CF -24.2億円 -12.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社会に対するSERVICE(奉仕)とTRUST(信頼)を信条とし、顧客に最も信頼される製品やサービスを提供することによって社会に貢献することを経営理念として掲げています。また、「こころに響くアイデアで、ふとした瞬間を、ふふっと笑顔に。」というパーパスを策定し、人々のこころ安らぐ健やかな生活の実現を目指しています。

(2) 企業文化


社是である「誠実」を実践し、常に顧客を第一に考える姿勢を重視しています。顧客の多様なニーズに迅速かつ丁寧に対応できる「スピード経営」を実現することで、環境との調和や社会に対する公正さに努めつつ、暮らしに快適さと豊かさを提供する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「SMILE 2027」において、持続的な成長を支える基盤の強化に取り組んでいます。2027年3月期に向けた最終年度の財務目標として、以下の数値を掲げています。

・売上高520億円
・営業利益25億円
・ROE5.3%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「くらしと社会を豊かにするウェルネス・カンパニーへ」という中長期の姿を掲げ、「かおり×ウェルネス×グローバル」を成長テーマに定めています。エアケアやペットケアを中心としたウェルネス領域での価値創出を推進するとともに、既存事業の収益構造を抜本的に見直し、新しい価値創造のスピードを上げる取り組みを進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


既存事業の深化と新規事業の創出を実現するため、人財戦略を経営戦略の最重要事項と位置づけています。キャリア採用による専門人財の確保や、次世代リーダーを育成する実践的なプログラムを推進し、多様な視点を経営に活かすDE&Iと柔軟な働き方の構築を通じて、従業員エンゲージメントの強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.0歳 15.4年 8,102,383円

※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.5%
男女賃金差異(正規雇用) 81.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(70.7%)、障害者雇用率(3.06%)、働くことにやりがいを感じる(86.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の激化のリスク


日用雑貨業界では競合他社や新規参入者との間で常に厳しい競争が行われています。市場や消費者のニーズの変化に的確に対応できず、高付加価値商品の提供や訴求方法の見直しが遅れた場合、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) サプライチェーンのリスク


同社の製品の多くはプラスチック樹脂や鉄鋼製品などの原材料を使用しています。原油価格の高騰や円安の進行等により素材価格の高止まりが長期化した場合や、社会情勢の変化によって物流の寸断や長期欠品が生じた場合、収益を圧迫するリスクがあります。

(3) 気候変動等(天候不順)による販売のリスク


防虫剤や除湿剤、カイロなど、売上高が天候に大きく左右される品目を取り扱っています。記録的な猛暑や暖冬等の天候不順によってこれらの商品の需要が予想を下回った場合、販売機会の喪失につながり、業績が悪化する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。