上村工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

上村工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、プリント基板やアルミ磁気ディスク向けの表面処理用資材・機械の製造販売を主力事業としています。直近の業績は、エレクトロニクス市場の回復基調や円安効果などにより、売上高・利益ともに前期を上回る増収増益となっています。


※本記事は、上村工業株式会社 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 上村工業ってどんな会社?


表面処理業界のリーディングカンパニーとして、めっき薬品・機械・管理装置・加工の総合力を強みにグローバル展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1933年に研磨材の製造販売を目的に創業し、1957年にめっき用化学品の製造を開始しました。1997年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年の東証・大証統合を経て、2022年の市場区分見直しにより東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。1980年代後半以降、米国、香港、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、中国、韓国、インドネシアに現地法人を設立するなど、積極的な海外展開を進めています。

現在の従業員数は連結で1,552名、単体で289名です。筆頭株主は代表取締役社長の親族が経営する資産管理会社の浪花殖産で、第2位は信託銀行です。創業家および関連会社が一定の影響力を持つ安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
浪花殖産 28.23%
日本カストディ銀行(信託口) 5.72%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は上村寛也氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
上村 寛也 代表取締役社長 1980年同社入社。取締役管理本部長などを経て、1997年1月より現職。浪花殖産代表取締役社長も兼務。
橋本 滋雄 専務取締役営業本部長、開発本部長 1973年同社入社。中央研究所副所長、常務取締役などを経て、2012年1月より現職。
島田 康史 取締役製造本部長 1982年同社入社。営業本部大阪営業部長、枚方工場長などを経て、2024年4月より現職。
関谷 勉 取締役営業本部副本部長、東京支社長 1986年同社入社。営業本部東京営業部長などを経て、2025年5月より現職。
上村 茉一子 取締役 2024年4月同社入社。同年6月より現職。
田邉 克久 取締役中央研究所所長、中央研究所第一開発部長 1996年同社入社。開発本部副本部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、髙橋章彦(税理士)、明田佳樹(公認会計士・税理士)、西本香(特定社会保険労務士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「表面処理用資材事業」「表面処理用機械事業」「めっき加工事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

表面処理用資材事業


プリント基板用めっき薬品、アルミ磁気ディスク用めっき薬品、工業用化学品、非鉄金属等の製造販売を行っています。エレクトロニクス産業や自動車産業などが主な顧客です。

薬品の販売代金等を収益源としています。運営は主に上村工業、ウエムラ・インターナショナル・コーポレーション、台湾上村などの国内外のグループ会社が行っています。

表面処理用機械事業


プリント基板用めっき機械、アルミ磁気ディスク用めっき機械等の製造販売を行っています。めっき薬品の性能を最大限に引き出す装置や、薬液管理装置の開発も手掛けています。

機械装置の販売代金等を収益源としています。運営は主に上村工業、ウエムラ・インターナショナル・コーポレーション、台湾上村などが行っています。

めっき加工事業


プラスチック、プリント基板等のめっき加工を行っています。自動車部品メーカーなどが主な顧客であり、高い技術力が求められる加工サービスを提供しています。

加工賃収入等を収益源としています。運営は主にサムハイテックス、台湾上村、ウエムラ・インドネシアが行っています。

不動産賃貸事業


オフィスビル、マンションおよび工場用地の賃貸を行っています。同社が保有する不動産の有効活用を目的としています。

テナントからの賃貸料収入を収益源としています。運営は主に上村工業が行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、自動車教習所事業などは行っていませんが、同社の技術供与等に関連する事業が含まれます。

ロイヤルティ収入等を収益源としています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は500億円台後半から800億円台へと拡大傾向にあります。利益面でも、経常利益率は10%台後半から20%台前半へと高い水準で推移しており、増収増益のトレンドを維持しています。特に直近では経常利益が200億円を突破しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 559億円 723億円 857億円 803億円 838億円
経常利益 99億円 146億円 158億円 159億円 200億円
利益率(%) 17.7% 20.2% 18.5% 19.8% 23.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 71億円 97億円 105億円 109億円 141億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益および営業利益も拡大しました。売上総利益率は34.5%から38.9%へ、営業利益率も18.7%から22.5%へと改善しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 803億円 838億円
売上総利益 277億円 326億円
売上総利益率(%) 34.5% 38.9%
営業利益 150億円 188億円
営業利益率(%) 18.7% 22.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が37億円(構成比27%)、研究開発費が26億円(同19%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の期首棚卸高や当期製造費用が含まれています。

(3) セグメント収益


主力の表面処理用資材事業は、パッケージ基板向け薬品の需要回復や円安効果により増収増益となりました。一方、表面処理用機械事業は設備投資一巡により大幅な減収減益となりました。めっき加工事業は売上が微減しましたが、損失幅は縮小しました。不動産賃貸事業は堅調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
表面処理用資材事業 606億円 696億円 125億円 178億円 25.6%
表面処理用機械事業 145億円 92億円 24億円 6億円 6.4%
めっき加工事業 43億円 43億円 -3億円 -0.5億円 -1.1%
不動産賃貸事業 8億円 8億円 4億円 5億円 56.2%
その他 0.2億円 0.2億円 0.2億円 0.2億円 89.4%
調整額 -0.0億円 - - - -
連結(合計) 803億円 838億円 150億円 188億円 22.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は81.3%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 124億円 192億円
投資CF -11億円 -36億円
財務CF -63億円 -35億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Growing together with U」の理念を掲げ、顧客とともに一体となった成長を目指しています。グループの総合力を活かし、ハード・ソフトを一体としたトータルソリューションを提供することで、顧客ニーズに迅速かつ効率的に対応する体制を構築しています。また、透明性ある経営を通じた社会貢献と、株主への利益還元を基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は「選択と集中とスピード」をキーワードに、積極的な新製品開発や新市場への展開を図っています。また、めっき薬品、機械設備、管理装置、めっき加工をグループ内で手掛けることで蓄積された総合技術力を強みとしています。持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みも経営の重要課題と位置づけ、環境負荷低減や働きやすい職場環境の整備にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、表面処理業界のリーディングカンパニーとして、グローバルな体制構築と業容の発展を目指しています。具体的な経営指標として、以下の目標を定めています。

* 1株当たり配当金:200円以上を維持
* ROE(自己資本利益率):10%以上を維持

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、積極的な新製品開発や中国市場を中心とした新市場展開を図ります。また、SDGs・ESG・安全強化の推進、コンプライアンスの徹底、研究開発の迅速化などに取り組んでいます。特にエレクトロニクス市場や自動車産業などの先端分野において、高品質なトータルソリューションを提供し、グローバルな事業展開を加速させる方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「自律型人材の育成」を掲げ、チャレンジ心と行動力を持つ人材の育成を目指しています。ダイバーシティの観点から性別や国籍等の区別なく能力や成果を公正に評価し、優秀な人材を積極的に登用する方針です。また、育児と仕事の両立など、多様なライフスタイルに応じた働きやすい職場環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.8歳 14.9年 8,270,502円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.0%
男性育児休業取得率 36.3%
男女賃金差異(全労働者) 75.5%
男女賃金差異(正規) 86.5%
男女賃金差異(非正規) 49.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用内定者に占める女性の割合(23%)、中途採用者の管理職比率(約26%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新の影響


同社グループの製品は需要業界の技術革新の影響を常に受けます。新技術の開発や新方式の採用等により表面処理のウェイトが減少し、同社グループ製品の需要が減少した場合、経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 稀少原料の安定確保の影響


製品の競争力維持のために使用している稀少原料について、原料メーカーの戦略や法規制、地政学的リスクの高まり等により生産中止となり、かつ適正な代替原料がない場合、製品の競争力や経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 使用原料規制の影響


環境対応に関する法規制や企業の自主規制により、同社グループ製品の原料や製品を用いためっき皮膜等が規制対象となる可能性があります。その場合、該当製品の売上が減少し、経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 材料費高騰の影響


諸材料・諸原料の値上がり傾向や、地政学的リスクによる非鉄金属等の市場価格上昇により、主力製品の主原料が高騰する可能性があります。販売価格への転嫁が困難な場合、製品の収益性が低下し、経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。