ムトー精工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ムトー精工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。プラスチック成形用金型や精密部品の製造・販売を主力とし、デジタル家電や自動車関連機器向けに展開しています。当連結会計年度は、デジタルカメラ部品やプリンター部品の受注が増加し、売上高は276億円(前期比4.8%増)、経常利益は26億円(同6.0%増)の増収増益となりました。


※本記事は、ムトー精工株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ムトー精工ってどんな会社?

同社は、プラスチック精密部品や金型の製造・販売を主力とするメーカーです。

(1) 会社概要

1956年に岐阜市で創業し、プラスチック部品の受託製造を開始しました。1993年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。ベトナム、シンガポール、中国、タイに現地法人を設立して海外生産体制を強化し、2025年には岐阜県各務原市にテックフォルテ工場を開設するなど、生産能力の拡大を図っています。

連結従業員数は3,102名、単体では197名です。筆頭株主は代表取締役社長の田中肇氏で、第2位は株式会社大垣共立銀行、第3位は株式会社十六銀行となっており、創業家と地元金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
田中 肇 7.10%
株式会社大垣共立銀行 4.67%
株式会社十六銀行 3.84%

(2) 経営陣

同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は田中肇氏です。社外取締役比率は9.1%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 肇 代表取締役社長 1986年同社入社。ムトーベトナムCO.,LTD.代表取締役社長などを経て、2001年5月より現職。
金 大洲 取締役中国事業担当 2003年同社入社。豊武光電(蘇州)有限公司総経理などを経て、2015年6月より現職。
金子 貞夫 取締役財務担当 1991年同社入社。管理部長、管理本部長などを経て、2022年10月より現職。
松原 文治 取締役製造担当 1988年同社入社。ムトーベトナムCO.,LTD.やムトー(タイランド)CO.,LTD.への出向、製造部長を経て、2021年6月より現職。
安江 利充 取締役品質保証担当 1994年同社入社。ムトーベトナムCO.,LTD.への出向、品質保証部長を経て、2021年6月より現職。
大竹 昭彦 取締役管理担当 2019年株式会社大垣共立銀行春日井支店長。2022年同社へ出向し管理部長を経て、2023年6月より現職。
山口 正宏 取締役技術担当 1997年同社入社。営業技術部第1技術課長、技術・開発部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、堤紀彦(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「プラスチック成形事業」、「精密プレス部品事業」、「プリント基板事業」を展開しています。

(1) プラスチック成形事業

デジタルカメラ・ビデオカメラ等のデジタル家電、カーナビゲーション等の自動車関連機器、プリンター部品、電子ペン等の製造・販売を行っています。また、これに伴う金型の製造・販売、各種設計業務や技術支援等のサービスも提供しており、同社グループの主力事業となっています。

収益は、製品や金型の販売対価として顧客から受領します。運営は、同社、ムトーベトナムCO.,LTD.、ムトーシンガポールPTE LTD、豊武光電(蘇州)有限公司、ムトーテクノロジーハノイCO.,LTD及びムトー(タイランド)CO.,LTD.が行っています。

(2) 精密プレス部品事業

音響機器、映像機器、光学機器、コンピュータ関連機器等に使用される精密プレス部品の製造・販売を行っていました。なお、同事業を運営していた連結子会社のタチバナ精機株式会社は、全株式の譲渡に伴い当連結会計年度の第3四半期より連結除外となり、同社グループは本事業から撤退しました。

収益は、精密プレス部品の販売対価として顧客から受領していました。運営は、主にタチバナ精機株式会社が行っていました。

(3) プリント基板事業

プリント配線基板の設計・検査・販売を行っています。具体的には、プリント配線基板の設計や、セラミック基板などの検査業務を手掛けています。

収益は、プリント配線基板の設計・検査・販売に係る対価として顧客から受領します。運営は、主に大英エレクトロニクス株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は増加傾向にあり、直近では276億円に達しています。利益面でも、経常利益率は9%台と比較的高い水準を維持しており、当期純利益も前期比で大幅に増加しました。全体として増収増益基調にあり、堅調な業績推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 192億円 202億円 262億円 263億円 276億円
経常利益 11億円 8億円 21億円 24億円 26億円
利益率(%) 5.5% 3.8% 8.2% 9.2% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 5億円 8億円 11億円 20億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。売上総利益率は20.1%と安定しています。営業利益も増加し、営業利益率は7.4%となりました。売上の増加に加え、利益率も改善傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 263億円 276億円
売上総利益 53億円 56億円
売上総利益率(%) 20.1% 20.1%
営業利益 18億円 20億円
営業利益率(%) 6.9% 7.4%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が13億円(構成比38%)、発送運賃が8億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力であるプラスチック成形事業は、デジタルカメラ部品やプリンター部品の受注増加により増収増益となりました。プリント基板事業も検査部門が好調で大幅な増収増益です。一方、精密プレス部品事業は撤退に伴い減収となりましたが、全体としては増収増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
プラスチック成形事業 250億円 266億円 18億円 18億円 6.8%
精密プレス部品事業 11億円 5億円 -0.0億円 -0.0億円 -0.9%
プリント基板事業 3億円 5億円 0.6億円 2億円 43.1%
調整額 -0.9億円 -0.6億円 - - -
連結(合計) 263億円 276億円 18億円 20億円 7.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ムトー精工は、事業活動を通じて安定的な収入を確保しつつ、将来への投資と財務基盤の強化を図っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費の計上や仕入債務の減少等により、前年度と比較して収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入や有形固定資産の取得による支出が主な要因となり、支出額は減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の返済や長期借入金の調達、配当金の支払い等により、前年度は支出でしたが、当年度は収入となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 39億円 23億円
投資CF -40億円 -25億円
財務CF -2億円 4億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「お客様第一」を基本とし、より精密で高機能のプラスチック部品を供給することで社会に貢献する企業を目指しています。また、変化する顧客要望に柔軟に対応し、最新技術を取り入れた最適な「もの作り」を提供することで、企業価値の増大を図ることを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化

「取り組もう環境保全、大地の恵みを次世代へ」をスローガンに、環境マネジメントシステムの活用と継続的改善を推進しています。また、多様な人材一人ひとりの可能性を大切にし、能力を最大限に発揮できるよう人材育成を強化する風土があります。

(3) 経営計画・目標

同社は、金型及びプラスチック部品を中心としたメカニカルパーツ分野で培った技術力とノウハウを活用し、デジタル家電・自動車関連機器に加え、ゲーム機器、情報通信、精密機器など幅広い分野での受注増大による事業拡大・成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

一貫生産体制による業務効率化、生産・調達の国際化、国内生産体制の強化、環境保全への取組、自然災害・ウイルス感染等への対応を重要課題としています。特に、海外4ヶ国の生産拠点からの最適な製品供給体制の確立や、国内での高付加価値化、省エネルギーに向けた設備更新などを推進しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

人材育成においては、OJTに加え、階層別・職種別研修や各種技能検定の受講を通じて専門性の向上を図っています。また、性別・国籍・年齢に関係なく多様な人材の活躍を推進し、ワークライフバランスに配慮した育児・介護休業支援制度の活用や長時間労働の削減など、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.4歳 17.0年 5,686,709円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技能検定等 技術面で有効な資格取得者比率(50.4%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業展開とカントリーリスク

製品売上高の約6割をベトナム、中国、タイの海外生産拠点が占めています。各国の税制優遇措置の変更や政策転換、予期せぬ経済情勢の変動などが業績に影響を与える可能性があります。また、為替変動リスクや、海外拠点における自然災害、輸送事故などの不測の事態も懸念されます。

(2) 特定の販売先への依存

売上高の約35%を上位3社が占めており、特定の主要販売先に依存しています。長年にわたり良好な関係を維持していますが、何らかの理由により当該販売先との取引関係に変化が生じた場合、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料価格の変動

継続的なコストダウンや安定調達に努めていますが、原材料価格が高騰し、その上昇分を製品価格に転嫁できない場合、利益率の低下などにより、経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、世界情勢の緊迫化によるエネルギー価格の高騰もリスク要因となります。

(4) 人材の確保・育成

継続的な成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠ですが、人材採用環境の著しい悪化や人材流出の増加が継続した場合、計画通りに人材を確保できず、将来の成長や中長期的な経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。