エステー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エステー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エステーは東証プライム上場の生活日用品メーカーで、消臭芳香剤「消臭力」や防虫剤「ムシューダ」などを主力事業としています。第78期は、花王から譲受したペットケア事業の貢献やエアケア製品の高付加価値化により、売上高が増加しました。利益面も価格改定等が奏功し、増収増益を達成しています。


※本記事は、エステー株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エステーってどんな会社?


消臭芳香剤「消臭力」や防虫剤「ムシューダ」など、ニッチな市場で高いシェアを持つ生活日用品メーカーです。

(1) 会社概要


1946年にエステー化学工業所として創業し、防虫剤の製造販売を開始しました。1948年に法人設立後、1986年に東証二部へ上場し、1991年に東証一部銘柄に指定されています。2007年には現在の「エステー」へ商号を変更しました。2024年には花王より「ニャンとも清潔トイレ」事業を取得し、ペットケア分野を強化しています。

連結従業員数は814名、単体では451名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は創業家出身の鈴木幹一氏、第3位は日本生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.98%
鈴木 幹一 7.14%
日本生命保険相互会社 6.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会議長兼代表執行役社長は上月洋氏です。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
上月 洋 取締役会議長 兼 代表執行役社長 経営全般担当 兼 戦略投資室担当 兼 お客様相談室担当 1987年入社。営業企画、経営企画、マーケティング部門担当、R&D部門担当などを歴任。2023年6月より現職。
吉澤 浩一 取締役 兼 常務執行役 経営統括本部管掌 兼 企業価値創造本部担当 兼 関係会社担当 1985年入社。財務・総務、経営企画部門などを経て、2014年に取締役兼執行役就任。2024年11月より現職。
山本 一成 取締役 兼 執行役 ウェルネス事業本部担当 兼 マーケティングコミュニケーション本部担当 兼 海外事業本部担当 カゴメ、大王製紙を経て2022年入社。マーケティング企画本部長、第2事業本部長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、前田新造(元資生堂社長)、岩田彰一郎(元アスクル社長・指名委員長)、野田弘子(公認会計士・監査委員長)、和智洋子(弁護士)、宮永雅好(元シュローダー・インベストメント・マネジメント取締役・報酬委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「生活日用品事業」の単一セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) エアケア(消臭芳香剤)


「消臭力」「SHALDAN」「脱臭炭」などのブランドで、家庭用および業務用の消臭芳香剤を提供しています。一般家庭やオフィス、車内などの空間におけるニオイの課題を解決し、快適な環境づくりを求める消費者を主な顧客としています。

収益は、主に卸売業者や小売店への製品販売によって得ています。運営は主にエステーが行っており、子会社のエステーPROやS.T.(タイランド)、エステーコリアコーポレーションなども製造・販売に関わっています。

(2) 衣類ケア(防虫剤)


「ムシューダ」「ネオパラ」などのブランドで、衣類用防虫剤を提供しています。大切な衣類を害虫から守り、長期間保管したいと考える一般家庭を主な顧客としています。

収益は、主に卸売業者や小売店への製品販売によって得ています。運営は主にエステーが行っており、子会社のエステーPROも関わっています。

(3) ペットケア(猫用トイレ用品)


「ニャンとも清潔トイレ」ブランドで、猫用システムトイレやチップ、シートなどのペットケア用品を提供しています。室内で猫を飼育するペットオーナーを主な顧客とし、快適なペットライフをサポートしています。

収益は、主に卸売業者や小売店への製品販売によって得ています。運営は主にエステーが行っており、子会社のエステーPROも関わっています。

(4) その他(ホームケア・サーモケア等)


米びつ用防虫剤「米唐番」、除湿剤「ドライペット」、使い捨てカイロ「オンパックス」、家庭用手袋「ファミリー」などを展開しています。家庭内の湿気対策や寒さ対策、手肌保護など、日常生活の様々なニーズを持つ消費者が顧客です。

収益は、主に卸売業者や小売店への製品販売によって得ています。運営はエステーのほか、カイロ製造のエステーマイコール、手袋製造のS.T.(タイランド)やファミリーグローブ(台湾)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね400億円台中盤で推移していましたが、直近の第78期では過去5期で最高の481億円を記録しました。利益面では第77期に原材料価格高騰などの影響で一時落ち込みましたが、第78期では回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 497億円 455億円 456億円 445億円 481億円
経常利益 37億円 35億円 27億円 19億円 21億円
利益率(%) 7.5% 7.7% 6.0% 4.3% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 11億円 18億円 13億円 28億円

(2) 損益計算書


売上高は約8%増加し、増収となりました。売上原価は増加したものの、価格改定や高付加価値品の伸長により売上総利益率は改善しています。販売費及び一般管理費も増加しましたが、営業利益率は上昇しました。特別利益として負ののれん発生益等が計上され、当期純利益は大幅に増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 445億円 481億円
売上総利益 164億円 179億円
売上総利益率(%) 36.9% 37.3%
営業利益 13億円 17億円
営業利益率(%) 3.0% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料が29億円(構成比18%)、広告宣伝費が19億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、カテゴリー別の売上状況を開示しています。エアケアは高付加価値品の好調により増収となり、ペットケアは事業譲受により売上が急拡大しました。一方、衣類ケアや湿気ケアは市場環境の変化や価格改定の影響等により減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
エアケア(消臭芳香剤) 203億円 211億円
ペットケア(猫用トイレ用品) 2億円 36億円
衣類ケア(防虫剤) 71億円 68億円
ホームケア(フードケア・クリーナー他) 42億円 43億円
湿気ケア(除湿剤) 29億円 28億円
サーモケア(カイロ) 42億円 41億円
ハンドケア(手袋) 57億円 54億円
連結(合計) 445億円 481億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、主に営業活動から得られる自己資金及び金融機関からの借入を資金の源泉としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加等により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、事業譲受等により支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16億円 33億円
投資CF -10億円 -48億円
財務CF -12億円 -24億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社会に対する「SERVICE(奉仕)」と「TRUST(信頼)」を信条とし、お客様に最も信頼される製品やサービスを提供することで社会に貢献することを経営理念としています。また、社是「誠実」の実践のため、パーパスとして「こころに響くアイデアで、ふとした瞬間を、ふふっと笑顔に。」を掲げています。

(2) 企業文化


パーパスに従い、常にお客様のことを第一に考え、ニーズに迅速かつ丁寧に対応する「スピード経営」を重視しています。また、予測困難な時代において持続的に成長するため、従前の事業モデルにとらわれず、変化に柔軟に対応し、成長戦略と経営体質強化を両輪として推進する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「SMILE 2027」において、2027年3月期に向けた以下の財務目標を掲げています。

* 売上高:565億円
* 営業利益:40億円
* 営業利益率:7.1%
* EBITDA:54億円
* ROE:8.3%

(4) 成長戦略と重点施策


中長期の成長テーマとして「かおり×ウェルネス×グローバル」を掲げ、「日用品メーカーからウェルネス・カンパニーへ」の進化を目指しています。中期経営計画「SMILE 2027」では、「既存ビジネスの拡充」「既存ビジネスの進化」「BtoB・海外チャネル強化」「新規ビジネスの創出」の4象限戦略を推進しています。特にペットケア事業や「かおり×ウェルネス」領域での価値創出に注力し、グローバル市場で戦える基盤の拡充を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「イノベーションを起こせる人財の確保・配置」や「DE&Iを推進する人財の育成」を目指しています。多様なイノベーション人財の育成として、若手育成プログラム「NEXT」の実施や、従業員の主体性を促進する研修へシフトしています。また、戦略遂行に必要な専門性の高いキャリア人財の採用も促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.1歳 15.2年 7,335,313円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 21.3%
男性労働者の育児休業取得率 33.3%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 64.8%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 76.8%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) 58.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、働くことにやりがいを感じる(79.8%)、ワークライフバランスの満足度(73.8%)、パフォーマンス発揮度(86.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の激化


日用雑貨業界は競合他社や新規参入者との競争が常に厳しく、的確に対応できない場合は業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は市場や消費者のニーズ分析を行い、高付加価値商品の提供や商品ラインナップの見直しなどの対策を講じています。

(2) サプライチェーンのリスク


製品にはプラスチックや鉄鋼製品が多く使用されており、原材料価格の高騰や円安が長期化した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。複数購買やグローバル購買による調達価格の安定化、代替品の検討、販売価格への転嫁などを進めています。

(3) 気候変動等による販売変動


防虫剤や除湿剤、カイロなどは天候により売上が大きく左右されるため、天候不順が業績低迷の要因となる可能性があります。過去の気候データなどの分析・予測を行うとともに、天候に左右されにくい通年商品の開発を通じてリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。