※本記事は、ムトー精工株式会社 の有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ムトー精工ってどんな会社?
同社グループは、プラスチック精密部品及び金型の製造・販売を中心に、プリント配線基板の設計等も手掛けています。
■(1) 会社概要
同社は、1956年にプラスチック部品の受託製造を目的として創業し、1961年に有限会社武藤合成樹脂工業所として設立されました。1975年にはソニーとの取引を開始し、事業規模を拡大しました。2004年にジャスダックへの上場を果たし、2025年には生産能力拡大のためにテックフォルテ工場を開設しています。
現在の従業員数は連結で2,975名、単体で198名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は同社代表取締役社長の田中肇氏で、第2位および第3位には金融機関である大垣共立銀行と十六銀行が名を連ねており、安定した資本関係が築かれています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田中肇 | 7.20% |
| 大垣共立銀行 | 4.70% |
| 十六銀行 | 3.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は田中肇氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は12.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中肇 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。ムトーシンガポール代表取締役社長などを経て、2001年より現職。 |
| 金大洲 | 取締役中国事業担当 | 2003年同社入社。豊武光電(蘇州)有限公司総経理などを経て、2015年より現職。 |
| 金子貞夫 | 取締役財務担当 | 1991年同社入社。管理部長や管理本部長などを経て、2022年より現職。 |
| 松原文治 | 取締役製造担当 | 1988年同社入社。海外子会社への出向や製造部長を経て、2021年より現職。 |
| 安江利充 | 取締役品質保証担当 | 1994年同社入社。ムトーベトナム出向や品質保証部長を経て、2021年より現職。 |
| 大竹昭彦 | 取締役管理担当 | 大垣共立銀行春日井支店長を経て、2022年に同社へ出向し管理部長。2023年より現職。 |
| 山口正宏 | 取締役技術担当 | 1997年同社入社。ムトーベトナム出向や技術・開発部長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、堤紀彦(堤会計事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プラスチック成形事業」および「プリント基板事業」を展開しています。
■プラスチック成形事業
デジタルカメラやビデオカメラなどのデジタル家電、カーナビゲーションやETCなどの自動車関連機器、電子ペンなどのプラスチック精密部品およびそれに伴う金型の製造・販売などを提供しています。顧客は主に国内外のデジタル家電メーカーや自動車関連機器メーカーです。
製品の販売や金型の提供、各種設計・技術支援等のサービスにより収益を得ています。運営は同社のほか、ムトーベトナム、豊武光電(蘇州)などの海外子会社が主体となってグローバルな生産体制を構築し行っています。
■プリント基板事業
プリント配線基板の設計、検査、販売を行っています。特に自動車向けの各種センサーなどのセラミック基板の検査事業が好調に推移しており、検査機の増設などを行って需要に対応しています。
プリント基板の設計や検査サービスを提供することで顧客から対価を受け取っています。運営は、同社の子会社である大英エレクトロニクスが主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は202億円から297億円へと順調に拡大しており、経常利益も8億円から28億円へと大幅な成長を見せています。利益率も堅調に推移しており、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 202億円 | 262億円 | 263億円 | 276億円 | 297億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 21億円 | 24億円 | 26億円 | 28億円 |
| 利益率(%) | 3.8% | 8.2% | 9.2% | 9.4% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 13億円 | 18億円 | 15億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の276億円から当期は297億円へと増収し、売上総利益も56億円から59億円に増加しました。営業利益率も7.4%から7.8%へと改善しており、コスト削減や省力化の取り組みが成果を上げています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 276億円 | 297億円 |
| 売上総利益 | 56億円 | 59億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.1% | 19.9% |
| 営業利益 | 20億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が3億円(構成比9%)、発送運賃が2億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
プラスチック成形事業はデジタルカメラ部品や自動車関連部品の受注増により増収となりました。プリント基板事業も、自動車向け各種センサーなどのセラミック基板の検査が好調に推移し、大幅な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| プラスチック成形事業 | 266億円 | 289億円 |
| 精密プレス部品事業 | 4億円 | - |
| プリント基板事業 | 5億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 276億円 | 297億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業といえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 37億円 |
| 投資CF | -25億円 | -11億円 |
| 財務CF | 4億円 | -26億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も64.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
お客様第一を基本に、より精密で高機能のプラスチック部品を供給することにより社会に貢献できる企業を目指しています。高度に変化する要望に柔軟に対応し、最新の技術を取り入れて最適なもの作りを提供することで、企業価値の増大を図ることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
「取り組もう環境保全、大地の恵みを次世代へ」をスローガンに掲げており、環境への配慮や脱炭素社会の実現を目指す文化があります。また、性別や国籍等に関係なく多様な人材一人ひとりの可能性を大切にし、能力を最大限に発揮できる職場環境を目指すなど、従業員の活躍推進を重んじる組織風土があります。
■(3) 経営計画・目標
具体的な中期目標として、2030年度までに2013年度比で46%のCO2排出量削減を掲げ、脱炭素化に取り組んでいます。また、人的資本における目標として、技術面で有効な資格取得者比率60%や、男性労働者の育児休業取得率100%を2029年3月までに達成することを目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力のデジタル家電機器関連や自動車関連部品を中心とした受注拡大を図りつつ、ゲーム機器や情報通信などの幅広い分野への事業展開を目指しています。重点施策として、金型設計から組立までの一貫生産体制による業務効率化や、日本・ベトナム・中国・タイの4ヶ国拠点を活用した生産・調達の国際化を掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員一人ひとりのキャリアアップと能力向上を重視した人材育成を推進しています。職場でのOJTに加え、階層別・職種別研修や各種技能検定の受講を通じて専門性を高めています。また、グローバル人材の育成やDX推進に向けたITリテラシー向上を図り、次世代を担うリーダーの育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.7歳 | 16.6年 | 5,985,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は常時雇用する労働者が300人以下のため、男女の賃金差異に関する公表義務の対象ではなく、有報には記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技能検定等技術面で有効な資格取得者比率(49.4%)、人間ドック受診率(14.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外事業展開と為替変動リスク
売上高の6割以上を海外の生産拠点で生産しており、各国の政策変更や外資企業への優遇措置の終了による影響が懸念されます。また、グループ内の取引が主に米ドル建てで行われているため、急激な為替の変動が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の販売先への依存リスク
同社グループの売上高のうち、主要販売先上位3社が占める割合は35.8%に達しています。これらの取引先とは良好な関係を維持しているものの、何らかの理由で取引関係に変化が生じた場合、経営成績や財政状態に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 原材料価格の高騰リスク
同社グループでは安定的な原材料の供給確保と継続的なコストダウンに努めていますが、戦争などによる世界情勢の緊迫化を背景とした原材料やエネルギー価格の高騰が続き、それを製品価格に十分に転嫁できない場合、収益を圧迫する可能性があります。



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