※本記事は、上村工業株式会社の有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 上村工業ってどんな会社?
めっき用化学品や表面処理用機械の製造販売からめっき加工まで、ハードとソフトを一体化したソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1933年に研磨材の製造販売などを目的として設立され、1957年にめっき用化学品の製造を開始しました。1960年には機械事業部を設置して表面処理用機械の製作に乗り出し、1985年の米国子会社設立を皮切りにグローバル展開を推進しています。1997年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結で1,528人、単体で284人です。筆頭株主は創業者一族の関連とみられる浪花殖産で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行や金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 浪花殖産 | 28.29% |
| BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND | 4.41% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は上村寛也氏が務めており、社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上村寛也 | 代表取締役社長 | 1980年同社入社。取締役大阪本店長、取締役管理本部長などを経て、1997年1月より現職。 |
| 島田康史 | 常務取締役製造本部長、枚方工場長 | 1982年同社入社。営業本部東京営業部長、大阪本店長などを経て、2025年7月より現職。 |
| 関谷勉 | 取締役営業本部長、東京支社長 | 1986年同社入社。営業本部東京営業部長、大阪本店長などを経て、2025年7月より現職。 |
| 上村茉一子 | 取締役管理本部長 | 2024年同社入社。同年6月取締役就任を経て、2026年3月より現職。 |
| 田邉克久 | 取締役中央研究所所長、中央研究所第一開発部長 | 1996年同社入社。中央研究所第一開発部長、開発本部副本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、髙橋章彦(税理士事務所代表)、明田佳樹(公認会計士事務所代表)、西本香(社会保険労務士法人代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「表面処理用資材事業」「表面処理用機械事業」「めっき加工事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。
■表面処理用資材事業
プリント基板用めっき薬品やアルミ磁気ディスク用めっき薬品の製造販売、工業用化学品や非鉄金属の仕入販売を行っており、国内外のエレクトロニクス関連メーカーなどを主要顧客としています。
顧客への製品販売による代金を主な収益源としています。同事業の運営は、同社を中心に、台湾上村、上村化学(上海)、ウエムラ・タイランドなどの国内外のグループ会社が幅広く担っています。
■表面処理用機械事業
プリント基板用めっき機械やアルミ磁気ディスク用めっき機械など、顧客の要求仕様に応じた表面処理用機械の製造・仕入・販売を行っています。
機械装置の引き渡しによる販売代金を主な収益源としています。同事業の運営は、同社のほか、台湾上村、上村工業(深圳)などの国内外の連結子会社が担っています。
■めっき加工事業
自動車関連部品やエレクトロニクス製品向けに、プラスチックやプリント基板などへのめっき加工サービスを提供しています。
めっき加工を施した製品の引き渡しによる加工代金を主な収益源としています。同事業の運営は、ウエムラ・タイランド、台湾上村、ウエムラ・インドネシアの海外子会社3社が担っています。
■不動産賃貸事業
自社で保有するオフィスビル、マンションおよび工場用地などの事業用不動産の賃貸を行っています。
事業用不動産の賃貸借契約に基づく賃貸料を主な収益源としています。同事業の運営は、同社が単独で行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、知的財産に関するライセンスを含む製品の販売などを行っています。
知的財産のライセンス利用に関連するロイヤルティ収入を収益源としています。運営は同社グループ各社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、一時的な減収の期間があるものの、全体として拡大傾向にあります。特に当期はエレクトロニクス市場の旺盛な需要を背景に、売上高は918億円、経常利益は221億円へと伸長し、高い利益率を維持しながら成長を続けています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 723億円 | 857億円 | 803億円 | 838億円 | 918億円 |
| 経常利益 | 146億円 | 158億円 | 159億円 | 200億円 | 221億円 |
| 利益率(%) | 20.2% | 18.5% | 19.8% | 23.9% | 24.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 93億円 | 94億円 | 135億円 | 110億円 | 105億円 |
■(2) 損益計算書
前年から当期にかけて、売上高の増加に伴い売上総利益・営業利益ともに拡大しました。売上総利益率および営業利益率も改善傾向にあり、高付加価値製品の販売が収益性の向上に寄与していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 838億円 | 918億円 |
| 売上総利益 | 326億円 | 360億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.9% | 39.2% |
| 営業利益 | 188億円 | 213億円 |
| 営業利益率(%) | 22.4% | 23.2% |
販売費及び一般管理費のうち、提出会社単体ベースでは研究開発費が14億円、給料及び手当が9億円を占めています。連結ベースでの売上原価は558億円となり、売上高に対する売上原価の構成比は約60.8%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の表面処理用資材事業は、半導体パッケージ基板向けのめっき薬品の販売が生成AI関連等の需要を捉えて好調に推移し、増収増益となりました。めっき加工事業も歩留まり改善等により増収増益でした。一方で表面処理用機械事業は設備投資一巡により減収となったものの、高付加価値装置の販売により増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 表面処理用資材事業 | 696億円 | 777億円 | 178億円 | 204億円 | 26.3% |
| 表面処理用機械事業 | 92億円 | 84億円 | 6億円 | 9億円 | 10.3% |
| めっき加工事業 | 43億円 | 48億円 | -0.5億円 | 2億円 | 3.5% |
| 不動産賃貸事業 | 8億円 | 9億円 | 5億円 | -2億円 | -18.3% |
| その他 | 0.2億円 | 0.3億円 | 0.2億円 | 0.3億円 | 89.7% |
| 連結(合計) | 838億円 | 918億円 | 188億円 | 213億円 | 23.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も83.6%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 192億円 | 139億円 |
| 投資CF | -36億円 | -31億円 |
| 財務CF | -35億円 | -60億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「Growing together with U」の理念を掲げ、顧客とともに一体となった成長を目指しています。総合力を最大限に活用して顧客のニーズに迅速かつ効率的な対応ができる体制を構築し、先端技術分野に向けた表面処理技術の開発に専念することで、ハードとソフトを一体としたトータルソリューションを提供しています。
■(2) 企業文化
透明性ある経営を通じて社会に貢献することや、株主に対する利益還元を重視する価値観を持っています。また、人材のダイバーシティ(多様性)を確保し、社員一人ひとりの個性や能力を最大限活かすことにより、多様なライフスタイルに応じていきいきと働ける職場環境の整備に取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
グローバルな生産・販売・開発体制を構築し、市場のニーズに合致した製品の開発提供に注力して、国際的に認知される企業集団としてのウエムラ・グループを目指しています。具体的な数値目標として以下を定めています。
・1株当たり配当金:200円以上を維持
・ROE(自己資本利益率):10%以上を維持
■(4) 成長戦略と重点施策
「選択と集中とスピード」をキーワードに、積極的な新製品の開発と中国市場を中心とした新市場への展開を図ります。めっき薬品、機械設備、管理装置の開発から加工事業までを一貫して手掛ける総合技術力を強みとし、他社との競合優位性を保ちながら高付加価値製品の提供と事業のグローバル展開を推進していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人事理念として「自律型人材の育成」を掲げています。チャレンジ心を持ち、能力を発揮して行動力で実行する、責任意識と役割認識の高い人材の育成を目指しています。階層別・部門別の各種研修や選抜型研修を通じて社員一人ひとりの自主性を尊重し、専門知識や創造力を育みながら果敢に挑戦する力を持った人材を育成する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 15.3年 | 8,671,762円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.8% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国出身社員(3名)、中途採用者の管理職(16名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新の影響
同社の製品は需要業界の技術革新の影響を常に受けます。社会や市場における新技術の開発、新方式の採用、新製品の出現などによって表面処理のウェイトが減少し、同社グループの製品需要が減少することで、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 稀少原料の安定確保の影響
同社の製品には、競合製品に対して優位性を保つために稀少原料を使用しているものがあります。原料メーカーの戦略や法規制、地政学的リスクの高まりなどにより稀少原料が生産中止となり、適正な代替原料が確保できない場合、製品の競争力が低下するリスクがあります。
■(3) 使用原料規制の影響
環境対応に関する法規制や企業の自主規制などにより、同社グループの製品の原料や、製品を用いためっき皮膜などが規制の対象となる可能性があります。その場合、該当製品の売上が影響を受け、経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 材料費高騰の影響
中東情勢の不安定化や供給不安を背景に、金やパラジウム、ニッケルなどの非鉄金属の市場価格が上昇しています。主力製品の主原料が高騰または長期間高価格となり、販売価格への転嫁が十分に行えない場合、製品の収益性が低下するリスクがあります。



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